著者
松岡 浩史
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Human Studies (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.85-104, 2015-03-13

本稿は『ハムレット』に表象される狂気を同時代の一次資料を援用して分析し、作品の悲劇性を論じるものである。第一に、亡霊の表象史を概観し、ハムレットに描かれる亡霊が、セネカの系譜上のプロローグ・ゴーストから、幻覚の可能性を包摂した内在的な存在へと変遷していることを述べ、悪魔と幻覚にかんする言説と作品との関連性を指摘した。第二に、前述の悪魔、そして幻覚の作用因として想定されていたメランコリーについて、四体液学説の観点から論じ、メランコリーという術語の多義性に基づいて概観したうえで、作品に登場する二種類の狂気について分析を加え、同時代の医学理論では説明不可能な領域が開けていたことを指摘した。第三に、同時代の診療記録を分析し、シェイクスピア時代は女性の社会ストレスが圧倒的に高く、また相対的に自殺率の高い時代であったことを指摘し、狂気が『ハムレット』の劇世界において多層的に表象されていると結論した。
著者
髙坂 康雅
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
no.5, pp.53-60, 2012-03

本研究の目的は、大学生における共同体感覚と社会的迷惑行動及び向社会的行動との関連を検討することである。大学生436名(男子258名、女子171 名、不明7 名)を対象に、共同体感覚尺度(高坂,2011)、社会的迷惑行動項目(吉田他,1999)、向社会的行動項目(菊池, 1988)で構成された質問紙調査を実施した。その結果、共同体感覚は向社会的行動と正の相関を示す一方、「ルール・マナー違反」との正の相関もみられ た。特に、共同体感覚のうち「所属感・信頼感」が「ルール・マナー違反」と関連を示した。これらの結果から、Adlerの共同体感覚に関する理論の一部は 支持されたが、社会的迷惑行動との関連は支持されたとは言えず、研究方法などを含め、さらなる検討が必要であると考えられた。
著者
瀧 大知
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Human Studies (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.149-168, 2018-03-13 (Released:2018-06-19)

本稿では、日本における排外主義勢力が、どのような言説をもって排外主義を「正当化」してきたかを考察することを目的としている。「中国」に関連した排外主義者の言説戦略が、「池袋チャイナタウン」と「横浜中華街」とでは差異があることに着目し、比較分析をおこなった。「池袋チャイナタウン」で現れた言説は、新華僑を「脅威」、老華僑を「同化」した存在であると認識することで、「同化主義」による排外主義の「正当化」がおこなわれていた。さらに「反日教育」による「反日」的な国民/民族であると規定されることによって、新華僑と老華僑が「分断」されていった。また2 つのチャイナタウンの文化的な差異にも、それが表象されていることを明らかにした。最後に、その根底に「植民地的まなざし」があることを仮説として提示している。
著者
高坂 康雅
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Human Studies (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.79-89, 2011-03

本研究の目的は、西平(1981)の“恋と愛の二元的一元性”論を参考に、恋の状態と愛の状態とは質的に異なる状態であり、恋愛とは恋と愛を両極とした一次元上の中間の状態であり、両者の特徴をあわせもった状態である捉え、先行文献をもとに青年の恋愛関係を図示するモデルを作成することであった。先行文献をまとめた結果、恋には、“相対性”、“所有性”、“埋没性”という特徴があり、愛には“絶対性”、“開放性”、“飛躍性”という特徴があること、相対性と絶対性、所有性と開放性、埋没性と飛躍性はそれぞれ対応する特徴であることが考えられ、これらをまとめた恋愛様相モデルが構築された。今後は恋愛様相モデルを実証的に検討する必要があると考えられた。
著者
太田 素子
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Human Studies (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.213-223, 2015-03-13

The An'nodo is a Terakoya school in Aizu-Bange, said to have been established in the Kanbun era(1661-1673)of the Edo period and to have closed in 1875, the eighth year of the Meiji period. The head of the Yuki Family (later changed from Namae) served as the teacher at that school for generations. The Yuki were originally mountain ascetics. From epitaphs and copies of textbooks, it is clear that the foundation of the Terakoya was laid in the early Kyoho era (1716-1736). From the register of the pupils, first recorded in the Bunka era (1804-1818), the total number of pupils ranged from 50 to 120 every year. From the Sekigaki (exam records), we can surmise that pupils entered the school between the ages of nine and 11 and stayed for about 5 years until the age of 15. They proceeded from writing to reading, and judging from the textbooks still in existence, the teacher tried to match the textbooks with the pupils' level of achievement.
著者
大西 公恵
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
no.9, pp.57-70, 2016-03

国語教育は言語教育的側面と人格陶冶的側面のいずれを強調するか、すなわち形式主義と内容主義とのいずれを主たる目的とする教科であるかが長く論争となってきた。1930年代初期は、新教育思潮を背景として興隆した1920年代の文芸鑑賞論の潮流が、形象論にもとづき「理会」と認識を追究する形式主義へと転換する過渡期である。東京高等師範学校附属小学校で開催された第34回全国小学校訓導協議会では、国語科の教育目的が再考され、生活論と文芸鑑賞論との融合を目指して新しい国語教育の目標を構築しようとする試みがなされた。本稿では、同協議会での議論を通して、教師たちによる国語科の教育目的の再考および教科としての自律性の模索のありようを示す。
著者
小林 正典
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Human Studies (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
no.10, pp.41-58, 2017-03

中国政府は2013年に旅遊法を制定し、「零負団費」に象徴される悪質なパッケージツアーを規制するための条項を設けた。その結果、「零負団費」については立法上の対策が講じられているが、残された課題も少なくない。例えば、航空券とホテルを組み合わせた旅遊商品は、そのサービス内容如何によって旅遊者の権利利益を損なう危険性を孕んでいる。また、旅遊者が契約した業者が無登録旅行社であれば、契約自体が無効になる可能性もある。さらに、包価旅遊契約の解除によって代金が返還される場合、代金から差し引かれる「必要な費用」の範囲は必ずしも明確でない。「転団」には、現行の法律法規の枠内で解決できない問題がある。最近では制度上の弱点を狙って、旅遊法の厳しい規制を回避するパッケージツアーが登場し、周辺諸国を巻き込んで様々な影響を与えている。中国では早くも旅遊法改正の必要性が指摘されており、周辺諸国にとっても、中国の法整備の状況を注目しながら、消費者の権利利益の保護とツーリズム秩序の安定に資する政策の実施が求められている。
著者
瀧 大知
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
no.9, pp.123-139, 2016-03

近年、日本では近隣諸国との歴史認識問題や領土問題に端を発した排外主義的な傾向が強まり、路上やインターネット上で、おもに在日コリアンをターゲットにしたヘイト・スピーチが行われ、大きな社会問題となっている。このような事態に対してこれまで様々な言説が生まれてきた。しかし、こうした言説では、ヘイト・スピーチが持つ「暴力性」を問題視することはなく、むしろヘイト・スピーチをする人々が注目されるばかりで、被害者の姿がほとんど見えなくなっているという問題が見られる。こうした言説を批判的に検討することにより、本稿ではこのような被害者不在の言説が結果として、ヘイト・スピーチを黙認してきた圧倒的多数の無関心層と同様の役割を果たしてきてしまったことを明らかにする。
著者
太田 素子
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
no.3, pp.185-196, 2010-03

KEISEIKAN-DIARY 1811-1853, consisting of two volumes, is very precious historical materials to examine a local school in Aizu district. The Aizu feudal clan had a policy to spread education to common people from the beginning, and after the KANSEI reform it struggled more consciously to enlighten people. Tanaka Yoshina and his son Shigeyoshi were assigned as instructors of KEISEIKAN by the feudal clan at first, and after the discontinuance of financial support by the clan, the school continued to exist for 33 years. A certain comparatively rich merchant in the town, all the boys entered a school, and the chosen girl entered it.
著者
高坂 康雅
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Human Studies (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.23-34, 2013-03-19

本研究の目的は、ある時点において恋人がいる青年(大学生)を対象として調査を実施し、その対象者に対し全3回の縦断的な追跡調査を実施することにより、アイデンティティ及び「恋愛関係の影響」が恋愛関係の継続/終了の予測可能性を、明らかにすることであった。第2回調査の時点の恋愛関係の継続/終了、及び第3回調査時点での恋愛関係の継続/終了を独立変数に、アイデンティティや「恋愛関係の影響」について比較したところ、「恋愛関係の影響」の「他者評価の上昇」が短期的な恋愛関係の継続/終了を予測することが明らかになった。またアイデンティティの感覚や「恋愛関係の影響」の「充足的気分」も、短期的な恋愛関係の継続/終了を予測する可能性が示された。
著者
杉浦 郁子
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Human Studies (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.7-26, 2015-03-13

近代以降の日本社会は「女同士の親密な関係」「女を愛する女」に対してどのような意味を与えてきたのだろうか。「女性同性愛」言説の変容をたどる研究成果を「性欲」の視点から整理することが本論文の目的である。ここで「性欲」の視点とは、大正期に定着してから現在まで様々な仕方で構築されてきた「性欲」という領域が、女性同性愛に関する言説をどのように枠づけてきたのか、反対に、女性同性愛に関する言説が「性欲」をどのように枠づけてきたのか、という視点のことをいう。したがって、本論文が注目するのは、「性欲」が女同士の親密性をめぐる経験や理解の仕方に関わっていることを示し得ているような研究成果である。この「性欲」の視点を軸にして、「女性同性愛」言説をめぐる歴史研究の現在における到達点と今後の課題を明らかにしたい。
著者
髙坂 康雅
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
no.7, pp.215-228, 2014-03

松井(1990, 2000)や飛田(1991)は、青年期の恋愛行動の分類を行い、恋愛行動の進展プロセスについて明らかにしているが、どの程度の交際期間でそれらが進展するのかについては明らかにしていない。そこで、本研究では、交際期間に伴う大学生の恋愛行動の進展を明らかにすることを目的とした。全3 回の縦断調査において、同一の恋人と交際していた大学生126 名(男子38 名、女子88 名)を対象に、各調査時点における恋愛行動の経験の有無を尋ねた。その結果、松井(1990, 2000)の第4 段階に位置づけられるような行動も、交際8 ヶ月程度までには多くの大学生が経験しており、その後、親密さを示す行動や親密になる過程で生じる葛藤行動が徐々に増えるが、結婚に関わる行動は、ほとんど経験されないことが明らかになった。
著者
西村 史子
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Human Studies (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.43-54, 2008-03

1951(昭和26)年に導入された大学入学資格検定は、高等学校に代わる唯一の高等教育機関へのバイパスであった。勤労青年に励みを与えるための制度は、1980年代に高等学校への全入時代に突入して高等学校中途退学者が増加し、1990年代の小中学校での不登校児童生徒の増加と社会的ひきこもりの顕現化により、その目的と意義を変えた。すなわち、学校教育の非適応者に社会への復帰を果たすための救済装置となって、大学受験を自明とする富裕層出身の少年達が同試験を受けるようになっている。さらに2005(平成17)年に高等学校卒業程度認定試験に名称を変更し、受験資格を大幅に緩和して迎えた新たな段階では、高等教育への多様なアクセスが可能になる中で、新たな意義づけと具体的な制度保障が求められている。
著者
奥平 康照
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Human Studies (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.7-24, 2008-03

1950年前後から数年、生活綴方を核にあるいは基礎にした教育実践が全盛を極めた。厳しい労働をともなう貧しい生活への対峙と新生活への展望、家族と村の旧い共同体規制からの解放と新しい共同性の獲得、その二つが、この時代を特徴づける実践的課題であった。その実践課題に、生活綴方の方法はきわめて有効にはたらいた。しかし50年代後半に貧困からの脱出に可能性が現われ、旧共同体規制が衰弱し始めると、生活綴方実践は後退し、新しい実践の方向と方法がもとめられるようになる。そして教育実践の中心から「生活」が消えていく。当時の教育実践にとって「生活」とはなんだったのか。
著者
児島 明
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
no.2, pp.117-131, 2009-03

ニューカマー児童生徒教育や国際教室の登場には、それらの展開をある一定の方向に水路づけるべく作用してきた歴史的制約、すなわち経路依存性が深く関わっている。と同時に、複数の経路が複雑に交錯してもいる。こうした複雑に交錯する経路を解きほぐす作業は、ニューカマー児童生徒教育や国際教室が、現在、共通して直面している諸課題を理解するうえで欠かせない。しかし他方、ニューカマーの受け入れは、それぞれローカルな文脈のもとでなされるものである以上、ローカルな文脈に根差した固有の教育理念や実践を生みだし、場合によっては、そうした歴史的制約との間にある種の緊張関係をもたらしもする。こうした緊張関係は、実践の当事者にはさまざまな困難を強いるものではあるが、その一方で、ニューカマー児童生徒教育の多様な展開の可能性を暗示するものでもある。本稿では、神奈川県大和市の小中学校に設置された国際教室の事例に基づきながら、ニューカマー児童生徒教育の展開に内在する問題点と可能性について検討する。