著者
HORI Juri
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.73-78, 2018
被引用文献数
1

<p>Recognizing the structure of human well-being related to ecosystem services is an important first step to addressing the associated environmental issues. This paper aims to analyze the structure of human well-being related to ecosystem services in Japan (including coastal and inland areas). Satisfaction levels with the five components of human well-being (basic material for a good life, health, good social relations, security, and freedom of choice and action), as defined by the Millennium Ecosystem Assessment, were investigated using a questionnaire. Of the five components, structural equation modeling analysis indicated that "security" and "basic materials for a good life" functioned as explanatory variables, while "freedom of choice and action" acted as a dependent variable through its effects on the intermediate variables "health" and "good social relations". This study obtained similar findings to previous studies regarding the structure of human well-being. The present results also indicate that the structural model of human well-being related to ecosystem services might be psychologically shared among people.</p>
著者
宮本 正一 小川 暢也 三隅 二不二
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.99-104, 1973-12-30 (Released:2010-11-26)
参考文献数
16

本研究は回避反応の習得と消去におよぼす社会的条件刺激の有効性を実証するために行なわれた. 社会的条件刺激はグリッド越しのとなりの部屋で他のラットに電気ショックを与えることにより作り出された, 恐怖反応である. 従来の手続きによるBuzzer群と比較した結果, 次のことが明らかになった.1. 習得基準までの試行数, その間の回避反応数の2測度には2群間の差がみられず, 反応潜時だけはSocial群がBuzzer群より短い傾向が認められた.2. 消去に関しては, 基準までの試行数, CR数, 反応潜時の3測度でいずれにも2群間に顕著な差が認められ, Social群の消去抵抗がBuzzer群より著しく大きかった.これらの結果は代理経験と社会的刺激のもつ複雑性の2つの観点から考察された.
著者
山口 一美
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.55-65, 2002
被引用文献数
1

本論文では, 自己宣伝の評価ならびに就労に関わる要因としてスマイル, アイコンタクトの表出とパーソナリティ要因に焦点をあてて検討した。女子大学生の就労希望者 (24名) の自己宣伝の場面をビデオ撮影し, 研究1では就労希望者のパーソナリティと自己宣伝におけるスマイル, アイコンタクトの表出ならびに他者評価との関連を検討し, 研究2では就労希望者のパーソナリティ要因および自己宣伝におけるスマイル, アイコンタクトの表出とサービス業への就労との関連を探った。その結果, 研究1からセルフ・モニタリングの"自己呈示の修正能力"がスマイル表出の適切さの評価に, 自己意識が人事評定に, また自己宣伝のスマイルがスマイル表出の適切さの評価ならびに人事評定に影響を及ぼしていることが示された。研究2ではセルフ・モニタリングの"自己呈示の修正能力"と自己意識が高く, スマイル表出が適切で, 人事評定が事前の評価で高かった者がサービス業に採用され, 就労する傾向をもつことが明かになった。
著者
林 文俊
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.1-9, 1982
被引用文献数
4

本研究は, 人が他者のパーソナリティを認知する際の対人認知構造における個人差を, 認知者の自己概念および欲求と関連づけて分析したものである。<BR>被験者は大学生男女299名。対人認知構造の個人差を測定するために, 各被験者は8名の役割人物を20組の性格特性尺度上で評定することを求められた。また, 自己概念については長島ら (1966) のSelf-Differential Scaleが, 各人がもつ欲求体系についてはKG-SIV (Gordon・菊池, 1975) と土井・辻岡 (1979) に準じた検査が, それぞれ実施された。<BR>主な結果は, 次の2点である。<BR>1) INDSCALモデル (Carrll & Chang, 1970) による分析を通して得られた対人認知構造の個人差測度は, 7週間を隔てた再検査結果の分析でも, かなり高い安定性を示した。<BR>2) 他者認知に際して人がある次元を重視する程度は, その個人の自己概念や欲求体系とある程度の関連性をもつことが明らかになった。また, このような関連性のパターンには, 顕著な性差が認められた。
著者
山浦 一保
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.16-27, 2000-07-15 (Released:2010-06-04)
参考文献数
19
被引用文献数
3 2

本研究は, リーダーの課題関連行動, あるいは社会情緒的行動が出現する背景に, 部下の行動やリーダーの管理目標がどのように関与しているのかを明らかにするため, リーダー行動の変容・形成過程を吟味した。研究1では, 部下の不満対処行動に対するリーダーの認知と, リーダー自身のリーダーシップPM行動 (三隅, 1978) との関連について検討した。看護組織を対象に調査を行った結果, 自分の部下が不満を感じても「服従」していると認知しがちなリーダーの方が, 自分の部下は「服従していない」と認知しがちなリーダーよりも, 自己評価によるM得点が高かった。研究2で用いた要因計画は, 2 (作業者のP行動・M行動) ×2 (リーダーの課題指向の管理目標・関係指向の管理目標) であった。被験者は, 男子大学生38名で, それぞれ4人集団のリーダー役に任命された。主な結果は, 次の通りである。(1) 課題指向的リーダーは, メンバーどうしの連帯感が強いM的行動をとる作業者よりも, 高い生産性をあげP的行動をとる作業者に対して, 配慮的行動を多く用いるようになった。(2) 課題指向的リーダーは, 関係指向的リーダーよりも強制的な指示を増加させ, とりわけ, M的行動をとる作業者に対して, 攻撃的な言動を多用するようになった。(3) 関係指向的リーダーの場合, P的行動をとる作業者よりもM的行動をとる作業者に対して, 課題に関連する情報を提供しなくなり, 頻繁に雑談を行った。(4) 関係指向的リーダーは, P的行動をとる作業者に対して配慮的な行動を増加させ, 同時に, 方向づけの増加と情報提供の減少という課題関連行動の変容が認められた。以上の結果から, リーダーのPM型は, 課題指向的リーダーが, 生産性の高い作業者を統率する状況で形成されやすいことが示唆された。
著者
渡部 幹 寺井 滋 林 直保子 山岸 俊男
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.183-196, 1996
被引用文献数
2 20

最小条件集団における内集団バイアスの説明のために提出されたKarpら (1993) の「コントロール幻想」仮説を囚人のジレンマに適用すると, 囚人のジレンマでの協力率が, プレイヤーの持つ相手の行動に対するコントロール感の強さにより影響されることが予測される。本論文では, 人々の持つコントロール感の強さを囚人のジレンマでの行動決定の順序により統制した2つの実験を行った。まず第1実験では以下の3つの仮説が検討された。仮説1: 囚人のジレンマで, 相手が既に協力・非協力の決定を終えている状態で決定するプレイヤーの行動は, 先に決定するプレイヤーの行動により異なる。最初のプレイヤーが協力を選択した場合の2番目のプレイヤーの協力率は, 最初のプレイヤーが非協力を選択した場合の2番目のプレイヤーの協力率よりも高い。仮説2: 先に行動決定を行うプレイヤーの協力率は, 同時に決定を行う通常の囚人のジレンマにおける協力率よりも高い。仮説3: 2番目に決定するプレイヤーの協力率は, 相手の決定が自分の決定の前に知らされない場合でも, 同時に決定を行うプレイヤーの協力率よりも低い。以上3つの仮説は第1実験の結果により支持された。3つの仮説のうち最も重要である仮説3は, 追実験である第2実験の結果により再度支持された。
著者
仙波 亮一
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.105-116, 2018

<p>本研究の目的は,どのような要因が労働者の自我脅威の知覚に影響を及ぼし,その後どのような対処方略に結びつくのかを自己愛タイプ別に明らかにすることである。本稿では,まず分析1として,自己本位性脅威モデルに基づいて,どのような要因が労働者の自我脅威の知覚に影響を及ぼし,その後どのような対処方略に結びつくのかを複数のモデルを設定し,共分散構造分析により検討した。その結果,相対的自己評価と自己概念の明確性を要因として含むモデルは,それを含めないモデルよりも適合度が低く,自我脅威が対人恐怖心性および組織機能阻害行動に影響を及ぼすことを仮定したモデルが採用された。次に分析2では,分析1で採用されたモデルについて,労働者を自己愛タイプ(自己主張性タイプ,注目・賞賛欲求タイプ,優越感・有能感タイプ)に分類し,自我脅威がどのような対処方略と結びつくのかを複数の母集団に対して共分散構造分析を用いて検討した。その結果,すべての自己愛タイプにおいて自我脅威は対人恐怖心性へ正の影響を及ぼしており,自己主張性タイプでは,組織機能阻害行動へ正の影響を及ぼしていた。</p>
著者
竹ヶ原 靖子 安保 英勇
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.136-146, 2018

<p>援助要請者は,援助要請の際に,自身のコストだけでなく,潜在的援助者のコストにも注目していることが示されているが,援助要請者が何から潜在的援助者のコストを予測するのかについてはあまり検討されていない。そこで,本研究では援助要請者と潜在的援助者の二者間におけるコミュニケーション・パターンに着目し,それが援助要請者の潜在的援助者コスト予測と援助要請意図に与える影響を検討した。大学生の同性友人ペア15組にそれぞれ10分間の日常会話をさせた後,潜在的援助者のコストを予測し,自身の援助要請意図について回答させた。その結果,相補的コミュニケーション(↑↓)と潜在的援助者の憂うつな感情との間に負の相関,相称的・競争的なコミュニケーション(↑↑)と援助要請意図の間には負の関連が示されるなど,日常会話におけるコミュニケーション・パターンと潜在的援助者のコスト予測,援助要請意図との間にいくつか有意な関連が示された。このことから,日常場面におけるコミュニケーションは,援助要請者が潜在的援助者のコストを予測する手がかりのひとつであることが示唆された。</p>
著者
加藤 謙介 渥美 公秀 矢守 克也
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.155-173, 2004
被引用文献数
5 3

本研究では,高齢者に対するロボット介在活動(Robot Assisted Activity: RAA)の事例を取り上げ,RAAを,ロボットをめぐる物語の共同的承認の過程であるとして検討した。筆者らは,有料老人ホームに入所する高齢者を対象とした,ペット型ロボットを用いたRAAを実施し,参与観察するとともに,RAA実施中における参加者群の相互作用を,定量的・定性的に分析した。定性的分析の結果,RAA時には,対象となった高齢者のみではなく,施設職員やRAAの進行係等,RAAの参加者全員が,ペット型ロボットの挙動に対して独自の解釈を行い,それを共同的に承認しあう様子が見出された。また,定量的分析の結果,RAA実施中における参加者群の「集合的行動」のうち,最も頻度が多かったのが,「ロボットの動きを参加者群が注視しながら,発話を行う」というパターンであることが明らかになった。筆者らは,RAAを,参加者によるロボットの挙動に対する心の読み取り,及びその解釈の共同的承認を通して物語が生成され,既存の集合性とは異なる集合性,<異質性>が生成される過程であると考察した。<br>
著者
矢守 克也 李 旉昕
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.117-127, 2018
被引用文献数
1

<p>高知県黒潮町が掲げる「私たちの町には美術館がありません,美しい砂浜が美術館です」というフレーズは,「Xがない,YがXです」の形式をもつ。本論文では,この形式が,「限界集落」,「地方消滅」といった言葉によって形容されるきびしい状況下にある地方の地域社会の活性化を支える根幹的なロジックになりうることを,「Xからの疎外/Xへの疎外」の重層関係を基盤とした見田宗介の疎外論の観点から明らかにした。この疎外論の根幹は,「Xからの疎外」(Xがないことによる不幸)は,その前提に「Xへの疎外」(Xだけが幸福の基準となっていること)を必ず伴っているとの洞察である。よって,Xの欠落に対してXを外部から支援することは,「Xからの疎外」の擬似的な解消にはなっても,かえって「Xへの疎外」を維持・強化してしまう副作用をもっている。これに対して,YがXの機能的等価物であることを当事者自身が見いだし宣言したと解釈しうる黒潮町のフレーズには,「Xからの疎外」を「Xへの疎外」の基底層にまで分け入って根本から克服するための道筋が示されていると言える。</p>
著者
谷口 友梨 池上 知子
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.78-92, 2018
被引用文献数
1

<p>本研究では,解釈レベル理論に基づき,(1)観察された行為事象との心理的距離によって生起しやすい自発的推論が変化するか,(2)その結果,特性に基づく行為者の将来の行動予測がどのような影響を受けるのかについて検討した。4つの実験を通じて,特性の推論は観察事象との心理的距離が近い場合より遠い場合のほうが生起しやすく,目標の推論は観察事象との心理的距離が遠い場合より近い場合のほうが生起しやすいことが示された。加えて,心理的距離が遠い行動を行った行為者の方が近い行動を行った行為者に比べて推論された特性に基づいて将来の行動が予測されやすいことが窺われた。これは,行為事象との間に知覚された心理的距離に応じて,駆動する情報処理の抽象度が変化し,距離が遠いほど行為事象は抽象的に解釈され,特性の観点から行動が解釈されやすいのに対し,距離が近くなると行為事象は具体的に解釈され,一時的な行為目標の観点から行動が解釈されやすくなることを示唆している。以上の結果から,潜在レベルで生起する推論が文脈の影響を受けやすい性質をもつこと,潜在レベルの推論が顕在レベルの判断を一定程度規定することが考察された。</p>
著者
柳 学済 堀田 美保 唐沢 穣
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究
巻号頁・発行日
2018

<p>個人間の罪悪感研究では,関係の維持が必要となる被害者に対しては,関係を修復するために罪悪感が生じやすいことが示されている。本研究では集団間においても同様に,集団間の相互関係が予期される外集団に対して,集団間の関係修復のために集合的罪悪感が生じやすいか否かを検討した。また,これまでの集合的罪悪感研究で一貫した結果が得られていない集団同一視の影響に対して,集団間の相互作用が調整効果を持つかどうかを検討した。60名の大学生を対象に小集団による得点の分配ゲームを行い,参加者は内集団との同一視(高vs.低)×外集団成員との相互作用の予期(ありvs.なし)の4条件のいずれかに割り当てられた。ゲーム内での内集団成員の外集団に対する不公正な分配により,すべての参加者に対して,集合的罪悪感を喚起させた。集団同一視の操作は,ゲーム内での分配における内集団成員の公正さの程度により行い,集団間の相互作用は,外集団への不公正な分配が行われたのちに外集団成員と共にゲームをするか否かを予期させることにより操作した。実験の結果,集団間の相互作用が予期される場合には,集団と同一視する集団成員において強い集合的罪悪感が生起し,相互作用が予期されない場合には,罪悪感が生起しない傾向が明らかにされた。</p>
著者
齋藤 真由 白岩 祐子 唐沢 かおり
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究
巻号頁・発行日
2018
被引用文献数
3

<p>本研究の目的は,市民の司法参加に対する認知構造を,広瀬(1994)の要因関連モデルなどで提出されている3つの評価の枠組みから把握するとともに,それらが参加意欲に与える影響を明らかにすることである。本研究が着目した3つの評価とは,市民における知識や経験の有無に関する「実行可能性評価」,負担感についての「コスト評価」,市民による司法参加の効用についての「ベネフィット評価」である。都内の大学生74名を対象とする予備調査で得られた自由回答をもとに,司法参加に対するさまざまな認知を収集し,上記3つの評価に分類した。本調査は都内の大学生を中心とする206名を対象に実施した。因子分析の結果,実行可能性評価とベネフィット評価に関する因子はそれぞれ4つ,コスト評価に関する因子は1つが得られた。その中でもベネフィット評価に含まれる「親和性の向上」と「透明性の向上」が参加意欲を高め,実行可能性評価に関する「知識・経験の欠如」とコスト評価に関する「責任の重さ」が参加意欲を低下させていることが明らかになった。これらの結果にもとづき,今後研究が進むべき方向性について議論した。</p>
著者
大野 俊和
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.230-239, 1996
被引用文献数
1

「いじめの被害者にも問題がある」とする見解は, 一般的によく聞かれる見解である。本研究の目的は, 攻撃が「いじめ」として定義される特徴的な形によって, この見解が生じてしまう可能性について検討することにある。本実験では, 以下の2つの仮説が検討された。(1) ある攻撃が, 単独の加害者により行われる場合に比べ, 集団により行われた場合の方が, 被害者は否定的に評価される。(2) ある攻撃が, 一時的に行われる場合に比べ, 継続的に行われた場合の方が, 被害者は否定的に評価される。本実験の結果により, 仮説1は支持されたが, 仮説2は支持されなかった。また予備実験の結果から, 否定的評価と関連する個人差要因として「自己統制能力への自信」と「社会一般に対する不信感」と解釈される2つの信念・態度の存在が指摘された。
著者
今川 民雄
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.1-6, 1985

本研究は, 好ましい他者の価値態度を認知する際, 仮定された類似性が実際の類似性よりも大きいという仮説を, 3種類の指標に基づいて検討すると同時に, 3種の指標間の関連についても検討した。<BR>被験者は大学生の男女50名づつ計100名である。価値態度はGordon &菊池 (1974) の個人的価値尺度 (KG-SPV) を用いた。実験は集団で行なわれ, 被験者は2部のKG-SPVテスト用紙に, 自己の価値態度と, 同じ大学内で最っとも好ましい同性の友人の価値態度についての推測を, 別々に記入した。<BR>結果は, (1) 個人内の相関係数に基づく指標, (2) 個人内の価値態度別の, 評定間の差の絶対値に基づく指標, (3) 価値態度別の全体の相関係数に基づく指標の3種の指標によって分析された。結果は次の通りである。<BR>1) 仮定された類似性が実際の類似性よりも大きいという仮説は, 3つの指標のいずれにおいても支持された。<BR>2) 3種の指標間の関連を検討したところ, 差の絶対値に基づく指標と全体の相関係数に基づく指標との間には密接な関連が見られた。しかし, 個人内の相関係数に基づく指標は, 他の2つの指標とは関連がみられなかった。
著者
平井 美佳
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.103-113, 2000
被引用文献数
17

本研究は, いわゆる日本人論における「日本人らしさ」についてのステレオタイプを, 当の日本人はどのように捉えているのかを検討したものである。すなわち, 「日本人らしさ」のステレオタイプを「一般の日本人」については認めるにしても, 個々人に注目した場合には, それほどにはあてはまらないとするのではないかという仮説を検討した。まず, 代表的な日本人論の記述から2, 000項目を抽出し, これをもとに3ヵテゴリー45項目からなる「日本人らしさの尺度」を作成した。この尺度を用い, 大学生の男女226名に「一般の日本人」と「自分自身」の2評定対象についての評定を求めた。その結果, 「日本人らしさ」についての肯定度は「自分自身」についてよりも「一般の日本人」についてより高いという有意差が認められた。さらに, カテゴリー別には, 集団主義的傾向を記述したカテゴリーにおいて, 最も顕著な差が見出された。この結果に基づいて, 「一般の日本人」のレベルと個人のレベルの評定が異なる理由について考察した。
著者
沼崎 誠
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.14-22, 1995-07-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

セルフ・ハンディキャッピングが, セルフ・ハンディキャッパーの能力に関連する受け手の知覚と受け手のセルフ・ハンディキャッパーに対する好意とに与える効果を検討するために, 2つの実験室実験を行った。2つの実験とも, 獲得的セルフ・ハンディキャッピングの有無と主張的セルフ・ハンディキャッピングの有無が操作された。獲得的セルフ・ハンディキャッピングはセルフ・ハンディキャッパーの遂行成績を低く知覚させたが, セルフ・ハンディキャッパーの能力やセルフ・ハンディキャッパーに対する好意には影響を与えなかった。遂行成績が低く知覚された結果は, ハンディがあることにより, 受け手が遂行成績が低くなると期待したために生じ, そこから割り引き原理が働いたことにより, 能力知覚には影響しなかったと考えられる。一方, 主張的セルフ・ハンディキャッピングはセルフ・ハンディキャッパーに対する好意を低下させたが, セルフ・ハンディキャッパーの能力に関連する知覚には影響を与えなかった。これらの結果は, 印象操作方略としてのセルフ・ハンディキャッピングが, 受け手に対してはネガティブな効果を持ちやすく, ポジティブな効果が少ないことを示唆するものである。
著者
上田 敏見 谷口 勝英
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.75-80, 1980

本研究は, 社会的望ましさと誘引との関係を明らかにすること, 自己評価の高低がこの関係にどのようにかかわっているかを確かめることを目的として行われた.<BR>116人の被験者が, 課題遂行能力において, すぐれた人, 類似した人, 劣った人の3人の刺激人物を, 課題遂行のパートナーとして, 遊び友達として, リーダーとして, どの程度好ましいかを評定した.<BR>主な結果は, 次の通りであった.<BR>(1) 作業のパートナー, 遊び友達としては, すぐれた人より, 類似した人の方が好まれる.<BR>(2) リーダーとしては, すぐれた人が, 類似した人より好まれる.<BR>(3) 作業のパートナーでは, 自己評価の高い者の方が低い者より刺激人物をより好ましく感じる.<BR>このうち, (1), (2) については, 場面の特性と社会的望ましさの側面が合致して, 社会的望ましさが本人に直接的に利益を与える時のみに報酬となることを示すものとして解釈された. また, (3) については, 自己評価の高い者の劣等感のなさや, 自己の能力への肯定的是認によるものとして解釈された.
著者
大渕 憲一
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.175-179, 1982-02-20 (Released:2010-11-26)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

被害の大きさが等しい事態で, 欲求不満の帰因情報を操作することによって, 被害者の攻撃反応が変化するかどうかが欲求不満物語を使って検討された. 男女80名の大学生に対して2種類の状況を描いた欲求不満物語が呈示され, 5質問測度によって被害者の欲求不満行動が評定された. 測度毎に, 性別 (2) ×帰因情報 (攻撃意図, 過失, 利他的動機, 事故) ×物語状況 (2) の分散分析が行われ, 次のような結果を得た. (1) 攻撃意図が最も被害者の攻撃反応を強く誘起し, 次いで過失, 利他的動機, 事故の順となった. この順序は不合理判断次元に対応すると思われる. (2) 内面的情緒反応 (怒り) にも同様の条件差が観察され, 欲求不満の不合理性と攻撃反応の関係については, 反応抑制説よりも動因低減説が有力視された. (3) 欲求不満反応を帰属過程が媒介する仕組について, 阻止者への自由の帰属と態度推測のふたつの見解に関する証拠が提出されて議論された. いずれも肯定的に結論付けられた. (4) 男女差は利他的動機による阻止行動をどれくらい合理的とみなすかに関して生じた. 女性は個人の行動が家族に制約されることを受け入れ傾向があると推論された.