著者
梅原 昌宏 山田 康夫
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.139-156, 2012 (Released:2012-08-09)
参考文献数
36
被引用文献数
1

少子高齢社会の影響もあり,医療保険制度の財政は非常に厳しい状況に陥っている。そして国民医療費の抑制を目的とした自己負担率の引き上げが過去幾度か行われてきたが,効果は限定的であった。しかし近年,スイッチOTC化の進歩とともに医療サービス需要を代替するセルフメディケーションが注目されはじめている。セルフメディケーションが普及することは医療サービスの価格弾力性を大きくし,自己負担率引き上げによって医療サービス需要を抑制させ,その効率化を図ることが期待できる。本稿では対象疾病をアレルギー性鼻炎および花粉症に限定し,WEB調査によるアンケートを行った。そして,医療サービス需要関数,セルフメディケーション需要関数をProbit分析によって推定し,自己負担率が現在平均の2割8分から最大6割まで引き上げられたときに関連する要因をχ2独立性の検定,差の検定によって分析した。分析の結果は,交差価格弾力性が0.54~0.90と大きくなり,自己負担率引き上げによる医療サービス需要の抑制効果が高くなる可能性があることが確認された。しかし,自己負担率が6割まで引き上げられると自然治癒を選択する割合が高くなり健康水準の低下とそれに伴う国民医療費の増加が懸念されるようになる。そして,性別,年齢,自己負担率,世帯労働所得,薬の知識,自覚症状といった要因の分析を行ったが,自己負担率の引き上げに関連するものは薬の知識と自覚症状ということが明らかになった。
著者
小口 正義 藤森 愛子 小口 はるみ 跡部 治 永田 和也 両角 和雄 藤森 洋子 立花 直樹 蜂谷 勤
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.97-105, 2010 (Released:2010-07-28)
参考文献数
14
被引用文献数
3 2

抗菌薬適正使用は感染患者の確実かつ安全な治癒,耐性菌出現と蔓延化の防止,および医療費の効率的運用の観点から対処するとされ,特に抗菌薬の使用法管理は経済的にも重要な問題となっている。そのため抗菌薬の使用法管理としての対策(抗MRSA薬・カルバペネム系薬の使用申請制度,監視制度,警告通知制度),DPC制度導入などがどの様に薬剤費に影響したかを調査・分析した。その結果,抗菌薬の総使用量は調査期間中ほぼ一定であったが,カルバペネム系薬の使用量,および抗菌薬の総使用金額は半減した。さらに平均在院日数も減少した。これらのことから当院の抗菌薬適正使用の取り組みにより,スペクトラムの広域な抗菌薬から狭域な抗菌薬への変更,および高価な抗菌薬から安価な製品への置き換えなど,適切な抗菌薬の選択が進んだものと考えられた。抗菌薬適正使用による抗菌薬の使用法管理は,薬剤費に大きなコスト削減効果を及ぼしていることがわかった。
著者
片山 晶博
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.37-48, 2018-04-30 (Released:2018-05-24)
参考文献数
4
被引用文献数
2 2

我が国では「保険医療機関及び保険医療養担当規則」第18条の規定「保険医は,特殊な療法又は新しい療法等については,厚生労働大臣の定めるもののほか行ってはならない」としており,国内で承認されていない医薬品・医療機器等を使用する場合には原則として保険診療では実施できない。例外として,保険外併用療養費制度が存在し,その枠組みの中に治験や先進医療といった評価療養が存在する。一方で,このような既存の制度では最先端の医療技術・医薬品等への迅速なアクセスが困難な患者が一定程度存在し,そのような患者が先進的な技術等へのアクセスを確保できるよう,2016年より「人道的見地から実施される治験」や「患者申出療養」といった新たな制度が施行された。これらの制度が開始されて1年以上が経過しているが,それぞれの制度の概要を説明した上で,両制度の現状及び課題等について言及する。
著者
坂本 秀樹 安川 文朗
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
pp.2022.005, (Released:2022-10-14)
参考文献数
22

超高齢化社会を迎える日本にとって,日常生活のQOLや生産性を低下させるだけでなく,認知症発症の要因となり得る難聴の対策は喫緊の課題の一つである。しかし,難聴対策として有効な補聴器の装用率は,他の先進国と比較して日本が著しく低く,補聴器の普及について改善の余地が大きい。補聴器はこれまで聴覚障害者のための福祉補装具の一つとして認識され,流通やビジネスの視点からはほとんど議論されてこなかった。欧米先進国では認知症発症抑制への期待や技術イノベーションによる補聴器の機能向上から装用対象者の拡大が進み,補聴器ビジネスの潮流に変化が生じつつある。世界の補聴器の99%は欧米のメーカーが生産しており,日本でも輸入補聴器のシェアは70%を超えることから,今後,海外の補聴器ビジネスの変化が,日本のそれにも大きく影響を与えることが予想される。そこで本稿では,これまであまり議論されたことが無かった日本の補聴器ビジネスに焦点を当て,欧米の現状と比較しながら,今後その規模が拡大してゆくと考えられる日本の補聴器業界のビジネスモデルにおける現状の分析と課題,および今後の展望について検討を行った。
著者
吉住 健一
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.21-35, 2022-04-28 (Released:2022-05-26)
被引用文献数
1

感染症流行時における自治体の初期の役割は感染予防の呼びかけとなる。但し,感染症の種類が危険なものである,又は非常に感染力が強いと分かった場合には,自治体は感染拡大防止のために住民等に行動抑制を要請することになる。住民に効果的な協力をしてもらうためには,自治体と住民の関係が良好である必要がある。良好な関係を作るためには,情報の共有と相互理解が前提となり,行政は明確な目標を持った方針の説明をしなくてはならない。また,感染拡大している時に,住民の暮らしを守ることが必要である。新型コロナウイルス感染症を収束させる取り組みは,感染拡大防止が目的であり,感染者や感染者が所属する店舗の摘発が目的ではないことを理解することが大切である。新型コロナウイルス感染症の収束に向けた有効な対策の一つとして期待された新型コロナワクチンは,人類が初めて接種するタイプのワクチンで不安に思う人も多かったが,効果が理解されると接種希望者が増えた。自治体は,ワクチン接種を希望する人にできるだけ早く接種をする努力をした。また,自治体は,希望しない人にワクチン接種の有用性を伝えることにも努力をした。感染防止に協力的な人とそうではない人の対立を防ぐこと,感染者の人権を守る代わりに感染拡大防止に協力してもらうことは,未知のウイルスと人類の戦いをするうえで重要ことであると考えている。
著者
堀籠 崇
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.239-250, 2010-10-29 (Released:2010-10-27)
参考文献数
31
被引用文献数
2

本研究の目的は,占領期におけるインターン制度の形成過程という歴史的フィルターを通じて新医師臨床研修制度の課題を明示するところにある。そこで本研究では,インターン制度の狙いの解明に焦点をおく。本研究が用いた資料は,第一にスタンフォード大学フーバー研究所所蔵のSylvan E. Moolten Papers,1945-1986である。本資料により,インターン制度導入意図を解明し,医学教育審議会(CME)内部の連合国最高司令官総司令部(GHQ/SCAP)と日本側委員との関係性を再検証した。第二に国立国会図書館憲政資料室所蔵のGHQ/SCAP Record内の公衆衛生福祉局(PHW)文書である。本資料に含まれるCME議事録の精査から,CMEの発したインターン制度構想について明示した。結果は次の通りである。インターン制度の真の狙いは,地域医療と医学教育システムとの融合による,最新医療の市民への還元及び開業医のレベルアップにあった。それは,インターン制度を通じた学閥解体とともに国立メディカルセンター計画による医療提供システムの再構築により果たされる予定であったが,前者の,制度としての練りこみ不足と,後者の頓挫とによって失敗に終わった。この結果より,新臨床研修制度が医療提供システムに与える影響の検討と,日本の医療システム全体をいかにデザインするかという視点からの当該制度の見直しの必要性が示唆された。
著者
印南 一路
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.71-85, 2021-07-08 (Released:2021-07-13)
参考文献数
16

2020年末,新型コロナ禍の合間を縫って,長年議論されてきた後期高齢者の2割自己負担導入,紹介状なしの大病院外来受診時定額負担の問題が決着した。定率であれ定額であれ,患者自己負担の導入は,国民の負担増加を伴い,かつ医療団体の強い反対が予想される実現困難な改革のはずである。にも拘わらず,これらの課題が決着できた理由は何か。この疑問に答えるため,官邸機能強化に関する制度的考察,合意形成のガバナンス(意思決定規律)に関するモデル構築,上記2事例についての事例過程追跡の3つを行った。その結果,(1)1994年以来の政治制度改革,省庁と会議体の再編,内閣機能の漸進的強化により,重要政策会議等の閣議決定を用いた官邸主導による合意形成が効率化されたこと,(2)どのような合意形成手段が使われるかは,課題の政治性のレベルに依存するが,課題の政治性のレベルは課題固有の特徴と一致し,特に選挙への影響予想と関係団体の抵抗の強さに依存すること等が示された。
著者
石川 ベンジャミン光一
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.61-72, 2016-04-30 (Released:2016-05-13)
参考文献数
8

病院情報システムの普及に伴って診療に関わる記録が電子化され,医療機関の壁を超えて集積されるようになった結果,我が国でも大規模な医療情報データベースの整備が急速に進みつつある。また大規模医療データについては,臨床疫学的な視点からの医療の学問的・技術的側面に関わる分析だけでなく,社会サービスとしての医療の費用・効率や持続可能性についての観点からも分析が行われるようになってきている。中でも厚生労働省が実施する「DPC導入の影響評価に関する調査」では,医療機関が作成するデータセットに入院治療を受けた患者の住所地が7桁郵便番号として記録され,また調査の結果報告において医療機関の実名入りの傷病別症例数・入院日数などが公表されることから,地理情報システム(Geographical Information System,以下GIS)を利用した診療圏の分析や,社会経済学的な属性を活用した分析への注目が集まっている。本稿では,GISが取り扱うデータの形式や,住所から緯度経度による地理データへの変換,GISを用いた地理情報の分析手法について説明すると共に,具体的な分析事例を示すことでGIS分析の現状についての紹介を試みる。また,GISを利用した研究を進めていく上で直面する課題から主なものを取り上げ,今後に向けた展望について記す。
著者
中芝 健太 橋本 英樹 古井 祐司
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.155-164, 2021-07-08 (Released:2021-07-13)
参考文献数
20

企業活動において従業員の健康への投資のあり方を模索する「健康経営」が注目を集めている。しかし,その目的や意義について健康経営の取り組みを行うステークホルダー間で共通見解・統一的定義が存在するわけではない。本研究では,健康経営という概念の背景として,産業保健における健康管理の発展,企業に対する投資の環境整備,保険者による医療費適正化という少なくとも三つの流れがあることを確認したうえで,「健康経営」を巡り行政・民間それぞれのステークホルダーが目指すものと,「健康経営」活動を評価するため提案された既存尺度の測定項目との整合性について考察した。主要な政策的ステークホルダーとして,経済産業省ヘルスケア産業課,厚生労働省保険局ならびに厚生労働省労働基準局を挙げ,それぞれの政策意図と「健康経営」の捉え方を既存資料から解釈した。また,「健康経営」の取り組みを実際に展開する民間・準民間ステークホルダーを政策的ステークホルダーに対応する形で整理し,それぞれの取り組みの性質や目的の違いを描出した。そのうえで,健康経営に関わる主要な評価指標として三つの尺度を取り上げ,測定される項目の異同や解釈について比較検討した。以上の作業を通じて,「健康経営」のコンセプトを意義ある実践につなげるためには,実施主体の目指す価値に応じて「健康経営」の目的を明示的に設定したうえで,評価尺度や評価項目を戦略的に選択・測定・解釈することが必要であると考えられた。
著者
奥原 剛 木内 貴弘
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.91-106, 2020

<p>本稿では進化生物学的視点を採用したヘルスコミュニケーション研究・実践の可能性を考察する。進化生物学の視点で見ると,人の行動には至近要因と究極要因がある。これまでの行動変容理論・モデルを用いたヘルスコミュニケーションは至近要因に着目してきたが,至近要因は人の行動の要因の一部に過ぎない。人の意思決定や行動を考えるには究極要因にも目を向ける必要がある。人の心や行動は,生存と繁殖上の問題を解決するよう自然淘汰を経てデザインされてきた。したがって,人は生存と繁殖及びそれに関連する社会的協力・競争の欲求を持つ。これらが人の究極要因レベルの欲求である。人の究極要因レベルの欲求が,意思決定や行動に影響を与えることが,心のモジュール理論や認知機能の二重過程理論の関連研究で示されている。これらの先行研究をふまえ,ヘルスコミュニケーションで対象者のより良い意思決定を支援するために「何を」「どう」伝えたらよいかを提案し,がん対策への示唆を示す。</p>
著者
中島 孝子
出版者
The Health Care Science Institute
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.39-51, 1998

日本の医療は, しばしば「3待って3分間しか診療してもらえな」と批判される。これは,主に大病院で観察される現象である。長時間待つことが予想されるにもかかわらず,患者はなぜ,多くの医療機関の中から大病院を選択するのだろうか。<BR>第一に,医療保険制度の存在により医療需要がもともと多いことが指摘できる。一般に医療保険があると,ないときに比べて医療サービスに対する需要は高まる(中西他,1991)。第二に,情報が供給側に偏在していることが挙げられる。一番目に,通常,患者は医師ほど医学的知識を持たない。二番目に,小規模の医療機関と大病院が緊密に連携していない可能性がある。三番目に,ある特定の医師の能力の高低を,患者は正確に評価できない。患者が大病院を志向する理由として,上のような不確実性の存在が挙げられる。つまり,患者は,設備やスタッフの充実した大病院に行くことで,これらの不確実性に対して一種の「保険」をかけているとみることができる。<BR>本論文の目的は,以上の状況を単純なモデルによって説明することである。<BR>モデルでは,患者が直面する不確実性は,病気の重症化の可能性の程度と,小規模医療機関がとる行動に由来すると単純化する。結果として,これらの不確実性のために,患者は長時間待つにもかかわらず大病院へ行くことを選ぶ。その傾向は,病気の可能性が高いほど,金銭的なベネフィットを重視する小規模医療機関の割合が大きいほど強くなる。逆に,大病院での待ち時間が長くなると,小規模医療機関を選択するようになる。また,重症化の可能性が小さいタイプにおける重症化の確率が大きくなると,患者は大病院を選択する傾向を強めるが,重症化の可能性が大きいタイプにおける重症化の確率が,患者の行動に与える影響は一定ではない。
著者
岡本 悦司
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.95-120, 2008

韓国医療制度の発展の歴史を,戦前の資料も発掘して概説するとともに,現在の医療保険制度の仕組を概説する。19世紀には,欧米の宣教師らが西洋医学をもたらし病院を作った。1910~1945年の日帝時代には医療従事者の多数を日本人が占めていた。日本人は終戦(光復)とともに引き上げたが,病院等のハードウェアは戦後の韓国医療の基盤となった。ただ日本が1927年に導入した医療保険制度は当時の朝鮮に導入されることはなく,医療保険は韓国が自力で作ることとなった。朝鮮戦争を経て,1960年代には「漢江の奇跡」と呼ばれる経済発展が起こり,民間病院や医大の量的拡大が続いた。1963年には医療保険法が制定され1989年には皆保険が達成された。1997年の経済危機を契機に医療保険の統合一本化,医薬強制分業そして請求書のオンライン化が進められ2000年に達成された。現在の医療保険は国民健康保険公団という単一保険者で運営され,被用者と自営業者の所得補足格差は,自営業者については申告所得だけでなく財産や自動車も加味して賦課することで解決している。患者負担率は医療機関の種類によって差を設け,医療機関間連携を促進しつつ,またDRGの試行やオンライン化された請求書情報をデータウェアハウス化して積極的な活用を審査評価院において行っている。
著者
堀 勝洋
出版者
The Health Care Science Institute
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.41-56, 1997

本稿では, (1) 高齢者の介護・医療の分野を中心に, 社会保険方式と社会扶助方式の比較を行うとともに, (2) 高齢者の介護・医療を社会扶助方式で行うべきであるという提案の問題点を指摘した。<BR>(1) については, 17の評価基準ごとに理論的および現実的な面で, 社会保険方式と社会扶助方式のどちらが優れているかについて検討した。理論的および現実的の両面で社会保険方式の方が優れているのは,経済システムとの適合性,給付の普遍性・権利性,給付水準の高さ,財源確保の容易さおよびサービスへのアクセス・選択性の面である。上記の両面で社会扶助方式の方が優れているのは,支出統制の容易さおよび財源にかかわる納付上の便宜・事務コストの面である。財源面で保険料と租税のどちらが優れているかおよびサービス供給面で社会保険方式と社会扶助方式のどちらが優れているかは,基本的にその具体的な仕組みに依存する。結論としては社会保険方式の方が総体的に優れているということができ,わが国の社会保障が社会保険方式を中核としているのは理由がある。<BR>(2)については,まず高齢者は介護・医療のリスクが高いため保険になじまないとする主張に対し,全国民を対象とする社会保険では高齢者に対する介護・医療もリスク分散という保険原理が適用できることを明らかにした。また,高齢者の介護・医療を社会扶助方式で行うと,財源の確保が困難になること,財政制約により所得制限の導入や給付水準の引き下げが行われる恐れがあることなどを指摘した。