著者
和田 実
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.49-59, 1991
被引用文献数
12 3

本研究の目的は, 対人的有能性の下位概念としてのノンバーバルスキルおよびソーシャルスキルを測る尺度を作成することである。データは大学生 (男子68名, 女子174名) から収集された。因子分析の結果, ノンバーバルスキルについては二つの因子-非表出性および統制, 感受性-, ソーシャルスキルについては三つの因子-関係維持, 関係開始, 自己主張-が抽出された。そして, 既成の類似した尺度 (ACT, SM) およびいくつかの社会的変数 (きょうだい数, 親友数, 孤独感およびその変化, 恋人の有無など) との関連から, この尺度が妥当であることが確かめられた。なお, 具体的には以下の結果が見いだされている。: (1) ノンバーバル感受性, ソーシャルスキルの関係維持は男性よりも女性の方が優れている。(2) ソーシャルスキルの関係維持に優れない者ほど, 孤独を感じている。(3) 恋人がいる者の方がいない者よりも, ノンバーバル感受性を除いたすべてのスキルで優れる。(4) 全体でみれば, 孤独感が減少した者の方がソーシャルスキルの関係維持, 自己主張に優れる。今後は, 特にノンバーバルスキル尺度の項目内容のさらなる検討が必要であろう。
著者
水鴬 友昭 林 理
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.178-184, 1995-11-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
4
被引用文献数
3 3

本論文では原子力発電開発に従事する専門家と一般人の原子力発電やその他の工学的技術や製品に対するリスク認知構造の違いを明らかにすることを目的とし, それを解明した。因子分析の結果, それぞれの構造は「恐ろしさ」と「未知性」の2因子モデルで説明することができることがわかり, 専門家における知識は科学全体として知られていることを「わかっている」こととし, 個人的な知識のみを知識とはせず, 科学的に明らかにされていれば知識とみなす傾向があり, 一般人は個人的に知っていることを「わかっている」こととする傾向があることが判明した。また, 専門家と一般人をボンドし, 原子力発電に関係する項目をそれぞれ比較した結果, 専門家は一般人と較べ比較的に「未知性」, 「恐ろしさ」ともに低く, 知識量の差により, 原子力発電に対する恐ろしさが変化していることが判明した。これにより, 一般人に個人的な正しい知識を与えることにより, リスク構造認知の差を小さくすることが可能であることが判明した。
著者
松原 敏浩 吉田 俊和 藤田 達雄 栗林 克匡 石田 靖彦
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.93-104, 1998-06-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
30
被引用文献数
2 2

本研究は学校組織行動の因果関係のプロセスを検討しようとするものである。先行研究に基づいて一つの因果モデルが構成された。すなわち, リーダーシップ→組織風土, 教師のモラール→教師の学習指導スタイル→子どもの行動特徴である。リーダーシップ, 組織風土, 学習指導スタイル, 子どもの行動特徴, 子どもの親の学校への態度などの尺度の構成がおこなわれた。小学校の教師を対象にして組織行動の因果モデルを検討するために郵送調査が行われた。367名から有効なデータが得られた。主な結果は次のようなものであった。1. 因子分析の結果は各尺度がほぼ前回通りの因子構造をもつことを示した。2. 管理職のリーダーシップは組織風土や教師のモラールと密接な関係を示した。また組織風土や教師のモラールは教師の学習指導スタイルと密接な関係を示した。3. パス解析の結果はモデルが全体としてはほぼ支持されることを示した。結果についての討論がなされた。
著者
樋口 収 道家 瑠見子 尾崎 由佳 村田 光二
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.148-157, 2011
被引用文献数
1

他者との良好な関係を維持したいという欲求は,根源的なものであるとされる。先行研究では,そのような動機から,被害者は時間の経過とともに加害者を許すことが示されている(Wohl & McGrath, 2007)。このことから,本研究は重要他者との葛藤を思い出したとき,被害者は加害者よりも当該出来事を遠くに感じる可能性について検討した。実験1では,参加者に重要他者との間に起きた過去の葛藤を被害者あるいは加害者の立場から想起させ,当該出来事をどの程度遠くに感じるかに回答させた。その結果,被害者は加害者よりも当該出来事を遠くに感じていた。実験2では,参加者に重要他者あるいは非重要他者との間に起きた葛藤を被害者あるいは加害者の立場から想起させ,当該出来事をどの程度遠くに感じるかに回答させた。その結果,重要他者との葛藤を思い出した場合には被害者の方が加害者よりも出来事を遠くに感じていたが,非重要他者との葛藤を思い出した場合には被害者と加害者の間で有意な差はみられなかった。これらの結果は,仮説と一貫しており,他者との良好な関係を維持したいという欲求が自伝的記憶の再構成に及ぼす影響を議論した。<br>
著者
道家 瑠見子 村田 光二
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.150-158, 2009
被引用文献数
3

本研究は,僅差の失敗では予期的後悔が経験後悔よりも過大推測され,インパクト・バイアスが見られることを示したGilbert et al.(2004)の研究を追試し,先行研究と同様の結果を追認した。加えて,本研究では失敗の直後と10分後の2時点で後悔を測定し,後悔の持続時間のインパクト・バイアスについても検討した。参加者は,魅力的な賞品の当たるクイズに参加し,僅差,もしくは大差ではずれた場合の後悔の程度を予測,または報告させた。その際,半数の参加者にはクイズにはずれた直後と10分後の後悔の程度を予期させた。残りの半分の参加者には,直後と10分後に実際に経験した後悔の程度を回答させた。その結果,予想していた通り,クイズにはずれた直後も10分後も僅差条件では,経験後悔よりも予期的後悔の方が程度が大きく,インパクト・バイアスが見られた。他方,大差条件では,経験後悔と予期的後悔の間には差が認められず,インパクト・バイアスが見られなかった。時間経過に伴い,予期的後悔も経験後悔もクイズにはずれた10分後には直後よりも強度が弱まっていた。考察では後悔の持続時間のインパクト・バイアスとそれが消失する条件について議論した。<br>
著者
牧野 幸志
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.86-102, 1999-06-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
60
被引用文献数
1

本稿は, 説得に及ぼすユーモアの効果を検討した先行研究の結果を整理し, ユーモアの効果とその生起メカニズムを検討することを目的とした。最初に, 従来の実証的研究における3つの重大な方法論的問題点 (実験計画上の欠陥, 実験手続きの欠陥, 分析方法の欠陥) を指摘した。それらの問題点をもたない適切な先行研究の分析から以下のことを明らかにした。まず, 説得に及ぼすユーモアの主効果はみられないと報告する研究が多いが, ポジティブな主効果 (促進効果) を示す研究が一部みられた。しかし, ネガティブな主効果 (抑制効果) を示す研究は皆無であった。次に, ユーモアは8つの要因と交互作用することが明らかとなった。その方向は, 説得効果の促進と抑制のいずれの方向でもみられた。この結果は, 精緻化見込みモデルから解釈された。ユーモアの効果の生起メカニズムに関しては, 説得過程の媒介要因と考えられるメッセージへの注意, メッセージの評価, および送り手への好意への促進効果と受け手の肯定的感情への促進効果が有力であることが示唆された。さらに, 生起メカニズムを情報処理の観点から検討した。最後に, 今後の研究の方向性として, 1) ユーモア刺激の種類と量の効果の検討, 2) 受け手のユーモアのセンスによる効果の違い, 3) 情報処理の観点からのユーモアの効果の生起メカニズムの再検討, の3点を指摘した。