著者
山本 工
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.64, no.11, pp.564-565, 2016-11-20 (Released:2017-05-01)
参考文献数
2

私たちは食事をして,健康を維持しているが,料理をする道具として一番身近に[包丁]がある。包丁の切れ刃の部分は金属部分であるが,この刀身部がどのような材質からできているのか,またこの材質が近年どのように変遷し進化してきたかを述べたい。包丁などの刃物の作製技術は,単なる金属加工と思われる節もあるが,その技術の真髄は,金属冶金工学や材料科学など複数の学問が融合した技術に裏付けされていることがわかる。
著者
槌間 聡
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.59, no.8, pp.418-421, 2011-08-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
3

高校化学の教科書では,サリチル酸を芳香族カルボン酸とフェノールの性質を共に持つ化合物として取り上げ,サリチル酸メチルとアセチルサリチル酸の二つの誘導体への反応とそれらの性質などについて学ぶ。どちらも非常に身近な医薬品であり教科書で扱われる有機化合物の中でも匂いやその作用がイメージしやすい有機化合物の代表的なものであろう。ここでは,それらの反応をもう少し詳しく考える。
著者
松浦 紀之
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.242-245, 2017-05-20 (Released:2017-11-01)
参考文献数
10

高等学校では,有機化合物と人間生活とのかかわりとして染料について学習する。アイの葉から得られるインジゴやベニバナの花から得られるカルタミンなどの天然染料は,「草木染め」として馴染み深い。高等学校の教科書にはアニリンブラックやアゾ染料などの合成染料が取り扱われているが,染料が繊維に染着される仕組みに関する詳細な記述はない。本稿では,高等学校での有機化合物と色に関する扱いや,著者が指導した繊維の染色にかかわる生徒研究(課題研究)について紹介する。
著者
米田 力
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.178-179, 2014-04-20 (Released:2017-06-16)

国際的にも理科の学力向上の必要性が示され,日本でもいわゆる理科離れに対応した授業の展開が中学校の理科でも必要になってきているが,一方で,教育困難校といわれるような学校では,理科に興味を向けさせることすら容易ではない。そこで,理科通信(以下Science Times)と名づけた補助教材を活用した授業を展開し,その際,教科書に載っていない項目であっても積極的に取り上げた。さらに,生徒の興味・関心の向上について調査を行い,理科の学習において,科学的事象に強い興味・関心を持った生徒や,意欲的に学習に取り組む生徒の増加が見られた。筆者が行っているこのような試みについて紹介する。
著者
小林 良生
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.240-242, 1988

和紙と墨は1000年以上の風雪に耐えた記録材料である。実用性からみれば, 近年では冠婚葬祭など特別の行事にしか使用しなくなったが, 芸術のジャンルでは書に活かされている。紙を構成しているセルロースは陸上の植物を鉄筋コンクリートに例えれば鉄筋に相当し, リグニンはコンクリートに当たる。セルロースの中でも最も強靱な靱皮(じんび)繊維を美しく配列して作った紙が和紙である。"どこの国を振り返ってみたとて, こんな味わいの紙には会えない"とは柳宗悦の言葉であるが, この和紙以上の紙は活発な研究開発が行われている新素材を駆使してもできていない。一方, 墨の主要成分である炭素もまた最先端を行く新素材の一つである。白と黒のコントラストのきいたこの二つの記録材料が, なぜ今なおみずみずしい新しさを持ち続けているのか本稿で考えてみよう。
著者
畑田 耕一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.41-45, 1990

合成繊維やプラスチックはいまや日常の生活とは切離して考えることのできない存在になっている。これらはすべて高分子でできている。我々の身体や動植物もそのかなりの部分が高分子である。また, 最近は, 医療, エレクトロニクス, 情報, 通信などの分野にも高分子が広く応用されるようになってきた。本稿では, このような"くらしに役立つ高分子"のいろいろな性質がどのようにして生まれるのかを, いくつかの高分子製品を例にして述べてみたい。
著者
乾 智行
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.282-285, 1989
被引用文献数
1

石油は, 近代文明を支えるエネルギーや化学原料の資源として欠かせないものになっている。数十年前, 国際間の緊張から我が国への石油の供給が途絶えた。そのころ石炭から石油を合成する必死の努力が京大などで行われ, ついに, 安価な鉄を材料にしながら, 高価なコバルト系に劣らないものが完成して, 生産にも使われた。しかしその技術は, 到底, 大量消費を支えるまでには至らなかった。十数年前, 石油危機が訪れた際, 従来とは原理も手段も異なる画期的なガソリン合成触媒がアメリカから登場した。それは, 特別な微細構造をもつゼオライト系触媒で, 昔の触媒に比べると, 格段に高い性能が発揮される。ニュージーランドに生産プラントが建てられたが, 経費が高くつくのでまだ普及には至っていない。しかし, この成功は, 多くの研究者を勇気づけ, 今やこの分野では第3の技術革新へ向けて研究が進められている。
著者
永田 利明
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.56, no.7, pp.320-323, 2008-07-20 (Released:2017-06-30)

学生サークル東京大学教養学部化学部では,1959年(昭和34年)以来ほぼ毎年,「実験教室」と称して北海道や東北地方の中学校で実験の実演活動を行っている。実験を目で見て,実際に自分の手で行うことを通して,中学生に化学への親しみを持ってもらうことが目的である。本稿ではこの「実験教室」の取り組みについてその歴史と近年における実施例を紹介する。
著者
河野 克典
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, pp.550-553, 2007
参考文献数
7
被引用文献数
1

大きなビール工場には年間何万人ものお客様が見学に訪れる。多くのお客様の期待は出来立ての「新鮮なビール」の試飲であり,製造工程見学後の試飲会場では「いつも飲んでいるビールより断然美味しい」といった声が良く聞かれる。近年の醸造技術の進歩により,ビールの品質劣化はかなり良くなってきたが,新鮮な香味が持続する,いつまでも美味しいビール造りは醸造技術者の夢である。酸素をどのように上手くコントロールするかが美味しいビール造りの鍵の1つとなっている。「鮮度」という価値向上に向けて,最近の知見やビール工場での取り組みについて説明する。
著者
今城 実
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.501-507, 1990-10-20 (Released:2017-07-13)

1973年, 1979年の2度にわたる石油危機では, 化石燃料消費速度低減という観点から自動車の燃費改善が強く求められたが, 1980年代末からクローズアップされているCO_2増加による地球温暖化という環境問題への対応の観点から, 燃費の大幅な向上が再び強く求められるようになってきた。現在一般的自動車用エンジンとして用いられているのは, ガソリンエンジンあるいはディーゼルエンジンで, ともに内燃機関という熱機関の一種である。このような内燃機関の理想的サイクルと実際のサイクルの違いを中心に, 効率改善のための方法, 問題点について述べる。
著者
滝川 洋二
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.52, no.12, pp.828-831, 2004
参考文献数
1

世界発の実験に挑戦というレポート課題を生徒に出している。かなり優れた成果を出す生徒も少なくない。その背景にはガリレオ工房の実験開発のノウハウがある。生徒への指導から学んだ方法も含めて紹介する。