著者
楠 利夫 貴治 康夫 三上 禎次 村田 守
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.49-61, 2011-03-25
被引用文献数
2 1

大阪府北部,北摂山地の川久保渓谷中流に分布する緑色岩類について,産状,化学組成,年代および地帯境界の再検討を行い次のような結果を得た.ペルム紀新世の超丹波帯高槻層の下位で断層で接し,かつてトリアス紀中・新世本山寺コンプレックスに属するとされた緑色岩類は,その産状から高槻層基底部でペルム紀新世に噴出した現地性のものである.また,この緑色岩とその直下の丹波帯皿型地層群本山寺コンプレックスに含まれるペルム紀中世後期〜新世のチャートに伴う緑色岩の地球化学組成の特徴は,両者とも島弧(火山弧)で形成された玄武岩に類似し,年代と地球科学的判別図による形成場に共通性がある.一方,この両者は海山や海嶺を起源とする丹波帯I型・II型地層群の緑色岩とは,地球化学的判別図による形成場おいて異なっている.これらの結果と調査地域の断層岩と岩相の特徴から,超丹波帯と丹波帯の地帯境界および高槻層を再定義した.
著者
渡辺 秀男
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.310-327, 2000-09-25
参考文献数
35
被引用文献数
7

新潟県十日町盆地には,中期更新世〜完新世の河岸段丘群が分布している.本地域の段丘はその中でも,段丘数や面の広さ,比高において,最も規模が大きい所である.各段丘面上には信濃川ロームと,それに挾在する年代推定の鍵となる火山灰層が堆積する.それらの層序と堆積年代から段丘面の形成年代を推定した.その結果,米原II・卯ノ木段丘(15-16万年前)と,朴ノ木坂段丘(13-14万年前)は中期更新世,貝坂I段丘(10〜5万年前),貝坂II段丘(5万年前),正面段丘(3万年前)は後期更新世,また大割野I段丘(1万年前)と大割野II段丘は完新世に形成された段丘である.段丘面の変位は,基盤の隆起運動と向斜構造をつくる運動に規制されている.面の形成年代と比高から,米原II面形成後から貝坂I段丘形成前,正面面形成後から現在までは隆起運動が盛んな時期であった.一方,貝坂I段丘の形成期から正面段丘の形成期までは隆起運動が停滞した時期であった.向斜軸を境界として基盤の構造は,北西翼の方が南東翼に比べ地層の傾斜が急で隆起量が大きい.それに対応して,両翼における段丘面の比高や傾斜,広さが異なり,向斜軸の北西翼では比高が高く傾斜の大きい段丘面,南東翼では傾斜が小さく広い段丘面が形成されている.このことは,段丘面の形成が基盤の活褶曲の規制を受けていることを示している.
著者
黒田 吉益 黒川 勝己 宇留野 勝敏 衣川 友康 加納 博 山田 哲雄
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.331-335, 1976-11-20
被引用文献数
3

舞鶴帯の北側に分布する大江山超塩基性岩体は主としてダンかんらん岩からなるが,その北部にかなり大きな単斜輝石岩の岩体がある(Fig. 1).それは一部,角閃石にとんだ,緑れん石一角閃石岩(部分的に斜長石をもち,角閃岩状になる)になっている.以前,川砂の研究から,この単斜輝岩岩体中より十字石,藍晶石が発見される可能性を指摘したが(宇留野・黒田, 1972), 1975年,黒川が藍晶石を発見し(黒川, 1975),つづいて衣川・黒田が十字石を発見した(衣川, 1975).それらは緑れん石角閃岩中に残晶として産するものである(Fig. 2).そのEPMAによる化学分析を行なった(Table 2).このようなことから,われわれはこの岩石が特殊な岩石であったことを確認し,今後共同して研究をすすめる予定にしたが,今のところ次のような作業仮説を考えているので報告した.かつて,藍晶石+十字石+単斜輝石という組合わせにあったものが,大江山岩体北方の宮津花崗岩体の接触変成作用により,緑れん石一角閃岩相程度の再結晶作用をうけ,緑れん石+角閃石(±緑泥石)のに組み合わせになった.
著者
田崎 和江 野村 正純 森井 一誠 佐藤 和也 馬場 奈緒子 中西 孝 横山 明彦 CHAERUN Siti Khodijah
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.325-330, 2008-09-25

The magnitude-6.8 Chuetsu-Oki Earthquake struck at 10:13 a.m. 16^<th> July 2007, off the northwestern coast of Japan in Niigata Prefecture, Japan. The hypocenter was Chuetsu-Oki region 37.33N, 138.36E (17km in depth). The quake started under the ocean about 9km North of Kashiwazaki Kariwa nuclear plant, killing 11 peoples, and flattening several hundreds of buildings. In this study, Radon has measured in air and ground fissures using portable natural gamma ray system on July 16-17, and 20-21^<th>, 2007. The quite high gamma ray of 300-340 cpm was detected on July 21^<th> at Ohminato, Kariwa village which is the nearest of the fault fissure zone. The abnormal increase (200-300cpm) was detected at large deep subsidence and new crack on the paved road. For comparison, normal air radon without earthquake was counted as low as 60-80cpm. The car-borne and hand-borne measurement system was assembled for easily and rapidly detecting full features of the fissures buried in the ground.
著者
永広 昌之
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.71-81, 2001-03-22
被引用文献数
1

東アジアに分布するいくつかの小大陸片,南部北上-黒瀬川古陸,ハンカ(Khanka)古陸およびソンネン(松嫩;Songnen)古陸の起源と古生代-中生代におけるその漂移過程およびそれらの古地理的関係について,古生物地理データと比較構造発達史にもとづき検討した.南部北上-黒瀬川古陸は,南中国地塊やオーストラリア地塊に近接した,ゴンドワナ大陸北縁の沈み込み帯で前期古生代に誕生した.南部北上-黒瀬川古陸は,デボン紀後期に南中国地塊とともにオーストラリア地塊から分離し,その後ジュラ紀まで南中国地塊に近接した位置にあった.ハンカ古陸とソンネン古陸は,先カンブリア基盤をもち,石炭紀末までシベリア地塊に近接していた.それらはペルム紀初頭にシベリア地塊から離れて南にむかって漂移をはじめ,ペルム紀末に北中国地塊に衝突した.南部北上-黒瀬川古陸とハンカ古陸は中期ペルム紀〜中生代に同一の古生物地理区に属していたが,このことは東アジアにおける大陸配置の転換と古海洋循環系の変化に起因すると考えられ,両者の密接な古地理的関係を意味しない.南部北上-黒瀬川古陸とハンカ古陸はジュラ紀までは異なった地理的位置,すなわち前者は南中国地塊の近辺に,後者は北中国地塊の北緑にあった.
著者
佐藤 隆春 岡本 朋子 上武 治己 木村 一成 諏訪 斎 田崎 正和 都築 宏 南場 敏郎 丸山 正 三上 映子
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.201-216, 2001-07-25
被引用文献数
1

阪神地域では1596年の伏見地震,5世紀末〜6世紀中頃の古墳時代中期,および約6,300年前に地層の液状化を引き起こす強い地震動があった.これらの地震の直後に土石流・洪水堆積物が増加しているかどうか検討した.土石流・洪水堆積物の堆積相はおもに埋蔵文化財調査の露頭で観察し,考古学による年代とアカホヤ火山灰層準の対比でその堆積年代を求めた.その結果,土石流・洪水堆積物は古墳時代中期の地震直後に扇頂〜扇央で16地点,伏見地震直後に扇央〜扇端および低地で10地点確認された.土石流・洪水堆積物は地震以後に増加する傾向と,時代とともにその堆積場が扇状地から低地に移動させている傾向が明らかになった.六甲山地では1995年の兵庫県南部地震による斜面崩壊が多発し,崩壊土砂が増加している.これが豪雨で流出し土石流を発生させる自然条件は高くなっていると考えられる.
著者
宮田 隆夫 市川 浩一郎
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.265-266, 1978-09-25
著者
石賀 裕明 木藤 武雄 井本 伸広
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.10-22e, 1982-01-25
被引用文献数
1

ISHIGA & IMOTO (1980)は丹波地帯の赤色層状チャート層に含まれるPseudoalbaillella群集およびFollicucullus群集について両群集の構成種の変化を報告した.TAKEMURA & NAKASEKO (1981)はAlbaillella科のなかでperforate shellをもち非対称な翼または,"はしご"型の翼をもつことで特徴づけられる放散虫化石について新たにNeoalbaillella属を設定した.筆者らは丹波地帯の2地点および,彦根東部の1地点の灰色層状チャート層から得られたNeoalbaillella属について新たに2種を記載し,Neoalbaillella群集とFoillicucullus群集との生層序学的関係を検討した.Neoalbaillella群集は下位より,Neoalbaillella optima-Albaillella triangularis亜群集, Na. ornithoformis亜群集に2分される.Neoalbaillella群集はFoillicucullus群集よりも層序学的に上位に位置することと,共存するコノドソト化石に基づけば,ガダループ世もしくは,ガダループ世以降の年代を示す.
著者
佐藤 時幸 亀尾 浩司 三田 勲
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.265-274, 1999-07-25
参考文献数
27
被引用文献数
17

北大西洋で設定された最上部新生界の石灰質ナンノ化石対比基準面を古地磁気層序および酸素同位体層序と比較し,少なくとも第四系は10万年のオーダーで年代決定が可能であることを改めて指摘した.その結果から房総半島および本邦に分布する海成第四系に発達するテフラの地質年代を石灰質ナンノ化石層序から総括し,近年報告された広域テフラ対比が支持できることを示した.また,石灰質ナンノ化石層序と酸素同位体ステージとの関係に基づいて,上総層群に認められるテフラ鍵層と酸素同位体ステージとの関係もあわせて明らかにした.一方,鮮新世の石灰質ナンノ化石群集は,日本海側が北極海域の群集と類似し,太平洋側が低緯度海域の群集に対比される.これは鮮新世の古海洋が日本列島を挟んだ東西でまったく異なった生物地理区を形成していたことを示唆する.本論ではその群集変化が,パナマ地峡の成立と関連した鮮新世古海流の変遷によることを述べた.