著者
野々垣 政志 阪井 裕一 山本 満
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11764, (Released:2020-09-03)
参考文献数
15

【目的】重症熱傷受傷後に早期から理学療法を行い,退院できた幼児を経験したので報告する。【症例】2 歳の男児,重症熱傷に対し人工呼吸管理下に治療を開始した。熱傷面積は体表の72% で,頸部・体幹・右上腕は全周性にⅢ度熱傷であった。入院後5 日目より理学療法を開始し,気管挿管中は鎮痛下で関節可動域練習を行った。抜管後,関節可動域練習や歩行練習を実施したが,本人が痛いと拒否するため介入に難渋した。また,筋力低下により基本動作には重度の介助を要した。入院後103 日目以降,熱傷の軽快とともに歩行練習等を行えるようになり,運動機能は急速に回復し,152 日目に退院した。関節可動域は全周性にⅢ度熱傷であった部位以外には制限を認めず,運動機能は屋外歩行が可能となった。【結語】2 歳の重症熱傷児でも人工呼吸管理中の鎮痛下より関節可動域練習を行い,熱傷の時期に応じた運動療法を施行することで,屋外歩行が可能となるまで回復した。
著者
黒澤 茶茶 清水 直樹 宮嵜 治 中川 温子 阪井 裕一 宮坂 勝之
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.27-31, 2009-01-01 (Released:2009-07-25)
参考文献数
9
被引用文献数
2 2

【目的】小児心肺蘇生での至適な胸骨圧迫の深さ(強さ)について検討した。【対象】1歳以上8歳未満の小児で,胸部CT検査を行った66例と,蘇生後に死亡し,病理解剖された10例。【方法】CT画像から胸郭前後径と胸骨後面-椎体前面間距離を計測し,胸骨圧迫時に残存する胸骨後面-椎体前面間距離を推計した。病理解剖所見から,胸骨圧迫による有害事象の有無を検討した。【結果】胸郭前後径の2分の1ならびに3分の1で胸骨圧迫したと仮定した際の残存距離は,各々1.5±3.4 mm,22.6±4.4 mmであり,2分の1で胸骨圧迫した際には98%で10 mm未満,30%でマイナス値となった。病理解剖所見上,有害事象は皆無であった。【結論】小児心肺蘇生での適切かつ安全な胸骨圧迫の深さは,「胸郭前後径の3分の1」と考えられた。小児の心肺蘇生法の指導にあたっては,この結果を正しく理解し,至適指標に準じた充分な強さ(深さ)の胸骨圧迫が実施される指導が肝要である。
著者
阪井 裕一郎
出版者
三田哲學會
雑誌
哲学 (ISSN:05632099)
巻号頁・発行日
vol.125, pp.105-141, 2011-03

特集 : 人間科学投稿論文The purpose of this paper is to clarity the axis of confrontation regarding the freedom of marital surname choice and to seek for the standpoint for justifying the freedom. From analyzing the discourses on the discussion of allowing marital couples to choose separate surnames (Fuufu-bessei) and my interview research for couples with separate surnames, I attempt to show the axis of confrontation and to examine the validity of legislation of this right.We can largely identify the different and opposite positions as four types: (A) those who insist that marital couples should have the same surnames, (B) those who support the legislation of the right for choosing separate marital surnames, (C) those who criticize the present family register (koseki) and support an ideal society based on the individuals, and (D) those who criticize the family resister but also require the legislation of the right for marital surname choice.With this classification, this study suggests the follows. Firstly, we can not take history or tradition as the grounds for the argument. Secondly, we should not regard the freedom for choosing separate surnames in the same light as requirement for equality of sexes, feminist ideals or individualism. In effect, some feminists or individualists continue to criticize the legislation of the right for choosing separate surnames.This study also suggests that the freedom of marital surname choice should be required in terms of not individualism but 'individual freedom'.
著者
阪井 裕一郎 本多 真隆 松木 洋人
出版者
The Kantoh Sociological Society
雑誌
年報社会学論集 (ISSN:09194363)
巻号頁・発行日
vol.2015, no.28, pp.76-87, 2015-08-07 (Released:2016-10-12)
参考文献数
21

In many developed societies, there is an increase in the number of couples who are cohabiting in unregistered marriages. This trend is often used as an example to indicate changes in consciousness that are part of the transformation of a modern society. Those who have adopted the Japanese term “jijitsukon (unregistered marriage)” to refer to their cohabitation often regard themselves as “married,” yet the question of “why couples in an unregistered marriage choose that option” has received little attention to date. We conclude that the practice of “unregistered marriages” is neither a simple secession from the idea of a conventional “marriage” nor is it restricted to a “traditional” vocabulary. Instead, it should be viewed in terms of a “reinterpretation” of marriage.
著者
阪井 裕一郎
出版者
慶應義塾大学大学院社会学研究科
雑誌
慶應義塾大学大学院社会学研究科紀要 : 社会学・心理学・教育学 : 人間と社会の探究 (ISSN:0912456X)
巻号頁・発行日
no.81, pp.109-117, 2016

書評1. はじめに2. 論点 2-1. 論点① 「複数愛」とは何か 2-2. 論点② ポリアモリストにとって「所有」とは何か 2-3. 論点③ 愛という言葉について 2-4. 論点④ ポリアモリストになる契機 2-5. 論点⑤ ポリアモリストの属性について 2-6. 論点⑥ ポリアモリーの法制化をめぐって 2-7. 論点⑦ オープン・マリッジをめぐるジェンダー 2-8. 論点⑧ ポリアモリーを通じてモノガミー社会を問いなおす 2-9. 論点⑨ 親密関係における民主主義 2-10. 論点⑩ オープンな関係について3. おわりに
著者
境野 高資 本間 多恵子 辻 聡 石黒 精 阪井 裕一
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.241-246, 2013-05-15 (Released:2013-07-24)
参考文献数
22
被引用文献数
1

【背景】東京都では年に約4万件発生していた搬送先の選定困難を改善するため,平成21年9月より東京ルールを開始した。東京ルールでは,5つの医療機関に照会または連絡時間20分以上を要しても搬送先が決定しない中等症以下の救急搬送事案に関し,地域救急医療センターなどが調整・受入を行うと定められた。【目的】東京ルール制定以後,小児の搬送先選定先困難事案の発生状況を調査し,その要因を検討する。【対象】平成21年9月から平成22年12月に,東京ルールに該当した15歳未満の事案。【方法】東京都福祉保健局資料をもとに後方視的に検討した。【結果】東京ルールに該当した事案は,15歳未満の小児では119,486件中224件(0.2%)であり,15歳以上の702,229件中16,104件(2.3%)に比べて有意に少なかった。小児例では男児が153件(68.3%)を占め,年齢は隔たりなく分布していた。該当事案の発生は土日祝日1.2件/日,平日0.3件/日で,準夜帯が143件(63.8%)を占めた。傷病種別では外傷が180件(80.4%)を占め,うち177件(79%)は骨折・打撲・挫創などであった。【考察】東京都における搬送先選定困難事案の中に少ないながら小児例が含まれていた。小児例は土日祝日および準夜帯に多く発生し,多くが整形外科領域を中心とした外傷症例であった。小児の搬送先選定困難事案を改善するため,救急告示病院における準夜帯の小児整形外科救急診療体制の再構築が必要であると考えられた。【結語】東京都における小児の搬送先選定困難事案は土日祝日および準夜帯の整形外科領域に多く,対応した医療システムの構築が求められる。
著者
宮坂 勝之 鈴木 康之 阪井 裕一
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.187-193, 1999-03-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
11

不可逆的な臓器不全に対しては, 十分な代替人工臓器が開発されるまでは, 臓器移植が最終的な治療選択である. とくに先天性の臓器奇形への対応が医療の中心ともいえる小児医療では, しばしば臓器移植医療が唯一の選択肢となる. しかし, わが国での移植医療は, 生・死体腎移植, 生体部分肝移植が臨床的に実践されているものの, 小児医療で最も重要だと考えられる心臓移植や肺移植に関しては, 海外へ出向いての移植医療に頼っているのが現状である.小児患者が臓器提供を受ける場合, 臓器提供源として臓器のサイズや機能の面では成人患者とはきわめて異なった要素や条件の関与が考えられる. 提供臓器の物理的サイズの影響のみを考えても, 移植臓器によっては臓器提供者自身も小児である必要があるなど, 小児医療特異の諸問題がある. しかし6歳未満の脳死判定基準が存在せず, 15歳未満の小児での臓器提供が実質的に困難な現状は医療関係者にも十分に理解されていない. 海外への移植患者の搬送の実際面も含め我々が考えるべき問題点をまとめた.

4 0 0 0 OA 家族の民主化

著者
阪井 裕一郎
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.36-52, 2012-06-30 (Released:2013-11-22)
参考文献数
53
被引用文献数
1

本稿は, 戦後家族研究の再検討を通じて, 「家族の民主化」という理念が, 個人化や多様化によって特徴づけられる後期近代においても, なお重要な理念であることを明らかにするものである.本稿ではまず, 戦後すぐに家族研究の課題として掲げられた「家族の民主化」の理念とその限界を再考する. これまで民主化論には数多くの批判がなされ, 近年の家族社会学でこの用語が理念として取り上げられることはなくなった. しかし, 民主化論に対する批判は, その限界が, 民主化の理念そのものにではなく, 「家族の例外化」という前提にあったという重要な問題点を看過してきた. ここでは, 戦後の民主化論が「家族の例外化」に立脚してきたことを問題化したうえで, 「家族の民主化」の実現の可能性をA. ギデンズの「親密性の変容」や「民主的家族」の議論から探究する. ギデンズの議論にもまた多くの批判が寄せられているが, これらの多くはギデンズの意図を正確に把握していない可能性がある. ギデンズの議論は, 近年高まりつつある「家族の脱中心化」の議論へと接続することではじめて有効になると思われる. そして, 「家族の民主化」という理念が「家族の脱中心化」という理念と相補関係にあることを明らかにする.家族関係と民主主義の原理は相容れないとする前提こそが, これまでの家族論の背後仮説であった. しかし, 必要なのは家族と民主主義の関係を真摯に検討することであり, 「家族の民主化」という理念をとして, 家族社会学の中心的課題へと引きもどすことなのである.
著者
阪井 裕一郎
出版者
社会学研究会
雑誌
ソシオロジ (ISSN:05841380)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.89-105,177, 2009-10-31 (Released:2015-05-20)
参考文献数
42
被引用文献数
1

The purpose of this paper is to consider the process whereby marriage, arranged by nakoudo (go-betweens), was institutionalized during the Meiji period. The subject of countless articles, this marital pattern has characterized Japanese marriage. However, it was not “Japanese tradition” but “Samurai tradition.” While Western modernization resulted in the individualization and secularization of marriage, Japanese early modernization institutionalized, paradoxically, arranged marriage based on familism. This marital pattern then began to gain wide acceptance as a “legitimate marital pattern” among the general population. Few studies have addressed the institutionalization process of arranged marriage and go-betweens during the course of modernization. However, it is essential to study the process because there was a strong social norm: marriage without a go-between was not “correct marriage” and love marriages had been sanctioned long since the Meiji era. Given that the Civil Code in Meiji did not prescribe the use of go-betweens, we need to focus rather on ideology, because this norm seemed to be widespread, not by laws but through the press, education and morals. By examining the ideological conflict between Individualism and Familism, discourses of “civilization” by intellectuals, nakoudo marriage as an “invention of tradition,” and nakoudo as respectable or desirable, this paper shows that arranged marriage did not always confront the idea of “liberty” or “love” but was institutionalized in parallel with the popularization of love (marriage). Nakoudo marriage was a marital pattern that overcame contradictions between Familism and Individualism. The nakoudo, rather than restraining individual will or love, functioned as a symbol of the social approval oflove.
著者
木戸 功 戸江 哲理 安達 正嗣 鈴木 富美子 阪井 裕一郎 松木 洋人
出版者
聖心女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

全国家族調査(NFRJ)18幹事会に代表の木戸が出席し、量的調査と連携して実査に臨むことを確認した(4/15)。その後、日本家族社会学会会員に本研究会(NFRJ18質的調査研究会)への参加を呼びかけ研究代表者と研究分担者を含む33名の研究会組織を編成し連絡用メーリングリストを作成した。本年度は3回の研究会を開催し、また小規模であるが量的調査チームと連携した予備調査も実施した。第1回研究会は学会大会終了後に大阪市立大学で開催し(9/11)、本調査の概要についてあらためて確認した上で、インタビュー調査班をサブテーマごとに4つ作り、班ごとに対象者と調査項目について検討した。フィールドワーク班についても対象選定の方法と、データ収集の方法について意見交換した。第2回および第3回研究会はそれぞれ2部構成として前半で招聘講師からのレクチャーと討論、後半で各研究班ごとの実査に向けた検討とその進捗状況の報告を実施した。第2回研究会はライフヒストリー研究およびそのアーカイヴ化についての専門家として小林多寿子氏(一橋大学大学院)を招き早稲田大学にて開催した(11/23)。第3回研究会は生活史研究の専門家として岸政彦氏(立命館大学大学院)を招き大阪市立大学にて開催した(1/27)。いずれの研究会においても専門的な知見の提供を受けるとともに本研究会が実施する調査に対しての実践的な助言をえた。並行して木戸がNFRJ 18の全体研究会に参加し(11/12)量的研究チームとの連携を保った。これらの研究会でのやりとりなどを通じて、対象選定の方針と調査項目の選定については具体的な案がそれぞれの班より示されるにいたった。また量的研究チームが実施した予備調査において、追加調査となるインタビュー調査への協力の可否をたずねる項目を追加するとともに、応諾者のうち9ケースの予備調査を実施した(3月)。
著者
阪井 裕一郎
出版者
慶應義塾大学大学院社会学研究科
雑誌
慶應義塾大学大学院社会学研究科紀要 (ISSN:0912456X)
巻号頁・発行日
no.70, pp.91-111, 2010

論文This paper aims at examining why and how the norm of arranged-marriage by go-between was strongly persistence during prewar Japan, though since Meiji era it had been gradually difficult to deny the idea that love was essential for marriage. Therefore, it is important to rethink the relationship between love marriage and arranged-marriage. Through analyzing the ideology and the logic of the discourse on arranged-marriage or marital mediation, this paper investigates this question.Firstly, I examine what logics coped with the contradiction between the affirmative discourses on love and the persistence of arranged-marriage norm. This study shows that there was the dichotomy of discourses on love: public( social) love and private (individual) love, and that the affirmative discourses on love contained a moment of encouraging the normalization of arranged-marriage.Secondly, by analyzing the discourses on eugenics and its national policy, I investigate the complex of the ideology regarding marital mediation. In the wartime Japan, it was thought that the scientific principle that a person's character depended on heredity should be applied to the regulation of people's marital behaviors and mate choice by the hand of the Government. On a variety of principles based on eugenics, the contradiction or rivalry between arranged marriage and love marriage was dissolved.These results suggest that the arranged-marriage was not simply traditional or familistic marriage, but also the marriage suitable to modern ideals. Therefore, it is important to describe the relationship between arranged-marriage and love marriage as complement rather than as binomial.
著者
中澤 裕美子 前川 貴伸 小穴 慎二 石黒 精 太田 さやか 寺嶋 宙 柏井 洋文 久保田 雅也 堤 義之 中澤 温子 師田 信人 阪井 裕一
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.175-179, 2013 (Released:2013-06-30)
参考文献数
10

多発性硬化症の診断は,病巣が単発性の場合,しばしば脳腫瘍や脳炎・脳症との鑑別が困難になる.今回われわれは延髄に2 cm大の腫瘤性病変を認め,当初脳幹部グリオーマが疑われたが,最終的に多発性硬化症の診断に至った11歳男児例を経験した.患児は下肢痛の出現後,約2週間の経過で四肢麻痺,意識障害,呼吸不全が進行した.急性の臨床経過がグリオーマの臨床経過と合致せず,診断が困難であったため,手術自体の危険性を説明の上,組織生検を施行した.組織像では明らかな腫瘍細胞を確認しなかったこと,及び症状が急性に進行していることから非腫瘍性疾患の可能性を考え,ステロイドパルス療法を施行したところ速やかに回復し,ほぼ障害を残さずに退院した.その後初発から9か月後に他の部位に再発し,臨床的に多発性硬化症の診断に至った.脳幹部の組織生検は容易ではないが,適切な治療法選択の上で極めて重要な役割を果たした.
著者
阪井 裕一
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.32-35, 2002-01-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
5

現在小児の救急医療体制が整備されていない大きな原因の一つは, 重症患者を受け入れる能力のある小児ICU (Pediatric ICU)を備えた施設がきわめて少ないという点にあると思われる. 医療施設が集中している東京においてさえ, 小児の重症患者に対して呼吸循環管理をいつでも施行できる, という病院はほとんどないのが実情である, 小児の重症患者を絶対断らずに24時間体制で受け入れる, という北米の小児病院のような施設があると, 各施設の救急担当医は重症患者を安心して送ることができる. 卒後教育の面においても, 心肺蘇生などの技術を教える場となるべき小児ICUがないことが, 大きな痛手となっている.日本においても各地の小児病院が患者のニーズに目を向けて救急医療を行い, 重症患者を24時間体制で受け入れる小児ICUを整備することが, 小児救急システムの問題解決につながると考える.
著者
阪井 裕一郎
出版者
Japanese Council on Family Relations
雑誌
家族研究年報 (ISSN:02897415)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.75-90, 2013-07-10 (Released:2017-02-14)
参考文献数
28

明治期から現在まで日本社会を描く際に、たびたび「家族主義」という言葉が使用されてきた。本稿の目的は、この言葉が登場した明冶から大正期における知識人の言説の分析を通じて、その意味を探究することである。最初に、明治期における家族主義を称揚する言説を分析し、この時期の家族主義が封建批判や救済事業とともに語られていた事実を確認し、その意味と目的を明らかにする(第2 節)。続いて、社会主義者や民主主義者といったいわゆる「革新」の側から提唱された、「家族主義」や「家庭」の言説を検討する。そこから家族主義批判が内包していたある種の逆説を明らかにする(第3節)。続いて、近年の政治哲学の議論を参照しつつ、社会統合の基盤としての「情念」に着目することで、家族主義と民主主義の関係を理論的に問い返す(第4節)。家族主義と民主主義を対立的に捉える従来の見方では看過されてしまう問題を明らかにし、そのうえで家族主義を克服する新たなつながりの可能性を展望する(第5節)。
著者
阪井 裕一郎
出版者
三田社会学会
雑誌
三田社会学 (ISSN:13491458)
巻号頁・発行日
no.22, pp.55-75, 2017-07

1. 問題の所在2. 分析の方法と視点3. 社会科学におけるマイホーム主義の批判と擁護4. 高度経済成長とマイホーム主義 : 新聞・雑誌記事を通して5. 「マイホーム」を問いなおす : 新たな家族と連帯のために特集 : <家族主義>を超えて : 戦後70年の家族と連帯
著者
飯尾 美沙 竹中 晃二 成田 雅美 二村 昌樹 濱口 真奈 福島 加奈子 山野 織江 原口 純 阪井 裕一 石黒 精 大矢 幸弘
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.187-203, 2014-03-01 (Released:2017-02-10)

【背景・目的】小児喘息患者の行動変容を促す患者教育を提供するために,行動科学の理論・モデルに基づくテイラー化教育プログラムを開発した.本研究は,乳幼児喘息患児の保護者を対象に,開発したプログラムの有効性を検証した.【方法】2012年9月〜12月に外来を受診した乳幼児喘息患児を養育する保護者のうち,児の喘息コントロール状態が完全コントロールでない者をリクルートし,介入群および対照群に無作為に割り付けた.初回調査実施後において,割付けた患者教育(介入群:プログラム+個別面談,対照群:喘息パンフレットの配布)を1回実施した.そして,教育介入約1カ月後において,教育後調査を実施した.【結果】保護者47名(介入群22名,対照群25名)を分析対象とし,割付群を独立変数,教育前後の各評価得点を従属変数とした分散分析を実施した.その結果,教育後における介入群の喘息コントロール状態および知識得点は,対照群と比較して有意に改善・増加した.【結語】乳幼児喘息患児の保護者に対するテイラー化教育プログラムの効果が示唆された.