著者
小西 英之 眞鍋 敬
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.310-314, 2014 (Released:2016-06-01)
参考文献数
14
被引用文献数
1

一酸化炭素(CO)は有機合成において最も重要な一炭素源として,古くから現在に至るまで実験室や工業プロセスに広く用いられている.しかしCOは無色無臭の気体であり,人間にはその存在が感知できず,さらにはわずか0.1%という低濃度ですら生命を脅かすほど危険な化合物でもある.このような高い毒性を有するCOは,入手容易ではあるが非常に扱いにくい物質であり,実験化学者たちもなるべく使いたくないというのが本音である.このような背景のもと,毒性の高いCOガスに代わる安全なCO等価体の開発を望む声が自然と高まってきた.実際,過去20年ほどで様々なCO代替品が発見されており,それらを用いる有機合成反応も数多く報告されている.筆者らは,ギ酸エステル等のギ酸誘導体が温和な条件下でCOを発生できることを見いだし,それを従来のCOガスの代わりに利用する実用的な有機合成反応の開発を行ったので,ここに紹介する.
著者
井本 大介
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.1145-1149, 2018

WHOが指定する顧みられない熱帯病(NTDs)と、それに対する新薬を開発する研究開発型NPOであるDNDiの成り立ち、DNDi日本事務所の役割を概説。NTDsに対するこれまでの日本の貢献と、より広い国際保健の分野における国際社会の潮流、日本政府の方針・戦略につき述べた後、スーダンで実施中のマイセトーマに対する臨床試験を例に、NTDs対策において具体的に求められる行動を考察した。
著者
林 周作
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.53, no.8, pp.820, 2017 (Released:2017-08-01)
参考文献数
3

潰瘍性大腸炎は,大腸粘膜にびらんや潰瘍を形成する原因不明の慢性炎症性疾患であり,近年急速に患者数が増加している一方で,既存の治療薬に対して抵抗性を示すことが多く,新規で有用な治療薬の創出が求められている.青黛は,リュウキュウアイやホソバタイセイ等の植物から得られる生薬で,国内では藍染めの染料として用いられている.中国では以前から,潰瘍性大腸炎患者に対して青黛を含む中医薬が処方されており,我が国で行われた臨床試験においてもその有効性が示されている.そこで本稿では,これまで十分に解明されていない青黛の潰瘍性大腸炎に対する有効性メカニズムに関して,Kawaiらが行った最近の研究成果について紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Sugimoto S. et al., J. Gastroenterol., 51, 853-861(2016).2) Kawai S. et al., J. Gastroenterol., in press.3) Medina-Contreras O. et al., J. Immunol., 196, 34-38(2016).
著者
鹿角 契
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.1140-1144, 2018 (Released:2018-12-01)
参考文献数
13

グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)は、日本政府、日本の製薬企業、ビル&メリンダ・ゲイツ財団等の共同出資によって設立された、グローバルヘルスR&Dに特化した日本発の非営利・国際機関であり、途上国で蔓延する感染症に対する治療薬、ワクチン、診断薬の研究開発を支援している。これまでに74件のプロジェクトに対して総額約132億円の投資を行い、8件が既に臨床試験段階に入っている。今後日本が感染症に対抗すべく創薬開発をさらに推進し、保健医療の面から国際的貢献を果たしていく役割は極めて大きい。
著者
小林 資正
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.554_1, 2014

大学紛争の終わり頃に大学に入学した私は,大学改革を求める(?)学生による大学封鎖やそれを解除するために導入された機動隊との衝突に訳も分からず熱くなったことが懐かしい.私が受けた講義についてはもうほとんど記憶になく思い出されるのは,講義時間の大半が製薬企業におられた頃の経験談だった先生の講義や,ひたすら板書されたことをノートに書き写すことに必死だった先生の講義があったことぐらいである.<br>楽しかったのは,3年次の午後にあった基礎実習である.ガラス細工に始まり,化学合成,ネズミの解剖,電気配線などいろいろと科学実験を経験させていただいたが,いつも誰よりも早くその日に課せられた項目の実験を達成しようと1人競争心を燃やしたものだった.4年生になると研究室に配属され,結果の見えない研究テーマをいただいて研究者の仲間入りをさせていただいた.結果が導き出されることが分かっている学生実習と違い,研究というのは単純な作業の積み重ねだけでは展開せず,試行錯誤の繰り返しにより見いだした工夫が成果を生むことから,興奮し面白さを体感することができた.<br>ひたすら大学入試の勉強のために費やしてきた高校時代を取り返すために,大学に入ってからは休みになったらあちこち旅行に出かけたり友達と麻雀したりして遊んでいたが,このまま卒業したのではつまらないと思うようになり,もっと研究がしたくて大学院に進学した.<br>その後,大学に居残って大学教員になり,あと数年で定年退職を迎えようとしている.その間,いろいろな制度の改革があり,大学教育も大きく見直されてきた.シラバスの作成,授業アンケート,アドミッションポリシー,薬学教育モデル・コアカリキュラム,安全管理業務,大学評価や教員の個人評価のほか,6年制の薬学科においては薬剤師養成のための共用試験制度や実務実習制度などなど枚挙にいとまがない.その結果,書類作りや教育業務がどんどん増えて,先生方にとってかなり負担になってきているのではと心配する.この先生方のご苦労が報われて,若き優秀な研究者が数多く育って欲しいものである.
著者
井上 雅文
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.242-243, 2015

<b>効能効果</b>:魚の目,タコ,イボ<br><b>成分分量</b>:(本品1g中) サリチル酸0.1g,添加物としてコロジオンを含む<br><b>用法用量</b>:1日4回,キャップ付属の棒で,1滴ずつ患部に塗布
著者
中嶋 幹郎 大山 要
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.53, no.8, pp.787-789, 2017 (Released:2017-08-01)
参考文献数
10

ジェネリック医薬品は先発医薬品と治療学的に同等であることが保証された医薬品であるが、医療関係者や患者からは、副作用による安全性への懸念の声があげられる。そこで、副作用の一つである薬剤性肝障害を評価するため、臨床試験とは異なるアプローチでヒト肝細胞キメラマウスとトキシコゲノミクスの手法を用いた新しい手法を開発し、様々な先発医薬品とジェネリック医薬品の薬剤性ヒト肝障害リスクの同等性を評価した。