著者
村田 由美
出版者
崇城大学
雑誌
崇城大学紀要 = Bulletin of Sojo University (ISSN:21857903)
巻号頁・発行日
no.46, pp.146-135, 2021

夏目漱石が、第五高等学校で生徒に請われて新派俳句の結社「紫溟吟社」を指導したことは知られているが、その実態を論じたものは、わずかに蒲池正紀の「紫溟吟社・その成立と終焉」(『熊本商大論集』一五号、昭三七・一二)があるだけである。今回、俳誌『ほとゝぎす』、雑誌『日本人』、新聞「日本」「九州新聞」「九州日日新聞」をつぶさに調査し、生徒たちの俳句がどのように掲載されたか、「紫溟吟社」に漱石がどのように関わったかを考察した。特にその中心人物である厨川千江、蒲生紫川、寺田寅彦に注目し、漱石との交流を明らかにし、熊本時代、五高教師としての漱石の一面を考察した。
著者
井芹 浩文
出版者
崇城大学
雑誌
崇城大学紀要 = Bulletin of Sojo University (ISSN:21857903)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.1-9, 2014

明治憲法は全面改正されるまで56年間存続した。これに対し現行の日本国憲法は改正せずにすでに66年が経過した。これだけ長期に改正されなかったのはなぜか。その大きな理由の一つが、歴代の自民党首相が現実主義的なアプローチを取ったためではないかとの仮説を立てた。これを立証するため、吉田茂以来の歴代首相の憲法観を振り返ってみた。歴代首相はカテゴリーとしては「改憲派」「護憲派」「現実派」および自らの見解を示す機会のなかった「回避派」に分けることができよう。まず現実主義者のプロトタイプとして吉田を取り上げる。ただ吉田自身は自衛力を禁じた現行憲法には違和感を持ちつつ、さりとて急激な再軍備は国力が見合っていないというアンビバレントな悩みを抱えていた。続く鳩山一郎、岸信介は改憲を掲げたが挫折し、その後の高度成長期に政権を担ったい池田勇人、佐藤栄作らは改憲論から距離を置き、保守政権の現実主義は定着していく。この後のいわゆる「三角大福中」世代の最後に政権を担当した中曽根康弘はもともと改憲論を唱導していたが、政権に就くや改憲を否定し、現実主義に身をおいた。改憲論者である中曽根にしてこうした行動をとったところに現実主義の岩盤の大きさがうかがえる。そういう背景の中で、新たな改憲派として登場した安倍晋三の出方が注目される。
著者
坂口 頼孝
出版者
崇城大学
雑誌
崇城大学研究報告 (ISSN:21857903)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.1-11, 2009-03-01

「すごく」と「ひどく」は共に程度の甚だしいことを表し、連用修飾をする。その点で「たいそう」や「とても」と似ている。しかし品詞としては副詞ではなく、形容詞連用形と考えるべきである。他の活用形を持ち、意味も変わらないからである。例えば「やつれ方がすごい(すごかった)」「すごいやつれ方」「すごくやつれる」において「すごく」だけを別品詞にするいわれはない。ところが現行の国語辞典を見ると必ずしもそうなっていない。「すごく」「ひどく」(の一方か両方)を副詞として別に立項しているものがある。しかしそれは受け入れがたい。辞書の内部において矛盾をきたしているものもあるし、違いが判然としないものもある。「すごく」と「ひどく」は共に形容詞連用形と位置付けるべきである。「猛烈に」「いやに」など形容動詞(出身の副詞)についても取り上げる。
著者
河口 和幸
出版者
崇城大学
雑誌
崇城大学紀要 (ISSN:21857903)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.1-18, 2015

通貨発行益(シニョレッジ)とは何かに関しては各種の理解があるものの、中央銀行がその業務を行ううえで通貨を発行し、それを見合いに有利子の金融資産を取得することによって獲得する利益と定義することができる。これは、政府が補助貨幣(硬貨)を発行するときに得られる利益とは違い、通貨発行の見返りとして取得する金融資産の利息収入によって獲得されるものである。近年わが国では、政府の財政悪化、円高、デフレの持続を眺めて、政府紙幣の発行等が議論された経緯もあるが、2013年からは日本銀行によりアベノミクスに歩調を合わせて量的・質的金融緩和(QQE)が実施に移され巨額の国債購入等が続けられている。この政策は、継続されている過程においては日銀の収益としてのシニョレッジが増大するものの、その出口段階では、日銀の収益に大きなダメージを与える可能性があると思われる。この「異次元の金融緩和」とも言われる政策によってデフレから脱却し、成長軌道に回復していくことが期待されているが、そうした事態に至ったとしても、日銀の財務内容の悪化、ひいては通貨への信認の低下に繋がって、非常に大きな問題を抱えることになる可能性があることには注意が必要である。
著者
藤本 元啓
出版者
崇城大学
雑誌
崇城大学紀要 = Bulletin of Sojo University (ISSN:21857903)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.37-55, 2021

崇城大学では、2019年度から初年次教育「SOJO基礎」を起点として理工系専門教育とを連動し、大学と産業界とを接続する学修プログラム「SOJOプロジェクト教育」を開始した。初年次生では専門的知識を必要としないアイデア解決型のPBL型学修を反復し、2年次以降に学科や企業等の提供による理工学・実社会の現実的な問題に取り組み、学年に応じた専門基礎的なアイデアをもって解決を目指す。学部でのこの教育が修士課程の長期のコーオプ教育につながり、さらには博士課程の産学連携を生み出す土壌となる。これは従来の伝統的な大学教育(教える)からの脱却を目指す教育プログラムのひとつで、本学が目指す「学生の自主的、創造的な学修姿勢」を培う新しい教育体系である。この組織的な取り組みにより、学生が主体的学修へと転換し、知識・技能を実際に活用して徐々に高品質の成果物をつくる契機となることに期待している。また協力企業からは「知識修得だけではなくチーム活動に焦点を当てたカリキュラムの重要性」「企業と大学の協力は不可欠」「国際競争力向上のためには学生の人材育成は必要」など、大方の賛同を得ている。
著者
井芹 浩文
出版者
崇城大学
雑誌
崇城大学紀要 = Bulletin of Sojo University (ISSN:21857903)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.1-9, 2014

明治憲法は全面改正されるまで56年間存続した。これに対し現行の日本国憲法は改正せずにすでに66年が経過した。これだけ長期に改正されなかったのはなぜか。その大きな理由の一つが、歴代の自民党首相が現実主義的なアプローチを取ったためではないかとの仮説を立てた。これを立証するため、吉田茂以来の歴代首相の憲法観を振り返ってみた。歴代首相はカテゴリーとしては「改憲派」「護憲派」「現実派」および自らの見解を示す機会のなかった「回避派」に分けることができよう。まず現実主義者のプロトタイプとして吉田を取り上げる。ただ吉田自身は自衛力を禁じた現行憲法には違和感を持ちつつ、さりとて急激な再軍備は国力が見合っていないというアンビバレントな悩みを抱えていた。続く鳩山一郎、岸信介は改憲を掲げたが挫折し、その後の高度成長期に政権を担ったい池田勇人、佐藤栄作らは改憲論から距離を置き、保守政権の現実主義は定着していく。この後のいわゆる「三角大福中」世代の最後に政権を担当した中曽根康弘はもともと改憲論を唱導していたが、政権に就くや改憲を否定し、現実主義に身をおいた。改憲論者である中曽根にしてこうした行動をとったところに現実主義の岩盤の大きさがうかがえる。そういう背景の中で、新たな改憲派として登場した安倍晋三の出方が注目される。
著者
皆川 晶
出版者
崇城大学
雑誌
崇城大学紀要 = Bulletin of Sojo University (ISSN:21857903)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.109-123, 2015

大学生が父親や母親に対してどのような呼称をしているのかを、アンケート調査した。直接呼びかけるとき、友人に親のことを話すとき、目上の人に親のことを話すとき、楽しいとき、怒っているときなど、さまざまな場面を設定し、場面によって親への呼称に変化はあるのか、また、その選択基準について調査し考察した。親に対する呼称は、話す相手や場面によって使い分けをしていることがわかった。また、特に怒っている場面では、女子学生の父親、母親に対する呼び方に、通常とは違いがみられた。よって、大学生は親への呼称はいつも同じではなく、場面や話す相手によって使い分けをしていることがわかった。
著者
小原 守雄
出版者
崇城大学
雑誌
崇城大学研究報告 (ISSN:21857903)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.11-18, 2006-03

本研究は、大学における心理学受講生に対して簡易瞑想法による受動的注意集中訓練を継続的に実施することによって、「集中力を高めること」および「授業への積極的な構えを形成すること」における効果を検討することを目的にして行われた。簡易瞑想法による訓練は、309人の受講生(6クラス)を対象として、週1回(授業開始前の5分間)、計14回実施された。各セッションにおいて、簡易瞑想法実施の効果などを含む質問紙調査およびフィードバック票への記入を求めた。完全回答の得られた276人の資料を分析した結果、当初期待していた「集中力を高めること」および「授業への積極的構えの形成」の効果の他に、「心身のリラックス」および「自己の心身についての気づき」などにおいても肯定的な効果が得られた。また、簡易瞑想法を授業以外においても活用している対象者が50%認められた。以上の結果から大学における授業を活用した簡易瞑想法の適用が、授業に対する受講態度の改善のみならず、心身の健康を増進するため、さらには予防的心理教育の位置づけとしても重要な意義があることが示唆された。
著者
皆川 晶
出版者
崇城大学
雑誌
崇城大学紀要 (ISSN:21857903)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.85-103, 2013

キャンパス内において、大学生が謝る場面でどのような言葉を使用しているか。また、その選択基準について調査した。大学1年生を対象に、同学年、上級生、親しい相手、教員に対して、直接謝る場合とメールで謝る場合とを調査した。対象が同学年や親しい相手では「ごめん」「ごめんね」の使用が多く、親近語として認識されている。上級生や教員に対しては、「すいません」「すみません」の使用が多く、学生にとって敬意を表すことばとして認識されている。直接に言う場合とメールの場合でも、ことばの選択に大きな違いはなかった。しかし、対象が教員の場合は、変化が見られ、より丁寧なことばが選択されていた。よって、キャンパス内において、学生が謝る場面では、年齢や親疎の関係などで、ことばを使い分けていることがわかった。
著者
増村 雅尚
出版者
崇城大学
雑誌
崇城大学紀要 = Bulletin of Sojo University (ISSN:21857903)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.75-81, 2021

COVID-19の拡大を防ぐため、わが国でも2020年4月7日に緊急事態宣言が発令され外出の自粛が求められるなど、生活環境の変容が生じた。本研究の目的は、正課外活動の制限・停止・再開がどのように心理的影響を及ぼすかについて検証を行い、大学生の正課外活動における心理的効果を検証する資料を得ることであった。結果をまとめると以下のようになる。①正課外活動停止となった翌週から「活気-活力」「友好」が有意に低い状態であった。②熊本県緊急事態宣言の解除を受けた次週から「活気-活力」「友好」は正課外活動再開まで回復を続けた。③対面授業開始週では、「疲労-無気力」がみられた。④緊急事態宣言の全面解除週から「混乱-当惑」「抑うつ-落込み」「緊張-不安」が有意に低下した。⑤正課外活動再開準備(会議・計画書提出)により「混乱-当惑」「緊張-不安」「抑うつ-落込み」が回復し、活動が再開されると、加えて「怒り-敵意」が有意に低下した。今回の調査により、COVID-19による活動自粛により「活気-活力」「友好」が落ち込み、回復には緊急事態宣言の全面解除や、正課外活動再開が寄与していたことが判明した。
著者
増村 雅尚
出版者
崇城大学
雑誌
崇城大学紀要 = Bulletin of Sojo University (ISSN:21857903)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.65-74, 2021

本研究の目的は、学生生活において正課外活動の制限・停止・再開がどのように心理的影響を及ぼすかについて検証を行い、大学生の正課外活動における心理的効果を検証する資料を得ることであった。まとめると以下のようになる。①正課外活動の自粛は学生の活性、安定、快適、覚醒すべてにマイナスの影響を与えていた。②運動可能であった学生の心理状態は、正課外活動停止になり、一気に「無気力・抗うつのエリア」、「緊張・不安のエリア」に移動した。③正課外活動の停止から、再開することにより、「作業に適したエリア」へ誘導され、精神的健康度の改善に影響を与えた。④活動不可群は自粛期間では覚醒が抑えられ、快適度も低く、「自分だけ活動できない」状態であり、緊急事態宣言の全面解除により「全員が活動できない」状況になり、ストレスから解放されたのではないかと推察される。⑤活動自粛状況が活性を抑え、不快な状態となり、深い眠りに陥り、それが長期にわたると回復は難しくなると考えられる。
著者
増村 雅尚
出版者
崇城大学
雑誌
崇城大学紀要 = Bulletin of Sojo University (ISSN:21857903)
巻号頁・発行日
no.46, pp.75-81, 2021

COVID-19の拡大を防ぐため、わが国でも2020年4月7日に緊急事態宣言が発令され外出の自粛が求められるなど、生活環境の変容が生じた。本研究の目的は、正課外活動の制限・停止・再開がどのように心理的影響を及ぼすかについて検証を行い、大学生の正課外活動における心理的効果を検証する資料を得ることであった。結果をまとめると以下のようになる。①正課外活動停止となった翌週から「活気-活力」「友好」が有意に低い状態であった。②熊本県緊急事態宣言の解除を受けた次週から「活気-活力」「友好」は正課外活動再開まで回復を続けた。③対面授業開始週では、「疲労-無気力」がみられた。④緊急事態宣言の全面解除週から「混乱-当惑」「抑うつ-落込み」「緊張-不安」が有意に低下した。⑤正課外活動再開準備(会議・計画書提出)により「混乱-当惑」「緊張-不安」「抑うつ-落込み」が回復し、活動が再開されると、加えて「怒り-敵意」が有意に低下した。今回の調査により、COVID-19による活動自粛により「活気-活力」「友好」が落ち込み、回復には緊急事態宣言の全面解除や、正課外活動再開が寄与していたことが判明した。
著者
水月 晃 増村 雅尚 阪本 達也 石倉 恵介
出版者
崇城大学
雑誌
崇城大学紀要 = Bulletin of Sojo University (ISSN:21857903)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.9-18, 2018

本研究は、崇城大学新入生の健康度と生活習慣の診断検査結果を前期と後期で比較し実態を調査すること。そして、学生生活全般における健康の維持・増進に向けた対策及び今後の授業改善の指針を検討するものである。結果をまとめると以下のようになる。1.健康度・生活習慣パターン割合の前期と後期比較は、「充実型」が減少(前期44%→後期37%)し「生活習慣要注意型」が増加(前期14%→後期23%)した。2.健康度・生活習慣パターン判定の前期と後期比較は、前期の「充実型」に対し後期は「生活習慣要注意型」へ悪化した。3.健康度・生活習慣得点の前期と後期比較は、健康度合計点に有意差はないものの健康度が改善傾向にあった。また、生活習慣合計点においては、有意(**p<0.01)に低下し生活習慣は悪化した。生活習慣の悪化要因としては、食事のバランス、食事の規則性、休息、⑩睡眠の規則性、⑪睡眠の充足度の5因子が挙げられた。以上の結果を踏まえ、身体活動や運動の自主的・継続的実践ができるように学内環境の整備、運動設備・用具の充実、学生支援・相談など多角的な視点から対策に取り組むこと。そして、健康・スポーツ科学理論と生涯スポーツ教育の授業を今まで以上に一体化させた内容を再検討する必要があると考えられる。
著者
西村 陽一
出版者
崇城大学
雑誌
崇城大学紀要 (ISSN:21857903)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.153-162, 2015

国立教育政策研究所生徒指導・進路指導研究センター(以下、国研)が、キャリア教育の取組の実態を浮き彫りにすることを主眼とした調査を平成24年に実施し、平成25年に「キャリア教育・進路指導に関する総合的実態調査」第一次報告書・第二次報告書を公表した。今回それぞれの報告書をもとに現在の高等学校におけるキャリア教育の現状と課題を認識するためにその概要をまとめ、今後のキャリア教育・進路指導への取組について考察してみた。キャリア教育計画の充実度が高いほど学習全般に対する生徒の意欲が向上しているという割合が小・中・高とも高かった。一方、就職後の離職や失業など将来起こりうる諸リスクへの対応についての指導を生徒だけでなく多くの保護者も望んでいることも示された。また、学科により組織体制や就業体験などの体験活動への取組状況に大きな違いがあることも分かった。とりわけ普通科における体制整備や取組の充実が課題と考えられる。キャリア教育の効果を実感している学校も多いが課題も多いことが今回の調査で明らかになった。今後、卒業後の進路だけでなく、近い将来に加えて遠い将来のことも意識しながらキャリア教育を推進することが期待されている。
著者
河口 和幸
出版者
崇城大学
雑誌
崇城大学紀要 (ISSN:21857903)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.1-22, 2017

近年、わが国では企業による粉飾決算や偽装工作等の不正が頻発するようになってきている。こうした企業倫理の低下を象徴するような事態が発生するようになった背景には、①短期利益追求主義の強まり(資本主義精神の変質)、②日本的経営手法の変質、③企業組織の中に未だに残る暗黙のムラ社会の雰囲気の存在、④メインバンクのモニタリング機能の弱体化、⑤企業が掲げる CSR の履き違え(または曲解)の5点があるものと考えられる。企業に内在する体質と風土は、問題が発生した際のマスコミ等に対する危機管理広報の際にも表れる。中には、拙い対外広報によって傷口を広げてしまい、世間からの批判が強まって信頼を失ってしまうようなケースも少なくない。企業倫理の向上のためには、これといった決め手があるわけではないが、①まずもって経営トップの高い倫理観が必要であり、それを前提に、②コーポレートガバナンスの制度化等の体制の整備・強化、③経営理念を意識した経営計画の策定と社員教育の徹底、④社内での闊達な議論風土の醸成による風通しの向上などの基本的動作が欠かせないだろう。
著者
村田 由美
出版者
崇城大学
雑誌
崇城大学紀要 (ISSN:21857903)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.136-125, 2015

漱石の熊本での四年三ヶ月を考えるとき、第五高等学校での英語教師としての生活を抜きにしては考えられない。漱石はここで初めて教師として教壇に立つだけではなく、学校行事に参加し、英語科主任として、また後には教頭心得として学校行政にも関わった。漱石の学校行政家としての手腕を評価する研究者もいるが、本稿では特に、その人事面に着目して考察した。詳細に見ていくと漱石が行った人事は、決して漱石一人で行ったものではないことが分かる。また、漱石が、いかに生徒を教育できる教師を招聘するかという事に心をくだいたかが見えてくる。それは学生時代に書いた「中学改良策」にもつながるものであった。
著者
増村 雅尚
出版者
崇城大学
雑誌
崇城大学紀要 = Bulletin of Sojo University (ISSN:21857903)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.109-114, 2019

本研究は、正課外活動が実際に学生にどのような影響を及ぼすのか、及ぼした影響が学生生活、ひいてはその多様化した社会生活で必要とされる「生きる力」にどのように貢献するかを調査する必要があると考え、学生生活において正課外活動がどのような心理的影響を及ぼすかについて検証を行い、大学生の正課外活動における心理的効果を検証する資料を得ることを目的とした。その結果をまとめると①本学男子バレーボール部員は大会前に緊張と不安が増しつつ、活気があふれる。②敵対心や怒りなどの外向きの変化はなく、「自分自身」にポジティブな働きかけを行う傾向であった。③「疲労」項目に変化がなく、心のコンディションは良好であった。④試合前には友好関係を強固にしようとする傾向にあった、となった。本学男子バレーボール部は、試合において「緊張-不安」から敵対心を持つのではなく、互いの「友好」関係を向上し、チームとして「活気」あふれる状態を作り出していた。これはチームスポーツを行う上で、非常に良好な状態であったと考えられる。
著者
水月 晃 増村 雅尚 阪本 達也 石倉 恵介
出版者
崇城大学
雑誌
崇城大学紀要 = Bulletin of Sojo University (ISSN:21857903)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.19-30, 2018

本研究では、崇城大学全学年における健康度と生活習慣の診断検査結果を全学生・学年・男女で平均値化し、全学的な傾向及び年代的差異があるか実態を調査する。そして、学生生活全般における健康の維持・増進に向けた対策及び各学年における改善の指針を検討するものである。結果をまとめると以下のようになる。1.健康度・生活習慣パターン割合は、学年進行とともに「充実型」の割合は減少傾向にあり、「生活習慣要注意型」の割合は増加した。2.健康度・生活習慣パターン判定は、生活習慣平均点において学年別有意差(**p<0.01)があり、3年生の時期が最も望ましくない状況にあることが示唆された。3.健康度・生活習慣得点は、身体的健康度を除く全ての因子で有意差(*p<0.05、**p<0.01)が見られ、年代的差異があることが示唆された。以上の結果を踏まえ、入学時の早い段階から健康と生活習慣に関する「意識改革・行動実践」が必要であることが示唆された。今後は、身体活動量の向上、規則正しい生活習慣の確立、学生生活における健康の維持・増進に向けた「行動変容プログラム」の構築を検討する。
著者
長 正徳
出版者
崇城大学
雑誌
崇城大学研究報告 (ISSN:21857903)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.1-3, 2008-03-01

ゼラチン溶液の電気伝導率のゼラチン濃度および温度依存性をゾル-ゲル転移温度を含む温度領域で測定した。全てのゼラチン溶液において,電気伝導率の温度依存性はゾル-ゲル転移温度近傍で異常を示さなかった。溶液の電気伝導率は溶媒自身の電気伝導率とゼラチン濃度依存性を表す関数の積で表わされることを見出した。これより,溶液の電気伝導率には溶媒中の自由水の部分が寄与していること,および各ゼラチン濃度での溶媒中の自由水の割合の評価ができることを見出した。
著者
河口 和幸
出版者
崇城大学
雑誌
崇城大学紀要 = Bulletin of Sojo University (ISSN:21857903)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.25-47, 2016

現在、世界各国では経済成長を最優先とした経済政策を続けている。とくに、わが国を始めとした先進国では、経済成長一辺倒の経済政策を展開してきたものの、それが思うように達成できないばかりか、経済格差の拡大等多くの歪みが露呈する結果となっている。つまり、経済成長にこだわった政策は限界に達してきていることがますますはっきりしてきたのである。わが国を始め先進国の経済成長を阻むものとして、人口の減少(生産年齢人口の減少)、経済のグローバル化、財政政策と金融政策の限界、地球温暖化の進行という4つの大きな壁があり、これらによる制約がますます大きくなっているためである。このような制約下にあっては、これまでのような経済成長をひたすら追い求めていく政策ではなく、経済が成長しなくても国民が一定の豊かさや幸せ感を実感できるような社会、つまり脱成長社会へ移行することが必要となっているのではなかろうか。政策転換の方向としての脱成長社会は、成長ではなく均衡、産業・効率優先ではなく消費者・生活優先がキーワードであり、具体的には、①経済格差の縮小、②世代間不公平の是正、③本来的な意味での地方分権社会への移行、④男女共同参画社会の実現、⑤安心・安全社会の構築が目指していくべき方向として考えられる。