著者
伊豆原 月絵
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.3-14, 2012-01-31

フランス宮廷では、18世紀になると、宮廷晩餐会用の女性の衣裳は、華やかさを増し、花紋様の重厚なブロケードに刺繍の装飾を重ね、さらにレースをあしらった豪華で装飾的な衣裳が好まれていた。一方、私的なサロンによる交流が広がるにつれ、公の衣裳の重厚さに対して、私的な衣装の美意識は、軽やかさが求められ、その美意識は、宮廷の衣裳にも反映していった。往時は、中国風庭園、家具、陶器、織物、衣裳など、アジア風のデザインが流行し、様々な事象にシノワズリーの影響がみられ、インド製の木版捺染や手描き更紗とともに、アジアから舶載された絣織の「シネ」は珍重され、フランスのみならず、欧州各国に染織技法とともにその紋様表現は、伝播していく。18世紀になると絣は、需要の拡大とともに発展し、宮廷女性衣裳の生地としてフランスで盛んに織られるようになった。 本論文では、神戸ファッション美術館の所蔵品のローブ・ア・ラ・フランセーズに用いられた絣織「シネ・ア・ラ・ブランシュ」の織物を復元することを目的に、往時のシネの製作技法について、アジアの絣の技法の調査を踏まえ比較検討を行う。
著者
飼原 壽夫
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.215-223, 2013-01-31

ウェブサイト開設に関して、今や、ネットワークには、道具も情報も十分に提供されているにもかかわらず、組織の方針としてトップダウン方向で推進されない限り、まだまだ、敷居を高く感じさせる面が多くある。本稿では、サイト立ち上げに伴う問題解決の視点や手順を、具体例から幾つか紹介した。先ず、現状調査に始まり、ウェブサイト構成の検討、CMSの機能検討、開発ツールの選択、運用体制の検討の必要性を示した。続く制作では、動画ファイルや、PowerPointファイルの取り扱い方、ページ遷移をせずに多くの情報を盛り込む工夫(jQueryの活用)、統合開発環境のソフトで利用できる便利ツール、翻訳サービスによる国際対応と翻訳の改善手段、SEO対策ツール、サイト内検索ボックスに至るまで、一般によく目にする機能の実現に際してヒントとなるように、実施手段の選択時の視点を紹介した。
著者
豊嶋 幸生
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.153-168, 2012-01-31

モダンデザインが普及する前の、ヨーロッパの都市の主要建築は、多くの装飾を持った古典的な様式建築である。開国によって、日本でも、明治維新直前から、昭和の初期まで、多くの西欧風様式建築が建設された。こうした建築の、明治初期の主な設計者は、明治政府によるお雇い外国人建築家で、外国人から建築を学習した日本人建築家が、その跡を継いでいく。その中の、代表的な人物が、英国人のジョサイア・コンドル、片山東熊、辰野金吾等である。この論文は、これらの建築家による作品の装飾についての研究をするためのもので、目的は、日本で、洋風建築に多く使われてきた装飾要素を抽出し、どのような装飾スタイルが、日本人に受け入れられてきたかを確認し、分析することである。西欧の装飾文様と、日本の伝統的な装飾文様との関連性についての考察も、目的の一つである。
著者
小林 政司
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.225-230, 2013-01-31

迷彩(camouflage)柄は、自然の環境を象徴する優れたデザイン性と色彩調和を有しているものが多く存在するものの、残念なことに、しばしば戦場で使用されるためにマイナスのイメージが非常に強いというのが現状であろう。今回は、そのような迷彩柄の平和利用の一環として、デザイン作業の背景として用いることを提唱する。こうした柄と色彩を有する背景は、特に実践的なカラースキームの決定を行う場面で効果的であると予想される。実践的な試みとして、本報告では太子山向原寺(明日香村)において行われた芸術祭Soul of Asuka 2011に使用する提灯のデザイン作業時に迷彩柄の背景を応用した。また、屋外での展示を前提とした作品を屋内で展示する際の背景用に迷彩柄のデザインを行った。
著者
川上 正浩 カワカミ マサヒロ Masahiro KAWAKAMI
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要
巻号頁・発行日
vol.5, pp.15-26, 2015-01-31

Coltheart, Davelaar, Jonasson, & Besner(1977)の研究以来、多くの研究が単語認知に及ぼすneighborhoodsizeの効果を検討してきている。こうした研究を遂行するためのデータベースとして川上(2000a)は、客観的な基準として、Macintosh 版岩波広辞苑第四版(新村出記念財団,1995)を設定し、この辞書に登録されている漢字二字熟語の類似語数をデータベース化している。本研究は、音韻的な特性も重視した実験を実施できるよう、あらためて4拍漢字二字熟語の類似語The process of recognizing printed words has been studied for many years. Recent visual word recognition research suggests that the identification of a word is affected by its similarity to other words. Coltheart, Davelaar, Jonasson, and Besner(1977)defined the neighbor of a word( or any letter string )as any word that can be generated by replacing a single letter from the base string. Many studies have shown that neighborhood size affects visual word recognition. For selecting Japanese stimuli for experiments investigating effects of neighbors, objective database for number of neighbors are needed. This study presents tables of the numbers of orthographic and phonological neighbors for Japanese 4 moraic 2-kanji compounds words. Orthographic neighbors for Japanese 4 moraic 2- kanji compounds words are the words that can be constructed by changing single kanji of the target item preserving kanji positions. Defining orthographic neighbors, the pronunciation of the word was ignored. On the other hand, phonological neighbors for Japanese 4 moraic 2-kanji compounds words are the words that can be constructed by changing single mora of the pronunciation of target item preserving mora positions. Here, defining phonological neighbors, the orthographic script of the word was ignored. Based on the database of Amano & Kondo(2000), the number of orthographic and phonological neighbors were counted. This article reports the number of orthographic and phonological neighbors of Japanese 4 moraic 2-kanji compounds words with frequency of more than 3,000 based on Amano & Kondo(2000). For lack of space, the table was divided into two parts, and this article shows the second part of the result. The first part of the results appears in the previous article. The tables may be employed to provide normative data for experimental studies in word recognition using Japanese 4 moraic 2-kanji compounds words.
著者
森田 園子
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.195-204, 2015-01-31

日本の雇用において中小企業は重大な役割を果たしている。本稿は、その中小企業における女性役員・取締役のあり方が大企業と異なっているのか、異なっているとすればどのように異なっているのか、又その要因は何かを明らかにする前段階として、この課題を見るべき論点を明らかにするためのものである。そのため、ヒアリング調査は経営者であると同時に周辺企業を俯瞰する立場にあり、自らもまた働く女性として経験を積んで来た女性を対象とした。ヒアリングを通して得た知見により、今後検証を進めるにあたっての論点は以下のとおりとした。第1は、「役員・取締役に至る経緯」、第2は「システム整備」である。第1点は、女性管理職・役員にまで至った要因は何であったのかである。第2点は具体的な就業環境のシステム整備に力点をおくものである。そこには、育児休業などの制度整備が重要であることは言うまでもないが、ここではそのような制度を補完するものとして、もっとも具体的な人事管理システムとしての「業務の配分」や「働き方」のシステム整備を取り上げることとした。
著者
徳永 正直 Masanao TOKUNAGA
出版者
大阪樟蔭女子大学学術研究会
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.45-53, 2016-01

近年「道徳」の教科化による道徳教育の充実が要請されているが、「道徳」授業の評判はあまり芳しくない。 なぜなら「道徳」授業は予め設定された道徳的価値の「教え込み」(inculcation)に終始しているので、結果的に、 子どもに「偽りの自己」としての「良い子」を演じさせる「隠れたカリキュラム」に陥っているからである。このよ うな「道徳」授業を改善し、子どもたちの道徳的判断の発達促進を期待されたのが「モラルジレンマ授業」であった。 だが、道徳的判断の発達を促進することができても、道徳的行為の実践に結びつかないという批判がなされてきた。 コールバーグはこの批判を克服するために新たに「ジャスト・コミュニティ・プログラム」を提唱した。そこでは子 どもたちのコミュニティへの参加が促進され、具体的な問題解決のための民主的な手続きとしてのモラルディスカッ ションを通じて、共同体や仲間に対して責任を担う主体性のある子どもが育てられる。したがって、このジャスト・ コミュニティ・プログラムによる道徳教育は、「能動的市民の育成」をめざす「市民性教育」の基礎を構築する可能 性を秘めているのである。Der bisherige Unterricht über die sittlichen Erziehung in Japan ist für <inculcation> oder <indoctrination> gehalten worden. Im Unterricht haben viele Schüler und Schülerinen <good boys> und <nice girls> als ein sog. falsches Selbst gespielt. Dagegen im von Lawrence Kohlberg vorgeschlagenen Moral Dilemma Programm äußern sie sich als ein sog. wahres Selbst und durch die Moraldiskussion können ihre Entwicklungsstufe der sittlichen Urteilskraft erheben. Trotzdem hat Kohlberg erst später gemerkt, daß die sittliche Urteilskraft nicht unmittelbar zu der sittlichen Praxis führt. Dann hat er nochmals ein neues Just Community Programm vorgeschlagen. Darin geht es um die Moraldiskussion, konkrete Probleme in der Gemeinschaft, z.B. in einer Klasse zu lösen. Dadurch entsteht die sittlich gute Atmosphäre und kommunikative Alltagspraxis bei Jürgen Habermas. Ich bin davon überzeugt, daß das Just Community Programm sog. <citizenship education> begründen kann.
著者
長尾 知子 ナガオ チカコ Chikako NAGAO
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要
巻号頁・発行日
vol.1, pp.29-39, 2011-01-31

英語文学を代表するカナダの女性作家Margaret Atwood(1939~)の初期作品を取り上げる。間テクスト性に満ち、あらゆる慣習からの逸脱志向を見せるLady Oracle(1976)は、現代批評の格好のテクストとして研究されてきた。本論は、21世紀を迎えた読者の眼に映る、20世紀中葉カナダの文化的側面に注目する。主人公の語り手が、子供時代の母親との確執、叔母と過ごした時間、父親不在の家庭について語るとき、作者は1950年代のカナダ社会を反映する価値観を示唆している。独り立ちしたヒロインが、出会った男たちとの経緯を語るプロセスでは、ヨーロッパの伝統文化との対比で、カナダ性が立ち現われてくる。さらにコスチューム・ゴシック作家から新進気鋭の詩人へと進化するヒロイン自身の姿は、1960年代から70年代にかけての文化事情を反映している。遅咲きのカナダ文学の歴史において、LadyOracleは、辺境カナダの文学を担う作家が、主流文化を揶揄しつつ、カナダ性をちりばめた、文化の万華鏡なのではないか。Margaret Atwood (1939-) has established herself as a world-class novelist receiving 'The Man Booker Prize for Fiction' in 2000. Lady Oracle (1976) is her third novel whose 'Intertextuality' and 'indeterminacy of meaning' have tempted many to discuss the earlier work as a fair game for modern literary criticism. This article explores its cultural aspects in mid-20th century Canada which attract our interest in retrospect. The author implies the sense of value shared by 1950s when the narrator-heroine tells about her conflict with her mother, time spent with her aunt and absence of her father from home in her childhood. Her association with men she met as a woman in Europe mirrors Canadianism in contrast with traditional Western culture. The evolution of the heroin from a Costume Gothic writer to a rising poet images the cultural background of Canada from 1960s to 70s. In mid 1970s when Atwood wrote Lady Oracle, Canadian Literature had yet been unrecognized national literature. The novel was indeed a challenging attempt by a promising woman writer from the culturally developing country to present a kaleidoscope, pieces of which illustrate cultural aspects of Canada while parodying all kinds of conventions and traditional values.
著者
甲村 弘子 コウムラ ヒロコ Hiroko KOUMURA
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要
巻号頁・発行日
vol.1, pp.223, 2011-01-31

月経前症候群(PMS)は月経周期の黄体期、すなわち月経前に起こる様々な身体的、精神的症状をあらわす疾患であり、軽度のものを含めると多くの女性が経験する。PMSは疾患として名前が広く知られているにもかかわらず、その原因はまだ明らかにされておらず、確立された判定基準はない。本症の頻度に関しては、諸外国では報告がなされているが本邦ではほとんど認めない。若い女性での報告もみられない。本研究では、日本における女子大学生のPMSとPMDD の頻度を、"The Premenstrual Symptoms Screening Tool (PSST)"を用いて明らかにしようとした。対象は18歳から22歳の554名である。身体症状は約80%にみられ、中等症から重症のPMS群は20.4%、PMDD群は4.0%であった。この頻度は諸外国の報告とほぼ一致する。少なからず存在する本疾患に対して適切な対応が行われ、女性の生活の質(QOL)の向上に貢献することが期待される。
著者
石川 義之 イシカワ ヨシユキ Yoshiyuki ISHIKAWA
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要
巻号頁・発行日
vol.2, pp.205-213, 2012-01-31

われわれは、2008年に1009名の男女(有効回答数750名)を対象に、「ジェンダーに関するアンケート」を実施した。本稿では、このアンケート調査結果を踏まえて、ドメスティック・バイオレンスの見聞、身体的虐待、性的虐待、ドメスティック・バイオレンス、セクシュアル・ハラスメントという5種の人権侵害被害の現状を分析する。第1に、それぞれの人権侵害被害ごとにその普及率や相談の有無などについて分析する。第2に、これらの5種の人権侵害被害を包括した全体についての総合的考察を行う。ここでは、人権侵害被害全体が性別、年齢などのデモグラフィックな要因とどのような関係にあるのか、また家庭の貧困や家庭・職場でのストレスとどのように関連しているかなどが検討される。人権侵害被害の総合的全体分析を試みた点に本稿の独自性が見出せるであろう。
著者
川上 正浩
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.55-65, 2011-01

本研究では、野菜・果物等の具体的な対象に対して、一般的な大学生が具体的にどのような色のイメージとの連合を持っているのかについて質問紙調査によって明らかにすることを目的とした。まず、"赤"、"橙"、"黄色"、"黄緑"、"緑"、"紫"、"茶色"の7色を基本色とし、野菜・果物等の名称が42個選択された。また、先述の7色を基本色とし、35色の色見本を作成した。調査対象者の課題は、質問紙に記載された野菜・果物等の名称からイメージする色を色見本から選択し、該当する番号を回答欄に記入することであった。大学生201名を対象とした調査の結果が報告され、たとえば"トマト"に対しては、76%の調査対象者が本調査の色番号3番の色と対応するイメージを持っていることが示された。本研究の結果は、概念と色との連合に対する解釈に際し、客観的な指標を与えるデータベースとして活用されることが期待される。
著者
杉浦 隆
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.103-114, 2013-01-31

占領期における様々な改革の中で教育改革は最も大きいものの一つである。この改革にはCIEと教育刷新委員会が大きな役割を果たした。その中で「文化問題」を扱った、第11特別委員会の会議録を通して、戦後の外国語教育政策に関する議論を概観し、いくつかの問題提起を行う。
著者
村井 尚子
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.203-212, 2013-01-31

親や教師として我々は、なぜ子どもをケアするだろうか。ヴァン=マーネンはそれは非媒介的で直接的な出会いによるとし、その契機をレヴィナスの「顔」の到来という理論によって読み解く。レヴィナスによれば、他者との出会いとは、その人の「顔」を見ること、私を呼ぶその人の声を聞くことである。そのことによって私は、不可避的に応答することを迫られる。つまりケアする責任を感じるのである。しかしデリダによれば我々は、いっときには一つのこと、一人の他者のことしかケア(気にかけることが)できない。他の多くのケアを必要としている他者への責任を担えないという事実は、我々に倫理的痛みをもたらす。しかし、ヴァン=マーネンはその痛みこそを大切にする。教師は特定の生徒の「顔」に向き合っていると感じ、その生徒について気にかけているからこそ、自分が責任を負っている多くの、ときに「顔のない」他の生徒すべてに対して繊細でいられるのである。
著者
武田 雅子 岡村 眞紀子 岡村 眞紀子
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.117-122, 2012-01-31

原著Ryme's Reason [Rhyme's Reason]は、詩、特に英語の詩・韻文の法則、またその特質を、実際に詩を使って分かりやすく説明した書である。「詩」で「詩」を、「韻文」で「韻文」を説明するところが、本著の特色であり、面白くユニークなところである。そこがまた翻訳を困難にしてもいるのであるが。本稿はその冒頭「詩とは何か」から「韻律について」の前半部分の翻訳である。「詩」は、我々の生に不可欠なものとして確と存在するが、その定義は不可能に近い。一方、「韻文」はまず、その韻律から説明が可能になる。英詩はヨーロッパ古典の伝統に則りつつも、言語の特質の違いから、韻律の拠って立つところが、音節の「量」(quantity)から「強さ」(stress)へと大きく変化し、独自性を形成した。その独自性を活かした韻律をiamb(弱強格)、trochee(強弱格)、spondee(強強格)、dactyl(強弱弱格)、anapest(弱弱強格)と分類する。また行における「歩」の数からも説明が可能となり、iambic pentameter(弱強五歩格)といったふうに詩型は定義付けられる。
著者
塚口 眞佐子
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.159-173, 2013-01-31

1920-30年代の社会背景からモダンデザイン史を読み解くシリーズの7稿目である。今稿は英国のモダン住宅事情を取り上げる。30年代を迎える頃に、英国では最初のモダン住宅がようやく姿を見せ始める。大陸ヨーロッパとは周回遅れと言ってよいだろう。特に伝統的住宅に強く固執する国民性の中、どのような層が設計者として住まい手として計画に加わったのか。そこにはコスモポリタニズムという共通項が、極めて明白に浮かび上がる。さらに、集合住宅が労働者階級向けと概念されていた大陸と異なり、進歩的知識人の入居を想定して計画された集合住宅が、初期の頃から誕生する特異性がみられる。入居者もまたコスモポリタニズムへの親和性を見せる層であった。前稿で取り上げたナチスを逃れ英国に亡命した左派芸術家やユダヤ人建築家が移り住んだのも、これらの集合住宅であった。今稿では、ハイポイント、ウィロウロードの家、ローンロード・フラッツ、この3件の事例を紹介し、稿を改めて事例を追加し総括を行うこととする。