著者
林 里香
出版者
千葉大学教育学部授業実践開発研究室
雑誌
授業実践開発研究 (ISSN:18848818)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.91-97, 2008-03

本稿は、日本語集中講義において行われた他者紹介の活動実践を振り返り、考察することを目的としている。近年、他者紹介の活動は、第二言語習得の現場だけではなく、コミュニケーションスキルの講習や大学の口頭表現演習などでもよく行われている。今回、筆者は韓国の大学で、日本語集中講義の第1時限目の授業として他者紹介の活動を行ったeこの活動を計画した経緯や授業実践を振り返り、他者紹介の活動が教室内でどのような意義をもつのかを検討し、考察を加えた。他者紹介の活動は、①学生間の助け合いが生まれる、②授業担当者が学生の日本語能力と学習への参加態度を把握することができる、③学生が情報収集・選択と発表の手順を理解することができる活動である。そしてこの活動は、それだけでなく、学生と教師がそれぞれ持っ「確信」(beliefs)(岡崎1999)の歩み寄りを促し、教室を「you世界」(佐伯1995)である学習共同体へ導く基礎作りができる活動であることが明らかになった。
著者
川瀬 寧々
出版者
千葉大学教育学部授業実践開発研究室
雑誌
授業実践開発研究 (ISSN:18848818)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.43-52, 2019-03

[要旨] グローバル化社会に向け、語学教育だけでなく、より文化の違いを意識した教育を行うべきである。文化の違いを生み出す要因の1つとして、宗教が挙げられる。それは、宗教により規定される生活習慣が文化の形成に影響を及ぼしているためである。文化の違いを理解するために宗教の知識は欠かせないものだ。しかし、学校教育の中で、実践的にどのような場面で宗教が必要になるかを教える機会はない。そこで本研究では、宗教リテラシーを身につけることを目的に、生徒がグローバル化社会の中で宗教の知識を活用したり、宗教の知識を踏まえて行動したりすることを目指したマンガ教材を開発し、実践を行った。実践を通して、マンガ教材を用いることで授業の内容を可視化することや、生徒自身が当事者意識を持ち授業に取り組むことが可能となった。また、生徒の宗教に対する考え方にさまざまな変容をもたらすことが可能となった。上記の2点が成果として挙げられる。
著者
古谷 成司
出版者
千葉大学教育学部授業実践開発研究室
雑誌
授業実践開発研究 (ISSN:18848818)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.35-42, 2009-03

本研究では、朝ごはんを題材とし、「朝ごはんを食べること」の必要性を理解することをねらいとした授業プログラムを開発し、その成果と課題を考察することを目的とする。現在、文部科学省から「早寝早起き朝ごはん」国民運動が進められており、子どもたちの生活習岨の乱れが問題視されている。このことが学力低下や生徒指導上の問題を引き起こしているともいわれている。そこで、f朝ごはんを食べること」がなぜ必要かということを、血糖値や体温をとりあげて科学的根拠に基づいた理解を図るように授業実践を行った。その結果、「朝ごはんを食べること」の大切さについて理解が深まり、さらに、「朝ごはんを食べよう」とする意識も高めることができた。
著者
栁原 沙織 脇坂 亜希 阿部 学
出版者
千葉大学教育学部授業実践開発研究室
雑誌
授業実践開発研究 (ISSN:18848818)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.7-15, 2009-03

通常、理科の授業方法は、客観的な知識をいかに教えられるかという視点、すなわち教師の側の視点から検討されている。しかし、そのような観点から検討するだけでは、理科における多様な学びの可能性を狭めてしまう。本稿では、視点を変え、われわれがどのようにものごとを学んでいるのかについて示唆を与えてくれる佐伯(1978)の「擬人約認職論」をたよりに、身体性を伴った理科学習について考察する。取り上げるのは、身体を使って理科を学ぶことを目的とし、ダンサーがワークシヨップ形式の授業を行う「ダンスで、理科を学ぼう」という実践における、小5「流れる水のはたらき」の授業である。考察からは、身体性を伴った理科学習について、ひとつひとつの事例にそくし、丁寧に考察してゆく必要があることと、通常の形式の授業で行ってきたことを、身体性を伴った学習でいかに覆すことができるかという発想からではなく、身体性と理科の概念がどのように関連しているのかという発想から事例研究を重ねる必要があることが明らかとなった。
著者
藤川 大祐
出版者
千葉大学教育学部授業実践開発研究室
雑誌
授業実践開発研究 = Study on Development of Teaching (ISSN:18848818)
巻号頁・発行日
no.14, pp.1-10, 2021-03

[要旨] 本稿では、いじめの構造をゲームとして捉え、特にLINEのステータスメッセージに誰のことかが明記されない形で悪口を書く「ステメいじめ」のように、対象者が被害を訴えようとしても訴えにくい「ダブルバインド型いじめ」について、こうしたいじめがどのようにして生じ、どのようにして抑止が可能かを検討した。この結果、ダブルバインド型いじめはいくつかの条件分岐の結果生じること、そして条件を変えることによってダブルバインド型いじめが回避されうることが確認された。条件を変えるためには、アンガーマネジメントやストレスコーピングに関する教育、アサーション・トレーニング等の非攻撃的な自己主張に関する教育が必要であることに加え、ダブルバインド型いじめになりうる行為を行うことを認めない規範の構築が必要だということが明らかとなった。
著者
阿部 学
出版者
千葉大学教育学部授業実践開発研究室
雑誌
授業実践開発研究 (ISSN:18848818)
巻号頁・発行日
no.1, pp.41-50, 2008-03

本論は、あるミュージシャンによる歌づくりの授業の中で活用された「作詞ノート」を取り上げ、その表現活動における教育方法的意義について論じたものである。授業を行ったのは、筆者が参加しているロックバンド「sjue」のメンバーである。「作詞ノート」とは、「sjue」のボーカリストSjueのノートを称したものであり、その特徴は、常に携帯しておき、思いついたことは文でも絵でも何でも書き込んでおくことにある。この「作詞ノート」を子どもたちに配布した上で歌づくりの授業を行い、子どもたちの表現活動にどのような効果があったのかを考察した。授業を行った結果、自分の表現を振り返り新たな表現を摸索するなど、子どもによって多様な効果がみられた。また、これら様々な効果をまとめた結果、日常の文脈にそくした表現活動を行うことの意義や、表現者の表現方法を考察していくことの重要性など、表現活動にっいての新たな視座が得られた。
著者
藤田 朋世
出版者
千葉大学教育学部授業実践開発研究室
雑誌
授業実践開発研究 (ISSN:18848818)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.45-53, 2011-03

本研究は、「音律から音楽について考える授業」を開発し、高等学校1年生を対象に実験授業を行うことで授業プランの有効性を検討するものである。音楽で使う音を低い音から順に並べたものを音階とよび、音階を構成する各音相互の関係を数理的に表したものが音律である。西洋のクラシック音楽では、ドレミファソラシドの各音の高さをどのように決めるのかというルールが音律である。音楽教育ではピアノが大きな存在となっているが、ピアノの音は厳密には美しくハモることはない。しかし、子どもにとってピアノでのドレミファソラシドは絶対的な音程であり、当たり前のものとして存在しているのではないだろうか。これらのことから、私たちが普段接するピアノの音以外にも音の高さの決め方があることや、音と音とが美しく響く方法があることを子どもが知り、経験する必要があると考え、授業プランの開発を行った。
著者
竹内 正樹
出版者
千葉大学教育学部授業実践開発研究室
雑誌
授業実践開発研究 (ISSN:18848818)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.31-40, 2018-03

[要旨] 学校の体育の授業でのICT機器の活用の多くは「運動観察」を行っている。特にその多くは「運動観察」の中でも「他者観察」を行っている。しかし「他者観察」は学習対象となる運動の初学者にとって難しい行為であり、またその結果を自身の運動改善にうまく反映できないということが見られる。その理由として観察する運動を第三者の視点でしかとられることができないことが問題だと考える。そこで観察する運動を、その運動を行っている本人の目線、一人称視点で運動を観察することができないか検討した。そこで本研究では運動者の視点で運動を観察することが可能なVR(バーチャルリアリティ)を活用し、従来のICT機器を用いた他者観察よりも、より運動感覚に直接作用する他者観察を行うことを目的とする教材の開発を行う。また教材内容は中学校2年生のバレーボールとし、実際に実践を行い、教材の有効性について検証を行う。
著者
竹谷 尚人
出版者
千葉大学教育学部授業実践開発研究室
雑誌
授業実践開発研究 = Study on Development of Teaching (ISSN:18848818)
巻号頁・発行日
no.11, pp.59-68, 2018-03-20

[要旨] 運動エネルギーと運動量は別の物理量である。しかし、この2つの物理量はしばしば混同されてしまう。現行の学習要領・検定教科書は、力学の扱いが十分とはいえず、運動エネルギーと運動量を教えるための授業開発を進めることは重要だと考える。そこで筆者は、1960年代に登場した「ニュートンのゆりかご」を再活用し、生徒に運動エネルギー・運動量を理解させることを試みた。「ニュートンのゆりかご」には、複数の金属球がぶら下げられている。端の金属球を持ち上げ、残りの球へ衝突させるという実験を条件を変えて行い、その結果を生徒に予想・検討させることで、最終的に運動エネルギーと運動量とを理解させることを目指した。実験授業の結果から、生徒はエネルギーの保存についてはおおむね理解しており、それを根拠として結果を予想し討論しているという様子が見られた。しかし、運動量を考慮せず実験結果を予想している場面も見られ、両方の完全な概念分化へは課題も挙がった。
著者
阿部 学
出版者
千葉大学教育学部授業実践開発研究室
雑誌
授業実践開発研究 (ISSN:18848818)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.41-50, 2008-03

本論は、あるミュージシャンによる歌づくりの授業の中で活用された「作詞ノート」を取り上げ、その表現活動における教育方法的意義について論じたものである。授業を行ったのは、筆者が参加しているロックバンド「sjue」のメンバーである。「作詞ノート」とは、「sjue」のボーカリストSjueのノートを称したものであり、その特徴は、常に携帯しておき、思いついたことは文でも絵でも何でも書き込んでおくことにある。この「作詞ノート」を子どもたちに配布した上で歌づくりの授業を行い、子どもたちの表現活動にどのような効果があったのかを考察した。授業を行った結果、自分の表現を振り返り新たな表現を摸索するなど、子どもによって多様な効果がみられた。また、これら様々な効果をまとめた結果、日常の文脈にそくした表現活動を行うことの意義や、表現者の表現方法を考察していくことの重要性など、表現活動にっいての新たな視座が得られた。
著者
林 里香
出版者
千葉大学教育学部授業実践開発研究室
雑誌
授業実践開発研究 (ISSN:18848818)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.53-61, 2010-03

本稿では、留学生が口頭表現クラスにおいて、聞き手としての役割に気づくことによって、話し手としてのスピーチ作成過程にどのような影響を与えるのかについて考察した。口頭表現クラスには、スピーチをするだけでなく、テーマを決める段階から原稿の作成、発音練習、原稿の暗記、発表の練習、自己評価、他者評価などさまざまな過程がある。留学生は日本語でスピーチを行うため、スピーチ発表当日まで自分の使う日本語の表現や発音を意識し、暗記したものが本番で上手くできるかどうかについて気にしている。そのため、自分のスピーチには関心が高いが、クラスメイトのスピーチに対する関心度には差があった。そのため、筆者は聞き手としての意識を高めるための授業を計画し、実践した。筆者は、留学生がクラスメイトのスピーチに対する評価コメントが書けない理由に自ら気づくための活動を行った。その結果、自分のスピーチをクラスメイトがどのように聞き、また、自分がクラスメイトのスピーチをどのように聞いているのかを気づかせることができた。また、この気づきはその後の「聞き手」としての態度の変化だけでなく、話し手としての彼らの態度の変化へつながり、結果として、スピーチ発表の場の変化へもつながったことを報告する。
著者
林 里香
出版者
千葉大学教育学部授業実践開発研究室
雑誌
授業実践開発研究 (ISSN:18848818)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.53-61, 2010-03

本稿では、留学生が口頭表現クラスにおいて、聞き手としての役割に気づくことによって、話し手としてのスピーチ作成過程にどのような影響を与えるのかについて考察した。口頭表現クラスには、スピーチをするだけでなく、テーマを決める段階から原稿の作成、発音練習、原稿の暗記、発表の練習、自己評価、他者評価などさまざまな過程がある。留学生は日本語でスピーチを行うため、スピーチ発表当日まで自分の使う日本語の表現や発音を意識し、暗記したものが本番で上手くできるかどうかについて気にしている。そのため、自分のスピーチには関心が高いが、クラスメイトのスピーチに対する関心度には差があった。そのため、筆者は聞き手としての意識を高めるための授業を計画し、実践した。筆者は、留学生がクラスメイトのスピーチに対する評価コメントが書けない理由に自ら気づくための活動を行った。その結果、自分のスピーチをクラスメイトがどのように聞き、また、自分がクラスメイトのスピーチをどのように聞いているのかを気づかせることができた。また、この気づきはその後の「聞き手」としての態度の変化だけでなく、話し手としての彼らの態度の変化へつながり、結果として、スピーチ発表の場の変化へもつながったことを報告する。
著者
山田 輝之
出版者
千葉大学教育学部授業実践開発研究室
雑誌
授業実践開発研究 (ISSN:18848818)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.55-63, 2011-03

バングラデシュでは、非識字の問題が深刻である。バングラデシュ政府やNGOによる識字教育事業は、「事業の継続性」に課題がある。それらの事業体のみに依存し、解決を求めることは難しい。そこで「事業の継続性」の課題を解決する新しい事業体の構築のため、グラミン銀行の事業モデル「ソーシャル・ビジネス」を参考に検討を行う。グラミン銀行のグループ会社「グラミン・コミュニケーションズ」との協同による調査活動から、従来の政府やNGO の識字教育事業は、村人の識字能力獲得が目的となっており、事業終了後の雇用などの能力活用の仕組みがないことが明らかになった。ソーシャル・ビジネスによる事業体で、識字能力獲得と同時に、雇用創出など、村人にとってのインセンティブを生み出す必要性があることが判明した。今後の課題として、継続した市場調査によるデータ収集、識字教育、継続教育(生涯教育)の専門家との連携、多国籍企業等との事業提携、事業内容の充実と改善が必要である。
著者
伊藤 晃一 イトウ コウイチ Koichi ITO
出版者
千葉大学教育学部授業実践開発研究室
雑誌
授業実践開発研究 (ISSN:18848818)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.17-26, 2009-03

子どもたちと学校に招かれた外国人とがなんらかのかかわりをするというような異文化交流の実践のほとんどは、今まで授業の中で行われていた。しかし筆者は、授業の中で行われる異文化交流の実践が、授業がもつ特徴によってむしろ制約されてしまい、本来の意味での異文化交流が出来ていないのではないかという問題意識を持つようになった。本研究は、授業の特徴が異文化交流の実践にどのような影響を及ぼしているのかを詳しく検討した上で、その問題点を指摘し、授業の枠組みをはずした場における異文化交流の実践を作成し、その成果と課題を考察し、学校における新しい異文化交流の可能性を見いだすことを目的としている。実践は、実践時間をあえて授業から切り離し、休み時間に行った。実践の成果としては、子どもたちが多様な仕方で外国人とかかわろうと試行錯誤する様子が見受けられ、それを休み時間に行った成果と結論づけた。一方で、今後このような実践を学校文化の中にどう位置づけていくのかということや、異文化交流ということばが、果たして客観的なことばとして機能するのかということや、子どもたちのかかわりを記述するとはどういうことかという問題も明らかになった。