1 0 0 0 OA SDS-PAGE

著者
井上 名津子 菓子野 康浩
出版者
北海道大学低温科学研究所
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.67, pp.359-371, 2009-03-31

調製した生体試料のタンパク質組成を解析する際などに,最初に行われる最も基礎的な実験のひとつがSDS-PAGEであろう.近年のプロテオミクス解析に於いて広く用いられる等電点二次元電気泳動でも,二次元目にはSDS-PAGEが行われるのが一般的である.比較的容易に行うことができるSDS-PAGEであるが,手元の生体試料に含まれているタンパク質群の中にある重要なタンパク質を見落とさないために留意しておくと良いことがある.本稿では,4種類のSDS-PAGE系を比較しながら,それぞれの実験方法を簡単に記述する.
著者
坂本 充 鈴木 邦雄 岩熊 敏夫
出版者
低温科学第80巻編集委員会
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.80, pp.591-601, 2022-03-31

尾瀬ヶ原及びその周辺域の学術調査は第3次が終了してから年月が経過しており,その後本格的な調査が行われていない.そこで2016年12月に第4次尾瀬総合学術調査団を発足させ,検討を重ね,基礎研究に関わる事業と重点研究に関わる事業を2017年度〜2019年度に実施した.尾瀬の調査研究を実施した背景は,温暖化の進行と湿原の劣化の懸念,変化する生物とその環境に関する最新かつ詳細なデータの欠如などがある.基礎研究と重点研究の2つの部会で学術調査を実施し,多くの研究成果を上げることができた.
著者
広瀬 侑 佐藤 桃子 池内 昌彦
出版者
北海道大学低温科学研究所
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.67, pp.9-15, 2008

1章 植物・藻類・細菌の材料の入手と栽培・培養 2
著者
近藤 久益子 佐藤 桃子 広瀬 侑 渡邊 麻衣 池内 昌彦
出版者
北海道大学低温科学研究所
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.67, pp.295-301, 2009-03-31

フィコビリソームはシアノバクテリア,灰色藻,紅藻に広く存在するフィコビリタンパク質の集光超分子複合体で,光エネルギーの捕集と光環境への順化,分配や貯蔵タンパク質として重要な役割を果たしているが,まだ不明な点が多い.
著者
大和 勝幸 石崎 公庸 河内 孝之
出版者
北海道大学低温科学研究所
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.67, pp.23-29, 2008

1章 植物・藻類・細菌の材料の入手と栽培・培養 4
著者
大島 慶一郎
出版者
低温科学第76巻編集委員会
巻号頁・発行日
vol.76, pp.13-23, 2018-03-31

世界の海洋の深層まで及ぶ最も大きな循環は,重い水が沈み込みそれが徐々に湧き上がってくる,という密度差による循環である.沿岸ポリニヤでの大量の海氷生成が重い水のソースになっている.衛星マイクロ波放射計データ等による海氷生産量マッピングからは,南極沿岸ポリニヤでは,非常に高い海氷生産があることが示され,世界の深層に広がる南極底層水がここを起源として形成されることと整合する.南大洋ではロス棚氷ポリニヤが最大の海氷生産を持つ.第2 位の海氷生産量を持つのがケープダンレーポリニヤであることがわかり,日本の観測からここが第4(未知)の南極底層水生成域であることが発見された.第3 の南極底層水生成域であるメルツ氷河沖では,2000 年初頭の氷河崩壊後に海氷生産量が40%も減少し,その結果として,ここでの底層水生成も激減した.
著者
杉田 精司
出版者
北海道大学低温科学研究所
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.97-105, 2007

ディープインパクト計画は,短周期彗星であるテンペル第1彗星の内部の物質を調べることを目的として人工衝突探査を行った.本稿では,その探査によって得られた観測結果をレビューし,その太陽系および彗星の起源と初期進化における意義を解説する.主な結果としては,(1)テンペル第1彗星の内部物質は典型的な長周期彗星の構成物質とよく似ていること,(2)特に1000Kを超える高温を経験した無水鉱物を大量に含んでいること,(3)衝突地点近傍にはサブミクロンの微小な炭素粒子に富んだ数十cmの厚さを持つ表層があること,が分かったことが挙げられる.これらはそれぞれ,短周期彗星と長周期彗星の形成領域が近かった可能性が高いこと,原始太陽系星雲内では物質の混合効率が高かった可能性が高いこと,テンペル第1彗星が太陽系辺縁部にいた時代に形成した非常に古い表層が残っている可能性があることを示している.Deep Impact mission conducted an artificial impact experiment to investigate the interior of comet 9P/Tempel 1, a short-period comet. This article reviews the results of this mission and discuss their implications for the origin and early evolution of both comets and the Solar System. Major results of the mission are as follows. (1) Materials excavated from the interior of comet 9P/Tempel 1 are similar to those in long-period comets. (2) The excavated materials contain anhydrous minerals that have experienced high temperatures (>1000 K). (3) The surface of comet 9P/Tempel 1 near the impact point has a surface layer several ten cm in thickness and containing submicron carbon particles. These findings indicate that long-and short-period comets may have been formed in similar locations, that the solar nebula may have had a high radial mixing efficiency, and that comet 9P/Temple 1 may have a very old surface layer that was formed when it was still in the outer peripheral region of the Solar System.
著者
古庄 仰 浜瀬 健司
出版者
低温科学第78巻編集委員会
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.78, pp.287-294, 2020-03-24

高等生物体内ではL-アミノ酸が過剰に存在して主に利用されており,鏡像異性体の関係にあるD-ア ミノ酸は殆ど存在しない.このL型過剰はホモキラリティと呼ばれ,その偏りの起源解明として地球 外試料中のキラルアミノ酸分析が注目されている.多様な構造異性体を有する様々な有機化合物が含 まれる地球外試料中で微量キラルアミノ酸を分析するためには,高い感度と選択性を兼ね備えた分析 法が必須である.アミノ酸の蛍光誘導体化と複数の分離機構を組み合わせた多次元HPLCは,最も有 用な分析法の一つである.本項では多次元HPLCの開発と様々な試料への適用例,ならびに多次元 HPLCを用いた炭素質隕石中のキラルアミノ酸分析について報告する.

1 0 0 0 OA EPR法

著者
三野 広幸
出版者
北海道大学低温科学研究所
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.67, pp.473-481, 2009-03-31

本稿では,はじめにEPR法の原理を紹介し,次に,X-band汎用EPR機による測定法の使用を想定し,光合成研究への応用例を紹介している.また,最近のより進んだEPR測定法についても簡単に紹介している.
著者
永尾 一平
出版者
北海道大学低温科学研究所 = Institute of Low Temperature Science, Hokkaido University
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.72, pp.1-14, 2014-03-31

海洋生物相により生成される硫化ジメチル(DMS)は, 大気中の酸化反応を経て雲凝結核(CCN)となる硫酸エアロゾル粒子を生成する. したがってDMS放出量変化は地球の放射収支に影響を与える可能性があり, 海洋生物圏と雲と気候のリンクに関する仮説(CLAW 仮説)が1987年に提示された. その後, この仮説の検証を通してDMSの研究が大い進展したが, このリンクの複雑さゆえに現時点でこの仮説の検証の最終的な結論はでていない. 本稿では, これまで行われた多くの研究成果をもとに, DMS研究の進展と現状について整理することを試みた. また, モデルを用いた将来の気候下でのDMSの応答に関する研究結果も取り上げ, DMSの気候調節の可能性を調べた.
著者
近藤 雅典
出版者
北海道大学低温科学研究所
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.11-17, 2011

ギンガショウジョウバエ属は, 頭部から胸部にかけて特徴的な銀白色縦条を持っており, そのため, 同様に銀白色縦条を持つトゲアシショウジョウバエ属との分類の混乱が見られた. そこで, 本稿では, まずギンガショウジョウバエ属の分類変遷について概観し, トゲアシショウジョウバエ属との分類の混乱の実態を明らかにした. 次に, これまでのショウジョウバエ科のいくつかの系統仮説を紹介し, 本属および, これまでに類縁が示唆された属との系統関係について考察した. さらに, 銀白色縦条が非相同形質であることを明らかにしたYassin et al.(2010)の研究を紹介し, 最後に, ギンガショウジョウバエ属の今後の研究の方向性を示した.生物進化研究のモデル生物群としてのショウジョウバエ. 北海道大学低温科学研究所編
著者
関 宰
出版者
低温科学第76巻編集委員会
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.76, pp.135-144, 2018-03-31

近年,極域氷床の融解が急速なペースで進行中であることが明らかになり,温暖化によって海水準が大きく上昇する懸念が高まっている.産業革命前よりも僅かに温暖な最終間氷期(13万~11.5万年前)には,6~9mもの急激な海水準上昇があったとされる.これが事実なら,現在と似た気候状態で,南極氷床の大規模な崩壊を誘発する臨界点が存在することになる.現在の平均的な気候状態はすでに最終間氷期のレベルに達しており,南極氷床の大規模な崩壊が将来に起こり得る可能性の検証は喫緊の課題と言える.本稿では最終間氷期の気候状態や海水準変動,南極氷床の安定性についての最新の知見を解説し,将来,南極氷床の大規模融解が引き起こされる可能性について考察する.
著者
大村 纂
出版者
北海道大学低温科学研究所 = Institute of Low Temperature Science, Hokkaido University
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.72, pp.311-317, 2014

The cause for the global temperature change of the last one hundred years is investigated in light of the earth's energy balance. The material used for the present paper is mostly observed at the earth's surface or from the space. While the enhanced greenhouse effect steadily increased,the aerosol effect fluctuated as a result of the decadal variation in aerosol emission. A cooling period witnessed for 30 years in the middle of the 20th Century is considered to have been caused by aerosol effect that surpassed the enhanced greenhouse effect. This cooling episode coincided with the period of declining surface global solar radiation,which was subsequently coined as the Global Dimming. The Mie-scattering theory can however explain only half of the decrease. The remaining half is considered due to the increase in cloud, which has been confirmed by the observations at the surface and from the space. Thus the ongoing climate warming is caused by a delicate imbalance between the increasing rates of greenhouse gases and of aerosol. The turning point of the total radiation from the negative to the positive phases is estimated to have happened sometime in the 1970s, which corresponds to the end of the cooling period and the beginning of the unprecedented warming. In the near future it is possible that the temperature trend may turn negative, if the aerosol effect overtakes the greenhouse effect. The currently observed slowing down of the warming after 2005 may well be the result of the increasing aerosol.二十世紀初頭以来の百余年間は人為的温室効果による温暖化の時代と言われる. たしかに1900年以来全球平均でほぼ1℃昇温した. しかし, 温度変化を注意して見ると単調増加ではない. 1910年から30年間昇温した後, 1940年から1970年までの30年間昇温が停まっただけでなく, 0.1℃強寒冷化した. その後再び昇温に転じ1970年からの40年間だけで0.9℃温暖化した. これは全球平均の話で, この通りの変化を示した地域はないが, 二十世紀初期の温暖化と, それに続く寒冷化そして最近の顕著な温暖化という三相変化は位相をわずかに異にしてほぼ全球で見られる. 従って, 二十世紀中葉に現れた寒冷化は全球的現象であった. この30年にわたる全球規模での温暖化トレンドからの逸出はENSOやその他多く知られている振動現象では説明できない. この寒冷化の原因が分からなければ二十世紀全般にわたる温度変化の原因も正確には理解できないことになり, 又将来の予測もおぼつかないことになる. したがって, 本論文では, 二相の温暖化に挟まれた寒冷化の原因を極める. そのために, 本論文では甚だ基礎的になるが気候システムにおける温度生成過程を熱力学第一法則に基づいて考える. 地球表面の温度生成における放射の占める役割を認識し, 二十世紀初頭以来観測された全天太陽放射, 直達放射と大気の透過度を分析する. 全天太陽放射の経年変化から二十世紀初頭から1950年にかけての第一次グローバル・ブライトニング(全天太陽放射の増加期),1950年代から80年代にかけてのグローバル・デイミング(全天太陽放射の減少期), 更に80年代から2005年にかけての第二次グローバル・ブライトニングの3時代が認識される. その間に観測されたデイミングとブライトニング間の大気の透過度の変化は0.05であった. この透過度の変化に相当するエアロゾルの直接効果(ミー散乱)だけでは全天放射の変動量の約50%しか再現できないことが判り, 残りの50%はエアロゾルの間接効果,即ち雲の経年変化に帰着される. エアロゾルによる光学行程と雲量の相関はきわめて高く, この時期のエアロゾル間接効果と思われる雲の変動は全雲量で4%, 日照時間では日に0.4時間に相当する. この雲量の変動は地上と衛星から観測された結果である. グローバル・デイミングの続いていた期間は全天太陽放射の減少率が長波放射の増加率を上回り全放射率が減少していたことが判明し, これが気温低下を引き起こしたと考えられる. 続く1980年代からの第二次グローバル・ブライトニング期では増加に転じた全天太陽放射と既に増加傾向にあった長波放射が相まって全放射の増加率は6.6Wm-2/decadeとなり, 年間0.035℃となる観測時代最大の気温上昇率をもたらす結果となる. このように現在進行中の温暖化は温室効果ガスの増加率とエアロゾルの増加率のバランスの微妙な崩れの結果であり, 近い将来においてもエアロゾルの増加率がある程度大きくなり温室効果の上昇率を越すことが生じれば, 寒冷化が起こりえる. 現に2000年代に入ってから温暖化が鈍っているのは, 決して温室効果が減少したためではなく, エアロゾルの効果が増加している結果である可能性が高い.
著者
荒川 政彦
出版者
北海道大学低温科学研究所
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.113-121, 2008-03-31

氷衛星上の衝突クレーターや外惑星領域における惑星・衛星の衝突集積過程に関連して,氷を用いた高速度衝突実験が行われている.氷の衝突実験は融けやすい氷の取り扱いに問題が生じ精度の高い実験をすることが難しかったが,衝突実験装置自体を大型の低温室に設置することによりその問題が解 決され,研究が飛躍的に進歩した.特に氷中を伝播する衝撃波や破壊素過程の理解が進み,さらに弾丸にも氷を用いた高速度衝突実験が衝突速度700m/sまで可能となった.その結果,氷クレーターの形態変化やスケール則及び氷の衝突破壊強度が明らかになった.