著者
瀧 大知
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Human Studies (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.149-168, 2018-03-13

本稿では、日本における排外主義勢力が、どのような言説をもって排外主義を「正当化」してきたかを考察することを目的としている。「中国」に関連した排外主義者の言説戦略が、「池袋チャイナタウン」と「横浜中華街」とでは差異があることに着目し、比較分析をおこなった。「池袋チャイナタウン」で現れた言説は、新華僑を「脅威」、老華僑を「同化」した存在であると認識することで、「同化主義」による排外主義の「正当化」がおこなわれていた。さらに「反日教育」による「反日」的な国民/民族であると規定されることによって、新華僑と老華僑が「分断」されていった。また2 つのチャイナタウンの文化的な差異にも、それが表象されていることを明らかにした。最後に、その根底に「植民地的まなざし」があることを仮説として提示している。
著者
杉浦 郁子
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Human Studies (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
no.10, pp.159-178, 2017-03

本稿は、日本のレズビアンたちによる集合的な活動が発信したテクストを分析し、その主要な言説を跡づけようとするものである。1970年代から1980年代前半までのミニコミ誌が、1960年代に一般に流通した「レズビアンには男役(タチ)と女役(ネコ)がある」という言説へどのように介入したのかを中心に記述する。なお、本稿は、近代日本形成期(1910年代から1960年代まで)の「女性同性愛」の言説史を整理した拙稿(杉浦2015)の続編に位置づけられるものであり、レズビアン解放運動がさらなる盛り上がりを見せる1985年以降の言説分析へと橋渡しされるものである。
著者
挽地 康彦
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Human Studies (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
no.12, pp.117-132, 2019-03

伊豆諸島ほど大洋に浮かぶ「船」を思わせる島々はないだろう。古来より飢饉、疫病、噴火、海難に見舞われ、また辺境ゆえに流刑地として指定された歴史をもつ伊豆諸島。島々の交通は容易でなく、外界から閉ざされた島嶼世界は死に満ちていた。それはあたかも、いつ難破してもおかしくない船のように佇んでいたのだ。伊豆の島々が危機と隣り合わせの船団ならば、島の民は潜在的な漂流者なのではないか。本稿の目的は、こうした問いをめぐって、近世伊豆諸島をめぐる海難、流刑、祭祀などの民族誌をたどりながら、黒潮の世界を彷徨う遍歴者の形象を明らかにしていくことである。海を走る船は思わぬ形で異国へ流され、ときに異界へと引き込まれる。そんな漂流船=島の歴史が亡霊となって現在に回帰し、島民に憑依するとき、土着の民として安住する意識は揺さぶられるだろう。そこに、漂流民としての自己が呼び起こされる可能性があることを指摘していく。
著者
道場 親信 丸山 尚
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Human Studies (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.175-242, 2013-03-19

本インタビューは、25年にわたって「住民図書館」の館長をつとめられた丸山尚氏のジャーナリストとしての半生を記録したものである。住民図書館とは1976年4月に設立され、日本各地の市民運動・住民運動や個人の発行するミニコミを収集・保存・公開してきた、市民の手弁当による自立的なアーカイヴであった。丸山氏のジャーナリストとしての人生は、1961年に『現代の眼』編集者となることから始まる。丸山氏は1971年に「日本ミニコミセンター」を設立するが、そこに至る10年の編集者時代の経験は、60年代出版ジャーナリズムの世界と深く関わり、広い人脈に連なっていた。同センターは3年の活動の後閉鎖されるが、76年に住民図書館館長となった丸山氏は、25年間この民間アーカイヴを守り続けた。本稿では、日本ミニコミセンター設立以前、ミニコミセンターの活動、それに住民図書館の活動を前期・後期に分け、丸山氏の活動に即して軌跡をたどっている。50年にわたる丸山氏のジャーナリストとしての軌跡を追うとき、市民・住民運動史とジャーナリズム史の交差する場所として氏と住民図書館の姿が見えてくる。
著者
白井 千晶
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Human Studies (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.55-75, 2014-03-05

妊娠・出産した女性が養育困難である場合、子どもを養子とする(養子に出す)ことによって親権を終了する特別養子縁組という選択がある。本稿では、当事者が養子縁組を決めるまでの経緯を語った語りをもとに、どのような背景と意思決定があって特別養子縁組で子どもの養育を託すことに決めたのかを分析する。データは筆者がおこなった15人の女性へのインタビューである。養子に出す意思決定に影響する要素は、①フォーマルな福祉へのアクセス、②インフォーマルな福祉へのアクセス、③自分が養育しないことを最善とみなす、④人工妊娠中絶の非選択、⑤養子縁組以外の選択肢の非選択、⑥若年、である。公的福祉制度があってもそれへのアクセスを拒否すること、アクセス不能である場合があること、養子に出す意思決定は複合的で、当事者性、プロセス性があることを提起した。
著者
菅野 恵
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Human Studies (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.103-112, 2017-03-10

This study investigated children living in foster homes, a type of child welfare institution, in Japan. Foster care provides a home environment to children who have been abused and/or neglected by parents who have parenting difficulties. Approximately 12.3% of children living in foster homes in Japan have a parent with mental illness, but despite growing concern, the psychological impact of having a parent with mental illness among foster children is currently not known. In this study, we conducted a follow-up survey of 97 children aged 3–18 years who lived in foster homes and analyzed open-ended survey questions. The major finding was that 35% of the children had a parent with mental illness. Analysis also extracted six psychological impacts of having a parent with mental illness: anxiety/confusion, repressed emotion, distorted image of parents, imitation of parents, parentification, and other. Even after having been separated from their parents and admitted to foster homes, children were disturbed and confused because of the adverse effect of their parents. These findings suggest the importance of providing psychological care for emotional support of foster children struggling with their relationship with their parents.
著者
杉浦 郁子
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Human Studies (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.7-26, 2015-03-13

近代以降の日本社会は「女同士の親密な関係」「女を愛する女」に対してどのような意味を与えてきたのだろうか。「女性同性愛」言説の変容をたどる研究成果を「性欲」の視点から整理することが本論文の目的である。ここで「性欲」の視点とは、大正期に定着してから現在まで様々な仕方で構築されてきた「性欲」という領域が、女性同性愛に関する言説をどのように枠づけてきたのか、反対に、女性同性愛に関する言説が「性欲」をどのように枠づけてきたのか、という視点のことをいう。したがって、本論文が注目するのは、「性欲」が女同士の親密性をめぐる経験や理解の仕方に関わっていることを示し得ているような研究成果である。この「性欲」の視点を軸にして、「女性同性愛」言説をめぐる歴史研究の現在における到達点と今後の課題を明らかにしたい。
著者
杉浦 郁子
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Human Studies (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.61-81, 2019-03-08

2015年、東京都渋谷区は、同性カップルのパートナーシップを認定する制度を開始した。本稿は、その制度を利用した人、利用を検討している人を対象としたインタビューを取りあげ、制度を媒介にした解釈過程で認識された同性カップルの法的保障ニーズを分析する。日本では、渋谷区の制度ができるまで、同性パートナーシップ制度を求める当事者の存在が見えづらく、制度に対するニーズが当事者に広く共有された結果として制度が作られた、という経過を必ずしもたどらなかった。また、先行研究は、当事者が同性カップルの法的保障ニーズを認識しづらいメカニズムがある可能性を指摘していた。本稿は、制度がない状況で認識されなかったニーズが、制度ができた後に認識されやすくなったのではないか、という問題意識のもと、制度の利用をめぐってなされた解釈過程に注目し、そこでどのようなニーズが認識されたのかを分析した。制度ができた後につき合い始めたカップルは、渋谷区の制度を長期的な関係を担保するものと理解していた。「生涯を共にするだろう」という予期は、パートナーとの関係で生じるニーズを認識させるだけでなく、様々な他者との関わりや出来事の可能性を想像させ、自分たちを取りまく環境に対するニーズも意識させていた。制度ができる前から渋谷区で同居してきたカップルは、「区に認めてもらうことによる安心の獲得」という個別的・心理的ニーズの存在を、制度の利用後に認識していた。
著者
大西 公恵
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Human Studies (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.57-70, 2016-03-11

国語教育は言語教育的側面と人格陶冶的側面のいずれを強調するか、すなわち形式主義と内容主義とのいずれを主たる目的とする教科であるかが長く論争となってきた。1930年代初期は、新教育思潮を背景として興隆した1920年代の文芸鑑賞論の潮流が、形象論にもとづき「理会」と認識を追究する形式主義へと転換する過渡期である。東京高等師範学校附属小学校で開催された第34回全国小学校訓導協議会では、国語科の教育目的が再考され、生活論と文芸鑑賞論との融合を目指して新しい国語教育の目標を構築しようとする試みがなされた。本稿では、同協議会での議論を通して、教師たちによる国語科の教育目的の再考および教科としての自律性の模索のありようを示す。
著者
瀧 大知
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Human Studies (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
no.11, pp.149-168, 2018-03

本稿では、日本における排外主義勢力が、どのような言説をもって排外主義を「正当化」してきたかを考察することを目的としている。「中国」に関連した排外主義者の言説戦略が、「池袋チャイナタウン」と「横浜中華街」とでは差異があることに着目し、比較分析をおこなった。「池袋チャイナタウン」で現れた言説は、新華僑を「脅威」、老華僑を「同化」した存在であると認識することで、「同化主義」による排外主義の「正当化」がおこなわれていた。さらに「反日教育」による「反日」的な国民/民族であると規定されることによって、新華僑と老華僑が「分断」されていった。また2 つのチャイナタウンの文化的な差異にも、それが表象されていることを明らかにした。最後に、その根底に「植民地的まなざし」があることを仮説として提示している。
著者
奥平 康照
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
no.6, pp.7-22, 2013-03

『山びこ学校』は出版直後から高い評価を受けた。教師たちはそこに新しい教育実践への希望を見出し、教育学者はその理論化こそ、これからの仕事だと考えた。さらに哲学者も社会科学者も、日本の民衆の内側から生れる思想と理論の可能性を、そこに読みとることができると考えた。しかし『山びこ学校』大絶賛は、それに見合うほどには理論的思想的成果をもたらすことなく、50年代後半になると急速に萎んでいった。当事者の無着さえも、「山びこ」実践から離脱していった。50年代後半から始まった急激な経済成長と、政府による教育内容の国家統制強化とに対して、日本の民主教育運動と教育学の主流は、「山びこ」実践とその思想を発展させることによって、対抗実践と理論を構築することができると見なかった。「山びこ」実践への驚きと賞賛は、戦後日本の民衆学校の中学生たちが、生活と学習と社会づくりの実践的主体になりえる事例を、直観的にそこに見たからであろう。しかし戦後教育実践・思想・理論は子どもたちを学習・生活・社会づくりの主体として位置づけることができなかった。
著者
高坂 康雅
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Human Studies (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.215-228, 2014-03-05

松井(1990, 2000)や飛田(1991)は、青年期の恋愛行動の分類を行い、恋愛行動の進展プロセスについて明らかにしているが、どの程度の交際期間でそれらが進展するのかについては明らかにしていない。そこで、本研究では、交際期間に伴う大学生の恋愛行動の進展を明らかにすることを目的とした。全3 回の縦断調査において、同一の恋人と交際していた大学生126 名(男子38 名、女子88 名)を対象に、各調査時点における恋愛行動の経験の有無を尋ねた。その結果、松井(1990, 2000)の第4 段階に位置づけられるような行動も、交際8 ヶ月程度までには多くの大学生が経験しており、その後、親密さを示す行動や親密になる過程で生じる葛藤行動が徐々に増えるが、結婚に関わる行動は、ほとんど経験されないことが明らかになった。
著者
松岡 浩史
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
no.8, pp.85-104, 2015-03

本稿は『ハムレット』に表象される狂気を同時代の一次資料を援用して分析し、作品の悲劇性を論じるものである。第一に、亡霊の表象史を概観し、ハムレットに描かれる亡霊が、セネカの系譜上のプロローグ・ゴーストから、幻覚の可能性を包摂した内在的な存在へと変遷していることを述べ、悪魔と幻覚にかんする言説と作品との関連性を指摘した。第二に、前述の悪魔、そして幻覚の作用因として想定されていたメランコリーについて、四体液学説の観点から論じ、メランコリーという術語の多義性に基づいて概観したうえで、作品に登場する二種類の狂気について分析を加え、同時代の医学理論では説明不可能な領域が開けていたことを指摘した。第三に、同時代の診療記録を分析し、シェイクスピア時代は女性の社会ストレスが圧倒的に高く、また相対的に自殺率の高い時代であったことを指摘し、狂気が『ハムレット』の劇世界において多層的に表象されていると結論した。
著者
篠原 睦治
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
no.2, pp.7-28, 2009-03

ぼくは、2009年春で、定年退職する。在職36年になる。こんな機会に、"仕事"を振り返ってみるのも一興かなと思う。本稿で扱いたい著書、論文をリストアップしたら、107点になった。それらをテーマ毎にまとめてみたら、テーマは13になった。取り組みだした時期の順に並べると、「臨床心理学研究の発表とその問い直しの開始」「特殊教育批判と『共生・共育』の模索」「生命操作・優生思想の諸問題―胎児診断からの出発」「『精神薄弱』概念の検証と知能テスト批判」「『障害』学生との出会いと『共学』問題」「『養護学校義務化と発達保障論』批判」「フィールド・ワーク: アメリカの『障害者・黒人』問題」「対談シリーズ: 『共生』論の検証」「『アジア』に関するフィールド・ワーク」「臨床心理学会改革の終焉と社会臨床学会の創設」「カウンセリングの実際とその批判」「特別支援教育と『教育改革』問題」「障害者・老人の囲い込みと暮らし」になった。本稿では、各項目にそって、論述する。
著者
鈴木 真吾
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
no.3, pp.151-174, 2010-03

本論は『家畜人ヤプー』の作者であり、その全貌がいまなお明かされていない覆面作家沼正三と、1970年頃から沼の代理人として活動し、1983年に自身が沼だと名乗り出て以降も、沼との距離を注意深く保ってきた作家、天野哲夫に関するものである。2008年11月30日に死去した天野が沼の本体だという意見が主流を成す一方、天野が沼の本体ではないという意見は今日においてもなお支配的である。しかし、本論は沼の真の正体を考察するものではない。元来、仮想の人格を持った架空の人物として設定されていた「沼正三」が、何故、現実に存在する一個人であるという前提で語られてきたのかという点を問題にしつつ、『家畜人ヤプー』の作者の正体をめぐる騒動であった1980年代初頭の「『家畜人ヤプー』事件」を中心に、沼という覆面作家を巡る議論がどのように展開されたかを論じると共に、体系的に語られることのなかった天野について、沼としての天野ではなく、沼と対位法を成す存在としての天野を論じていく。
著者
奈良 勝行
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Human Studies (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.77-98, 2010-03

最近日本では企業においても教育界においてもコンピテンシー、キー・コンピテンシーという用語がよく使われている。本論文では、コンピテンシーは1970年代アメリカで初めて提唱されたものであるが、その概念・内容はどんなものであるか、どのような経緯でそれがアメリカの企業で使われ、日本に波及していったかを明らかにしたい。キー・コンピテンシーは経済協力開発機構で開発された概念であるが、その内容はどのようなものかを分析し、日本の生徒の「学力」は低下したのかを検証する。PISAの学力を「PISA型学力」と称して、その調査で常に世界トップの成績をあげているフィンランドの教育メソッドに注目して日本にそれを普及しようとする動きがあり、文科省も事実上これを後押ししている。この「フィンランド・メソッド」を分析し、一面的「PISA型学力」の問題点を明らかにし、日本の教育の歩むべき道を探求したい。
著者
瀧 大知
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Human Studies (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.133-150, 2019-03-08

本稿は警察によるヘイトデモへの対応を分析し、その課題を明らかにすることを目的としている。そのために、筆者によるフィールド調査のデータをもとに、警察とカウンター行動との関係に注目した。分析の結果、本稿では以下の点を明らかにした。まず、警察の目的はヘイト・スピーチを止めることではなく、デモを安全に終わらせようとするのみであること。つぎにそのような姿勢の警察にとって、カウンターはデモ隊と衝突を起こす危険性のある「挑発行為」としか捉えられておらず、一般通行人にとっての「迷惑」行動とされていること。その背景には日本に人種差別を規制する法律がないことを指摘した。そのうえで「ヘイトスピーチ解消法」の課題を提示している。
著者
瀧 大知
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Human Studies (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
no.12, pp.133-150, 2019-03

本稿は警察によるヘイトデモへの対応を分析し、その課題を明らかにすることを目的としている。そのために、筆者によるフィールド調査のデータをもとに、警察とカウンター行動との関係に注目した。分析の結果、本稿では以下の点を明らかにした。まず、警察の目的はヘイト・スピーチを止めることではなく、デモを安全に終わらせようとするのみであること。つぎにそのような姿勢の警察にとって、カウンターはデモ隊と衝突を起こす危険性のある「挑発行為」としか捉えられておらず、一般通行人にとっての「迷惑」行動とされていること。その背景には日本に人種差別を規制する法律がないことを指摘した。そのうえで「ヘイトスピーチ解消法」の課題を提示している。