著者
名和 利男
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.412-416, 2015

インターネット及び情報通信技術の急減な発展は,外交を含む安全保障や内政的な危機管理に大きな影響を与えている.そして敵対する国家や反社会勢力が,サイバー攻撃という手段で,それぞれの目的を達成しようする傾向が強くなってきている.特に,産業活動の重要な基盤である「電力・エネルギー供給」と物流を支える「運輸・交通網」は,サイバー攻撃の標的となりやすい.しかしながら,当事者のサイバー脅威に関する認識は十分とは言えず,適切性を欠く対策が散見されている.電力・交通網に係るシステムは,情報システムと大きく異なり,長期間に渡る安定運用の確保が求められるため,システムに変更を加えるような行為(セキュリティパッチの適用等)が困難という制約下で,攻撃側の行動特性を理解することにより,適切な対策をとっていかなければならない.
著者
小松原 明哲
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.194-200, 2008-08-15 (Released:2016-10-31)
参考文献数
27
被引用文献数
1

規則違反(violation)を,個人が故意に起こした規則に反する行為と捉え,その生起メカニズムを検討 した.代表的な規則違反の形態を整理し,それらを考察すると,その根底には,利益,コントロール,バリアの三つの感情が共通しており,規則違反を抑止するためには,前二者の感情を減少させ,後者の感情を増強させることが重要であることを指摘した.さらに規則違反の基本モデルを提案した.そのモデルをもとに,規則違反の抑止においては態度変容が必要であることを指摘し,社会心理学においての態度変容モデルをもとに,その方策について考察した.さらに,規則違反と企業風土,安全文化の関係,規則改定の仕組み,規則改定の仕組みの監査の重要性について指摘した.
著者
清水 久二
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.217-220, 2005-06-15 (Released:2016-12-30)
参考文献数
2
著者
新 誠一
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.407-411, 2015-12-15 (Released:2016-07-01)
参考文献数
8
被引用文献数
1

全ての機器にマイコンが搭載されインターネットなどで接続されている現在,サイバーセキュリティは大きな課題となっている.特に,社会インフラにおけるサイバーセキュリティは緊急の課題である.本稿は,この課題の全体像を提供するとともに,セキュリティ対策を安全工学の視点にも立って解説する.安全工学とサイバーセキュリティ問題は深く関連している.このため,この二つを一体として扱っていく必要がある.
著者
中島 恭一 松岡 猛
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.294-302, 1991-10-15 (Released:2017-08-31)

確率論的安全評価(PSA)の応用の現状と手法の現状について報告する.今年2月のPSAM国際会議の発表内容からPSAの利用と研究が広がっていることを示す。PRA Procedures GuideとNUREG -1150の内容を中心に原子力分野でのPSA手法の現状を説明し,新しい解析手法と不確実さ解析の現状 についても述べる.
著者
石川 義彦
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.233-239, 2010-08-15 (Released:2016-09-30)

NBC 災害という言葉が使われて10 年近く経つ.東京消防庁ではそれ以前より危険物や毒物・劇物,RI 等を取り扱う施設や輸送中の火災,漏洩等に対応しており,1990 年には化学機動中隊を設立して消防活動体制の一層の強化を図った.しかし地下鉄サリン事件では原因物質不明のまま初動の活動を行い,結果として職員の受傷等数々の課題を残した.このため化学テロも踏まえた装備や資器材,教育訓練,活動体制等の強化を図るとともに,その後も茨城県での臨界事故や米国での同時多発テロ等を踏まえて様々な対策を講じてきた.NBC 災害を取り巻く環境は変化しており,最近では家庭用洗剤等の混触による硫化水素発生事故が多発するなど今後も新たな形態の災害の発生が懸念される.このような状況を踏まえ,東京消防庁が取り組んでいるNBC 災害対策の現状について紹介する.
著者
中村 順
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.67-72, 2011-04-15
参考文献数
12

<p>警察は産業事故についても事実を明らかにし,原因を究明して安全を確保する責務がある.対象となる事故は,死傷者を伴う事故や,社会的に関心の高い事故となる.現場検証は裁判所の令状に基づく公式な事故を記録するものである.関係者の供述についても証拠化され,他の調査機関と異なり,人に関する事故に至る背景,事情までも含めて調査を行うことになる.事故原因を明らかにして,責任を明確にすることが求められている.責任者の処罰ではない.</p>
著者
杉山 直紀
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.389-395, 2011-12-15 (Released:2016-08-31)
参考文献数
24

福島第一原子力発電所事故からの教訓の中で,原子力安全確保の方法論として確率論的安全評価(PSA)への期待が高まってきている.その一方で,今回の事故では,PSA の持つ技術的な課題も顕在化した. そこで,まず,今回の事故の進展を振り返り,現在のPSA のリスク評価手法としての有効性を確認した.その後,IAEA の原子力安全の目的と深層防護の考え方の観点から,現在のPSA の課題を整理した. 最後に,PSA 技術全体の底上げを図るために,原子力安全と深層防護,評価範囲の網羅性と最新技術へのキャッチアップ,標準整備戦略の必要性,人材育成,リスクコミュニケーションの観点から6 つの提言を行った.
著者
狩川 大輔
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.442-447, 2023-12-15 (Released:2023-12-25)
参考文献数
14

航空管制業務は,「二度と同じ状況はない」と言われるぐらい多様で変化に飛んだ航空交通流を扱う業務であり,多数の航空機の安全かつ効率的な運航を支えている.本稿では,航空管制業務の一つである航空路管制業務の概要について述べると共に,航空路管制業務を対象とした人間工学的研究の一例を紹介することを通じて,変化する条件下で高い安全性を実現する上での航空管制官の持つ適応能力と状況に応じた動的な調整が果たす役割について概観する.それに基づき,人間の弱点の補完や失敗を防ぐための従来型の方法論に加えて,人間の適応能力を支援し,積極的に活用することにより,想定内外の変化に対するシステムの安定性・安全性を高めるという方向での安全アプローチの必要性について議論する.
著者
飯田 光明
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.440-445, 2011-12-15 (Released:2016-08-31)
被引用文献数
1

2011 年3 月11 日の東北地方太平洋沖地震により(独)産業技術総合研究所の東北及びつくばセンターが被った研究施設の被害状況と復旧活動について紹介する.負傷者は非常に少なかったものの,居住不可となる建物が1 棟発生,室内も高層階ほど一応の耐震固定を施した機器,什器類まで転倒した.研究機器も被害が大きく,地上階に設置していた大型機器も背の高い機器は多くが損傷した.研究インフラで被害が大きかったのは,屋上の排ガス処理装置と,地中埋設の研究排水管であった.防災マニュアル整備,避難訓練,緊急地震速報の導入,什器類特に薬品庫やボンベの耐震固定の徹底,備蓄品の整備等は非常に有効だったが,高層階ほど強固な耐震固定,観音開き収納庫対策,適切な行動マニュアルとチェックリストの整備等が新たに得た教訓であった.
著者
下瀬 健一
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.482-489, 2017-12-15 (Released:2017-12-15)
参考文献数
25

竜巻は,他の気象災害と比べ発生頻度は高くなく被害が及ぶ範囲も狭いが,ひとたび発生し我々の生活圏を直撃した場合,構造物や農作物への被害による経済的損失のみならず,人的被害を引き起こす.そのため,竜巻の予測・監視が防災上非常に重要であるが,竜巻は短時間かつ局所的に発生する現象であるため,竜巻を直接観測することは困難であり,その発生メカニズムは未だ十分に解明されていない.ゆえに,竜巻の予測・監視技術は発展途上であり,竜巻の発生メカニズムと予測・監視技術は今なお積極的に研究開発が続けられている.本稿では,これまでの研究でわかってきた竜巻発生のメカニズムとそれを基に気象庁で開発されている予測・監視技術について解説し,竜巻発生時に必要とされる避難行動などを日本における竜巻の事例を交えながら紹介する.
著者
渡辺 孚
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.9, no.6, pp.368-375, 1970-12-15 (Released:2018-10-17)
著者
片方 恵子
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.433-438, 2019-12-15 (Released:2019-12-15)
参考文献数
13

クライシス・コミュニケーションとは,危機的事態覚知後にダメージを最小化するために行う言語・非言語を用いるレスポンスのことであり,リスク・コミュニケーション活動の一つに位置付けられる.クライシス・コミュニケーション戦略の一般的理論はすでに存在するものの,国民文化の相違によって,受け手となるステークホルダーによる評価は一様ではない.本稿は,日本,米国,中国について,各国の国民文化,社会システムの特徴および危機事例を挙げ,受け手の評価を概括し,各国に適切なクライシス・コミュニケーション戦略を論ずることを目的とする.その結果,トップによる謝罪,実直であることが評価される傾向の日本,対立を恐れずに明瞭な主張が評価される傾向の米国,調和を図ることが評価される傾向の中国といった,異文化的価値観を理解した上でのコミュニケーションが欠かせないことが検討できた.
著者
伏脇 裕一
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.89-94, 2022-04-15 (Released:2022-04-15)
参考文献数
24

近年,欧米諸国を中心に世界的に除草剤として大量使用されているグリホサートについて,その性状,環境汚染および食品汚染例とヒトへの健康影響などの毒性について考察した.外国産の農産物を使用した食品のグリホサート汚染が顕著に見られた.また,グリホサートの毒性には発がん性や発達期の脳への影響が指摘されている.さらに,グリホサートの散布に伴う問題点や課題について言及した.
著者
角屋 由美子
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.206-214, 2012-08-15 (Released:2016-08-31)
参考文献数
8

米沢藩は,上杉謙信を家祖とする名門上杉氏を領主としていたが,米沢藩初代藩主となった上杉景勝は,関ヶ原の戦いで敗者となり,会津120 万石の大大名から米沢30 万石に減封となった.さらに三代藩主上杉綱勝の急死に伴う養子手続きの不手際により,鷹山が上杉家の養子となり家督を相続した時は,領知は15 万石まで激減していた.鷹山は,財政難に苦しむ米沢藩の藩政改革に生涯をかけて取り組み,成功に導いた藩主であった. 平成23 年3 月11 日,東日本を襲った大震災に混迷する社会を反映し,鷹山ならどのようなリーダーシップを発揮しただろうと,鷹山に対する関心が高まっている.鷹山の数々の施策を,水害・飢饉・火事など米沢藩領内の災害について,その備えや対応の視点から歴史的立場で報告する.
著者
金盛 正至
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.2-10, 1995-02-15 (Released:2017-06-30)

日本のような小資源国では,プルトニウムの有効利用による準国産エネルギーの活用が重要である.プルトニウムには,核燃料物質として臨界となる危険性,放射性物質として人体へ直接与える影響があり,安全上の対策が不可欠である.安全上の対策は,プルトニウム利用が,原子炉で行われるのか,あるいは核燃料サイクル施設で行われるのかによって各種の異なったものとなる。また,プルトニウムを取り扱う上での内部被ばく,外部被ばくなどの評価方法および人体への影響にっいて解説する.
著者
手塚 還
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.434-442, 1990-12-15 (Released:2017-09-30)

半導体産業では,従来の産業ではあまり使われることのなかった有害で危険性の高い化学物質が多種多様の形態で利用されており,それらによる新たな環境問題の発生が懸念されている.洗浄工程から生じる排水,特に有機系排水およびウェーハ処理工程で用いられる特殊材料ガスに基づく排ガスの処理を中心に工場周辺での実態調査の結果もまじえて述べる.事故災害の未然防止,不測の場合の被害拡大防止のための安全対策についても言及する.