- 著者
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山﨑 正
- 出版者
- 常葉大学教育学部
- 雑誌
- 常葉大学教育学部紀要 = TOKOHA UNIVERSITY FACULTY OF EDUCATION RESEARCH REVIEW
- 巻号頁・発行日
- no.38, pp.391-399, 2017-12-31
J.S.Bach の平均律クラヴィア曲集のプレリュードには様々な音楽様式が用いられている。曲集の第1巻の第1曲に位置するBWV846 のPrelude の作曲手法は,あまりにも単純な分散和音形による作品になっていることから,先行研究による分析方法を探る。本論文は,作曲家がこの曲にどのような意味を込められているか明確にすることを目的としている。また,先行研究では和声分析によるものが殆どで,当時の和声では解明できない部分に対する答えが曖昧となっている。本論ではこの点に着目し,対位法的考察方法で解明できないかという仮定のもと,分析を行っている。 その結果,和音構成音を5声部に分けて考察していく方法を用いることで,声部間で主題がStretto されていることが見え,これによって音楽的緊張を作り出していることから和声法では解明できない音の衝突が起こったと推察できることが判明した。