著者
田崎 和江 長谷川 香織 松本 和也
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.87-104, 2002-03-25

かつての鉱山活動は重金属を外界に排出し,今日でも水質や土壌汚染の原因となっている.岐阜県神岡町にある大規模なZn-Pb鉱山の一つである神岡鉱山は,神通川の重金属汚染源となってきた.Cd,Pb,ZnそしてFeなどの重金属が高原川-神通川水系に未処理のまま廃棄され,下流域の住民の健康に影響を与えた.重金属の中でも特にCdは,イタイイタイ病の病原物質と見なされた.Cd汚染問題は未だに解決されていない.消石灰を投入し,中和凝集処理された廃滓の沈殿池が神岡鉱山にいくつか存在する.廃滓や廃棄場から排出された汚染水は,神通川の上流の高原川に流れ込んでいる.本研究では,重金属を含む堆積物の特性を明らかにするため,高原川-神通川水系にある五つのダムの堆積物を採取した.ダム堆積物の鉱物的・化学的組成を明らかにするため,それぞれの試料についてXRD,ED-XRFによる分析を行った.その結果,神岡鉱山の上流域に位置する浅井田ダムの堆積物はCd,粘土鉱物そして有機物が少なく,神岡鉱山の下流域に位置する新猪谷ダム,神通川第一,第二,第三ダムにおいては,汚泥,スメクタイトそしてZn,Cdのような重金属が多く含まれていることが明らかになった.また,本研究では,水中の重金属の浄化能力を見積もるための実験を行った.その結果,バクテリアを使ったバイオレメディエーションは重金属の固定に効果的であることを示した.室内実験系においてバイオフロック中の糸状菌は,一週間で細胞壁の表面にPb,Zn,Cdを選択的に濃集した.バイオレメディエーションの能力を持つバクテリアは,鉱山地域における下流のダム堆積物中でも重金属を固定する重要な役割を演じている.
著者
佐瀬 隆 細野 衛
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.466-482, 1996-11-25
被引用文献数
7

東北日本とニュージーランド北島の累積する完新世火山灰土壌の植物珪酸体分析により土壌相と植生史の関係が明らかにされた.非黒色の土壌相は森林植生下で生成し,黒色の土壌相は草原植生下で生成していた.また,非黒色土壌相から黒色土壌相への移行が森林から草原への植生変化に対応して起きていた.東北日本における最も古いこの変化は南部軽石層(c. 8,600年)の堆積以前に生じたのに対し,ニュージーランドではタウポ軽石層(c. 1,800年)の堆積以降にならないとこの変化は起きていない.このことは,更新世にさかのぼる日本の人類史が約1.000年の長さしかないニュージーランドの人類史に比べはるかに長いことと対応している.黒色火山灰土壌相の生成を促した草原植生の拡大は人為による森林破壊の結果と考えられる.
著者
木谷 幹一 加茂 祐介
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.99-109, 2010-05-25

京都盆地周辺の第四系層序は海成粘土層やその上下に挟まれる火山灰を指標として組み立てられてきた.京都盆地南部の更新統は,主に大阪層群と更新世段丘堆積層からなり,海成粘土層は大阪層群のMa0層からMa9層が確認されている.しかし京都盆地南部の久御山町で掘削されたKD-0コアに関する既往の研究では,大阪層群のMa3層,Ma5層,Ma6層が確認されたにとどまった.これに疑問を抱き,再度コア観察を行い,各接分析(石膏および硫黄結晶の析出・水溶液の硫化物臭・渦鞭毛藻・有孔虫・火山灰・花粉)を行った.その結果大阪層群のMa3層,Ma5層,Ma6層に加えて,Ma0層,Ma0.5層,Ma1層,Ma1.3層,Ma2層,Ma4層,Ma7層,Ma8層,Ma9層,Ma10層と上部更新統のMa12層も分布することが確認された.また最終間氷期の海進が京都盆地南部まで及んでいたことが確認された.
著者
染川 治実 吉川 周作
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.98-109, 1983-03-25
被引用文献数
1

The detailed tephrostratigraphical study in the Tanabe Hills revealed the following facts. 1) The Plio-Pliestocene Osaka Group in the Tanabe Hills attains more than 200 m thick and is composed of unconsolidated gravel, sand, silt and clay of limnic, fluvial and marine origin. The succession of these sediments is divided into 4 members, namely the Higashibata alternations, Mizudori gravels, Zakuro alternations and Inuidani alternations, in the ascending order. Among more than 12 volcanic ash layers found in these members, 3 are available as key beds. They are named the Higashibata, Fugenji and Zakuro volcanic ash layers (Fig. 2, 3 and 5). 2) On the basis of the tephrostratigraphic and petrographic data of volcanic ash layers, the Higashibata and Zakuro volcanic ash layers can be correlated with the Fukuda and Pink volcanic ash lavers in the southern part of Osaka (Fig. 8).
著者
中山 勝博 河村 善也
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.289-300, 1993-07-25
被引用文献数
1

The Plio-Pleistocene Osaka Group in the Nara Hills is composed mainly of fluvio-lacustrine sediments with 15 intercalations of volcanic ash. Of these volcanic ash layers, nine principal layers are described in detail on the basis of lithology and analyses of mineral assemblage and of glass shape and refractive index. The results of the observation and analyses indicate that four of them such as the Pumice-sand, Shimoumedani, Kurokamiyama II, and Takanohara volcanic ash layers are correlative with the Higashibata, Fugenji, Susudani I, and Zakuro volcanic ash layers in the adjacent Tanabe Hills respectively. Further, the Shimoumedani, Kurokamiyama II, and Takanohara volcanic ash layers are correlated with the Fukuda, Yellow IV, and Pink volcanic ash layers in the SennanSenpoku Hills respectively, where one of the stratotypes of the Osaka Group is exposed. The correlation indicates that the Osaka Group in the Nara Hills is assignable to the lower-most and lower parts of the standard sequence of the group.
著者
松川浦団体研究グループ
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.31-48, 2003-03-15
被引用文献数
2

福島県相馬市松川浦のA〜Fの6調査地点において,干潟に生息する底生生物群集の構成内容とそれらの生物による表生痕と内生痕を調べた.A〜Eの5地点で枠法による底生生物の調査を行い,調査地点ごとの生物現存量,個体群密度や共存状態を明らかにした.確認した生物は32種で,底生生物群集は調査地点により異なり,D・E地点では,他の3地点に比べて種数が少ない.各調査地点に生息する優占種で分けた底質表面の分帯ごとに見ると,コメッキガニ帯では現存量が少なく,チゴガニ帯,ヤマトオサガニ帯と生息域が低くなるにつれ現存量が多くなる.生物ごとの生痕について,巣穴開口部とその周辺,掘り出し痕と摂食痕,垂直断面の形態,管壁と裏打ち物質,底質との関係などを明らかにした.また,個々の生痕だけでなく,ヤマトオサガニとアシハラガニ,コメッキガニとチゴガニなど形が似た巣穴の比較,個体群密度の違い,チゴガニ-アシハラガニ帯でのチゴガニの巣穴の変形,チゴガニ-ヤマトオサガニ帯での個体群密度,管壁の裏打ち物質の有無等を明らかにし,生痕群集断面の概念図を作成した.生痕の部位(開口部,裏打ち物質.掘り出し痕,摂食痕)と周辺の底質に含まれる珪藻群集を分析し,生物の活動を示唆する結果を得た.
著者
根岸 義光 丸山 孝彦 山元 正継
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.269-288, 2002-09-25

栃木県足尾山地北部には西南日本内帯の濃飛流紋岩類に対比される後期白亜紀〜古第三紀珪長質火山岩類が分布する.同火山岩類のうち最も広い露出面積を持つものは,中禅寺湖南岸に分布するいろは坂溶結凝灰岩類である.いろは坂溶結凝灰岩類は野外観察および顕微鏡観察結果に基づき,6つの火砕ユニット,1つの火砕サブユニット,そして3つの火山ステージに区分されることが判明した.岩石化学的性質に基づくと,いろは坂溶結凝灰岩類を噴出したマグマはマグマ溜りの下方から上方へと珪長質成分に富む累帯マグマであり,マグマの形成は大きく3回の時期に分かれていたと思われる.また帯磁率値から推定されるマグマを取り巻く形成環境は,ステージ初期において酸化的状態,ステージ中期〜後期において還元的状態であったことが示された.さらにステージIIから得られたSr同位体比初生値(0.71173±0.00028)を加味すると,いろは坂溶結凝灰岩類のステージ中期〜後期に噴出したマグマの形成は,起源物質と基盤岩類との混成作用を通して行われたことが示唆される.加えて,いろは坂溶結凝灰岩類を供給したマグマメカニズムとYellowstoneやTaupoにおける大規模珪長質火砕流堆積物を供給したマグマメカニズムとの類似性に着目すると,いろは坂溶結凝灰岩類の主要ユニットマグマは,引張応力が卓越する中,地殻歪み速度の遅い静穏な環境のもとで形成されたと推定される.いろは坂溶結凝灰岩類から今回得られた岩石学的諸性質に基づくと,いろは坂溶結凝灰岩類の火山活動は原山ほか(1985)による西南日本内帯中部地方の火成ステージ区分のうちステージIIIチタン鉄鉱系の活動に対比され,笠ケ岳流紋岩類や大雨見山層群の火山活動に相当することが明らかになった.
著者
樽野 博幸
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.258-264, 1999-07-25
被引用文献数
4

日本列島の中・下部更新統と鮮新統から産出する長鼻類化石の産出層準を,広域対比された火山灰層序に基づいて整理した.シンシュウゾウの出現は鮮新世の初期にさかのぽり,上限はガウス・クロンの下部におよぶ.標本数が少ないため,その産出層準は,地域によりずれているようにみえる.またこの層準では,火山灰層による地層の対比も不十分である.アケボノゾウ類似種はガウス・クロンの上部から松山クロンの下部の層準で産出している.アケボノゾウの産出層準は古琵琶湖層群産の1例をのぞいて,大阪層群の三ツ松火山灰層直下の層準からイエロー火山灰層層準で代表させることができる.ムカシマンモスの産出層準は,大阪層群のイエロー火山灰層層準からMa5海成粘土層層準で代表させることができるが,関東の上総層群では,より上位の層準からも産出している.しかし,この層準のものは誘導化石の疑いがある.トウヨウゾウの産出層準は,大阪層群のMa6海成粘土層直下からMa7海成粘土層の層準で代表される.
著者
信濃川ネオテクトニクス団体研究グループ
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.95-110, 2003-06-25
被引用文献数
6

信濃川中流域に分布する第四紀末期(約50,000年前以降)の河成段丘と指標テフラとの関係について検討し,特に指標テフラ降灰時期に離水した段丘面に着目し,中流域全域にわたる新たな段丘面区分を提案した.調査地域にはDKP(約50,000年前),AT(約25,000年前),As-K(約13,000年前),As-Ut(約5,000年前)の指標テフラが分布する.DKP, AT, As-K,およびAs-Ut降灰頃に離水した段丘面を指標段丘面として,それぞれ川西面,塩殿面,真人面および十日町面と命名した.また,各指標段丘面および現河床との問に位置する段丘面を段丘面群とし,高位から塩殿面群,真人面群,十日町面群および川井面群と命名した.塩殿面,真人面および十日町面は,それぞれ塩殿面群,真人面群,十日町面群を構成する段丘面の最も低位に位置する.各指標段丘面の信濃川現河床からの比高は,地域毎に大きく変化しており,従来の研究による低位の段丘面対比は,大きく変更された.
著者
金 昌柱 河村 善也
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.315-330, 1996-07-25
被引用文献数
4

この論文では中国東北部の後期更新世哺乳動物化石とその産出層に関する文献のデータをまとめて,この地域の後期更新世の動物相の特徴を明らかにした.この地域では,それらの化石にしばしば旧石器時代の人工遺物が伴い,後期更新世のユーラシア北部に栄えたマンモス動物群の典型的な要素であるマンモスとケサイが見られる.この地域の後期更新世の動物群には,(1)中期更新世の動物群より現生種が増え,絶滅種が減っている,(2)絶滅種の中には中期更新世やそれ以前の古型の要素はわずかしか含まれず,かわってユーラシアの寒冷地や乾燥地の要素が多い,(3)絶滅種には大型のものが多い,(4)現生種の中には現在の中国東北部に見られるものが多いほか,主にモンゴルやその西方の地域に分布する種も多い,(5)現在北方の寒冷地に分布する種が含まれている,といった特徴が見られる.この地域の動物群を,マンモス動物群としては典型的なシベリア東部の後期更新世動物群と比較すると,シベリア東部で代表的な種が中国東北部にも見られるが,シベリア東部の動物群の中で高度に寒冷地適応した種の中には,中国東北部で見られないものもある.中国北部の同時期の動物群と比較すると,中国東北部の動物群にはそれと共通する種が多いが,中国北部のものにはマンモス動物群の要素はほとんど見られない.日本で後期更新世の化石記録が豊富な本州・四国・九州地域の動物群と比較すると,本州・四国・九州地域のものでは固有種や森林要素が多いこと,マンモス動物群の要素が少ないことで中国東北部のものと明らかに異なっている.中国東北部の動物群は,後期更新世になってより現在のものに近づいた土着の動物群に寒冷地や乾燥地の要素が加わったものと考えられる.後期更新世以降の気候や植生の変化により,寒冷地や乾燥地の要素は,絶滅したり,北方や西方に分布域を移すことになったものと思われる.^<14>C年代の測定されている化石産地のデータにもとづいて,この地域でのマンモスやケサイの分布について考察した.マンモスやケサイはこの地域で21,000yrs.B.P.頃までは広く分布しており,マンモスは12,000yrs.B.P.頃,ケサイは10,000yrs.B.P.頃絶滅したようである.
著者
小室 裕明
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.68-82a, 1978-03-25
被引用文献数
2

The middle to the upper Miocene series in the Yanaizu region is divided into five formations, namaly the Ogino, the Urushikubo, the Shiotsubo, the Sunagohara, and the Fujitoge formations in ascending order, all of which are in conformable relation except that the unconformities at the base of the Sunagohara formation and partly at that of the Fujitoge formation. The Urushikubo formation may unconformably overlie the Ogino formation in part. The Ogino formation and the lower part of the Urushikubo formation consist of pyroclastic rocks. The upper part of the Urushikubo formation, the Shiotsubo formation, and the lower part of the Fujitoge formation consist of shale, sandstone, and siltstone respectively. The Sunagohara formation and the upper part of the Fujitoge formation consist of pyroclastic rocks. Basaltic, dacitic, and rhyolitic dykes intrude into the Urushikubo and the Shiotsubo formations. The fundamental geologic structure is nearly flat, except for some flexure, synclines and anticlines which have N-S trending axes. The horizontally bedded Sunagohara formation is distributed in a restricted area, about 5 km in diameter, and abuts on the steedly dipping surface of the unconformity at the margin of the basin. Basal conglomerate, which is very poorly sorted and angular talus-like breccia including boulder gravel with 3m in maximum diameter, is distributed along the margin. It would be deposited just in front of the abrupt cliff which has been preserved as the present steep surface of the unconformity. Normal faults striking parallel to the surface of the unconformity are found in the basement and by them such a cliff would formed. It is concluded that the collapse basin with 5 km in diameter was formed by the faulting which had thrown down the basin side abut 400 m before deposition of the Sunagohara formation. Before the formation of this collapse basin, the domal uplift which is 25 km in diameter and 500 m in height took place. Judging from that the collapse basin was filled with pyroclastic rocks which was deposited soon after the collapse, the domal uplift is ascribed to the magmatic activity. The other uplift with the axis of NW-SE trend, which was no relation to volcanism had took place in this region before the domal uplift.
著者
藤田 至則
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.417-427, 1989-11-25

In this paper the writer maintains the following four points of view; 1. During the geological times sediments were always concentrated and laied down in limited areas, i.e., sedimentary basins. All the present coastal plains and intramountain basins in the Japanese Islands are final products of the lowland that has been developed since the Cretaceous. Thus, sedimentary basin, coastal plain and intramountain basin in this case are included into a same category. 2. Two types of generative process of sedimentary basin are generally known. One is collapse, i.e., downthrowing of basement block to produce a depression bounded by faults. The other is subsidence, i.e., down-warping of basement to form a basinal depression. Giving several examples, the writer pointed out previously that down-warping of sedimentary basin was nothing else than a surface phenomena of underground fracturing or collapsing. In this respect, generation of a sedimentary basin due to subsidence would be synonymous with occurrence of a collapse under the ground. 3. The category of "Shogidaoshi (Fujita, 1951)" does not involve any genetic definitions, since it is a term defining a configuration of sediments of which depocenter shifts unidirectionally. Some people who do not accept the term "Shogidaoshi" want to replace it with the other terms such as "tilting block movement" or "Shogidaoshi" (unidirectional shifting of upheaval to bring migration of depcenter)". They, however, must have misunderstood the original definition of the term excluding its mechanism. 4. The law of "Shogidaoshi" is applicable to a developing stage of pre-existing sedimentary basin, not to a generative stage of new sedimentary basin. Incidentally, it rarely happens that a new sedimentary basin of exotic nature is generated just in front of unidirectional shift of a "Shogidaoshi". Such a case is accidental, being out of applicable extent of the law of "Shoeidaoshi".
著者
古山 勝彦 長尾 敬介 三ツ井 誠一郎 笠谷 一弘
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.519-532, 1993-11-25
被引用文献数
9

山陰東部地域の後期新生代の約30の火山についてK-Ar年代を測定した.試料のほとんどは玄武岩質単成火山からのものであるが大量に噴出したカルクアルカリ安山岩溶岩についても測定した.スコリア丘の開析の程度や溶岩が作る地形はそれらのK-Ar年代と調和している.測定試料はK-Ar年代にもとずくと,鮮新世と第四紀のものである.鮮新世の火山(浜坂,轟,大屋)は長径50km,矩形35km,N45°Wの延長方向の楕円形をなす山陰東部地区の北西・南西境界部分に分布する.第四紀の火山活動は玄武洞で1.6Maに始まり,1.3-1.5Ma,0.7-0.9Maの2回の休止期を除き,各10万年の間に1〜4の単成火山を形成しつつ完新世まで継続している.第四紀の火山活動はまとして本地区の西部と北東部で始まり中央部・南東部へ移動した.本地区で第四紀における最も活動的な時期は0.9-1.3Maの間であった.
著者
田崎 和江
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.395-412, 1994-07-25
被引用文献数
2

地球上に広く分布する微細な炭素粒子は,環境の変化に最も敏感に対応する物質の一つである.その炭素の起源,微細形態,結晶成長の過程,化学結合,分布などを明かにし,炭素物質を評価するうえで,電子線を用いた手法が有効である.ここには,様々な炭素物質について,その目的に応じた有効な分析方法の実例を示した.走査型(SEM)および透過型電子顕微鏡(TEM)による観察は,炭素物質の微細形態,結晶成長過程,結晶度を知るのに適している.バクテリアなどを含む有機物が濃集した非晶質の炭素は,続成作用により,高結晶度のグラファイトヘと変化する.初期の炭素物質は,球粒,管,フレーク,薄膜,シート,リボン状などさまざまな形態をとり,最も成長した結晶であるグラファイトは,六角板状のバウムクーヘン状構造をとる.炭素の分布を知るには,エレクトロンマイクロプローブ(EPMA)やオージェ(Auger)による元素濃度分布図が有効である.オージェは,導電性物質の蒸着を必要としないので,岩石中のカーボンの存在を薄片の状態で検出することが可能である.高い導電性を持つことで知られているワイオミング産のSybille Monzosyeniteに,オージェ分析を適用し,鉱物境界に高濃度の炭素が存在することが,高導電性の要因の一つであることを明かにした.また,オージェは導電性物質の蒸着なしで,オングストロームのオーダの最表面分析が可能である.フーリエ赤外線分析(FT-IR)は,炭素の化学結合や水分子との結合状態を知ることができる.グラファイトは,その結晶度の違いによりOHやC-C結合の吸収の程度が異なる例として,片麻岩中の低結晶度の炭素から水分が抜け,次に酸素が抜けてグラファイトヘと変化するプロセスを示した.また,電子線走査化学分析器(ESCA)による炭素(1S)の高分解能分析は,様々な炭素結合の種類とその量比を知るのに有効である.この方法により,深海底堆積物中の海緑石に含まれる炭素が,COO,C-O,C-Cそしてグラファイトといった異なる炭素結合により構成されていることを明かにした.この結果は,海緑石が有機物起源であり,その後,無機化すること,有機炭素と無機炭素の境界は明瞭ではないことなどを示している.さらに,重イオン加速器(RILAC)は,炭素が表面吸着しているか,または結晶構造に組み込まれているかの判断に有効である.例えば都市ガスのすすの分析は,金属やSiO_2といった標準試料と比べ,炭素が結晶性の構造を待つことを示した.同時に,この方法は,酸素と水素の存在状態の差異も明瞭に表わすことができる.重イオン加速器は,大気からもたらされた汚染物質の炭素と物質本来の結晶構造中の炭素原子との区別に有効である.
著者
紀州四万十帯団体研究グループ
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.19-38, 1991-01-25
被引用文献数
5

In the surveyed area, the Yukawa Formation occupies the northern part and the Miyama Formation outcrops in the southern part. Being separated by the Yanase fault in the north from the Hanazono Formation, and by the Yukawa fault in the south from the Miyama Formation, the Yukawa Formation consists of massive and bedded sandstone, flysch-type alternation of sandstone and mudstone, and is accompanied with black shale. It is lithologically divided into the Y 1, Y 2 and Y 3 Members in ascending order, and its total thickness attains to 3400 m. Based on radiolarian fossils, the formation is assigned to be late Albian to Turonian in age. The Yukawa Formation was deformed into a large synclinorium, of which fold axis is trending in east-west direction. The Miyama Formation is mainly composed of massive sandstone, flysch-type alternation of sandstone and shale, and black shale, being accompanied with lenticular exotic blocks of greenstones, chert and red/green shale. The formation is divided into the M 1, M 2 and M 3 Members, being separated by faults from each other, and the geologic age of each member becomes younger toward south. Whole strata are severely deformed and repeated by numerous reverse faults. Abundant radiolarian fossils found from black shale suggest the geologic age of the Miyama Formation to be Turonian to early Campanian. The Yukawa Formation is supposed to deposited in a sedimentary basin situated on an outer continental shelf or on an upper continental slope, while the Miyama Formation is an accretionary complex formed around trench floor during Late Cretaceous subduction process.
著者
田辺団体研究グループ
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.1-16, 1993-01-25
被引用文献数
2

The Miocene Tanabe Group, which consists of shallow-marine siliciclastic sediments, is distributed in the southwestern part of the Kii Peninsula, Japan. The group is about 1,500m thick, and is divided into the Asso and the Shirahama Formations in ascending order. The Asso Formation is mainly composed of mudstone and conglomerate, and the Shirahama Formation of sandstone, mudstone and alternating beds of them. A thick conglomeratic sedimentary wedge, which was deposited in a fan-delta system (the Shimomisu Fan-delta), is developed in the northern area of the distribution of the group. To clarify the sedimentary history of the fan-delta, at first, sedimentary facies were recognized and classified based mainly on grain-size and sedimentary structures. Consequently, the facies associations and the sedimentary bodies were recognized and defined based on the occurrence and combinations of sedimentary facies. The spatial and stratigraphic interrelationship among sedimentary facies, facies associations and sedimentary bodies were analyzed in detail. The following results are obtained. The sediments of the Shimomisu Fan-delta consist of 3 sedimentary bodies, which are in turn consist of 6 facies associations. The sedimentary history of the Shimomisu Fan-delta is summarized as follows: STAGE OF GENESIS: The drowned valleys facing to the ocean were formed as the sea-level rise began. The debris flow deposits and marsh muds, and then sands and rounded gravels in the neritic environments were deposited in the valley. STAGE OF PROGRADATION: After the burial of valleys, the rate of the sea-level rise decreased. Gravely deposits supplied from the north formed a fan-delta system which prograded toward the south. Gravely deposits were deposited as foreset beds, resting on a downlap surface, which were underlain by the bottomset muds. The fan-delta divided the sedimentary basin into embayed sea in the northern margin and open shelf in the resting area. STAGE OF AGGRADATION: The rate of the sea-level rise again increased, and the supply of sediments were continued. Therefore, the rate of the progradation decreased, and sediments were accreted vertically in the neritic area, forming the topset beds of the fan-delta. STAGE OF ABANDONMENT: The rapid increase in the rate of the sea-level rise took place in the later half of Blow's N 8 stage, and the fan-delta system was abandoned and the shelf mud facies covered throughout the basin.
著者
Hendarmawan 三田村 宗樹 熊井 久雄
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.155-166, 2005-05-25

研究地域では,水資源を湧水に依存しているため,湧水の環境保全は非常に大切である.それ故,湧水についての浸透量・涵養量・流出量の理解が必要である.本研究では,インドネシア,Java島西部のLembangとその周辺において,涵養地域と流出地域に各地域を区分する目的で,地質学的背景と湧水の電気伝導度と温度の傾向を総合的に検討した.断層の発達と時代の新しい累層,古い累層は,それぞれ異なる電気伝導度と水温度の湧水の形成に影響していた.乾季と雨季における電気伝導度と温度の違いは,降雨からの涵養水や表層水の影響が大きいと考えられた.以上の結果,大きく異なる湧水の電気伝導度と水質の特徴により,研究地域は3つの地域に区分することができる.