著者
緒方 英彦 高田 龍一 鈴木 哲也 山崎 大輔 佐藤 周之
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会誌 (ISSN:18822770)
巻号頁・発行日
vol.78, no.5, pp.405-409,a2, 2010 (Released:2019-01-08)
参考文献数
4

農業水利施設の機能保全では,それぞれの施設で異なる構造形式,供用される環境条件に応じた変状発生パターンに基づいて機能診断が実施され,施設特有の変状に即した対策工法が実施されなければならない。そのためには,表面変状だけでなく内部変状を的確に見極める変状認知力を持つことが必要になる。本報では,寒冷地にあるRC開水路を対象に,凍害による内部変状の発生パターンを採取したコアから考察するとともに,現地踏査(概査)でこの内部変状を推測する手段を述べる。また,RC開水路の凍害ひび割れ発生形態に基づいた対策工法について提言を行う。
著者
成岡 道男 奥田 幸夫 大矢 徹治 大西 純也
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
水土の知 : 農業農村工学会誌 : journal of the Japanese Society of Irrigation, Drainage and Rural Engineering (ISSN:18822770)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.187-192, 2009-03-01
参考文献数
11

<p>本報では,アラル海流域にあるウズベキスタン内のカラカルパクスタン自治共和国に焦点を当て,塩害の現状を報告し,地球温暖化による農牧漁業への影響について考察した。そして,現在実施されている塩害やアラル海の縮小に端を発した環境破壊への対策事業等を事例に,地球温暖化への備えについて検討した。その結果,地球温暖化に伴って,水不足の深刻化や塩害進行の加速化,アラル海の干上がった湖底からの飛塩の増加等が生じることを予測した。これらの影響に対して,水不足への備え,塩害防止対策の推進,湖沼の縮小への適応,セーフティネットとしての地域資源の活用等の重要性を示した。</p>
著者
今本 博臣
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会誌 (ISSN:18822770)
巻号頁・発行日
vol.81, no.9, pp.717-720,a2, 2013 (Released:2020-01-10)
参考文献数
5

藍藻類の異常増殖によるアオコが発生すると,灌漑用水は緑色に着色する。その水を農作物に散布した場合,葉物野菜や花に付着すると斑点が生じ商品価値を下げてしまうことがある。また,アオコが混入した水を散布する際に,噴霧器や多孔管などの穴が目詰まりする恐れもある。それ以外にも,景観障害や魚のへい死や悪臭なども懸念される。このような水質障害を軽減するための対策技術の確立が急務となっている。農業用貯水池の水質改善対策としてはさまざまなものが提案されているが,貯水容量が非常に大きく,しかも栄養塩濃度が高いという特殊性から適用可能な対策はきわめて限定的である。本報では,そのなかでも一定の改善効果が期待できる「曝気循環設備」,「滞留時間の短縮」,「干し上げ」,「バイパス水路」による水質改善について解説した。
著者
高橋 強 村島 和男 坂田 寧代
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会誌 (ISSN:18822770)
巻号頁・発行日
vol.76, no.12, pp.1077-1080,a1, 2008-12-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
6

石川県能登半島地域を事例として過疎・高齢化の進行の現状を分析した結果, 地域内に有力な進学・就職先が少ないために中学・高校を卒業すると都市部に転出すること, 耕作放棄と高齢化の問には高い相関があることが確認され, 耕作放棄地率は高齢化の進行とともにますます増加することが予測された。活性化の方向としては若者の定住を図るための企業や住宅の誘致を求める声が圧倒的に多い。都市住民の新規居住についても移住を歓迎する意向を示しており, 地域の受入れ意欲は大きいといえるが, そのためには, 立ち遅れている下水道や医療・福祉関係の整備などの居住環境整備が大切であることが示された。
著者
佐藤 智 金田 敏和 石神 暁郎 周藤 将司 緒方 英彦
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会誌 (ISSN:18822770)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.117-120,a2, 2013 (Released:2020-01-10)
参考文献数
4

積雪寒冷地において農業水利施設の機能診断を行う際には,凍結融解作用に着目する必要がある。農業水利施設の多くを占める鉄筋コンクリート製開水路では,凍害による側壁の表面変状と内部変状が異なる形態であることが知られている。水路側壁の断面観察の結果,凍害劣化した開水路の側壁内部に発生するひび割れは必ずしも連続したものではなく,多数のひび割れが不規則に発生していることを明らかにした。また,側壁の方角,背面の土地勾配,積雪状況,融雪水の供給状況,ひび割れが発生した目地,側壁の雨水滲出箇所,天端のスケーリング,表面ひび割れの分布などから凍害発生箇所を目視調査のみで推定できることを明らかにした。
著者
水谷 正一 南斎 好伸 小堀 忠則
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会誌 (ISSN:18822770)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.11-14,a1, 2014 (Released:2020-01-10)
参考文献数
4

栃木県では,農地・水・環境保全向上対策の導入に当たり,地域の人々が,自分たちの住む農村環境を見つめ直し,環境への理解を深めるとともに保全活動に参加するきっかけづくりとするため,田んぼまわりの生きもの調査を県の独自要件として提唱した。本報では,この取組みを農業・農村施策のアウトリーチ活動としてとらえ,栃木県農地・水・環境保全向上対策推進協議会を中心として市町や関係機関と連携しながら,非農業者や子どもたちの参加促進に向けたさまざまな取組みとその成果について紹介する。
著者
大友 堅一郎
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会誌 (ISSN:18822770)
巻号頁・発行日
vol.76, no.6, pp.519-522,a1, 2008-06-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
2

岩出山大堰の位置する大崎耕土は, 宮城県北部に広がる県内有数の穀倉地帯 (約20,000ha) であり, 全国的に銘柄米として知られている「ササニシキ」「ひとめぼれ」の発祥の地でもある。本耕土の用水源の一つである北上川水系江合川は, 上流で荒雄川とも呼ばれ, その源は鳴子町 (現大崎市) 鬼首の中央にある荒雄岳であり, その麓にある鳴子ダムを経て大崎耕土を横断して北上川に合流している。大堰は, この江合川から取水し大崎耕土の一角 (約4,000ha) を灌漑するため, 約400年前に仙台藩祖伊達政宗公が岩出山の地に築造したものである。その大堰の役割や築造から改修・復旧の変遷等について紹介する。
著者
塩野 隆弘 原 貴洋 山元 伸幸 原口 暢朗 生駒 泰基
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会誌 (ISSN:18822770)
巻号頁・発行日
vol.75, no.9, pp.817-820,a2, 2007-09-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
11

サトウキビ栽培圃場における労力的・経済的負担が少ない営農的赤土流出防止対策法として, 草生帯とソバ栽培導入による対策技術に着目し, これらの赤土流出に対する有効性とその負担について調査した。野外試験の結果, 設置幅0.5mの草生帯とソバ栽培導入による対策の赤土流出軽減率はそれぞれ68%と39%で, 赤土流出に対する有効性が示唆された。また, これら対策の実施による負担費用はサトウキビの粗収益の3~4%と試算された。ソバ栽培導入による対策では, ソバワラ生産量の増加によって対策効果の向上が期待でき, ソバ子実収穫量の増加により負担経費の削減が期待できることが示唆された。
著者
今橋 真二
出版者
The Japanese Society of Irrigation, Drainage and Rural Engineering
雑誌
農業農村工学会誌 (ISSN:18822770)
巻号頁・発行日
vol.75, no.8, pp.740-741,a3, 2007

高知県中西部の二級河川新荘川は日本で最後にニホンカワウソが現認された川として有名である。いまなお清涼な水質を保つ新荘川下流域には, 現在14カ所の農業用取水堰があるが, 河床低下等によりアユ等の遡上を阻害して炉る状況にある。本報では, 学識経験者, 地域住民, 漁業関係者の意見を反映させながら改良に取り組んだ魚道工事について紹介する。
著者
中島 善人 宇津澤 慎
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会誌 (ISSN:18822770)
巻号頁・発行日
vol.76, no.9, pp.795-799,a1, 2008-09-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
10

我々は, 核磁気共鳴スキャナーとよばれる装置を開発中である。この装置は, 核磁気共鳴分光の原理を用いて, 原位置またはオンサイトで試料中の水を定量かつリアルタイムで計測できるポテンシャルがある。片側開放型という特殊な構造を採用しているので, 計測対象がどんなに大きくとも, その表面を非破壊でスキャンできるという特長がある。この装置が農業農村工学に使える可能性があることを, 2つの室内実験, すなわち土壌サンプルの体積含水率計測, セメントペーストの硬化過程のモニタリング, の成功によって例証した。
著者
吉田 貢士 塩沢 昌 田中 幸夫 星川 和俊
出版者
The Japanese Society of Irrigation, Drainage and Rural Engineering
雑誌
農業農村工学会誌 (ISSN:18822770)
巻号頁・発行日
vol.75, no.11, pp.967-970,a1, 2007

平成16年10月に発生した新潟県中越地震では, 中山間地域に散在した集落へ至る交通網等が寸断され, 新潟県旧山古志村をはじめとする各地で集落が孤立し,「孤立集落」の深刻さを浮き上がらせた。本研究では, 中越地震において被害が最も甚大であった旧山古志村および小千谷市, 川口町の信濃川右岸地域を対象として集落の孤立リスクを既存のGISデータをもとに検討した。また, 容易に入手可能な50mメッシュ標高データを用いて, 中越地震発生時の道路寸断に伴う集落の孤立状況を勘案し, 各道路の寸断リスク・集落の孤立リスクの分布図作成を行った。
著者
田代 優秋 森 淳
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会誌 (ISSN:18822770)
巻号頁・発行日
vol.84, no.5, pp.365-370,a1, 2016

<p>農業農村整備事業における環境配慮は原則化によって法的根拠も得られ,社会全般としては「環境配慮はよいこと」という捉えられ方をしているが,現場では今なお揉めてしまう。本報では,環境配慮を巡るこれまでの議論を整理しながら,環境配慮の「現場の難しさ」が生産現場において当事者間の立場や考えの違いによってうまれるしっくりこないモヤモヤとした感情と捉えた。その改善のためには俯瞰的な事例の分析と,難しさを二項対立で解くのではなく農家にとって「不公正性の問題」で捉える必要性を指摘した。</p>