著者
滝野 千春 今井 靖親 藤田 正
出版者
奈良教育大学教育研究所
雑誌
奈良教育大学教育研究所紀要 (ISSN:13404415)
巻号頁・発行日
no.12, pp.65-78, 1976-03-25

本研究は家庭生活,学校生括,社会生活に関する11項目から成る質問紙を用い,いわゆる「へき地」における中学生と親の生活意識を比較・検討し,その特徴を明らかにすることを目的としておこなわれた。調査対象は奈良県吉野郡上北山村上北山中学校生徒82名とその両親153名である。得られた主な結果を要約すれば次のとおりである。(1)理想の父親像として,中学生は家庭的な父親をあげているのに対し,親は仕事に専念する父親をあげていて,両者の間には著しい差異が認められた。(2)理想の母親像としては,中学生も親も「家庭生活を何より大切にする母」をあげている。(3)子どもが将来親にしてあげたいと思っていることと,親が子どもにしてほしいと思っていることとを比較すると,「親に心配かけないようにする」ということでは一致しているが,経済的扶養については,両者の間に顕著な相違が見られた。(4)子どもが学校で得たいと思っているのは,主として「心をうちあけて話せる友人や教師」であるのに対し,親はわが子が学校で「教養」を身につけることを期待している。(5)中学生も親も地域への愛着度はかなり高い。その理由は自然環境のよさと人情のあつさにあるように思われる。しかし,生活の不便さや高物価,つき合いのわずらわしさなどは,共通して地域への不満となっている。(6)この地に永住を希望する者の割合は,中学生より親に多かった。また女子中学生より男子中学生のほうに移住希望者が有意に多かった。(7)現代の日本社会への不満は,中学生では「正義のとおらぬこと」や「貧富の差があること」にあるが,親では「国民の意見の分裂」や「まじめな者が報われないこと」に向けられている。(8)中学生も親も,生活態度として,「金や名誉を考えずに自分の趣味にあった暮し方」をすることや,「世の中の不正と戦い,清く正しく生きること」をあげているが,「その日,その日をのんきに暮す」という者は中学生よりも親に多く,男子中学生より女子中学生に多い。(9)中学生は親しい友人や仲間といる時や,スポーツや趣味にうちこんでいる時に生きがいを感じると答えたのに対し,親は「仕事に打ちこんでいる時」,「家族といる時」をあげている。また子ども自身が将来自分がなりたいと願っているものと,親が子どもに期待する人間像とでは,両者に大きなくいちがいが見られた。へき地教育研究室報告特集6
著者
玉瀬 耕治 荒木 美早
出版者
奈良教育大学教育研究所
雑誌
奈良教育大学教育研究所紀要 (ISSN:13404415)
巻号頁・発行日
no.29, pp.181-189, 1993-03-01

面接場面での連続する3つの質問のうち、初めの2つの質問が開かれた質問であるか閉ざされた質問であるかということと、それらの質問が難しい質問(親密値高)であるか易しい質問(親密値低)であるかの組合せによって4つの条件が構成された。最後の質問は親密値が中位の開かれた質問であった。大学生を用いて、これらの質問によって、全体の応答がどのように変化するかを検討した。その結果、難しい質問を開かれた形式で尋ねた場合に応答全体がもっとも長くなった。また、初めの2つの質問が閉ざされた質問の場合は、最後の質問での応答がより短くなった。
著者
豊田 弘司 生田 明子
出版者
奈良教育大学教育研究所
雑誌
教育研究所紀要 (ISSN:13404415)
巻号頁・発行日
no.34, pp.129-135, 1998-03

280名の大学生を対象にして、男性リーダー及び女性リーダーの特徴を自由記述する調査を行った。自由記述の多かった特徴を分析してみると、男性リーダーの特徴としては「統率力がある」「決断力・判断力がある」が上位項目としてあげられ、女性リーダーの特徴としては、「やさしい・思いやりのある」「明るい・元気・活発」が最上位にあげられた。男性リーダーと女性リーダーに共通する特徴としては「頭がよい」「明るい・元気」「やさしい・思いやりのある」「話し上手・説得力・発言力」であった。これらの結果はPM理論から考察され、男性リーダーにはP機能、女性リーダーにはM機能を求める傾向のあることが示唆された。
著者
田淵 五十生 大宰府西小学校国際交流委員会
出版者
奈良教育大学教育研究所
雑誌
奈良教育大学教育研究所紀要 (ISSN:13404415)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.13-25, 1991-03-01

太宰府西小学校と百済国民学校は児童の相互訪問を組み込んだ姉妹校交流を開始した。この試みは、新しいタイプの国際理解教育であり、他の教育現場のモデルになりうる実践である。学校、PTA、行政、地域が一体となって日韓相互理解に貢献しており、小学校段階においても、このような人間と人間の直接交流が求められている。
著者
杉村 健 多喜 裕美
出版者
奈良教育大学教育研究所
雑誌
奈良教育大学教育研究所紀要 (ISSN:13404415)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.79-91, 1991-03-01

2、4、6年生の国語と算数の宿題について組織的に調査を行なった。学年が進むにつれて、宿題に要する時間、宿題をいつもしている者、学習塾に通っている者は増加するが、宿題が好きな者、宿題が成績の向上や授業の理解に役立つと考えている者、復習や予習をする者は減少する。男女差は国語の方が大きい。成績と宿題との関係は2年生よりも4、6年生で強い。成績の良い者は良くない者と比べて、宿題をいつも、自分から進んでしており、2年生では親に見てもらう者が少なく、国語の予習をし、算数の宿題が役に立つと考えている。
著者
笹川 宏樹 藤田 正
出版者
奈良教育大学教育研究所
雑誌
奈良教育大学教育研究所紀要 (ISSN:13404415)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.81-89, 1992-03-01

各発達時期における父親と母親の称賛・叱責による養育態度と男子と女子学生の自己効力感と自己統制感の関係を調べた。男子94名と女子105名を対象に、称賛・叱責の養育態度調査、一般性セルフ・エフィカシー尺度、および一般的 Locus of Control 尺度を実施した。自己効力感については、小学校と高校の時期に両親によくほめられた男子学生は高く、小学校高学年の時期に母親によく叱られた女子学生は低かった。自己統制感については、高校の時期に両親によくほめられた男子学生は内的統制感が強く、小学校低学年の時期に父親に叱られた女子学生の内的統制感は低かった。
著者
豊田 弘司
出版者
奈良教育大学教育研究所
雑誌
奈良教育大学教育研究所紀要 (ISSN:13404415)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.73-76, 2000-03-01

262名の大学生を対象に「女性から好かれる男性」「女性から好かれる女性」「男性から好かれる男性」及び「男性から好かれる女性」の特徴を3つずつ自由記述する調査を行った。「女性から好かれる男性」の特徴としては「やさしい」「おもしろい」「かっこいい」、「女性から好かれる女性」の特徴としては「やさしい」「明るい」「おもしろい」、「男性から好かれる男性」の特徴としては「おもしろい」、「男性から好かれる女性」の特徴としては「かわいい」「やさしい」が上位項目としてあげられた。また、被調査者の性による違いも見いだされた。
著者
奥 忍
出版者
奈良教育大学教育研究所
雑誌
奈良教育大学教育研究所紀要 (ISSN:13404415)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.1-9, 1988-03-01

明治以降、西洋音楽が公教育の中に積極的に取り入れられるようになり、日本人の音感覚は次第に西洋化された。本稿は、大正時代に西洋音楽がどのように受容されたか、即ち、移入された西洋音楽はどのように伝統的音感覚の影響を受け、変化したか、について、アメリカ起源の3つの流行歌の音高を測定し、音程・音律を分析することによって明らかにしようと試みたものである。対象となった流行歌は第一節の全ての音の音高が測定され、音程はセントで整理される。結果は調性感の視点から考察される。
著者
山本 敏久 杉村 健
出版者
奈良教育大学教育研究所
雑誌
奈良教育大学教育研究所紀要 (ISSN:13404415)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.119-124, 1996-03-01

宿題を忘れた級友が叱責されるという仮想場面で、小学2、4、6年生の反省の程度を調べた。すべての場面で学年とともに反省の程度が減少した。4、6年生では、叱責に対して反発する子どもよりも萎縮する子どもの方が反省するが、宿題を忘れた理由を聞くと、前者の子どもの反省が促された。教師の機嫌が悪いからと認知する子どもよりも、励ますためと認知する子どもの方が反省するが、理由を聞くと前者の子どもの反省が促された。反発感情と機嫌認知、萎縮感情と励まし認知はそれぞれ反省に対し類似した効果があった。
著者
今井 靖親 中村 年江
出版者
奈良教育大学教育研究所
雑誌
奈良教育大学教育研究所紀要 (ISSN:13404415)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.25-33, 1990-03-01

幼児の養育にあたっている親が、子育てに関してどのような悩みや不安を抱いているかを、質問紙を用いて調査を行なった。食事に関する悩みと情緒に関する悩みが最も多かった。年齢段階から考えて、正常な発達の姿だと思われるような行動が問題視されている。祖父母との同居の有無によっても親の悩みに違いがあることが明らかになった。
著者
玉瀬 耕治 藤田 正
出版者
奈良教育大学教育研究所
雑誌
奈良教育大学教育研究所紀要 (ISSN:13404415)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.143-152, 1982-03-23

本研究では、奈良県山間部の子どもを主な対象として、子どもからみた親の称賛・叱責の実態と子どもの学習適応性について調べた。主な結果は次のとおりであった。(1)親の称賛・叱責の類型では、両親ともによくほめよく叱るRW型がもっとも多く、次いで母親ではよく叱るがあまりほめないNW型が多く、父親ではよくほめるがあまり叱らないRN型が多かった。(2)称賛の内容では、"良い成績をとってきたとき"がもっとも多く、次いで"お使い"と"そうじ"、"ごはんのあとかたずけ"が多かった。叱責の内容では、"けんかをしたりあばれたり"がもっとも多く、次いで"宿題"と"テレビ"であった。(3)RW型とRN型の家庭の子どもは、NW型とNN型(ほめも叱りもしない)の家庭の子どもに比べて学習適応性検査(新AAI)の学習態度,学習技術,および学習環境の得点が高く、より好ましい状態にあることが示された。(4)学習適応性に関して、山間部の子どもは4年生と5年生では全国平均とほぼ同じ水準であったが、6年生では劣る傾向がみられた。特に、学習態度および学習技術に関する面と、"根気強さ"が劣ることがわかった。へき地教育研究室報告特集12
著者
阿部 祐治 奥 忍
出版者
奈良教育大学教育研究所
雑誌
奈良教育大学教育研究所紀要 (ISSN:13404415)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.29-44, 1992-03-01

現在、どの国やどの地域においても最も大きな影響を与えている異文化の音楽は西洋の音楽である。一方、自民族の音楽に文化的象徴としての役割を担わせようとする動きも起きている。本小論では、西洋の音楽が異文化であるアジア諸国の中からシンガポール、マレーシア、日本、タイ王国をとりあげ、その社会的背景となっている文化、教育と子どもたちの音楽文化に対する意識との関係をアンケート調査に基づいて考察する。