- 著者
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勝沼 信彦
- 出版者
- 公益社団法人 日本ビタミン学会
- 雑誌
- ビタミン (ISSN:0006386X)
- 巻号頁・発行日
- vol.78, no.9, pp.456, 2004-09-25 (Released:2017-10-10)
茶catechin類の生理作用は近年にいたりおおいに着目されてきている. 特に疫学的には発がん抑制作用が着目されている. Apoptosisに関しては相反する効果の報告が多くある. すなわち, ある系ではapoptosisを誘導するといい, 別の系ではapoptosisを抑制するとの報告がある. 現象的に系により相反する結果が報告されている. しかし, apoptosisに関与する酵素に対する直接作用の報告は全く無い. 我々は, apoptosisの発現に最も大切な役割を担っているcaspase-3を直接阻害することを見いだした. Catechin誘導体ではepigallo-catechin gallate(EGCG)およびepigallo-catechin(EGC)は弱く阻害した. 単独ではcatechinも, その立体異性体epi-catechin(EC)も全く阻害活性は無い. Gallo-catechin(GC)もgallateにも全く阻害活性は無い. すなわち, GCまたはEGCのどちらかの組み合わせを含有していることが必要であることが明らかとなった. 両コンポネントを兼ね備えているEGCGが最も強力であった. この阻害のモードは基質変化に対する反応速度曲線はシグモイドになり, Linewever-Burkの表現では1/vは1/sに対してEGCG存在下で直線にならずLog曲線となって, 1/[s]2をとると直線となった. 従って, この阻害モードはsecond order allosteric inhibitionであるものと考えられる. この阻害はin vivoの系でも起こり, 肝apoptosis誘導剤であるD-galactosamine投与により上昇した肝caspase-3の活性をEGCGは完全に抑制した. その結果D-galactosamineにより誘導されたapoptosisも抑制した. 核の凝縮反応, タンネル染色陽性も肝GOT, GPT上昇も抑制された. 〔論議〕永津客員 イスラエルのグループが, 緑茶のepigallo-catechinが, MPTP(1-methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine)による神経細胞死のapoptosisを防ぐ報告をしています. その機構にoxygen radicalを抗酸化作用で防ぐためと推定していますが, 先生の示されたようにcaspase-3を直接阻害している機構が考えられると思いますがいかがでしょうか. 勝沼会友 先生のご意見どおりcaspase-3の抑制による可能性は非常に高いと思います.