- 著者
-
林 里香
- 出版者
- 千葉大学教育学部授業実践開発研究室
- 雑誌
- 授業実践開発研究 (ISSN:18848818)
- 巻号頁・発行日
- vol.3, pp.53-61, 2010-03
本稿では、留学生が口頭表現クラスにおいて、聞き手としての役割に気づくことによって、話し手としてのスピーチ作成過程にどのような影響を与えるのかについて考察した。口頭表現クラスには、スピーチをするだけでなく、テーマを決める段階から原稿の作成、発音練習、原稿の暗記、発表の練習、自己評価、他者評価などさまざまな過程がある。留学生は日本語でスピーチを行うため、スピーチ発表当日まで自分の使う日本語の表現や発音を意識し、暗記したものが本番で上手くできるかどうかについて気にしている。そのため、自分のスピーチには関心が高いが、クラスメイトのスピーチに対する関心度には差があった。そのため、筆者は聞き手としての意識を高めるための授業を計画し、実践した。筆者は、留学生がクラスメイトのスピーチに対する評価コメントが書けない理由に自ら気づくための活動を行った。その結果、自分のスピーチをクラスメイトがどのように聞き、また、自分がクラスメイトのスピーチをどのように聞いているのかを気づかせることができた。また、この気づきはその後の「聞き手」としての態度の変化だけでなく、話し手としての彼らの態度の変化へつながり、結果として、スピーチ発表の場の変化へもつながったことを報告する。