著者
青木 るみ子 山﨑 正幸 朝見 祐也
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.269-280, 2021 (Released:2021-05-01)
参考文献数
24

本研究は、2000~2018年の過去19年間の食中毒総数と、このうち給食施設を原因施設とした食中毒、および給食施設と不明を除く給食施設以外の施設を原因施設とした食中毒について、食中毒発生状況(厚生労働省発表)を用いて分析し、その動向について考察した。食中毒発生状況の結果をもとに、事件数、患者数、1事件あたり患者数について分析を行った結果、給食施設では事件数および患者数共に分析期間Ⅰ期(2000~2007年)からⅡ期(2008~2018年)にかけて有意に減少していたが、1事件あたり患者数に減少は認められず、なおかつ、給食施設以外と比較して有意に多かった。また、給食施設における事件数および患者数が食中毒総数に対して占める割合はごく小さかった。さらに、給食施設で発生した事件数および患者数に対して、その原因施設の多くは中小規模に相当する摂食者数300人未満の給食施設であり、また、当該施設における事件数および患者数の約半数が老人ホームと保育所によって占められているという現状を示すことができた。以上のことから、特に中小規模に相当する給食施設を対象とした、衛生管理の実態把握が必要であると考えられた。
著者
山﨑 有美 河野 愛未 松本 朋子 大島 達也 山﨑 正夫
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
pp.NSKKK-D-23-00084, (Released:2023-11-22)

きんかんを加工し機能性成分である-クリプトキサンチンの含有量を比較したところ, ペーストにより多くのβ-クリプトキサンチンが含まれ, ペーストと麹菌発酵乳飲料を混合しても, -クリプトキサンチン含有量は変化しなかった. また, きんかんペースト添加麹菌発酵乳飲料を65°C 及び 85°Cで殺菌処理したところ, 65°C試験区において多くのβ-クリプトキサンチンが残存することが示された. きんかん由来β-クリプトキサンチン-麹菌発酵乳飲料混合物のβ-クリプトキサンチン腸管吸収能を評価した結果, β-クリプトキサンチン単独区と比較し, 麹菌発酵乳飲料混合区の腸管吸収量は約14倍に上昇することが明らかとなった.
著者
竹中 彩 水信 夏穂 溝口 萌 山﨑 正代 泉山 塁威
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画報告集 (ISSN:24364460)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.317-324, 2023-09-07 (Released:2023-09-07)
参考文献数
20

本研究は、設置管理許可制度の導入による都心部の都市公園整備がもたらす周辺地域の変化を明らかにすることを目的とする。加えて、今後の都市公園整備を実施する自治体及び民間事業者に向けて周辺地域の変化を考慮したパークマネジメントの留意点を示す。 設置管理許可制度の導入前後における、南池袋公園及び天王寺公園の周辺地域の建物用途、路線価、都市公園と店舗の関係を分析し、インタビュー調査を行うことで、都市公園の空間整備が周辺地域の変化と関連していることが明らかになった。今後は、都市公園と周辺地域の関係をより詳細に明らかにするため、都市公園沿道の店舗以外や都市公園整備前から店舗を構える既存店舗など、周辺店舗の調査を拡大することが望まれる。
著者
山﨑 正啓 三浦 千明 西村 友秀 矢作 満 山﨑 裕司
出版者
行動リハビリテーション研究会
雑誌
行動リハビリテーション (ISSN:21866449)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.26-28, 2018-03-31 (Released:2023-05-29)
参考文献数
7

看取り目的で入院した重度認知症患者の暴言・拒食行動に対して応用行動分析学的介入を行った.介入前,言語聴覚療法中の平均暴言回数は29回,摂食行動は全く見られなかった.介入では,分化強化の技法を用いた.つまり,患者の暴言は消去し,適切な行動が生起した際には,称賛や身体接触などの強化刺激を付与した.拒食に対しては,食事時の環境調整と摂取した際に注目・称賛などの強化刺激を付与した.その結果,暴言は減少し,フォローアップ期にはほぼ消失した.食事は,徐々に食事摂取量が増加し,フォローアップ期には全量摂取が可能となった.今回の応用行動分析学的介入は,認知症患者の暴言,拒食行動を減少させるうえで有効に機能したものと考えられた.
著者
葛目 大輔 井上 湧介 森本 優子 吉田 剛 山﨑 正博 細見 直永
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.8, pp.641-643, 2022 (Released:2022-08-27)
参考文献数
7
被引用文献数
2

【症例】56歳男性【主訴】両下肢脱力【現病歴】鶏肉を好む偏食あり.前医で両下腿浮腫を認め,心不全にて入院した.心不全に対し利尿薬による加療が行われたが両下肢脱力が出現し徐々に悪化したため,当院に転院した.【入院時現症】軽度の意識障害と両下肢の浮腫,筋力低下及び腱反射消失を認めた.【入院経過】脚気ニューロパチーを考えチアミン100 mg/日を開始した.これにより神経症状は改善した.その後,ビタミンB1 12 ng/ml(正常値24~66)と低値である事が判明した.【結論】心不全加療中に筋力低下を認めた際には脚気ニューロパチーの合併を考慮し,ビタミンB1補充に留意する必要がある.
著者
山﨑 正枝
出版者
日本労務学会
雑誌
日本労務学会誌 (ISSN:18813828)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.48-65, 2020-10-01 (Released:2021-01-05)
参考文献数
15

The current workplace has changed due to the individualization of work, the diversification of employment patterns and ways of working, and the values of workers, which has reduced the original functions of the workplace, such as collaboration and human resource development. Organizational development is to create a centripetal force in an organization that tends to be a group of disparate individuals.Revisions to the HR system are perceived by employees as non-compliance with psychological contracts and can reduce employee organizational satisfaction and performance, as well as increase intent and intention to leave. In order to create a HR system that does not cause a backlash from employees, it is necessary to explain the reasons for the revision of the system and to be transparent about the process of creation.The purpose of this paper is to examine the process of constructing the HR system in Nursery School Y and to consider how the approach of organizational development and the construction of the HR system influenced each other. Then, it is presented as one of the methods of constructing the HR system. In Y, we introduced an organizational development approach to the process of constructing the HR system and aimed to integrate both the hard aspects of the organization (the HR system) and the soft aspects of the organization (people and relationships) such as collaboration, trust and influence relationships, organizational climate and culture.We conducted two workshops with all staff participation in the process of constructing the HR system, shared organizational values and childcare views to deepen mutual understanding, and created a “check sheet for self-growth”. We also had a committee where everyone could participate to discuss and build consensus on what evaluation should be and how it should be reflected in wages.In the process of constructing the HR system, I not only implemented Future Search, a method of organizational development, but also intervened by focusing on the 4 values of organizational development (humanistic philosophy, democratic principles, client-centered consulting, and socialecological system orientation) in all aspects of the process.As a result, painful wage changes to staff were accepted by staff and no negative actions have occurred since the introduction of the new system. In addition, the self-innovation ability has been enhanced, and the system has been operated autonomously while improving the system even after the introduction.In this case study, it is suggested that the approach of organizational development increases the congruence between the hard aspect of the organization, the HR system, and the soft aspect, the awareness of the working people. It is presented that by introducing an organizational development approach to HR system construction, which has been emphasizing system design, it is possible to cover human aspects that have tended to be lacking, and to make the transition to the new system without degrading the functioning of the organization.
著者
山﨑 正
出版者
常葉大学教育学部
雑誌
常葉大学教育学部紀要 = TOKOHA UNIVERSITY FACULTY OF EDUCATION RESEARCH REVIEW
巻号頁・発行日
no.38, pp.391-399, 2017-12-31

J.S.Bach の平均律クラヴィア曲集のプレリュードには様々な音楽様式が用いられている。曲集の第1巻の第1曲に位置するBWV846 のPrelude の作曲手法は,あまりにも単純な分散和音形による作品になっていることから,先行研究による分析方法を探る。本論文は,作曲家がこの曲にどのような意味を込められているか明確にすることを目的としている。また,先行研究では和声分析によるものが殆どで,当時の和声では解明できない部分に対する答えが曖昧となっている。本論ではこの点に着目し,対位法的考察方法で解明できないかという仮定のもと,分析を行っている。 その結果,和音構成音を5声部に分けて考察していく方法を用いることで,声部間で主題がStretto されていることが見え,これによって音楽的緊張を作り出していることから和声法では解明できない音の衝突が起こったと推察できることが判明した。
著者
葛目 大輔 西本 陽央 佐島 和晃 小松 奏子 金子 恵子 山﨑 正博
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.44-46, 2018 (Released:2018-01-25)
参考文献数
9

症例は50 歳女性.2014 年10 月下旬(第1 病日)早朝,突然,回転性眩暈,右耳難聴を自覚し,当院に搬送された.神経学的所見では,左方向への回旋性眼振,右難聴を認めた.頭部MRI 拡散強調画像で小脳梗塞を認め,同日入院した.第22 病日に実施した脳血管造影検査では,右前下小脳動脈(AICA)は椎骨動脈から分岐し,右後下小脳動脈分岐部から椎骨動脈が狭小化していた.以上より,右椎骨動脈解離によって右AICA が閉塞し,内耳に虚血性障害を来した結果,難聴を呈したと判断した.第40 病日に当科を退院したが,現在も,難聴は残存している.
著者
山﨑 正純
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.2-12, 2011-08-10 (Released:2017-05-19)

読書行為の本質は文脈形成行為である。そして文脈を形成する行為こそ、もっともプライベイトな私秘的領域において文学作品を私物化し、一体化をなし遂げる行為である。だがその一方で読書行為は、読者を取り巻く不可解な世界の説明行為に転化することで、文学作品の価値を再生産することができる。すなわち、読書という私的行為は公的領域による権威付けの誘惑と脅威とに同時にさらされることで持続可能な行為である。私的領域と公的領域とのこうした共犯性は、家父長制の下に置かれた女性の自己表現にもみられるが、同時に公私領域の再編成の可能性を示唆するテキストとして位置づけることも可能である。