著者
南雲 康行
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.1146-1146, 2014 (Released:2016-09-30)
参考文献数
3

神経細胞の正常な機能発現には,神経細胞内外におけるCl-の適切な濃度勾配形成と維持が不可欠となる.正常な神経細胞内のCl-は,細胞外よりも低濃度に維持され,この状態が正常に保たれることで,GABAやグリシンによる細胞内へのCl-流入の適切な方向付けと即時的な強い抑制作用を発揮する.成熟神経細胞における細胞内Cl-濃度は,K+―Cl-共輸送体(K+―Cl- cotransporter:KCC2)によって調節される.神経細胞特異的に発現するKCC2は,Cl-の細胞外排出を担うイオン輸送体であり,これによって細胞内のCl-を低濃度に保つことができる.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Coull J. A. et al., Nature, 424, 938-942 (2003).2) Huberfeld G. et al., J. Neurosci., 27, 9866-9873 (2007).3) Gagnon M. et al., Nat. Med., 19, 1524-1528 (2013).
著者
スレス アワレ
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.455-455, 2018 (Released:2018-05-01)

母国ネパ-ルの高校生時代から化学に情熱があり,薬用植物から創薬の夢があったため,日本唯一の和漢薬研究所に留学にきた.言葉・異文化などに慣れるまで時間が掛かり,留学生時代は大変だった.博士課程修了後,ポスドク研究員・助教を経って,テニュアトラック特命教員の国際公募の機に応募・合格し,その後頑張って今の職に就いた.その旅の中結婚し子供に恵まれ,学術界以外の様々な場面より日本の伝統文化や特徴をさらに実感・理解できた.日本人の丁寧さおよび伝統の守りに心を打たれるが,日本人の曖昧な言い回しが苦手である.
著者
東田 道久
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.7_1-7_1, 2017

街ではみみにふたをして歩いている人をよく見かける。あれはよろしくない。みみは危険察知アンテナとして最も感度の良い器官であり、それにふたをすると危険に反応できない。著者は最近とんでもないスピーカーを買い、静寂を目指して引いていく音の響きの美しさにめざめた。そこには「精度と純度」がある。人生の引き際にもその美学を反映させたいが、そのためには種々の意見に純粋な気持ちでみみを傾け、脳を刺激し続けることが大切な気がする。

1 0 0 0 OA 第26回 仁丹

著者
本山 桜
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.52, no.9, pp.872-873, 2016 (Released:2016-09-02)

効能効果:気分不快,口臭,二日酔い,宿酔,胸つかえ,悪心嘔吐,溜飲,めまい,暑気あたり,乗り物酔い成分分量:【有効成分】阿仙薬,甘草末,カンゾウ粗エキス末,桂皮,丁字,益智,縮砂,木香,生姜,茴香,l-メントール,桂皮油,丁字油,ペパーミント油.【その他の成分】甘茶,トウモロコシデンプン,バレイショデンプン,中鎖脂肪酸トリグリセリド,d-ボルネオール,香料,銀箔,アラビアゴム末.用法用量:大人(15才以上)1回10粒,(11才以上15才未満)1回7粒,(8才以上11才未満)1回5粒,(5才以上8才未満)1回3粒,1日10回まで適宜服用(上記は現在販売している「仁丹」のものを記載).
著者
中上 博秋
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.204-208, 2003-03-01
参考文献数
12
被引用文献数
2
著者
木村 郁夫
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.9, pp.867-871, 2014 (Released:2016-09-17)
参考文献数
27

創薬ターゲットの大半を占めるGタンパク質共役型受容体(G protein-coupled receptor:GPCR)はこれまで広く注目されてきた.その中でも特に,その重要な生理機能から脂肪酸受容体の研究は,近年大きく進展している.例えば最近,この脂肪酸受容体のうちのGPR120がヒトの肥満の原因遺伝子であり,その一塩基変異が肥満と密接に結びつくことが明らかになっている.このことを含め,現在,機能解析が行われている各種脂肪酸受容体について,我々の研究成果を含めた最近の知見と糖尿病や肥満などに代表される生活習慣病の創薬ターゲットとしての展望も含めて概説する.
著者
湯地 晃一郎
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.136-138, 2018 (Released:2018-02-01)
参考文献数
12

近年、ゲノム編集技術の開発が急激に発展し従来手法に比べ、簡便・正確に、標的遺伝子機能の破壊・置き換えが、幅広い生物種で可能となった。ゲノム編集技術は、医療・生命科学のみならず、農業、畜産業、漁業、発酵業、化学産業など全産業に影響し、革命的変化を社会にもたらすであろう。社会的インパクトが最も大きいのはゲノム医療領域であり、急速に実用化される中で様々な課題が議論され解決されるであろう。
著者
綿引 智成
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア
巻号頁・発行日
vol.52, no.9, pp.850-854, 2016

大麻草を乾燥または樹脂化した大麻には,カンナビノイド(CB)と呼ばれる60種類以上の活性成分が含まれ,古来より鎮痛や食欲増進等の目的で使用されてきた.しかし,陶酔感,短期の記憶・認識障害,または起立性低血圧を引き起こし,さらには依存性リスクも有することから,一部の国や州を除き大麻の医療目的使用は禁止されている.<br>一方,1960年代に,大麻の主活性成分がΔ<sup>9</sup>-テトラヒドロカンナビノール(tetrahydrocannabinol:THC)であることが報告され,1990年代にはTHCの生体内標的分子としてカンナビノイド受容体タイプ1およびタイプ2(cannabinoid receptor type I and type II:CB<sub>1</sub> and CB<sub>2</sub>)が同定された.さらに,CB受容体に対する生体内アゴニストとしてアナンダミド(anandamide:AEA)および2-アラキドノイルグリセロール(2-arachidonoylglycerol:2-AG)が発見され,それらに対する主要分解酵素がそれぞれ脂肪酸アミド加水分解酵素(fatty acid amide hydrolase:FAAH)およびモノアシルグリセロールリパーゼ(monoacylglycerol lipase:MAGL)であることも明らかとなっている(図1).<br>本稿では,これらカンナビノイド系分子を標的とした医薬品開発状況を,各種データベースおよび文献情報からまとめたので概説する(表1).
著者
大野 忠夫
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.1-1, 2017 (Released:2017-01-01)

2016年7月1日,筆者は知り合いの医師から「オプジーボは,処方医師に専門医資格を求められるなど,未だ使用にハードルが高い薬であるため,自由診療であっても,あるいは自由診療だからこそ,今回の適用外使用は見合わせよう,ということになりました.」というメールを受け取った.直前の6月4日にシカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology:ASCO)では(ASCOの間はがんにかかるな,という冗談があるほど,全米のがん治療医が参加する主要学会),オプジーボのような抗体医薬によるがん免疫療法は,もはや臨床現場でも選択肢の1つとして当たり前の治療法になっており,既に話題のピークを過ぎていた.本抗体の劇的な効果がもともとは国内(京都大学)で発見されたにもかかわらず,がん治療の臨床現場レベルになると,我が国は遅れをとってしまっている.既に,「抗PD-1抗体(ペムブロリズマブ)がPD-L1高発現の進行性非小細胞肺がん患者に対するファーストライン治療として,無増悪生存期間および全生存期間において化学療法に対する優越性を示す」(2016年6月28日,https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/release/16/06/28/02114/)という現実が目の前に来ているのだが・・・.日本でもまもなく,「ファーストラインでがん免疫療法を行う」という意味を,医師は患者に説明しなければならなくなるであろう.しかし周知のように,がん免疫療法は手術・放射線・抗がん剤に継ぐ第4の治療法と期待されながら,実際には大学病院も含めて国内のごく普通の臨床現場では,未だに「まだ分からない治療法」なのである.すなわち,国内で承認済みの免疫チェックポイント阻害剤にとどまらず,身体に広く影響が及ぶがん免疫療法の真の意義については,我が国ではごく一部の専門医を除けば,臨床現場におけるほとんどのがん治療医がまだ理解していないのである.まして,医師の処方せんをチェックする薬剤師ではどうかと言えば,(少なくとも本稿執筆時点では)全員素人だと言われても仕方がない状況なのではないか.がん化学療法とがん免疫療法の関係で言えば,「まず抗がん剤治療ありき」から,「最初からがん免疫療法を実施する(これまでの抗がん剤治療に先んじて)」へ,優先順位が逆転するという,いまや常識のコペルニクス的大転換の時代に入っているのである.また,我が国では高齢化に伴ってがん患者は増える一方であり,既に年間37万人ものがん死者がいる.だからこそ,猛烈なスピードで進化しつつあるがん治療法(特にがん免疫療法)について,ファルマシアの読者にはぜひ勉強してもらいたいと願っている.少しでも勉強すれば,誰でもがん治療の臨床現場で最先端の知識を身につけられるのである.時代に置いてけぼりにされるより,はるかに面白いのではなかろうか.
著者
宮田 興子
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.1198-1198, 2017 (Released:2017-12-01)
参考文献数
1

6年制薬学部において、有機化学は医薬品をとりまく臨床現場での話題や問題を理解し、解決するための手段として利用すべき科目の一つである。今回、薬剤師国家試験にも取り上げられている大腸がん治療法、FOLFIRIおよびFOLFOX療法に焦点をあてて、この療法を有機化学的に理解するためにはどのような有機化学反応を理解している必要があるかを示して、医療における有機化学力の活用法の一つを示す。
著者
萬代 大樹
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.434-434, 2016 (Released:2016-05-01)
参考文献数
3

近年,有機分子触媒の分野は著しい発展を遂げており,遷移金属触媒と並ぶ重要な研究分野となっている.しかし,高いターンオーバー数(TON)あるいはターンオーバー頻度(TOF)を示す高活性有機分子触媒はいまだ報告例が少ないのが実情である.Songらは,100ppm(=0.01mol%)以下の触媒量でもシリル化による第二級アルコールの速度論的光学分割反応が円滑に進行することを見いだしたので,本稿で紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Müller C. E., Schreiner P. R., Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 50, 6012-6042 (2011).2) Park S. Y. et al., Nat. Commun., online 18 Jun. 2015, doi : 10.1038/ncomms8512.3) Zhao Y. et al., Nature, 443, 67-70 (2006).
著者
吉永 智一
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.565-569, 2017 (Released:2017-06-01)
参考文献数
15

エイズはHIVが感染することにより引き起こされる疾患であり、未だ世界的に深刻な感染症である。我々はインテグラーゼ阻害剤として世界で最初に臨床試験に進んだS-1360を創製したが、ヒトでの代謝が早く、薬効を確認できなかった。しかし、その過程で学びがあり、特に、「2メタル結合ファーマコフォアモデル」を見出し、多種多様な化合物をデザインし、GSKとの共同研究の中でドルテグラビルを創製した。本稿では、ドルテグラビル創製までの苦難の道のりを振り返りたい。
著者
吉永 智一
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.565-569, 2017

エイズはHIVが感染することにより引き起こされる疾患であり、未だ世界的に深刻な感染症である。我々はインテグラーゼ阻害剤として世界で最初に臨床試験に進んだS-1360を創製したが、ヒトでの代謝が早く、薬効を確認できなかった。しかし、その過程で学びがあり、特に、「2メタル結合ファーマコフォアモデル」を見出し、多種多様な化合物をデザインし、GSKとの共同研究の中でドルテグラビルを創製した。本稿では、ドルテグラビル創製までの苦難の道のりを振り返りたい。
著者
今野 博行
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.452-452, 2014

天然物由来の医薬品リード化合物が枯渇していると言われて久しい.重要な標的の1つであるケモカインレセプター阻害剤に限ると,天然物由来阻害剤は海綿由来異常アミノ酸含有デプシペプチド(エステル結合を持つぺプチド)類,アニバミン類のみではないだろうか.しかし,その阻害能は強力であり,これらの全合成,構造活性相関研究は,いまだ魅力的である.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Pelay-Gimeno M. et al., Marine drugs., 11, 1693-1717 (2013).2) Zhang F. et al., J. Org. Chem., 76, 7945-7952 (2011).3) Albericio F. et al., Nature Commun., 4, 2352 (2013).4) Coellp L. et al., Int. Appl. Pat., WO2010/070078A1 (2010).