著者
多胡 憲治
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.249, 2014 (Released:2016-04-19)
参考文献数
2

1980年代初めから,悪性新生物であるがんは日本国民の死因の第1位になっており,その治療法や予防などの対策が非常に重要な問題になっている.そのため,発がん機構を理解し,その抑制機構を解明することを目指した研究が急速に進んでいる.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Seluanov A. et al., PNAS, 106, 19352-19357 (2009).2) Tian X. et al., Nature, 499, 346-349 (2013).
著者
玉川 雅之
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.446-447, 2018 (Released:2018-05-01)

1954年に当社初のOTC医薬品として発売された殺菌消毒薬「リバガーゼ」。主成分アクリノールの優れた殺菌力によって傷口を殺菌、消毒する。本品は発売してから製品改良を重ねながら、ラインアップを拡げ今日に至っている。「リバガーゼ®F」は傷口につかない特殊フィルムを採用し利便性を高めている。2018年に創業119周年を迎えた当社の沿革や医薬品製造方針、アクリノールの生い立ちも併せながら、製品特徴や使用方法を紹介する。
著者
日髙 淳 花木 秀明
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.121-125, 2019 (Released:2019-02-01)
参考文献数
21

抗菌薬に対する耐性菌の出現と蔓延は世界的な問題であり、WHOをはじめ各国が国主導の対策を講じつつあるが、様々な要因により薬剤耐性(AMR)菌感染症治療薬の開発は停滞している。本稿では、新薬開発の代表例としてβ-ラクタマーゼ阻害薬およびその合剤の開発状況について概説し、新規抗菌薬の創薬促進のための考えや課題などについて述べる。
著者
太田 美里
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.53, no.10, pp.1010-1011, 2017

2013年から2年間,中国北京大学薬学院に博士研究員として在籍した時の体験談である。中国では博士研究員修了は博士号取得後の一つの経歴として重要視されており,登録から修了までの過程を述べた。滞在時には苦労した点が多く,実体験をそのまま記した。一方,中国の実験室は様々な機器が揃っており,実験環境が素晴らしい。また,中国の病院の生薬を用いた処方の調剤の様子を見学できたのでその実情について紹介した。
著者
阿部 誠治
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.346-347, 2018

2014年6月より2年間、米国ニューヨーク州に留学してきた。研究は統合失調症や自閉症に関する基礎研究でマウスを使った動物実験が主な内容であった。初めての海外生活、実験内容もほとんど初めてということもあり、なかなか上手くいかなかったが、徐々に慣れてきて何とかこなすことができた。留学を通して得られた物は多くあり、多くの方に海外での挑戦をして欲しいと思う。
著者
岸本 堅太郎
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.53_3, 2019 (Released:2019-01-01)

米国で民間保険会社から委託を受けたPBM(薬剤給付管理会社)が作成する医薬品の推奨リストのこと.通常は,①競合のない医薬品,②競合のある中で推奨される医薬品(臨床上の有用性,リベートなど),③競合のある他の医薬品,④後発医薬品に4分類されることが多い.また,全ての医薬品が収載されているわけではない.日本の薬価基準と違い,価格は載っていない.
著者
太田 茂
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.101, 2019 (Released:2019-02-01)

薬学教育が6年制の薬剤師養成課程を設けてから基礎系科目における教育はどのように変化してきたであろうか。またどのように変革すべきであろうか。基礎系科目について、臨床応用を意識しながら講義を行うことは重要であるが、それとともに学生が基礎系科目で得た知識を臨床現場において自発的に展開できる能力を培うように導くことも留意すべきであると思われる。
著者
大和 孝江
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.97-100, 2019 (Released:2019-02-01)

大塚グループの発祥会社である株式会社大塚製薬工場(徳島県鳴門市)の本社敷地内には、輸液の歴史、技術、製品を一堂に展示した輸液ライブラリーがあります。1940年頃のナス型と呼ばれるガラスアンプルから現在のソフトバツグに至るまでの輸液容器の変遷、現在の輸液製造のフローパネル、医療施設を再現した無菌調剤研修室などを展示しています。また、同敷地内には当社最初の事務所(兼)研究室であった施設もあります。
著者
二橋 亮
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.1086-1090, 2014

江戸時代の浮世絵にも描かれている「アカトンボ」は,日本人にとって最も馴染みの深い昆虫の1つといっても過言ではないだろう.童謡の「赤とんぼ(作詞:三木露風,作曲:山田耕筰)」は,ほとんどの人が口ずさむことのできる数少ない歌の1つであり,青空を群れ飛ぶアカトンボは,秋の訪れを告げる風物詩としても馴染みの深いものといえる.<br>日本人なら誰もが知っているアカトンボであるが,かつて日本や中国では,漢方薬として使用されていたことをご存じだろうか.ナツアカネやショウジョウトンボなど,特に赤みの強いアカトンボが,百日咳や扁桃腺炎,梅毒などに効果があると信じられていたのである.戦後もアキアカネやナツアカネの成虫を乾燥したものが薬局で売られているという紹介記事が出ており,緒方らは,ナツアカネとアキアカネを材料に,「赤蜻蛉成分の研究(第一報)」という論文を1941年の薬学雑誌で発表している.ちなみに,この論文ではアカトンボの具体的な成分が同定されたわけではなく,その後続報が発表されることはなかった.それでも,この論文の存在は,アカトンボの薬効成分に着目した研究があったことを伺わせるものである.<br>最近では,トマトの赤色色素であるリコペン(カロテノイドの一種)や,イチゴの赤色色素であるアントシアニン(フラボノイドの一種)に,強力な抗酸化能があることから,疾病に対する予防効果があるとも言われている.これらの例をみると,真っ赤なアカトンボの赤色色素も,もしかすると本当に健康に良いのかもしれないと思えてくる.その前に,そもそもアカトンボの赤色の正体は何であろうか.
著者
張 音実
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.472, 2017 (Released:2017-05-01)
参考文献数
3

ヒトの腸管,皮膚,口腔あるいは膣などの様々な部位には,多種多様な微生物(細菌と真菌)が常在している.これは“微生物叢(microbiota)”と呼ばれ,いわば微生物の集団社会である.この微生物叢は宿主と絶妙な相互作用を示しながら,宿主の健康維持や感染防御などに寄与している.しかしながら,微生物叢の構成バランスが破綻すると疾患へ進展することがある.例えば,炎症性腸疾患,大腸がん,尋常性乾癬,アトピー性皮膚炎,気管支喘息,糖尿病や歯周病では,患者と健常人ではその微生物叢は大きく異なることが示されている.乳がんは,乳管や小葉上皮から発生し,その発生には女性ホルモンであるエストロゲンが関与すると考えられているが,不明な点も多い.Urbaniakらはヒトの乳房組織にも微生物が存在し,乳がん患者と健常人では異なる微生物叢が形成されていることを発見した.これは,乳がんの発症には特定の微生物が関与している可能性を示唆するものである.本稿では,乳房組織の微生物叢と乳がん発症の関連性に関する論文を紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Muszer M. et al., Arch. Immunol. Ther. Exp., 63, 287-298(2015).2) Urbaniak C. et al., Appl. Environ. Microbiol.,82, 5039-5048(2016).3) Hieken T. J. et al., Sci. Rep., 6, 30751(2016).
著者
新薬紹介委員会
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.343, 2018

本稿では厚生労働省が新たに承認した新有効成分含有など新規性の高い医薬品について,資料として掲載します.表1は,当該医薬品について販売名,申請会社名,薬効分類を一覧としました.<br>本稿は,厚生労働省医薬安全局審査管理課より各都道府県薬務主管課あてに通知される"新医薬品として承認された医薬品について"等を基に作成しています.今回は,平成30年1月19日付分の情報より引用掲載しています.また,次号以降の「承認薬インフォメーション」欄で一般名,有効成分または本質および化学構造,効能・効果などを表示するとともに,「新薬のプロフィル」欄において詳しく解説しますので,そちらも併せて参照して下さい.<br>なお,当該医薬品に関する詳細な情報は,医薬品医療機器総合機構のホームページ→「医療用医薬品」→「医療用医薬品 情報検索」(http://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/)より検索できます.
著者
笹井 泰志
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.89, 2016

私が学生だったおよそ20年前と比較して,研究機器は目覚ましい進歩を遂げている.私よりも年上の方々からすれば,その変化に対する驚きはなおさらのことと思われる.機器そのものの性能も上がり,分析できなかったものが分析できるようになったり,見えなかったものが見えるようになった時には大いに感動した.また,多くの操作がソフトウェアで制御できるようになり,特別なテクニックを必要とせず,プチッ,プチッと幾つかクリックするだけでデータが取れるようになった.そして,海外メーカーの機器でさえ,日本語に対応したマニュアルやソフトウェアを提供しており,誰もが気軽に使用できるようになった.これらは我々研究をする者にとって,もちろん素晴らしいことである.
著者
苅谷 嘉顕 本間 雅 鈴木 洋史
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.415-419, 2018 (Released:2018-05-01)
参考文献数
11

分子標的薬は、副作用発現により治療中断となる場合があり、副作用機序解析や予測の基盤確立は大きな課題である。生体を多階層システム的に捉える手法には、チロシンキナーゼ阻害薬の副作用解析など複数の成功例があり、システムファーマコロジー手法は副作用解析に有効と考えられる。現在、in silico解析を含む様々な手法が開発されつつあり、システムファーマコロジーに基づく副作用解析や予測は更なる発展が期待される。