著者
山口 信 森島 慎太郎
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学論文集 (ISSN:13404733)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.105-116, 2023 (Released:2023-11-15)
参考文献数
18

本研究では,細径真直鋼繊維を適用したスラリー充填繊維コンクリート(SIFCON)版のスポール抑止性能の明確化と,それを用いた効率的な耐爆構造部材の開発を目的とした。本研究の前半では,爆薬量130~170gの条件下で,厚さ80mmのSIFCON版を対象とした接触爆発試験を行い,SIFCONを適用することにより普通コンクリートを用いた場合と比較してスポール限界となる換算コンクリート厚さを55%低減できることが示された。本研究の後半では,SIFCONとプレパックドコンクリート(PPC)より成る一体型耐爆構造版の耐爆性能について検討し,SIFCON自体のスポール抑止効果に期待するよりも,SIFCON層がPPC層で発生したスポール破壊片を捕縛する効果に期待する方が効率的な耐爆設計が可能になることを示した。
著者
岡島 達雄 河辺 伸二 溝口 雄一 久野 雅士
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学論文集 (ISSN:13404733)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.95-102, 1994-07-15 (Released:2012-11-13)
参考文献数
9
被引用文献数
3 4

Concrete walls or concrete structures are often associated with hardness and coldness. None has verified this idea. First, words and phrases describing concrete walls and structures were collected among students and working people, and analysed. It revealed that the idea is true. Second seventeen architectural concrete specimens of 900 mm square with a variety of surface finishing were made and psychologically measured with eight seven-rated-scales. The finding is that the concrete with smooth surface, such as casted in plywood or metal panels gives people the impression of hardness and coldness, whereas concrete with rough surface the impression of softness and warmness. This concept obtained from the small specimens was proved to be applicable to actual concrete walls and structures with actual size.
著者
井川 倫宏 玉岡 優児 細田 暁
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学論文集 (ISSN:13404733)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.101-109, 2018 (Released:2018-09-15)
参考文献数
8
被引用文献数
1

現行の表面吸水試験では,測定結果から得られる10分時点での表面吸水速度を評価基準に用いている。本研究では,3種類の水セメント比のコンクリートを用いた促進凍結融解試験による様々な劣化の程度の供試体に対して,10分時点での表面吸水速度と10分間の吸水量が比例関係を示すことが分かった。これまでに提案されている品質評価のしきい値により,W/Cが55~75%のコンクリートの凍結融解作用による劣化の程度を評価可能であると考えられる。さらに,測定時間の短縮について検討し,1分から10分の間の任意の測定時間において,現行の10分時点での評価と同じ評価結果をもたらす評価指標を提案した。
著者
黒田 一郎
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学論文集 (ISSN:13404733)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.43-55, 2016 (Released:2016-05-15)
参考文献数
8

腐食程度の異なる2本の鉄筋を有する鉄筋コンクリート梁供試体を対象として,非破壊検査(ひび割れ幅と超音波伝搬速度)による,鉄筋の断面積減少率の推定方法を検討した。非破壊検査は,2本の鉄筋の腐食による影響を区別できない状態を想定して実施し,その場合であっても充分安全側に断面積減少率を推定可能であることを示した。更に,得られた鉄筋の断面積減少率推定結果をインプットとして用いて,土木学会コンクリート示方書の曲げ耐力算定法に則って安全側に梁供試体の曲げ耐力を推定できることを確かめた。
著者
郭 度連 國府 勝郎 宇治 公隆
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学論文集 (ISSN:13404733)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.1-10, 2005-09-25 (Released:2012-11-13)
参考文献数
28

Internal water in concrete has a significant relation on the pore structure.Except for chemically combined water, all water exists in pore and its aging characteristics change with pore.For the purpose of quantification and classification of internal water in concrete, this study is conducted by long-term drying test.Results suggest that internal water can be classified with combined water, evaporated water, hydrated water under drying and remained water. Furthermore, water rate in each type under different water-cement ratio and curing time can be estimated from its quantification, respectively.
著者
岡崎 百合子 岡崎 慎一郎 浅本 晋吾 今本 啓一
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学論文集 (ISSN:13404733)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.47-60, 2023 (Released:2023-05-15)
参考文献数
35
被引用文献数
1

コンクリートの乾燥収縮挙動に対し,機械学習モデルを構築し,モデルの学習結果を解釈することによって,偏りがあるデータ群の影響を抑制しつつ,各説明パラメータが乾燥収縮に与える主な影響,すなわち支配構造を抽出し,定式化するといった新しいアプローチ法を提案した。本アプローチ法に基づき,コンクリートの配合および骨材の特性が乾燥収縮に与える影響を分析した結果,単位水量と骨材体積をパラメータとした配合の非線形影響や,配合により異なる骨材の吸水率の影響度等,複雑な支配構造が抽出された。抽出した支配構造を定式化した結果,定式による予測値は,実測値の乾燥収縮率を良く再現しており,データの密度が疎になる領域において特に予測精度が改善されることを確認した。
著者
岡崎 百合子 岡崎 慎一郎 浅本 晋吾 今本 啓一
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学論文集 (ISSN:13404733)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.37-46, 2023 (Released:2023-05-15)
参考文献数
38
被引用文献数
1

コンクリートの乾燥収縮に対する要因は,配合条件である単位水量や水セメント比等の影響に加え,近年,骨材自体の収縮に起因する影響が周知の事実となっている。骨材による影響は,土木学会の示方書式や日本建築学会式のひび割れ制御指針において定性的には組み込まれているものの,その複雑性ゆえに十分に解明されていない現状にある。そこで,本研究では,骨材の物性が収縮に与える影響を把握することを目的に,データの裏に潜む支配機構を柔軟に抽出できる機械学習を援用した分析を実施した。その結果,骨材の平均比表面積が支配的な影響力を有し,さらに,配合条件と骨材の平均比表面積が連関しながら収縮へ影響を及ぼすといった支配機構の存在が示唆された。
著者
服部 健作 今井 益隆 中村 拓郎 堀口 敬
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学論文集 (ISSN:13404733)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.3_11-3_20, 2009 (Released:2011-12-22)
参考文献数
26

実環境における冬期の凍結融解,夏期の乾燥あるいは湿潤環境,淡水と塩水環境を想定してJIS A 1148 A法の応用を試みた。これらの実験結果から,環境条件および試験液の違いがコンクリートの耐凍害性に及ぼす影響は顕著であり,凍結融解行程に常温水中環境を設けた場合は相対動弾性係数の低下が顕著となる一方で,常温気中環境を設けた場合では耐凍害性が著しく向上した。また,スケーリング試験であるRILEM CIF/CDF試験の結果と比較することでJIS A 1148 A法によるスケーリング劣化評価の可能性も検討した。本研究の範囲内で,質量減少率が5%以内の供試体においては塩水を用いたJIS A 1148 A法とCDF試験のスケーリング量に良好な関係が認められ,JIS A 1148 A法において,相対動弾性係数の評価とともにスケーリング劣化評価の可能性が認められた。
著者
福留 和人 齋藤 淳
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学論文集 (ISSN:13404733)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.35-47, 2021 (Released:2021-03-15)
参考文献数
19

現行のコンクリート標準示方書における養生の位置付けに基づいて「セメントの水和解析に基づく養生計画立案手法」を提案した。提案する手法は,設計で設定したコンクリートの特性値を満足するために達成すべき目標の水和率を設定し,水和解析によって求めたセメントの水和率が目標の水和率に到達するように養生計画を立案するものである。本論文では,提案する手法の基本的な考え方および具体的な養生計画の立案方法を紹介する。さらに,各種条件における養生計画立案事例を示し,構造物条件,コンクリート条件および施工環境条件に応じて養生計画を合理的に立案することが可能であることを確認した。
著者
アルカンタラ プリモアラン 今井 弘
出版者
Japan Concrete Institute
雑誌
コンクリート工学論文集 (ISSN:13404733)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.13-28, 1999

A new approach in the classification of the resulting failure mode, whether shear, bond splitting or flexure, for reinforced concrete columns is presented. Particular emphasis is placed on the analysis of the strain distribution in the main reinforcement based on the truss and arch model theory. Failure mode prediction from the proposed alternative method is compared with results from several series of column experiments. The proposed method is shown to provide a high level of precision in classifying failure modes with the proper consideration of the presence of inner rows of main bars and the effect of axial loading.
著者
斎藤 秀人 池谷 純一
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学論文集 (ISSN:13404733)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.63-70, 2000-09-25 (Released:2012-11-13)
参考文献数
5

Carbon fibers are one of the most effective materials for seismic strengthening. However fire endurance of strengthening with carbon fiber reinforced plastics (CFRP) should be taken into account because of its combustibility. This paper describes the several tests in accordance with methods of Japanese Industrial Standard; tensile strength tests of CFRP exposed with elevated temperature, residual tensile strength tests of CFRP exposed with elevated temperature, quasi-noncombustibility tests of CFRP and fire resistance tests of wall, column, column with wing walls and T-shaped beam specimens strengthened with CFRP. As the results of the tests, tensile strength of CFRP at 40 °C decreased to approximately 40-50 % of normal tensile strength. Residual tensile strength of CFRP had heated up to 200 °C were two-thirds of normal tensile strength. CFRP covered with a plaster board had quasinoncombustibility. For fire resistance, reinforced concrete members strengthened with CFRP maintained their functions during 2 hours. Reinforced concrete walls or slabs with CFRP penetrations maintained their functions during 2 hours.
著者
佐藤 悠士朗 櫨原 弘貴 添田 政司 深見 桜
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学論文集 (ISSN:13404733)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.11-22, 2020 (Released:2020-03-15)
参考文献数
9

コンクリートの品質を向上させる施工方法の一つに振動締固めを行った後,一定時間をおいてから再び振動を与える再振動がある。しかし,再振動の明確な実施時期や実施方法に関する情報は極めて少なく,現場では感覚と経験に基づいた加振が行われているのが現状である。そこで本研究は,再振動の実施時期の指標としてN式貫入深さから求めたコンクリート抵抗値を用い,再振動の実施時期や加振時間の影響について検討を行った。その結果,コンクリート抵抗値が17×10-3N/mm2に到達した時期に再振動を行うのが最も効果的であることが分かった。また,再振動時の加振時間は,5~10秒程度で行うことでコンクリートの品質は向上する結果となった。一方で,再振動の実施時期が遅い場合や加振時間が長くなると,再振動によるコンクリートの品質の改善が期待できなかった。
著者
佐川 康貴 山田 一夫 烏田 慎也 江里口 玲
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学論文集 (ISSN:13404733)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.135-145, 2014 (Released:2014-09-15)
参考文献数
9
被引用文献数
3 2

国内で産出する安山岩をペシマム混合率で混合したコンクリート供試体を作製し,加速および暴露試験を行った。両試験で,アルカリ総量3.0kg/m3以下である2.6kg/m3の条件で大きなASR膨張が認められ,暴露試験においては暴露期間780日で表面の膨張率は1250×10-6となり,反応性の高い骨材をペシマム条件で使用すると従来のアルカリ総量規制が不十分であり,この現象が加速試験でも検出できることが示された。ペシマム条件において,短期間では混合率15mass%以上のフライアッシュで抑制効果が得られたが,より長期の検討が必要である。鉄筋を配置した供試体では,鉄筋で拘束された内側コンクリートの膨張率が表面よりも著しく小さい結果となった。
著者
緒方 英彦 兵頭 正浩 石神 暁郎 新 大軌
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学論文集 (ISSN:13404733)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.53-63, 2019 (Released:2019-09-15)
参考文献数
11
被引用文献数
1

本研究では,積雪寒冷地で長期供用された鉄筋コンクリート開水路を対象に,凍結融解の繰返しを受ける側壁の気中部からコアを採取し,EPMAによる元素の面分析結果から,側壁の表面部と内部におけるコンクリートの変質について考察を加えた。その結果,表面部コンクリートでは,凍結融解の繰返し作用で発生したひび割れを通して水が侵入し,ひび割れ周囲でのカルシウムの溶脱,ひび割れを介して侵入した二酸化炭素によるカルシウムの結晶化および硫黄の拡散が見られ,内部コンクリートでは,ひび割れ近傍の気泡内部に溶出したカルシウムが結晶化しており,閉塞した気泡が存在することを明らかにした。
著者
津島 聰 吹上 紀夫
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学論文集 (ISSN:13404733)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.51-58, 1990-07-01 (Released:2012-11-13)
参考文献数
3
被引用文献数
1

It is possible to predict detectable defects diameter in the inner parts of mortar and concrete, from relations between echo-height from defect and scattered echoes from both fine and coarse aggregates ; the relations can be evident by making use of a longitudinal probe with a central frequency of 1 MHz and a double crystal probe with a 1 MHz. An A-scope has been generally used for ultrasonic testing (UT), whose users need the technical knowledge and experience for interpretation or analysis of the echoes received. If the imaging of defects is realized by the B-scope, users of the UT do not need the technical knowledge and experience. The joint reseachers have succeeded in imaging defects and embedded bars by the use of the B-scope.
著者
福永 隆之 武若 耕司 山口 明伸 審良 善和
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学論文集 (ISSN:13404733)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.21-31, 2018 (Released:2018-05-15)
参考文献数
12
被引用文献数
2

本研究の目的は,鹿児島県各地に分布するシラスを混和材として利用したセメント系材料の耐塩害性能の評価である。その際,主に,試験前後の生成物の変化や各種塩化物イオン量に着目することにより,シラスを用いた供試体の塩化物イオンとの反応性および塩分浸透特性について明らかにすることを試みた。その結果,シラスを混和した供試体は,塩水浸漬環境下において,シラスの反応率が促進されることを確認した。加えて,塩化物イオン固定化率の上昇および見掛けの拡散係数が低下する結果を得た。これは,シラスを混和することにより,ポゾラン反応生成物が生成され,その水和物によって,内部組織の緻密化および塩化物イオンの固定が起きたためと考察した。また,シラス中の微粒分の含有割合が大きいほどシラスの反応率および耐塩害性能が高いことが示された。
著者
小松 怜史 田島 涼 細田 暁
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学論文集 (ISSN:13404733)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.33-40, 2018 (Released:2018-05-15)
参考文献数
12
被引用文献数
3

本研究では,コンクリート床版上面の品質を表面吸水試験(SWAT)で評価する手法を検討した。水セメント比,空気量,セメント種類,養生条件の異なる供試体を製作し,SWATで品質評価を検討するコンクリート床版上面(仕上げ面から5mm程度)が十分乾燥していることを現場で判断する方法を検討した。その結果,市販の水分計(Kett社,HI-100)でカウント値が120(電気抵抗値:約2.6×104kΩ)を下回った時に,仕上げ面から5mm程度が十分乾燥していることが分かった。この条件で,SWAT計測開始から100秒間のコンクリートの累積吸水量を用いて,コンクリート床版上面の品質を評価することを提案した。この評価指標は仕上げ面の微細なひび割れによるコンクリートのスケーリング抵抗性の低下を検出することが可能であった。
著者
山田 一夫 羽原 俊祐 本間 健一
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学論文集 (ISSN:13404733)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.91-99, 1998-07-17 (Released:2012-11-13)
参考文献数
11

The false setting of cement caused by the aeration was studied from the analysis of the cement characters, its hydraulic reactivity, its hydration reaction, the paste rheological properties and the relationship among them. The aeration of cement was simulated by the treatment of cement exposing under an environment of temperature, 20°C and relative humidity, 80%. With a longer treatment, cement showed larger amounts of ignition loss. Hydration products with particle sizes under 0.3 μ m were formed on cement particles and the amount was increased with the increase of treatment time. Although the treatment did not change the Blaine specific surface area, it changed the BET specific surface area as much as 1.4 times higher during seven days of treatment. The treatment significantly decreased the hydration reactivity of interstitial phases of cements. The treatment longer than certain period of time brought a false setting in cements, which was not occurred in fresh cement paste. When aerated cements was mixed with water, sulfate ion was supplied to liquid phase from alkaline sulfates or calcium sulfate hemihydrate. However, the sulfate ion was not consumed by the ettringite formation reaction because of the low reactivity of interstitial phases. As the results of poor consumption of sulfate ion, gypsum crystals deposited from liquid phase to form large automorphic plate crystals and finally cement paste was thought to show the false setting, i.e. plaster set.
著者
伊代田 岳史 本名 英理香
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学論文集 (ISSN:13404733)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.113-122, 2017 (Released:2017-11-15)
参考文献数
9
被引用文献数
1

実構造物の炭酸化の進行は,使用するセメントや材料,配(調)合に代表される材料要因および立地環境である温度・湿度や炭酸ガス濃度と雨掛りなどの環境要因が大きく影響することは知られている。本研究では,特に高炉セメントを用いて建設され50年程度経過した構造物の中性化速度を促進中性化試験結果と比較して,環境の影響を整理した。加えて化学分析を使用して高炉コンクリートの炭酸化進行メカニズムについて検討を加えた。その結果,炭酸化の進行には雨掛りの影響が著しく大きいこと,pHと炭酸カルシウムの生成には関係が認められること,環境ごとに炭酸化の進行メカニズムが異なることなどが明らかとなった。
著者
横山 勇気 細田 暁
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学論文集 (ISSN:13404733)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.71-78, 2017 (Released:2017-09-15)
参考文献数
13

測定面の角度が表面吸水試験へ及ぼす影響は明らかではなく,コンクリートの表層品質を適切に判定できない可能性がある。そこで本研究では,表面吸水試験の正確な測定を乱す要因の影響を明らかにし,それらの影響を可能な限り排除した条件で角度の影響を検討した。その結果,コンクリートの含水率,水温と試験機材の温度差,吸水カップのゴムスポンジのクリープ変形が正確な測定を乱す要因であることを確認した。これらの要因による影響を可能な限り低減させた条件にて検討した結果,10分時点での表面吸水速度と10分間の総吸水量に着目し,t検定により測定面の角度が表面吸水試験に及ぼす影響はないことを明らかにした。