著者
大森 貴弘
出版者
常葉大学教育学部
雑誌
常葉大学教育学部紀要 = TOKOHA UNIVERSITY FACULTY OF EDUCATION RESEARCH REVIEW
巻号頁・発行日
no.38, pp.409-425, 2017-12-31

ドイツでは、かつては日本と同じく離婚後単独親権を民法で定めていた。しかし、1982 年に連邦憲法裁判所は、離婚後の例外なき単独親権を定めた民法1671 条4 項1文の規定が、親の権利を定めた基本法6 条2 項1 文の権利を侵害すると判示した。これ以後、ドイツでは離婚後の例外なき単独親権は違憲となり、個別事例での対応が続いていたが、1998 年に親子法改正法(1997 年制定)が施行され、離婚後共同親権(共同配慮権)が法制化された。
著者
木宮 敬信 大矢 隆二
出版者
常葉大学教育学部
雑誌
常葉大学教育学部紀要 = Tokoha University Faculty of Education research review (ISSN:2188434X)
巻号頁・発行日
no.37, pp.75-83, 2017-03-01

タイ王国は、2012 年度よりインラック政権による「One Tablet PC per Child」政策のもと、全国の初等教育1 年生にタブレットPC を無償配布している。しかし、ハード面、ソフト面ともに様々な課題が指摘され、現在十分に当初の目的を果たしているとは言い難い現状が報告されている。そこで、ICT 教育の充実が求められる日本における参考になる知見を得るために、2016 年にタイ王国バンコク市内の3 校の小中学校を視察し、タブレットPC の活用状況について調査を行った。その結果、政府支給のタブレットPC を使用している学校、学校独自のタブレット教育を行っている学校等様々な活用状況を視察することができた。その結果、アプリケーション等のソフトの充実や教師のIT スキルが活用のための最重要課題であることが理解できた。
著者
井出 学
出版者
常葉大学教育学部
雑誌
常葉大学教育学部紀要 = Tokoha University Faculty of Education research review (ISSN:2188434X)
巻号頁・発行日
no.36, pp.333-342, 2016-03

本稿は平成25年2月9日(土)に行われた研修センターゼミ2日目「体験学習活動(おもしろ算数教室)」についての報告および講義録である。本講座では一年次後期に学習する集合論を復習し、集合論を用いて、有名な数学クイズである「分銅問題」の回答および証明を与えた。
著者
百瀬 容美子 伊藤 宏
出版者
常葉大学教育学部
雑誌
常葉大学教育学部紀要 = Tokoha University Faculty of Education research review (ISSN:2188434X)
巻号頁・発行日
no.38, pp.297-305, 2017-12

本研究は,日本トップ水準の先天全盲ゴールボール選手の守備場面におけるイメージ生成構造を解明して,ゴールボール版の視覚障害児童・生徒・成人向け運動イメージ生成評価基準の項目作成することを目的とした.個人別態度構造分析の結果,1)音を聞いて攻撃者となるボールを持っている相手選手を特定する,2)その選手から投げられるボールの道筋と守備防壁となる味方同士の重なりを想定する,3)センターポジションでボールを待ち守備するという3 つの構造が見出された.この知見に基づいて,「ボールが弾む軌跡をイメージすることができますか?」「自分と味方、相手、ボールの動きを俯瞰的にイメージすることができますか?」といった20 項目,7 段階評定の質問項目を作成した.今後の課題は,信頼性と妥当性の確認を行うことである.
著者
百瀬 容美子 伊藤 宏
出版者
常葉大学教育学部
雑誌
常葉大学教育学部紀要 = Tokoha University Faculty of Education research review (ISSN:2188434X)
巻号頁・発行日
no.37, pp.281-293, 2017-03

本研究では,先天全盲選手向け運動イメージ生成尺度の原案を提案することを目的とした.そのために,我が国トップ水準にあるブライドサッカー選手1 名のPAC(個人別イメージ構造)分析を行った.その結果,先天全盲選手ならではのイメージの利用として,1)運動イメージを描く上で競技場であるピッチに対する全体的な俯瞰図としてイメージしていること.2)自分の動きと相手選手との相互距離感をイメージしていること,3)自分と味方選手との距離感,味方のゴールキーパーとの距離感も考慮に入れた空間的なイメージをしていたことが判明した.こうした新たな知見である3 カテゴリーに関して,国内外を通して高い信頼性と妥当性が確認されている視覚心像鮮明性質問紙(Vividness of Mental Imagery Questionnaire:VVIQ) に倣い,5 件法で20 項目からなる先天全盲選手向け運動イメージ生成尺度原案が作成された.
著者
山﨑 正
出版者
常葉大学教育学部
雑誌
常葉大学教育学部紀要 = TOKOHA UNIVERSITY FACULTY OF EDUCATION RESEARCH REVIEW
巻号頁・発行日
no.38, pp.391-399, 2017-12-31

J.S.Bach の平均律クラヴィア曲集のプレリュードには様々な音楽様式が用いられている。曲集の第1巻の第1曲に位置するBWV846 のPrelude の作曲手法は,あまりにも単純な分散和音形による作品になっていることから,先行研究による分析方法を探る。本論文は,作曲家がこの曲にどのような意味を込められているか明確にすることを目的としている。また,先行研究では和声分析によるものが殆どで,当時の和声では解明できない部分に対する答えが曖昧となっている。本論ではこの点に着目し,対位法的考察方法で解明できないかという仮定のもと,分析を行っている。 その結果,和音構成音を5声部に分けて考察していく方法を用いることで,声部間で主題がStretto されていることが見え,これによって音楽的緊張を作り出していることから和声法では解明できない音の衝突が起こったと推察できることが判明した。
著者
冨山 敦史
出版者
常葉大学教育学部
雑誌
常葉大学教育学部紀要 = TOKOHA UNIVERSITY FACULTY OF EDUCATION RESEARCH REVIEW
巻号頁・発行日
no.38, pp.55-68, 2017-12-31

本稿は、今日「詩聖」という名を冠している杜甫(七一二~七七〇)の詩が如何に残されたのかを当時の社会状況と杜甫の生活や行動を踏まえつつ、「詩家自覚」という視点から、その可能性を考えたものである。詩家自覚を杜甫自身の「詩を残す、詩を伝える」ことと捉え、「宮廷の書庫に保管すること」、「寺院等へ保管すること」、「友人に託すこと」、「援助者に託すこと」、「詩人仲間に託すこと」、「家族に託すこと」の六つの可能性を挙げた。その中で「家族に託すこと」の可能性が、「①子どもに託すこと」、「②家族に託すこと」、「③家族を増やすこと」の三つの観点から考えられ、それぞれの可能性の実現に向けて、杜甫が当時の社会情勢や息子たちの特性を見極めて、その時点での選択肢を考慮しつつ、死に至るまで行動を続けたことを述べた。この杜甫の行動の根底が「詩家自覚」であり、それが最終的に自身の「詩集」を後世に残し、伝えることを実現させたと考えた。
著者
大川 信子
出版者
常葉大学教育学部
雑誌
常葉大学教育学部紀要 = TOKOHA UNIVERSITY FACULTY OF EDUCATION RESEARCH REVIEW
巻号頁・発行日
no.38, pp.37-53, 2017-12-31

和歌の音声化について考察する。新学習指導要領に継承される我が国の言語文化に関する事項中、音声化の対象の一ジャンルである和歌は、韻律をもちそのリズムが音声化に適すると考えられる。和歌史を概観するに、文字の変遷の和歌の変容に与える影響は大きい。そこで、万葉仮名から一字一音式の仮名文字への展開の中で、『古今和歌集』に発達が認められる掛詞に注目する。『古今和歌集』の五十余年後に催された天徳内裏歌合に、発達を遂げた掛詞を含む和歌が、どれほど出詠されたのか。声に出して鑑賞・評価される場における音声としての和歌の姿を、対象歌合に確認し、音声化される和歌の特性について考える。それは、仮名文字に記され視覚的に鑑賞される和歌と、音声化され聴覚により享受される和歌の差異にも通じる。授業で古典を音読すること、音声化することで響きやリズムに親しむことを身に付けさせることの背景にあるものに目を向け、その一端を確認する試みである。
著者
大森 貴弘
出版者
常葉大学教育学部
雑誌
常葉大学教育学部紀要 = Tokoha University Faculty of Education research review (ISSN:2188434X)
巻号頁・発行日
no.38, pp.409-425, 2017-12

ドイツでは、かつては日本と同じく離婚後単独親権を民法で定めていた。しかし、1982 年に連邦憲法裁判所は、離婚後の例外なき単独親権を定めた民法1671 条4 項1文の規定が、親の権利を定めた基本法6 条2 項1 文の権利を侵害すると判示した。これ以後、ドイツでは離婚後の例外なき単独親権は違憲となり、個別事例での対応が続いていたが、1998 年に親子法改正法(1997 年制定)が施行され、離婚後共同親権(共同配慮権)が法制化された。
著者
戸塚 麻子
出版者
常葉大学教育学部
雑誌
常葉大学教育学部紀要 = TOKOHA UNIVERSITY FACULTY OF EDUCATION RESEARCH REVIEW
巻号頁・発行日
no.38, pp.1-9, 2017-12-31

『東亜新報』は日本占領下の北京で一九三九年から一九四五年まで発行されていた日本語新聞である。北支軍と興亜院が出資する同盟通信社系の新聞であり、北京発行の唯一の日本語新聞として機能した。しかしながら、文芸・文化記事を見ると、時局と連動するような戦意高揚の記事と同時に、国策とは無関係の実にのんびりした記事も少なくない。また、しばしば日本の国策を批判的に見るような言説が紛れ込んでいるのを目にすることもできる。少なくとも太平洋戦争開戦前のこの時期においては、比較的自由な言説が許されていたように思われる 。本稿では、創刊期『東亜新報』の中から文芸・文化記事を中心に取り上げ、その内容紹介を試みたい。