- 著者
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吉里 勝利
- 出版者
- 公益社団法人 日本化学会
- 雑誌
- 化学と教育 (ISSN:03862151)
- 巻号頁・発行日
- vol.35, no.6, pp.514-517, 1987
私たちの体の表面は, 言うまでもなく"皮膚"で覆われている。皮膚が傷つくと, 傷跡が必ず残る。またひどい時は, ケロイド状に盛りあがって醜くなる。このような時, 本物そっくりの皮膚を人工的に作って, これを傷の部位に移植してやると, 傷跡やケロイドは, 目立たなくなるのではないか。皮膚の50%以上もの大火傷(やけど)を負った人は, 移植すべき自分の皮膚も足りず, 生命を救うことすらむずかしい。この時, 本物そっくりの人工皮膚が作れればどんなにありがたいことか。化学や生物学の進歩は著しい。このような, 夢に近かった人工皮膚の考えも現実のものとなりつつある。人工皮膚を作る時, 主役となるのは, コラーゲンと細胞である。これらを使って, どのようにして皮膚を作るのか, そしてこの人工の皮膚は, 上に述べた医学的問題の解決にどこまで役立っているのかを解説する。