著者
野崎 園子
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.99-103, 2007-02-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
16
被引用文献数
1

パーキンソン病の摂食・嚥下障害の特徴は, 患者の約半数に嚥下障害が存在し, 病初期から存在することもあり, 身体機能の重症度とは必ずしも関連しないこと, 摂食・嚥下障害の自覚に乏しく, むせのない誤嚥が多いこと, 摂食・嚥下の各相にわたる多様な障害があることである. 抗パーキンソン病薬の副作用としてのジスキネジア, 口腔乾燥, off症状が摂食・嚥下機能を悪化させることがあり, また, 自律神経障害による食事性低血圧では, 時に失神するため, 食物を窒息するリスクがあることなどがある.その対処法としては, 患者の訴えがなくても, 疑いがあれば嚥下機能を評価し, “On”時間を延長させ, “On”時間帯に摂食させるように抗パーキンソン病薬(とくにL-ドーパ)を調整する. また積極的に嚥下訓練を行うとともに, 必要に応じて, 補助栄養や経管栄養, 外科的介入を行う必要がある.
著者
田中 昭吉 古川 哲也 石本 三洋
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.43, no.10, pp.1045-1048, 1989-10-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
5

糖尿病は一般に膵内分泌機能の異常をきたす疾患である. インスリンやグルカゴンなどのホルモン分泌を調節し, 血糖を一定に保つ機構における中枢モノアミンの役割について薬理学的に検討し以下の結果を得た. ラツトの血糖は約65mg/dlで, インスリン値は45μU/mlであつた. ストレプトゾトシン処置により血糖値は1.6倍に上昇し, インスリン値は約30%低下した. カテコールアミンの投与は血糖値を上昇させた. セロトニンの投与は血糖値を低下させた. 脳内ノルアドレナリン含量を低下させる処置により血糖値は有意に低下した. また脳内セロトニン含量を増加させる処置により血糖値は低下し, 低下させる処置により上昇した. 以上, 血糖調節作用においてノルアドレナリン作動神経は血糖を上げる方向に働き, セロトニン作動神経は血糖を下げる方向に働く可能性を示唆した.
著者
田中 栄一
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.173-179, 2006-03-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
6

進行したステージの筋ジストロフィーでは, 運動機能障害が重度なために, 身の回りのことや, 趣味活動への参加が少なくなっていく.作業療法では, 患者が求める活動に必要な運動と環境要素を分析し, 活動に挑戦し易い環境調整を支援する. また, 作業療法士は, 環境への適応を促す過程を通して, 患者の興味を掘りおこし, 患者自身の問題解決能力を育む.
著者
石倉 彰 池田 正人 田口 博基 高畠 靖志 泉 祥子
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.307-311, 1996-04-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
14

SCCFの治療には沢山の報告があるが, いまだ議論のあるところである. 3例について報告する. 第1例は57歳女性, 右脳血管写で低還流CCF(BarrowのType B)をみた. Matas手技のみで消失した. 第2例は62歳女性, 両側血管写で低還流CCFをみ(Type D), Matas手技, 左外頸動脈の塞栓, 結紮にて軽快した. 第3例は66歳女性, 両側血管写にて高還流CCF(Type D)をみた. Matas手技と経静脈的塞栓術を行った. 塞栓は白金コイルを内頸静脈, 下錐体静脈を経て海綿静脈洞に充填した. まとあると, SCCFの治療は, 最初Matas手技を2から4週間行い, 効果がみられない場合, 経静脈的塞栓術を施行する. カテーテルと塞栓物質の技術的進歩によって, 経静脈的塞栓術はSCCFにとって最も効果的, 安全な方法の1つと考えられる.
著者
恒元 博 奥原 政雄
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.273-274, 1955 (Released:2011-10-19)
参考文献数
1

血管腫が放射線療法により消退することから, 痔結節が照射によつて縮小することは容易に想像できることである. なお, 療法が非観血的であることと, 瘢痕性狭窄などの障害をきたすことのないのもその特長とされる.私達は痔結節に対してラジウム療法を試み, 二, 三の知見を得たので, ここに症例を挙げて報告する.
著者
朝野 晃 鈴木 則嗣 佐藤 由美 丹野 治郎 大井 嗣和 明城 光三 和田 裕一 吉川 和行 金藤 博行
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.676-678, 1998-11-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
8

妊娠子宮の尿管の圧迫による急性腎不全はまれである. また, 単腎症例の尿管閉塞は致命的な危険をともなう. 我々は, 先天性単腎症の妊娠経過中に尿管の閉塞による無尿をきたし, 腎痩造設術を行った後に妊娠36週で経膣分娩した1例を経験したので報告する.
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.23-54, 1948-02-05 (Released:2011-10-19)
著者
鈴木 裕太郎
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.33, no.12, pp.1191-1198, 1979-12-20 (Released:2011-12-02)
参考文献数
30

甲状腺機能低下症では呼吸困難, 動悸, 全身の浮腫, 腹水, 心陰影の拡大, 心電図の異常所見など心臓病を疑わせる症状や臨床所見を主徴として発症することがある. このような場合, 甲状腺機能低下症が根底にあることが解るまでに年月を要することが多い. ここに6症例を報告し考察を行つた. 心不全との鑑別は最も困難なものの一つであり重要である. 心陰影の拡大は多くの場合心嚢水腫によるものであるが, 心筋の異常による心拡大もあるようである. 心嚢液が高蛋白, リバルタ反応陽性であることは炎症または悪性腫瘍転移によるものと誤られやすいので注意を要する. 6例のうちの1例はSick Sinus Syndromeを主徴として発症したもので今までに報告例を見ない. このような心臓循環器系の症状を主徴とした甲状腺機能低下症の診断にはまずその存在を疑うことが重要である. 病気がカモフラージされているのでmasked hypothyroidismとも呼ばれるが, 臨床医にとつて日常の診療に際し注意すべきことと考える.
著者
波多野 和夫 大塚 俊男 濱中 淑彦
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.69-72, 1996-01-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
11

著しい語間代(Logoklonie)の言語症状を呈した初老期発症のAlzheimer病の1例の症例報告を行った. 語間代はKraepelin(1910)の教科書に記載された有名な現象であるが, これまでほとんど取り上げられることなく, 議論の対象としては等閑視されて来たといってよい. 我々は, 自験例との臨床的経験を通じて, この語間代という言語症状の輪郭を明らかにし, その現象と発生に関わる要因として, (1)音節レベルの水平性反復, (2)脳器質性言語障害, (3)発話発動性の保存, (4)精神運動性解体としての固執性症状, (5)前頭葉損傷との関係, (6)経過の問題という特徴を取り上げ, その意味を考察した. 併わせて類似の病的言語現象として, (a)吃音, (b)子音・母音再帰性発話, (c)部分型反響言語を挙げ, これらとの鑑別診断についても考察した
著者
折橋 洋一郎 垣田 康秀 立石 香織 西脇 俊二 石田 元男
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.48, no.12, pp.1009-1015, 1994-12-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
19

炭酸リチウム5~15年長期投与の男性23例, 女性25例, 計48例の脳波所見を調べ, 脳波異常は55歳未満で33.3%, 55歳以上で53.3%と55歳を境に脳波異常が増し, 炭酸リチウムの長期投与が脳波上の加齢現象を促進するのではないかと考えられた. また, 55歳未満群33例で脳波異常は男性30.4%, 女性48.0%と明らかに女性の方が多く, 異常所見の内容は, α波の周波数が遅い汎α活動, θ波の混入など軽度の脳機能低下を示すものが多く, 他の抗精神病薬の脳波への影響と大差はないようであった. リチウムresponderが女性に多いことを合わせ考え, 脳波異常をきたすメカニズムそのものが, 抗躁ないし予防効果と関係があるのではないかとの想定を述べた.血清リチウム濃度, 内服期間, 甲状腺腫の有無, 予防効果など他の因子と脳波異常の間にははっきりした関係がみとめられなかった.
著者
有馬 靖子
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.59, no.9, pp.501-505, 2005-09-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
2

本稿では, 患者家族の立場からPSP患者の闘病生活の大変なこと, 米国のPSP協会の活動, わが国におけるPSP支援プロジェクトの3つについて述べる. 闘病生活で大変なことについては, 他の患者家族の体験と提言も盛り込んだ. 問題として挙がったのは, 全般的な情報不足に加えて医師・病院からの情報不足, 診断確定までの時間が長いこと, 転倒による怪我, 相談する場所め欠如, 胃ろうや気管切開の選択にまつわる問題, 頻回の吸痰の大変さ, 長期療養型施設・在宅支援システム・ホスピスの不足(QOLの確保の困難, 医療行為が増えると受け入れ施設が減る), チーム医療の欠如, 医療チームと患者家族間のコミュニケーションの欠如である. PSP支援プロジェクトは, 米国PSP協会の資料の翻訳を手がける翻訳プロジェクトと患者家族のための日本語のメーリングリストの運営を合わせたものを指す. 翻訳プロジェクトに関しては厚生労働省精神・神経疾患研究委託費(15指-3)「政策医療ネットワークを基盤にした神経疾患の総合的研究」(主任研究者湯浅龍彦)研究班PSP小委員会のメンバーから多大なご協力をいただいている.
著者
大村 一郎 山崎 芳徳 小林 康記 三木谷 政夫 香川 和徳 鼻岡 浩 小泊 好幸 日野 理彦
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.127-131, 1977-02-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
10

健康成人, 看護学院の運動部員, 非運動部員, 高校女子バレー部員, 長距離マラソン選手の血清CPK値を測定した.この結果1)血清CPK正常値は男7.6±6.0u, 女子7.4±3.7uである.2)以下いずれも安静時のCPK値であるが, 看護学院の3年目運動部員では, 11.6±4.2uであり, 高校女子バレー部員では22.0±10.2uであつた. 実業団所属の長距離マラソン選手では, 39.5±20.7uであり, 運動経験が豊富なもの程安静時血清CPK値も高値であつた.3)次に運動前後のCPK値を見ると, 高校女子バレー部員で2時間の激しい練習の直前直後でのCPKの変動は, 直前19.1±9.2u直後は, 25.0±9.8uであつた. マラソン選手で1時間の練習前後でのCPK値はほとんど変動が見られなかつた. 4)以上の結果から指のバチ状化: Shadowgraphの分析による定量的観察バチ指の量的表現について, これまでPlethysmography, Unguisometer, Spherometerなどを用いての方法が行われてきたが, 1967年Reganによつて表現のParameterとしてはHyponychial angleが最良であることが示され, 著者らは1970年にBentleyとClineによつて発明されたShadow-graphを用いて各極疾患について, これを測定した. 疾患はCystic fibrosis 50人, 気管支喘息25人, 先天性心疾患25人で, チアノーゼ群5人, 非チアノーゼ群20人, 健康人25人で, 結果は正常のProfile angleは168.3±3.7°, Hyponychial angleは180.1±4.2゜で, Cystic fibrosisでは, これらの角度が179.0±6.2゜, 194.8±8.3゜と上昇, 気管支喘息は170.9±4.1゜, 185.4±6.4゜でわずかに上昇, 先天的心疾患では179.7±4.8゜, 195.5±2.5゜でCystic fibrosisによく似た上昇を示したが, チアノーゼのない先天性心疾患はコントロールに近い値を示した. Profile angleもHyponychial angleともにコントロール群, Cystic fibrosis群において年令と性に関連が認められた. 以上のようにProfile angleとHyponychial angleはバチ指に関係した疾患の鑑別に有用な方法であることが示された. なお著者は, WaringらがDigital phalangeal depth/Depth at the digital interphalngeal joint (DPD/IPD)が, バチ指を表現するのに正確な方法であるとしていることを述べている.疾病診断に際し, CPK値の高値をみた時には, スポーツ歴を聞くことも忘れてはならない.
著者
酒井 美緒
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.59, no.12, pp.669-675, 2005-12-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
35

human immunodeficiency virus type-1(HIVと略す), およびその感染による免疫低下にともなう中枢神経障害はさまざまである. MR imagingはこれらの診断・治療効果評価を含む経過観察に重要な役割を果たす. 本稿ではHIV感染に関連する代表的な中枢神経疾患について概説し, MR imageの特徴を述べる.
著者
山暗 雄一郎 渡辺 匡子 北川 佳代子 福田 知雄
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.45, no.9, pp.839-844, 1991-09-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
4

昭和63年から平成元年にかけて, アシクロビルとβ-Interferonとの併用療法により, 7例の帯状疱疹入院患者を治療した結果について, 疱疹後神経痛に対する効果を中心に, アシクロビル単独で治療した11例の入院患者と比較しつつ, 検討を加えた.併用療法で治療した7例中1例(14.3%)に神経痛が残った. 一方, 対照群では11例中3例であった. また発熱などの副作用は全く認められなかったが, 1例のみに一過性の血中トランスアミナーゼ値の軽度の上昇がみられた.VZウイルスのCF抗体価の上昇の仕方をみると, PHNの残る症例では128倍以上の高値を示していた.今回は症例数も少なく, β-Interferonの併用効果についてはまだ明らかに有用という結論は出せないが, さらに検討する価値はあろう.
著者
阪井 裕一
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.32-35, 2002-01-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
5

現在小児の救急医療体制が整備されていない大きな原因の一つは, 重症患者を受け入れる能力のある小児ICU (Pediatric ICU)を備えた施設がきわめて少ないという点にあると思われる. 医療施設が集中している東京においてさえ, 小児の重症患者に対して呼吸循環管理をいつでも施行できる, という病院はほとんどないのが実情である, 小児の重症患者を絶対断らずに24時間体制で受け入れる, という北米の小児病院のような施設があると, 各施設の救急担当医は重症患者を安心して送ることができる. 卒後教育の面においても, 心肺蘇生などの技術を教える場となるべき小児ICUがないことが, 大きな痛手となっている.日本においても各地の小児病院が患者のニーズに目を向けて救急医療を行い, 重症患者を24時間体制で受け入れる小児ICUを整備することが, 小児救急システムの問題解決につながると考える.
著者
角 保徳
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.594-600, 2002-10-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
7

近年, 口腔状態と種々の全身疾患との関連性について興味が持たれている. とくに, 誤嚥性肺炎は, 要介護高齢者にとって一般的かつ医療費のかかる疾患である. 誤嚥性肺炎による病死は老年者の健康の主要な問題と認識されている. 一方, 歯科医師や歯科衛生士によって行われる専門的口腔ケアは, 施設入所高齢者の誤嚥性肺炎の危険性を減少させたと報告されている. しかしながら, 専門的口腔ケアは, 在宅や施設入所の要介護高齢者に常に提供できるものではない. 高齢者の口腔自己管理能力は加齢とともに低下し, その分野における看護・介護職員の役割の重要性は高まりつつある. 看護・介護職員は, 有効な口腔ケアを提供する重要な役割を担っている. しかし, 要介護高齢者の口腔ケアをいかに提供するかに関する研究はほとんど見られない. 看護・介護職員による口腔ケアは, 時間的制約, 他人の歯を磨く技術の困難さ, 要介護高齢者の非協力性および必要性の認知の欠如により, 必ずしも適切であるとはいい難い. 加えて, 看護・介護職員による口腔ケアは不十分な視野と不適切な姿勢で行われている. ゆえに, 口腔ケアを十分行えない患者に対する単純かつ有効な口腔ケア手順(口腔ケアシステム)の開発が緊急の課題となっている. システム化された口腔ケア手順はいまだ発表されておらず, 看護・介護職員は適切なガイドラインすら提供されていない. かかる背景のもと, われわれは要介護高齢者向けの口腔ケアシステムおよび口腔ケア支援機器を開発し, その概略を本稿に記載した.
著者
影山 洋 中山 成一 小松 崎修
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.46, no.11, pp.912-915, 1992-11-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
16

ヘパリンによる低アルドステロン症の1例を報告する. 症例は59歳の男性, 右手の脱力を主訴に来院, 神経学的に右上肢の不全麻痺と深部反射の亢進を認めた. 入院時CTスキャンでは異常がみられなかった. 入院後右片麻痺の進行がみられたため1000U/hrのヘパリンを投与した. ヘパリン投与後7日目に血清カリウムが6.3mEq/lとなった. 血漿レニン活性, 血清コルチゾールは正常で血漿アルドステロンの低値と尿中カリウム排泄量の増加がみられた. ヘパリン投与の中止により血清カリウム, アルドステロンは正常化した. ヘパリンによる低アルドステロン血症はきわめてまれであり, 本邦では本症例が第1例と思われる
著者
宮尾 秀樹 一杉 安秀 深井 清子 小野 章 川添 太郎
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.566-569, 1982-06-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
12

輸血に伴う低カルシウム血症はACD血中のクエン酸が, 患者血中のイオン化カルシウムと結合することによりおこる. 今回, 我々は胃静脈瘤破裂の患者が, 急速輸血にも, 昇圧剤にも, ステロイド剤にも反応しない重篤な循環虚脱に陥り, カルシウム剤投与により, 急激な循環動態の改善及び心電図上, 心室性期外収縮の消失, ST成分の改善, Q oTc時間の改善をみた. 一般には, 輸血によるイオン化カルシウムの低下は一時的で, 輸血終了後, 次第に上昇してくるといわれている. その理由として, 血中に入つたクエン酸の細胞外液中への拡散, 肝臓によるクエン酸の代謝, 腎臓によるクエン酸の排泄などがあげられている. しかし肝硬変の患者では, クエン酸代謝が障害されているため, 大量輸血時には, 積極的にカルシウム剤を投与すべきであると考える.
著者
木村 哲彦
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.40, no.8, pp.749-755, 1986-08-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
11
被引用文献数
5

欧州で行われている乗馬療法を器械に換えることによつて, より正確な負荷を与えることが可能であるように, また, 時間と動きとの関連において正確な, 平衡保持機能, 姿勢保持機能の評価・促通訓練を可能ならしめるために, シミユレータの開発を行つた. 器械は(1)前後水平, (2)左右水平, (3)上下, (4)前後傾斜, (5)左右傾斜, (6)首振り, の6つの運動要素をもち, 馬が移動する際の加速度以外は時間運動範囲を含めて可変である. 健常人で予備的試験を行い, 器械の人体に与える評価を行つた. 肉眼的観察(多重露出撮影法により記録), 筋電図学的検索を併せ行つた. 姿勢保持機能の正常な脊柱の可橈性を有する者では, 極めて低い労力しか必要とせず, 筋活動電位で見るかぎり努力性筋放電の10分の1の電位しか認められない. 評価・治療に応用するにあたり, 器械の開発を終えたので報告する.