著者
廣兼 孝信 吉田 寿夫
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.117-124, 1984-02-20 (Released:2010-11-26)
参考文献数
14

本研究は, 印象形成における手がかりの優位性の様相が, 推測されるパーソナリティの次元や認知者および刺激人物の性によつてどのように異なるかについて検討することを目的に計画された。手がかりとしては, 顔, 声, 体格, 服装の4つを用い, 1人の評定者にこれら4つの単一手がかり条件と, 4つの手がかりすべてを同時に含んだ全体手がかり条件のもとで, 同一の複数の刺激人物のパーソナリティについて評定させた。そして, 各単一手がかりによる評定結果と全体手がかりによる評定結果のプロフィールの類似度を表わす相関係数をもって各手がかりの優位性の指標とした。このような方法によって得られた主な結果は, 次のようなものである。1. 一般に, 声による手がかりが最も優位であり, 顔や服装による手がかりがそれに続き, 体格による手がかりの優位性が最も低かった。2. 印象を形成する対象の性により手がかりの優位性の様相は異なっており, 相手が男性である場合には顔が, 女性である場合には声が最も優位性が高かった。
著者
浅井 千秋
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.174-184, 2004

本研究では,専門重要性と専門効力感が専門コミットメントを規定し,組織サポートと組織からの評価が組織コミットメントを規定し,職務複雑性と職場への適応が職務モチベーションを規定するという仮説が設定され,さらに,専門コミットメント,組織コミットメント,職務モチベーションの3つの態度間にも因果関係が設定された。そして,これらの仮説に基づいて構造モデルが構成された。派遣技術者133人に対する質問紙調査のデータを用いた共分散構造分析によって,このモデルの妥当性を検討した結果,専門コミットメントには,専門重要性と職務モチベーションからの正の影響が見られ,組織コミットメントには,組織サポート,組織からの評価,職務モチベーションからの正の影響が見られ,職務モチベーションには,職務複雑性,専門コミットメント,組織コミットメントからの正の影響が見られた。本研究の結果から,派遣技術者が有する専門志向の態度は,彼らの仕事に対する動機づけに強い影響を与えていることが示唆された。<br>
著者
蜂屋 良彦
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.47-55_1, 1978
被引用文献数
1

リーダー行動と上司への満足感やモチベーションとの関係に職務特性や部下の個人的特性が及ぼす影響を, 百貨店従業員を対象に調査し分析した。<BR>結果を要約すると, リーダー行動と上司への満足感の関係に対しては, 職務特性や個人の成長欲求の強さが影響を与えていることが見出された。リーダーシップの課題遂行の強調次元と満足感との関係は, 自律性の低い職務, 多様性の低い職務, 見通しの低い職務において, また, 成長欲求の弱い個人において, 負の相関を示したが, 自律性の高い職務, 多様性の高い職務, 見通しの高い職務, および成長欲求の強い個人においては, このような関係はみられなかった。リーダーシップの集団維持的配慮次元と満足感との関係は, 一般に正の相関がみられたが, フィードバックの多い職務や見通しの高い職務では, それを欠く職務にくらべ, 正の相関は低下した。また, 協力の必要性の大きい職務では, それの小さい職務にくらべ, 集団維持的配慮次元と満足感の間の正の相関は一層高くなる傾向が認められた。これらの結果は大筋において仮説を支持する方向にある。<BR>リーダー行動とワークモチベーションとの関係は低いものであり, また職務特性や個人的特性の影響はあまりみられず, 部分的には予想とは反対の結果が得られた。
著者
今川 民雄 岩渕 次郎
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.41-51, 1981
被引用文献数
1

本論文では, 好意的2人関係における相互的な認知過程の関連を吟味するとともに, その構造に関して因子分析的な検討を行った.<BR>56ペア112名の好意的関係にある男子大学生を被験者とし, 長島ら (1967) のSelf-Differential Scaleによって (1) 自己認知: S→s, (2) 他者認知: S→o, (3) 他者の自己認知についての推測: S→ (O→o), (4) 他者の他者認知についての推測: S→ (O→s), (5) 理想の自己像: S→Isの各認知過程につき, 相互に評定させた. 主な結果は以下の通りである.<BR>1) 好意的な2人関係においては, S→Is: O→Io, S→s: S→ (O→s), S→o: S→ (O→o) の3種が, 最も基本的な認知過程対であることが明らかとなった.<BR>2) 認知過程対の類似度に基づく因子分析の結果, 「自己像の類似性に関わる因子」 「自己像の開示性因子」 「理想化傾向因子」 「他者像の類似性に関わる因子」 「Self-esteem因子」 「他者像の開示性因子」 「自己志向的正確さの因子」 「他者による理想化傾向因子」 「他者志向的正確さの因子」 の9因子が見い出された.<BR>3) これらの因子は認知の対象 (自己・他者) と, 対人認知に働く要因 (正確性・類似性・開示性・理想化) の2次元に基づいて分類された.
著者
浜名 外喜男 松本 昌弘
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.101-110, 1993
被引用文献数
2

The purpose of this action research was to examine the effects of experimentally induced changes of teaching behavior on students' classroom adjustment. Sixteen teachers ranging from fourth to sixth grades and their students served as subjects. In a preexperimental session, all of these students were asked to rate the teaching behavior of their teachers toward them, and their own classroom adjustment. Thereafter, 9 classes were selected as an experimental group, and 7 classes as a control. At the beginning of the experimental session, each teacher in an experimental class was asked to increase his/her interactive teaching behavior toward those students who had rated their teachers' behavior toward them poorly. These induced attempts were continued for three weeks. Teachers in the control classes received no such experimental manipulation. In the post-experimental session, all of the students in the 16 classes were again asked to rate teaching behavior of their teachers toward them, and their own classroom adjustment. The results showed that the classroom adjustment scores of target students in the experimental group became more favorable due to the changes in teaching behavior.
著者
相馬 敏彦 山内 隆久 浦 光博
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.75-84, 2003
被引用文献数
2

本研究では,恋愛・結婚関係における排他性が,そのパートナーとの葛藤時への対処行動選択に与える影響が検討された。我々は,恋愛・結婚関係における排他性の高さが,関係での葛藤時に,個人にとって適応的な対処行動の選択を抑制すると予測した。調査は,恋愛・結婚パートナーを有する社会人108名を対象に行われた。被験者は,パートナーとそれ以外の9の対象からの知覚されたサポート尺度と,パートナーとの葛藤時の対処行動尺度に回答した。分析の結果,予測通り,パートナー以外のサポート源からもサポートを知覚できた排他性の低い者は,交際期間の長い場合には建設的に対処し,一方排他性の高い者は,交際期間が長い場合に建設的な対処行動を抑制しやすいことが示された。この結果から,排他性がそのメンバーの不適応を導く可能性が論じられた。<br>
著者
渡辺 匠 唐沢 かおり
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.25-34, 2012
被引用文献数
1

本研究は存在脅威管理理論の観点から,死の顕現性が自己と内集団の概念連合に与える影響について検証をおこなった。存在脅威管理理論では,死の顕現性が高まると文化的世界観の防衛反応が生じると仮定している。これらの仮定にもとづき,人々は死の脅威にさらされると,自己と内集団の概念連合を強めるかどうかを調べた。死の顕現性は質問紙を通じて操作し,内集団との概念連合は反応時間パラダイムをもちいて測定した。その結果,死の脅威が喚起された参加者は,自己概念と内集団概念で一致した特性語に対する判断時間が一致していない特性語よりも速くなることが明らかになった。その一方,死の脅威が喚起されても,自己概念と外集団概念で一致した特性語に対する判断時間は一致していない特性語よりも速くはならないことが示された。これらの結果は,死の顕現性が高まると,自己と内集団の概念連合が強化されることを示唆している。考察では,自己と内集団の概念連合と存在脅威管理プロセスとの関係性について議論した。<br>
著者
野波 寬 土屋 博樹 桜井 国俊
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
pp.1211, (Released:2014-03-28)
参考文献数
36
被引用文献数
2 4

正当性とは,公共政策に対する自他の決定権について,人々が何らかの理由・価値をもとに評価する承認可能性と定義される。本研究では沖縄県における在日米軍基地政策を取り上げ,これに深く関わる当事者と関与の浅い非当事者との間で,NIMBY 問題における政策の決定権をめぐる多様なアクターの正当性とその規定因を検討した。正当性の規定因としては信頼性と法規性に焦点を当てた。当事者は精密な情報処理への動機づけが高いため,信頼性から正当性評価への影響は,評価対象のアクターごとに変化すると考えられる。これに対して非当事者は,各アクターの正当性を周辺的手がかりにもとづいて判断するため,一律的に信頼性と法規性が規定因になると仮定された。これらの仮説は支持されたが,その一方で非当事者ではNIMBY 構造に関する情報の獲得により,自己利益の維持を目指して特定アクターの正当性を承認する戦略的思考の発生が指摘された。以上を踏まえ,公共政策をめぐるアクター間の合意形成を権利構造のフレームから検証する理論的視点について論じた。
著者
鹿内 啓子
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.37-46, 1984-08-20 (Released:2010-11-26)
参考文献数
14
被引用文献数
3 4

本研究の目的は, 自分がある課題を遂行して成功または失敗を経験した後に他者の成績情報が与えられた場合, その因果帰属に対して自己の成績およびself-esteemがどのような影響を及ぼすかを検討することである。そして次のような仮説をたてた。自分が失敗した時には, self-esteemの高い者 (高SE群) は高いself-esteemを維持するために相対的に他者を低く評価し, 他者の成功を外的要因に, 失敗を内的要因に帰属するであろう。他方self-esteemの低い者 (低SE群) は失敗によって自己評価を低めるので, 相対的に他者を高く評価し, 他者の成功を内的に, 失敗を外的に帰属するであろう。自分が成功した場合には, それが自己評価に及ぼす影響に関して相反する二つの方向のものが考えられるので, 仮説はたてられなかった。被験者は女子大学生であり, 質問紙によるself-esteemの測定の結果, 高SE群と低SE群各30名を選んだ。まず被験者自身にアナグラム課題を4試行遂行させ, 成功条件では全試行で成功し, 失敗条件では全試行で失敗するよう操作した。各試行および全試行全体の成績に対して能力, 努力, 問題の難しさ, 運および調子のそれぞれがどの程度影響していたかを7点評定させて因果帰属を測定した。その後, 同じ課題での他の大学生の成績であると教示して, 4名の他者の成績を知らせ, 自己の場合と同様に因果帰属を求めた。4名のうち2名は全試行で成功し, 他の2名は全試行で失敗している。最後に実験の目的と成功・失敗の操作について説明した。主な結果は次のようなものであった。1. 自分が失敗した時には, 高SE群よりも低SE群が他者の成功を内的に帰属し, 他者の失敗については逆に高SE群のほうが内的要因により強く帰属した。これは仮説を支持するものであった。2. 自分が成功した時には, 内的要因でも外的要因でもself-esteemの影響はみられなかった。3. 自他の因果帰属の差異に関しては, 自己よりも他者の成功が, また他者より自己の失敗が能力により強く帰属され, 運へは他者の失敗のほうが強く帰属された。これは, 自己の成績については控え目な帰属を, 他者のそれについては望ましい帰属をする傾向を示すものであり, public esteemによって解釈された。
著者
山浦 一保
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.16-27, 2000
被引用文献数
2

本研究は, リーダーの課題関連行動, あるいは社会情緒的行動が出現する背景に, 部下の行動やリーダーの管理目標がどのように関与しているのかを明らかにするため, リーダー行動の変容・形成過程を吟味した。研究1では, 部下の不満対処行動に対するリーダーの認知と, リーダー自身のリーダーシップPM行動 (三隅, 1978) との関連について検討した。看護組織を対象に調査を行った結果, 自分の部下が不満を感じても「服従」していると認知しがちなリーダーの方が, 自分の部下は「服従していない」と認知しがちなリーダーよりも, 自己評価によるM得点が高かった。研究2で用いた要因計画は, 2 (作業者のP行動・M行動) ×2 (リーダーの課題指向の管理目標・関係指向の管理目標) であった。被験者は, 男子大学生38名で, それぞれ4人集団のリーダー役に任命された。主な結果は, 次の通りである。(1) 課題指向的リーダーは, メンバーどうしの連帯感が強いM的行動をとる作業者よりも, 高い生産性をあげP的行動をとる作業者に対して, 配慮的行動を多く用いるようになった。(2) 課題指向的リーダーは, 関係指向的リーダーよりも強制的な指示を増加させ, とりわけ, M的行動をとる作業者に対して, 攻撃的な言動を多用するようになった。(3) 関係指向的リーダーの場合, P的行動をとる作業者よりもM的行動をとる作業者に対して, 課題に関連する情報を提供しなくなり, 頻繁に雑談を行った。(4) 関係指向的リーダーは, P的行動をとる作業者に対して配慮的な行動を増加させ, 同時に, 方向づけの増加と情報提供の減少という課題関連行動の変容が認められた。以上の結果から, リーダーのPM型は, 課題指向的リーダーが, 生産性の高い作業者を統率する状況で形成されやすいことが示唆された。
著者
三隅 二不二 杉万 俊夫 窪田 由紀 亀石 圭志
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.1-14, 1979
被引用文献数
1

本研究は, 企業組織体における中間管理者のリーダーシップ行動を実証的に検討し, その測定尺度を構成することを目的とするものである。<BR>フィールドは, 自動車部品の製造, 販売を主要な業務とする企業体であった。まず, 中間管理者 (部長, 工場長, 課長) に, 管理・監督行動に関する自由記述を求め, それを分類・整理しながら, リーダーシップ行動を測定するための質問項目を作成した。質問項目作成の過程で, 質問項目検討のための専門家会議を数回にわたってひらき, 中間管理者のリーダーシップ行動が質問項目として網羅的に含まれることを期した。最終的に, (1) 部 (次) 長・工場長用49項目, (2) 事務・技術系課長用92項目, (3) 工場課長用85項目の質問項目を作成した。リーダーシップ行動測定項目はすべて部下が上司のリーダーシップ行動を評価する, 部下評価の形式にした。これに, リーダーシップ測定項目の妥当性を吟味するための外的基準変数を測定する16項目を加えて質問票を印刷した、外的基準変数は, 仕事に対する意欲, 給与に対する満足度, 会社に対する満足度, チーム・ワーク, 集団会合, コミュニケーション, 精神衛生, 業績規範の8変数である。<BR>回答者数は, 部 (次) 長・工場長用533名, 事務・技術系課長用1, 040名, 工場課長用273名であった。リーダーシップ行動測定項目に関して因子分析を行なったが部 (次) 長・工場長, 事務・技術系課長, 工場課長, いずれの場合も, 「P行動の因子」と「M行動の因子」が見出された。<BR>次に, P行動のさらに詳細な構造を明らかにするために, 「P行動の因子」で. 60以上, かつ「M行動の因子」で. 40未満の因子負荷量を持つ項目のみを対象とする因子分析を行なった。その結果, (1) 部 (次) 長・工場長の場合は, 「計画性と計画遂行の因子」, 「率先性の因子」, 「垂範性の因子」, 「厳格性の因子」, (2) 事務・技術系課長の場合は, 「計画性の因子」, 「率先性の因子」, 「垂範性の因子」, 「厳格性の因子」, (3) 工場課長の場合は, 「計画性の因子」, 「内部調整の因子」, 「垂範性の因子」, 「厳格性の因子」が見出された。<BR>M行動のさらに詳細な構造を明らかにするために, 同様の分析を行なつた。<BR>その結果, (1) 部 (次) 長の場合は, 「独善性の因子」 と「公平性の因子」, (2) 事務・技術系課長, 及び (3) 工場課長の場合は, 「独善性の因子」と「配慮の因子」が各々見出された。<BR>従来の研究との比較によって, 第一線監督者と中間管理者のリーダーシップ行動の差異が考察された。すなわち, 具体的な内容には若干の違いがあるものの, 「厳格性の因子」及び「計画性の因子」は第一線監督者と中間管理者に共通している。しかし, 部 (次) 長・工場長及び事務・技術系課長の場合に見出された「率先性の因子」と, 工場課長の場合に見出された「内部調整の因子」は, 第一線監督者を対象とした従来の研究では見出されてはおらず, 中間管理者に特有な因子であると考察された。<BR>P行動, M行動の因子得点を用いてリーダーをPM型P型, M型, pm型に類型化し, 8個の外的基準変数との関連においてリーダーシップPM類型の妥当性を検討したが, いずれの外的基準変数においても, PM型のリーダーの下で最も高い得点, pm型のリーダーの下で最も低い得点が見出され, PM類型の妥当性が実証された。このPM類型の効果性の順位は, 従来の研究における第一線監督者の場合と全く同様であった。<BR>また, P行動測定項目10項目, M行動測定項目10項目を選定した。10項目を単純加算して得られるP (M) 行動得点はP (M) 行動の因子得点と. 9以上の相関を示すこと, PM行動得点を用いてリーダーの類型化を行なった場合のPM類型と外的基準変数の関係が因子得点を用いて類型化を行なつた場合の関係と同じであったことからこれらPM行動測定項目の妥当性が明らかになった。
著者
橋本 剛明 唐沢 かおり 磯崎 三喜年
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.76-88, 2010
被引用文献数
2

大学生が所属するサークル集団は,フォーマルな組織とインフォーマルな集団の双方の特徴を併せ持った集団であり(新井,2004),本研究はこれを準組織的集団と位置づけた。その上で,サークル集団における成員と集団とをつなぐコミットメントのモデルを探り,検討を加えることを目的とした。具体的には,組織研究の領域における3次元組織コミットメントのモデル(Allen & Meyer, 1990)を基盤に,サークル・コミットメントを測る尺度を作成し,学生205名を対象に調査を行った。その結果,サークル集団におけるコミットメント次元として,情緒的コミットメント,規範的コミットメント,集団同一視コミットメントの3因子が抽出された。さらに,それぞれのコミットメント次元の規定要因に関して,集団がフォーマル集団に近い程度を表す集団フォーマル性との関連を含めて分析を行った。情緒的コミットメントは課題および成員への集団凝集性により規定されており,また,課題凝集性と集団フォーマル性の交互作用が示唆された。規範的コミットメントと集団同一視コミットメントはともに,集団フォーマル性と成員凝集性によって規定されていることが認められた。<br>
著者
浅井 千秋
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.79-90, 2013
被引用文献数
1

本研究では,自発的職務改善が,情緒的組織コミットメントとキャリア開発志向の2つの就業態度および,上司エンパワーメント,上司の統制的管理,組織エンパワーメント,キャリア開発支援,業績主義評価の5つの就業環境によって規定されるという仮説に基づいて,構造モデルが構成された。5つの企業の従業員372名に対する質問紙調査のデータを用いた共分散構造分析によって,このモデルの妥当性を検討した結果,自発的職務改善に対して,キャリア開発志向と上司エンパワーメントから正の影響が見られ,業績主義評価から負の影響が見られた。組織エンパワーメントと情緒的組織コミットメントは,キャリア開発志向を高めることを通して,間接的に自発的職務改善に影響を与えることが示された。最後に,本研究を通して明らかになった知見の妥当性と課題について考察を行った。<br>
著者
村山 綾 三浦 麻子
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.81-92, 2014
被引用文献数
2

本研究では,集団討議で生じる葛藤と対処行動,およびメンバーの主観的パフォーマンスの関連について検討した。4名からなる合計17集団(68名)にランダムに配置された大学生が,18分間の集団課題を遂行した。その際,討議開始前,中間,終了時に,メンバーの意見のずれから算出される実質的葛藤を測定した。また討議終了時には,中間から終了にかけて認知された2種類の葛藤の程度,および葛藤対処行動について回答を求めた。分析の結果,集団内の実質的葛藤は相互作用を通して変遷すること,また,中間時点の実質的葛藤は主観的パフォーマンスと関連が見られないものの,終了時点の葛藤の高さは主観的パフォーマンスを低下させることが示された。関係葛藤の高さと回避的対処行動は主観的パフォーマンスの低さと関連し,統合的対処行動は主観的パフォーマンスの高さと関連していた。関係葛藤と課題葛藤の交互作用効果も示され,課題葛藤の程度が低い場合は,関係葛藤が低い方が高い方よりも主観的パフォーマンスが高くなる一方で,課題葛藤の程度が高い場合にはそのような差はみられなかった。葛藤の測定時点の重要性,および多層的な検討の必要性について議論した。<br>
著者
矢守 克也
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.119-137, 1997
被引用文献数
3

空前の都市型震災となった阪神大震災は, 多くの尊い人命を奪い, 甚大な被害をもたらすとともに, 自然災害に対する社会的対応のあり方, ひいては, 日本の社会システムのあり方に関して, 多くの警鐘を鳴らした。その一つに, 大量の避難者を, しかも数ヶ月という長期間にわたって引き受けた避難所に関わる問題がある。これまで, 災害に伴う避難所には, 被災者の安全と当面の衣食住を確保する「一次機能」だけが想定されていた。しかし, 阪神大震災によって, 避難所が, 中長期的な生活復旧を支援するための拠点としての機能, すなわち, 「二次機能」をもカバーしなければならないことが明らかになった。本研究では, まず, 事例としてとりあげるA小学校 (神戸市東灘区) が, 強力な地域リーダーのもと, ボランティアを巧みに活用しながら, 時期ごとに運営体制を段階的に変容させ, 一次機能, および, 二次機能の両者を果たしえた過程を, 同避難所のリーダー, 一般避難者, ボランティア, 関連行政組織の担当者らに対するインタビュー結果をもとに報告する。次に, その段階的変容プロセスを, 杉万ら (1995) が提唱した, 避難所運営に関する「トライアングル・モデル」の観点からとらえ返す。最後に, 以上を踏まえて, 今後の大規模災害時の避難所運営に関して, 10の提言をまとめる。
著者
今城 周造
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.102-110, 1995-07-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
11
被引用文献数
1

本研究の目的は, 説得の圧力の増大が, 説得効果の減少を常にもたらすかどうかを検討することであった。実験計画は, 2 (リアクタンス喚起の必要条件: 喚起小・喚起大) ×3 (自由への脅威: 脅威小・脅威中・脅威大) の2要因配置であった。被験者は, 被告が有罪であることを示唆する起訴状の要約を読む。次に弁護側の主張の要約を読むが, 喚起大条件では, 被告が無罪である可能性も同程度あることが示唆された。最後に被験者は, 被告有罪の立場を主張する法律専攻学生の意見を読んだ。この意見文には3種類あり, それぞれ押しつけがましい表現を0, 3または6個含む (自由への脅威の操作)。予測は以下の通りであった。(a) 喚起小条件では, 脅威が小から中へ増大すると説得効果が減少するが, さらに脅威が増大してもそれ以上の説得効果の減少は見られないであろう。(b) 喚起大条件では, 脅威が増大するほど, 説得効果は減少するであろう。(c) 脅威大条件の説得効果は, 喚起小条件と比べて, 喚起大条件において小さいであろう。説得後意見の結果については, 必要条件×脅威の交互作用が有意であり, 予測は支持された。リアクタンス喚起には, その必要条件が満たされる程度による上限があること, 自由への脅威が大きいほど説得への抵抗も大きいという単純な関係ではないことが示唆された。