著者
前田 太郎
出版者
日本ダニ学会
雑誌
日本ダニ学会誌 (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.9-17, 2015-05-25 (Released:2015-06-25)
参考文献数
16
被引用文献数
6 9

アカリンダニAcarapis woodiはミツバチ成虫の気管内に寄生して体液を吸汁する.アカリンダニの寄生はミツバチコロニーに深刻なダメージを与え,セイヨウミツバチApis melliferaにおけるアカリンダニの分布はヨーロッパから南北アメリカを中心に全世界に広がっている.日本におけるセイヨウミツバチへの寄生報告は2010年に初めて行われ,同年ニホンミツバチA. cerana japonicaにおいてもアカリンダニの寄生が確認された.その後,農林水産省のアカリンダニに関する記録によると,2012年までわずか4件の記録がニホンミツバチであるだけで,セイヨウミツバチにおける寄生記録はない.しかし,実際のアカリンダニ被害件数はこの記録よりもはるかに多いと考えられた.そこで,全国のニホンミツバチ350コロニーと,セイヨウミツバチ50コロニーについてアカリンダニ寄生の現状を調査した.アカリンダニ寄生の診断は,顕微鏡下でミツバチを解剖して行った.その結果,ニホンミツバチでは東日本を中心にアカリンダニの寄生が確認された.一方,セイヨウミツバチではアカリンダニの寄生は発見されなかった.セイヨウミツバチへのアカリンダニ寄生率が,ニホンミツバチに比べてはるかに低い原因について現在調査中である.
著者
伊藤 桂 福田 達哉 荒川 良
出版者
日本ダニ学会
雑誌
日本ダニ学会誌 (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.13-24, 2017-05-25 (Released:2017-06-25)
参考文献数
11

サガミナミハダニはクワクサを主な寄主植物とし,夏から秋にかけて高密度となる.サガミナミハダニがクワクサに適応しているという予測を検証するため,本種における寄主植物の適合性,および野外密度について調査を行い,それらの傾向を普通種のカンザワハダニ(カラムシ寄生)と比較した.葉の質について,サガミナミハダニの食性幅はカンザワハダニより狭く,クワクサでもっとも産卵数と生存率が高かったことから,クワクサに適応している可能性が示唆された.しかし,クワクサ上での産卵数や発育速度はカンザワハダニとは有意差がなかった.一方,野外ではサガミナミハダニとカンザワハダニはそれぞれクワクサとカラムシにしか見られず,サガミナミハダニの葉面積当たり密度はカンザワハダニよりも高かった.この傾向は,クワクサ上では捕食者のケナガカブリダニの密度が低いことと関係している可能性がある.
著者
江原 昭三 後藤 哲雄
出版者
日本ダニ学会
雑誌
日本ダニ学会誌 (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.17-25, 1996-05-25
被引用文献数
11

Panonychus osmanthi Ehara et Gotoh, sp. nov.(モクセイハダニ, 新称)とTetranychus pueraricola Ehara et Gotoh, sp. nov.(ナミハダニモドキ, 新称)を記載した。P.osmanthiは, ミカンハダニP.citri(McGregor)の同胞種であるが, 雌の第3背側後体毛が第3背中後体毛よりも顕著に短く(ミカンハダニでは, 前者が後者よりやや短いか, または後者とほぼ同長), 挿入器はミカンハダニよりも弱い角度で背方に曲がる。本種はモクセイに寄生し, 模式産地は茨城県竜ヶ崎市(キンモクセイ)である。福岡県久留米市産の標本も検し得た。ナミハダニT.urticae Kochの同胞種であるT.pueraricola(休眠性)は, 夏型雌がナミハダニの黄緑型と異なって赤色であるほか, 挿入器の末端の拡張部の径がナミハダニよりもやや短くて約2.1μmである(ナミハダニではこの径は2.5∿2.6μm)。この種の模式産地は茨城県常陸太田市で, 寄主はクズである。
著者
柴尾 学 田中 寛
出版者
The Acarological Society of Japan
雑誌
日本ダニ学会誌 (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.107-113, 1998-11-25 (Released:2011-05-09)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

大阪府藤井寺市のイチジク圃場においてイチジクモンサビダニの薬剤による防除効果と防除適期を1996年および1997年に調査した.室内検定により本種に対して殺虫効果が認められた殺ダニ剤および殺菌剤のうち,テブフェンピラド水和剤,ピリダベン水和剤,チオファネートメチル水和剤では圃場における本種の密度抑制効果が高かったが,ケルセン乳剤およびオキサジキシル・銅水和剤では低く,室内検定と圃場試験の結果は異なっていた.また,圃場において異なる時期に薬剤を散布したところ,7月中旬の散布が最も効果的に本種の生息密度を抑制し,葉および果実のモザイク症状被害も防止できることが示された.したがって,7月中旬にテブフェンピラド水和剤,ピリダベン水和剤,チオファネートメチル水和剤を散布することで効果的に本種を防除できると考えられる.
著者
亀崎 宏樹 大橋 和典 石原 圭朗 佐々木 義昭 高藤 晃雄
出版者
日本ダニ学会
雑誌
日本ダニ学会誌 (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.145-151, 2007 (Released:2007-12-16)
参考文献数
17
被引用文献数
3 3

The lethal effects of two types of oxygen absorbers on the eggs of the house dust mites, Dermatophagoides farinae, D. pteronyssinus, and Tyrophagus putrescentiae were studied. For D. farinae, and D. pteronyssinus, the mortality obtained after 2 days in an air-tight container with iron (Fe)-type oxygen absorbers was 100%, while an ascorbic-acid-type oxygen absorber needed 5 days to obtain 100% mortality. On the other hand, the two types of oxygen absorbers showed no significant lethal difference on T. putrescentiae.
著者
矢部 隆 林 文男
出版者
The Acarological Society of Japan
雑誌
日本ダニ学会誌 (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.47-50, 1998-05-25 (Released:2011-02-23)
参考文献数
5
被引用文献数
2 3

A total of 655 larvae, 329 nymphs and 26 adults(5 males and 21 females)of the ticks, Amblyomma geoemydae, were collected from the Japanese pond turtles, Mauremys japonica, captured in the small impoundment of the Ayu River, Doda, the Atsumi Peninsula, Aichi Prefecture, central Japan. This is the first distributional record of A. geoemydae from Japan excluding the Nansei Islands. In this study site, all stages of ticks were generally found on the hosts during the period from late April to early November. In winter, however, the hosts could not be examined because they overwinter under water of the impoundment.
著者
大橋 和典 小坪 遊 高藤 晃雄
出版者
日本ダニ学会
雑誌
日本ダニ学会誌 (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.107-113, 2003-11-25
参考文献数
9
被引用文献数
1 6

近畿地方から発見され,新種記載されたミツユビナミハダニの発生分布および越冬能力を調査した.本種は,大阪府,京都府,兵庫県および東京都で発生が確認され,主にイヌホオズキを利用していた.冬期でも全てのステージが活動していたことから非休眠性種である考えられたが,冬期に生存している個体の割合は低く,本種は熱帯または亜熱帯に起源する侵入種であると考えられた.しかし,本種は2001 年に発見されてから少なくとも2 度の越冬に成功しており,すでに分布の拡大を始めているものと思われた.
著者
古味 一洋 荒川 良 天野 洋
出版者
日本ダニ学会
雑誌
日本ダニ学会誌 = Journal of the Acarological Society of Japan (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.29-35, 2008-05-25
参考文献数
17
被引用文献数
1 10

高知県の果菜類栽培施設で発生する土着カブリダニ6種(ヘヤカブリダニ,コウズケカブリダニ,ミチノクカブリダニ,サイタマカブリダニ,キイカブリダニ,ニセラーゴカブリダニ)および生物農薬資材として販売されているククメリスカブリダニの,ミナミキイロアザミウマ1齢幼虫に対する捕食能力を評価した.供試した土着カブリダニ6種のなかで,キイカブリダニの日当たり捕食量と産卵数が最も多く,3日間平均で,12.2頭,6.5卵であり,この値はククメリスカブリダニの3倍程度の高いものであった.また,ニセラーゴカブリダニの捕食量も5.8頭とククメリスカブリダニより多かった.以上の結果より,キイカブリダニとニセラーゴカブリダニはアザミウマ類の天敵として有望な種と考えられた.ヘヤカブリダニ,コウズケカブリダニ,ミチノクカブリダニ,サイタマカブリダニもミナミキイロアザミウマ1齢幼虫に対する捕食性が認められた.
著者
森 樊須
出版者
日本ダニ学会
雑誌
日本ダニ学会誌 (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.75-76, 2000-05-25
著者
安倍 弘
出版者
日本ダニ学会
雑誌
日本ダニ学会誌 (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.51-56, 2005-05-25
著者
松尾 智英 大倉 信彦 角田 浩之 矢野 泰弘
出版者
日本ダニ学会
雑誌
日本ダニ学会誌 = Journal of the Acarological Society of Japan (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.1-23, 2013-05-25
参考文献数
105
被引用文献数
7

マダニ上科は主に2つの科,すなわちマダニ科(Hard tick)とヒメダニ科(Soft tick)とに分類され,マダニ科はさらにそれらの繁殖の違いによって Prostriata(マダニ科マダニ属)および Metastriata(マダニ属を除くマダニ科の属)に分けられる.すなわち,各グループに属する種はそれぞれ特徴的な繁殖システムや器官を有している.加えて,マダニ類は様々な病原体のベクターとしても重要な生物群である.Metastriataグループに属するフタトゲチマダニは単為生殖系統と両性生殖系統が存在するという特徴をもち,オーストラリア,ニュージーランド,ニューカレドニア,フィジー諸島,日本,朝鮮半島および中国・ロシア北東部に広く分布している.本種はまた Q熱リケッチア,ロシア春夏脳炎ウィルス,タイレリアおよびバベシア原虫のベクターとしても知られており,我が国における牧野の最優占種であるフタトゲチマダニは放牧牛にピロプラズマ病を媒介するという点で農学・獣医学上重要であると考えられている.そこで,我々がこれまでに明らかにしてきたフタトゲチマダニ両性生殖系統の繁殖に関する知見をここにまとめる.
著者
江原 昭三
出版者
日本ダニ学会
雑誌
日本ダニ学会誌 (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.175-176, 1999-11-25
著者
黒佐 和義
出版者
日本ダニ学会
雑誌
日本ダニ学会誌 (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.85-90, 2009-11-25 (Released:2009-12-25)
参考文献数
5
被引用文献数
1 2

Archidispusはヒサシダニ科Scutacaridaeの大きな属の一つで,世界で約70種が知られているが,その大多数は雌成虫のみに基づいて記載されたものである.わが国からは,これまでに,オサムシ科Carabidaeの甲虫の成虫に付着した状態で見出された便乗性雌に基づいて38種のArchidispusが報告されているが,なお,かなりの数の種が未記載のまま残されている.本著ではゴモクムシ族(Harpalini)のマメゴモクムシ亜族(Stenolophina)に属するゴミムシに見出された1新種をA. acupalpi (チビゴモクムシヒサシダニ)と命名し,記載する.この種は既知種の中では,同じくマメゴモクムシ亜族のゴミムシから見出されるA. yanoi Kurosa, 1984に最も近縁と考えられるが,基節毛3bの形状などにより容易に識別できる.
著者
山内 健生 高野 愛 丸山 宗利 川端 寛樹
出版者
日本ダニ学会
雑誌
日本ダニ学会誌 = Journal of the Acarological Society of Japan (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.143-148, 2012-11-25
参考文献数
15
被引用文献数
8

A Japanese male repeatedly infested with <I>Amblyomma testudinarium</I> in Malaysia was reported. He visited to Ulu Gombak, Malay Peninsula, Malaysia on April and May 2007, and he recalled three times of tick bite during traveling. The first tick bite was by one nymph infested on the inner side of the brachium of the patient. After a few days, erythema with a diameter of 2 cm was found at the site of tick attachment. Pain of the site remained for 20 days. The second tick bite was by larvae infested on the skin surface of the abdomen, basal portion of the thigh, and scrotum of the patient. He felt a pain at the moment of tick infestation. The pain remained for 15 days. The third tick bite was by a larva, and the tick was found in the phyma of his back immediately after his return Japan.