著者
仲口 勉 西島 浩
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.640-665, 1971-05-30

本文は1966年に行なわれたBombus schrencki (Hymenoptera : Apidae)の1群における外役蜂ポピュレーションの外役飛翔活動に伴う巣からの出入の観察記録をできるだけ量的に分析して得られた諸結果の報告である。1.外役蜂ポピュレーション密度は8月下旬には10個体前後であったが,その後しだいに増加し,9月中旬に45個体前後になってピークを示し,以後はしだいに減少した。2.活動開始時刻と終了時刻については,前者が非常に大きな個体変異を持っていたのに対し,後者のそれは小さかった。8月下旬〜9月初旬では開始時刻の早い遅いに関係なく,終了時刻がほぼ一定であるのに対し,9月中旬では同じく終了時刻の個体変更が小さいながらも開始時刻の早い遅いと終了時刻のそれとの間には逆相関的傾向が見られた。3.日の出時刻と最上位個体の活動開始時刻,および,日の入時刻と平均活動終了時刻の間には,正の相関関係が認められた。4.9月以降においては早朝の巣外気温の低下が外役飛翔活動を妨げた。その臨界点は林床付近においては10℃前後であった。5.活動開始時刻と日齢の関係については次の諸傾向が認められた。1)初認日の出現時刻は遅い。2)やがて順位が上がり,早いものでは数日後に上位を占めるようになる。3)その後しばらくの間(おそらく2週間前後),比較的安定した位置を保持する。4)さらに高齢になると再び順位が下がる。6.外役飛翔活動密度の日周消長は,群の飛翔活動が始まってから9時頃までは密度が比較的ゆるやかに増大し,その後ずっとほぼ一定の活動密度を維持するが,日の入時刻の1時間ぐらい前から急激に減少した。7.花粉採集活動の比率の日周消長は早朝はほとんど0で,7:00〜8:00から急激に上昇し,その後夕方まで高い値を維持した。8.単位外役飛翔時間の分布は採集タイプや観察日にかかわりなく,平均よりモードがかなり左にずれ,右すそが長く伸びた分布型を呈した。9.単位外役飛翔時間は季節の進行につれて,しだいに長くなった。10.単位外役飛翔時間の採集タイプによる差については,9月初旬までは花粉荷を持っていた場合のほうが長かったが,9月中旬には差はなかった。しかし,9月中旬でも風が強い気象条件の日には,花粉採集の能率が低下するため差が現われた。花粉荷を持ち込まない場合の飛翔時間には,このような気象条件の影響はなかった。11.1個体1日当りの平均外役飛翔回数は8月下旬の15回前後から,9月中旬の7回前後まで漸次減少した。12.1個体1日当りの平均外役従事時間は8月下旬から9月中旬まで,ほぼ昼間の時間の変化に平行して,500分から400分前後までのゆるやかな減少カーブを描いた。13.外役蜂の仕事への固執性はかなり強いことが示唆された。14.群全体としての花粉荷を持ち込まない外役の割合は,季節の進行につれて,20%前後から40%前後まで増大した。15.9月中旬に花粉採集能率を低下させた風の強い気象条件は採集タイプに対しては影響を与えなかった。16.外役蜂ポピュレーションにおける,P,PN,Nの組成は季節の進行につれて最初はPが圧倒的に多いが,しだいにPNおよびNの割合が増大した。17.単位巣内滞在時間の分布はモードが左端のほうにあり,右すそが長く伸びた型を呈した。18.単位巣内滞在時間は8月末にピークのある山型の季節的変化を示した。19.8月末を除き,花粉採集蜂のほうが長く滞在するという現象が原則的に認められた。20.働蜂により自巣の幼虫や蛹が巣外に捨てられる現象が数回観察された。
著者
大原 久友 浦上 清 石井 格 瀧ケ平 武昭
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.32-43, 1969-09-30

著者らは,日本のいろいろな環境条件下において適応した搾乳器を選択し,その性能を明らかにするために機械搾乳に関する一連の研究を実施している。今回はスウェーデンアルファラバル会社において製作された旧型のP77と新型のHP87の搾乳に及ぼす影響について比較研究した結果について報告する。この研究は,冬季間においてバケット型とミルキングパーラーにて用いたパイプライン型の搾乳器について実施したものである。その結果を要約するとつぎのごとくである。1. P77とHP87型のものについて比較した結果は表のごとくである。以上のように,HP87で搾乳するときはP77に比してバケット型で乳量が14%,ミルキングパーラーのパイプライン型で10%,それぞれ増加した。特に,HP87を用いた時には後搾りの乳量がかなり低減した。[table] 2. HP87を用いた時には,搾乳に要した時間が極端に短縮された。このようにミルカーの種類と後搾りおよび搾乳のための所要時間とはきわめて関係が深い。ミルキングパーラーにおけるパイプライン型の場合もバケット型の場合と同様である。3. 1分間あたり搾乳に対する産乳量は時間が進むとともに変化するが,一般的にいうと搾乳を始めてから1〜2分後に最高となり,この間に3〜3.4kgの牛乳が流出される。4.比較的大型な酪農場におけるHP87,P77と国産搾乳器による搾乳の所要時間および残乳量を調査すると,HP87の性能はきわめて高く,機械搾乳に要する所要時間も短縮され残乳量もきわめて少なくなった。以上のごとく,新しい型式のHPミルカーはバケット型でもパイプライン型でも産乳量を多くし,機械搾乳に要する時間を短縮せしめ,著しく残乳量を少なくする上に効果があることが確認された。
著者
伊藤 精亮 藤野 安彦
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.817-824, 1976-06-25

1.アルファルファの遊離ステロールとステロールエステルの主要な構成ステロールは,β-シトステロールであった。ステロールエステルの主要な構成脂肪酸はパルミチン酸,ラウリン酸およびミリスチン酸であった。2.アルファルファのトリグリセリドの脂肪酸は,リノレン酸,リノール酸およびパルミチン酸が主なものであった。トリグリセリドの1位と3位の脂肪酸組成は類似していて,比較的飽和脂肪酸が多く,これに反して2位はほとんど不飽和脂肪酸によって占められていた。
著者
本江 昭夫
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.253-258, 1985-11-20
被引用文献数
2

1983年に本学のガラス室においてポットを用いた実験を2回行った。5月28日-6月29日には密度を1.1,1.4,1.7とした土壌においてシバムギを播種し生長を調査した。7月9日-9月14日には播種後25日目より20日間接触処理を行い,さらに,土壌密度が0.94,1.2,1.4となるように踏圧処理を行い,播種後66日目に生長を調査した。土壌の締め固め処理により,見かけ上の土壌密度と貫入抵抗との間に高い相関関係を認めた(Fig.1)。締め固めた土壌では対照区に比較して,播種後32日目の草丈,葉数,個体あたり乾物生産量はそれぞれ54-70,82-91,15-33%に減少した(Fig.2)。播種後45日目の草丈,分げつ数,個体あたり乾物生産量は,対照区に比較して接触処理区ではそれぞれ56,239,85%に相当した(Fig.3)。また,踏圧処理後の生長について,草丈の相対値は予め接触処理を加えた区では104%,対照区では95%であった。同様に,分げつ数はそれぞれ148,102%,個体あたり乾物生産量はそれぞれ92,89%であった(Fig.4)。このように,予め接触処理が加えられて形態形成反応を示した個体では踏圧に対する抵抗性が若干高まった。
著者
西島 浩 小野 泱
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.505-511, 1963-07-10

北海道における吸血昆虫に関する研究の1部として,糠平におけるマダラヌカカ類の季節的消長について,1959〜1962年間ライト・トラップにより調査を行ない,次のことを知った。すなわち,1)同地において認めたヌカカは,Culicoides属の9種で,それらのうちC. crassipilosisおよびC. comosioculatusの2種は北海道新記録種である。2)これらのヌカカ群集の優占種はC. sinanoensisである。3)この種の夜間活動性は日没直後から約2時間後までが最も旺盛である。4)季節的消長曲線において単峰型を示す種は,C. kibunensis,C. aterinervisおよびC. dubiusであるが,前2種は8月上旬においてピークを示す。5)同曲線において双峰型を示す種は,C. sinanoensis, C. obsoletus, C. crassipilosisおよびC. pictimargoである。
著者
近藤 錬三 岩佐 安
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.231-239, 1981-11-15
被引用文献数
4

ブラジル,アマゾン地帯に分布する腐植質黄色ラトソルの高腐植量の表層が,どのような土壌生成過程および土壌環境下で形成されたかは明らかでない。この点に関して,多くの仮説が唱えられているが,われわれは植物種の相違も要因の一つであったと推測し,腐植質黄色ラトソルとその隣接地に分布する黄色ラトソルの生物起源ケイ酸体組成およびその量について比較検討した。得られた結果を要約するとつぎのとおりである。1)腐植質黄色ラトソルおよび黄色ラトソル表層の生物起源ケイ酸体量は0.54〜0.91%の範囲にあり,両土壌の間でさほど相違は認められなかった。2)腐植質黄色ラトソルおよび黄色ラトソル中で高頗度に分布するケイ酸体は,ヤシ科植物起源で全生物起源ケイ酸体の約30〜70%を占め最も多く,ついでイネ科草本類起源,樹木起源のケイ酸体の順であった。3)全生物起源ケイ酸体に占めるイネ科草本類由来のケイ酸体の割合は,両土壌の間でかなり相違が認められた。すなわち,腐植質黄色ラトソルは黄色ラトソルの約3〜4倍のイネ科草本類由来のケイ酸体を含有していた。4)腐植質黄色ラトソルA層のヤシ科植物起源の変質ケイ酸体の多くは熔融していたが,黄色ラトソルおよび腐植質黄色ラトソルB層のそれは正常な風化過程によって「あばた状」の表面を有していた。5)腐植質黄色ラトソルのみにmono-axon型の海綿骨針が観察され,それは一時的にせよ湿った環境下にあったことを示している。以上の結果から,腐植質黄色ラトソルは高草木の強い影響,および一時的に湿った土壌状態下で発達してきたものと考えられる。
著者
伊藤 太郎
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.223-231, 1960-12-25

Homothallic種Sordaria fimicolaの天然分離の集塊胞子培養によって得られた子実体に形成された子のう胞子中に,4種の色調差を有するものが4種の分離型(同質接合体型 異質接合体型(2種)不規則型)に従って配列形成されていた。色調形質因子の発現作用考究のためには,先ず同因子の数及び因子構成が調査されねばならないが,本研究では自家和合系形質発現作用考究の一部として,子のう胞子の分離を四分子分析法によって調査した。その結果として,異質接合体型中,後還元的分離を示したものは50ないし63%で,OLIVE氏の人為然変異型間の交配により現出された濃淡色子のう胞子の分離頻度に略一致することが明ちかになった。これは更に不規則型分離型の子のうにおいても適用されると見なした。これはその第一次から第三次の核分裂で同形質発現因子に異常を来たし,その作用が不活性化されるか遅滞するために形成子のう胞子に淡色のものが生じたと見なした。即ち濃淡色子のう胞子配列により,第一次核分裂において生じた単一核に,第二次又は第三次分裂に際して遅滞がおきたと見なされるもの(第一群分離型),第一次分裂に続いて,第二次分裂及び第三次分裂に遅滞がおきたもの(第二群分離型),更に第二次及び第三次分離に遅滞がおきたもの(第三群分離型)として,その始発分裂時期によって第一群を同質接合体型に,第二群を異質接合体型(I)(前還元分離型),第三群を異質接合体型(II)(後還元分離型)に準ずるものと見なし,三群に群別することによって得られた後還元分離頻度は約50%である。従ってこれらの事実から同菌の胞子色調形質発現は単一遺伝子支配で,その核分裂時に屡々同形質発現の機能的因子が欠失されるか,同因子の作用が不活性化されることがあろうと推察した。
著者
佐瀬 隆 近藤 錬三
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.465-483, 1974-03-20
被引用文献数
2

本研究では,まず現在の東北海道に生育するイネ科植物表皮細胞中の珪酸体の記載分類を行なった。次にこの分類に基づいて,北海道各地域に分布する約1,300B.P.年以降の埋没火山灰土について,そのA層中の植物珪酸体の形態別組成と含量を明らかにした。さらに,各地域で生成年代の明らかな火山灰土A層につき植物珪酸体生産量(g/cm^2/年)を算出し,主としてイネ科植物生産量の側面から,北海道の後氷期の古気候変遷について考察した。その結果は,次のように要約することができる。(1)イネ科植物表皮細胞中の珪酸体は,その形態的特徴と植物分類学グループとの関係から,I)ササ型,II)ヒゲシバ型,III)キビ型,IV)ウシノケグサ型,V)棒状型,VI)ファン型およびVII)ポイント型の7グループに分類することができる。このうちII),III),IV)およびV)の珪酸体グループは,TWISS et al.の分類を暫定的に採用したものである。これらの珪酸体グループのうち,I)はササ属,II)はヒゲシバ族,III)はキビ亜科,そしてIV)はウシノケグサ亜科の表皮細胞中に特徴的に含まれる。V),VI)およびVII)の珪酸体グループは,特定の植物分類学グループとの関係は認められなかった。しかし,ファン型グループの珪酸体は,ウシノケグサ亜科よりキビ亜科に一般的に多く含まれる傾向があり,とくにササに非常に多く含まれている。また,ヨシのファン型珪酸体は著しく粒径の大きいのが特徴である。(2)北海道各地の埋没火山灰土A層には,棒状型,ポイント型およびファン型グループの各植物珪酸体が,全試料に含まれていた。ササ型珪酸体は,5,000〜6,000B.P.年以降の埋没火口灰土A層に普遍的に認められた。ウシノケグサ型グループの珪酸体は,絶対年代に関係なく,道南渡島地域の試料を例外として,すべての地域の試料に含まれていた。キビ型グループの珪酸体は,数種の試料にごく少量認められたが,ヒゲシバ型珪酸体は,すべての試料にまったく含有されていなかった。これらの結果から推定される北海道の後氷期の火山灰地古植生は,5,000〜6,000B.P.年以前はウシノケグサ亜科のイネ科植物が優先し,それ以後はササが優先したものと推定される。5,000〜6,000B.P.年以降ササ植生が優先したという推定は,現在の北海道の火山灰地草地植生とほぼ一致するものである。(3)埋没火山灰土A層の珪酸体含量と,腐植含量の間には,正の相関(γ=0.64)が認められた。珪酸体生産量は,時代や地域の違いによって次のように変動したものと思われる。1)10,000〜7,000B.P.年,0.1〜0.2×10^<-4>g/cm^2/年(胆振,根釧地域)2)7,000〜4,500B.P.年,1.2〜1,9×10^<-4>g/cm^2/年(渡島,胆振地域)3)4,500〜2,500B.P.年,2.7×10^<-4>g/cm^2/年(渡島地域),1.3×10^<-4>g/cm^2/年(十勝地域)4)2,500〜1,500B.P.年,1.4×10^<-4>g/cm^2/年(渡島地域),1.0×10^<-4>g/cm^2/年(胆振地域),0.9×10^<-4>g/cm^2/年(十勝地域)イネ科植物の珪酸体生産量が,主に気候(とくに気温)によって規定されるという見地に立つならば,北海道の後氷期の古気候変遷は,ほぼ上記の珪酸体生産量の変動に対応したものと推定することが可能である。上述したように,埋没火山灰土A層中の植物珪酸体の形態組成および珪酸体生産量についての研究は,古植生のみならず,過去の気候条件を推定する有効な手段となることが明らかである。
著者
後藤 健三 岩野 貞雄
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.660-665, 1969-01-30

供試された6種類のブランデー中,池田ブドウブドウ酒研究所で試作されたものはVitislabruscaを原料とするために,他の4種の四Vitis viniferaを原料とする市販品に比較して香気が著しく異なるが,これらは熟成期間中に樽材から溶け込むタンニン系化合物含量の相異によるほか,最も低級なカルホニル化合物の含量が比較的多く,発酵中に果汁アミノ酸から生成すると考えられる各種のカルボニル化合物含量が少ないためと推定される。最後にこの研究の大要は,昭和40年11月12日日本農芸化学会北海道支部会(函館)において発表された後,農化誌40巻3号(昭41)に要旨が収録されたものであり,ジメチルホルムアミドー水系溶媒による2,4-DNPH誘導体の濾紙クロマトグラフィは文献に記載のないものであることを附記する。
著者
伊藤 繁 津久井 寛
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.423-435, 1992-07-31
被引用文献数
1

畑作物共済は1979年から本格実施されたが,当初の引受率は共済組合,農協,役場などの組織的対応や制度運用上の問題点によって規定されていた。また地域によっては,作付け構成や畑作部門の経営にしめる比重が異なるが,これらの要因も共済加入率に影響を及ぼしていたとみられる。さらに1980,81,83年の冷害をきっかけとして加入率は上昇したが,近年では,当初の組織的対応による過剰保険を調整するような動きも出てきている。この動きは長期的にも短期的にもリスク水準に対する反応で,次第に畑作物共済の収益と費用との関係を意識した保険需要行動がとられるようになったとみられる。また,小麦を含めた作物共済の所得補償は被害の大きい地域では広範な農家に及んでいた。ここではこれを支払共済金の分布に注目して,とくに対象期間中最大の被害年でありまた1960年代の大凶作年に匹敵する1983年について,地域レベルの支払共済金の平均値では捉えられない側面を明らかにした。
著者
池滝 孝 太田 三郎 鈴木 省三 熊瀬 登 遊佐 啓一
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.19-24, 1982-11-25

低グルコシノレートナタネ粕の高水準配合飼料が乳牛の飼料摂取量および乳生産・乳質におよぼす影響を知るため,ホルスタイン種乳牛8頭を用い,キャンドル種(Candle)ナタネ粕24%を含む配合飼料(R24)と現行種(Ordinary)ナタネ粕8%,大豆粕9%を含む配合飼料(R8)を産乳量に応じ各群4頭に給与し,28日間を1期とする3期反転泌乳試験を行なった。各群とも給与した配合飼料を全量採食し,粗飼料として与えた乾草,とうもろこしサイレージの摂取量も処理間に差はみられなかった。産乳量,乳脂率,無脂固形分率および乳脂生産量にも差は認められなかったが,乳蛋白率はR24給与期にやや多く,有意差(P<0.05)があった。また,供試牛の体重変化および健康状態もほぼ正常に推移した。本試験のように,配合飼料給与量が1日7〜9kgのレベルであれば,乳牛用配合飼料にキャンドル種ナタネ粕を24%の高率で配合しても,乳牛の食欲,生産性,乳成分に著明な影響を与えることなく,安全に使用できるものと推察された。
著者
有賀 秀子 林 友子 永田 信一 祐川 金次郎
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.177-186, 1978-10-31

継続採取した農家婦人10名,非農家婦人18名の乳汁および飲用水について,硝酸・亜硝酸およびジメチルアミン含量と,人血液中の硝酸・亜硝酸および血色素量の測定を実施した。1.人乳中の硝酸と亜硝酸の合計含量は,分娩後3〜5日目には平均2.67ppmであったが,2週間後までに急激に減少し,約1/2量になった。40日目以降では0.5ppm前後にまで減少するが,60日後やや増加した。初乳中硝酸・亜硝酸含量の個体差は大きいが,日数の経過とともにその差は小さくなった。2.人乳中亜硝酸含量は,初乳で0.025ppm程度で,その後やや増加するが,60日目には初期の1/2量にまで減少した。3.人乳中ジメチルアミン含量の個体差は大きいが,75%の試料が0.1ppm以内にあり,他の一般食品に比べ低い値であった。4.人血液中の硝酸・亜硝酸含量は,分娩後3〜14日目の者についてみると,平均1.11ppmで,0.5〜1.5ppmの範囲に全体の80%が分布していた。乳汁中含量に比べその約1/2量と低かった。5.人血液中の血色素量は,分娩後の経過日数により大きく異なり,6〜8日目で正常値の者は約60%であった。6.飲用水中の硝酸・亜硝酸含量は,地下水の場合は水道水に比べはるかに高く,乳幼児に推奨されている3ppm以下のものは50%に満たず,また飲用水基準の10ppmを超えるものも約10%程度みられた。