著者
木室 義彦 古里 健一 家永 貴史
雑誌
情報教育シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2021, pp.224-229, 2021-08-21

我々は,晴眼盲弱を区別しないプログラミング教材を開発している.これまで, Arduino をベースに 10 個の数字キ ーのみでプログラミングできる移動ロボットやドローンの教材を開発,盲学校において実験授業を実施し,晴眼児童と同様に学習可能であることを確認してきた.この活動の中で, micro:bit に興味を持つ児童や教員があることが分かった.また, micro:bit は小学生向けではあるが,プログラミング環境が PC であり,教育現場への導入は簡単とはいえないことも報告されている.この論文では, micro:bit を用いた市販ロボット玩具をベースに, PC を使わない晴眼盲弱の区別なく利用可能な micro:bit プログラミングについて検討したので報告する.
著者
赤澤 紀子 赤池 英夫 柴田 雄登 山根 一朗 角田 博保 中山 泰一
雑誌
情報教育シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2021, pp.261-268, 2021-08-21

2022 年より,高等学校の「共通教科情報科」は,必履修科目の「情報 I」と選択履修科目の「情報 II」が設置され,すべての高校生が,プログラミングなどを含む情報の科学的な理解を主とした「情報 I」を履修することになる.また,2025 年から「情報 I」が大学入学共通テストで出題されることが正式に決定した.これにより,各大学の個別入試においても入試科目に「情報」が設置される可能性が増してきた.大学入学試験として情報を出題するためには,大学など出題する側と,受験する高校側で,出題内容や範囲,用語などの共通な知識体系が必要となる.しかし現在はまだ,「情報」の知識体系は明確に定められていない.そこで,本研究では,知識体系の明確化を目標として,「情報 I」の教科書で用いられる用語から知識体系に関する考察を行う.
著者
小川 健
雑誌
情報教育シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, pp.331-335, 2019-08-10

いわゆる「アクティブラーニング」の推奨に伴い,将来の反転授業を想定した予習・事前学習用の動画・音声資料の重要性が高まりつつあり,多くの実践事例が報告されつつある.その一方で,せっかく動画・音声資料を準備しても,予習として音声・動画資料の視聴を強制されることに対する拒否感も学生には少なくなく,それによる受講拒否も出つつある.本報告では,動画・音声資料の導入に学生が拒否をした事例,及び動画・音声資料を用意したが故に講義に殆どの学生が来なくなった事例を報告する.
著者
小菅 李音 高木 正則 市川 尚
雑誌
情報教育シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, pp.31-38, 2020-12-12

著者らの大学では,数学リメディアル科目を反転授業形式で行っている.この科目では,授業の最初に著者ら が開発したチャットボットを利用し,予習で利用した e ラーニング教材や予習の学習内容について,学生自身が理解 の足りていないと考えている箇所を対話形式で回答させている.これまでの実践において,理解不足箇所の抽出が不 十分であるものの,抽出した理解不足箇所に対してシステムと人による支援を混ぜて学習支援を行うことで学生の理 解度向上に繋がることが示唆されている.本研究では,反転授業における学生の理解度の向上を目的とし,チャット ボットを利用した数学のつまずき箇所の理解を支援する学習支援システムの改善を行った.また,2020 年度前期に本 学で実施された数学リメディアル科目において,オンライン授業下と対面授業下で本システムの利用実験を行った. システム評価の結果,本システムにより学習者の理解不足箇所に応じた学習支援を素早く行うことが可能となり,学 生の理解度を深めることに繋がることが示唆された.
著者
林 宏樹 笹嶋 宗彦 大里 隆也
雑誌
情報教育シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, pp.146-150, 2020-12-12

本論文は,全校生を対象とした兵庫県立姫路西高等学校のデータサイエンス教育の3年間のカリ キュラム開発についての概要である.教科「数学」「情報」「課題研究」「総合的な探究の時間」における 横断的なカリキュラムマネジメントにより,データサイエンスを基盤とした研究活動を実施するカリキ ュラム開発を行う.全校生対象の高等学校におけるデータサイエンス教育実践の1つの事例である。 また,「データサイエンス探究・研究」という学校設定科目の客観的な評価基準を作成する.
著者
高橋 圭一
雑誌
情報教育シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, pp.69-74, 2020-12-12

Ruby on Rails(以降,Rails)は Ruby で書かれたオープンソースの Web アプリケーションフレームワークであ る.Rails を用いたシステム開発や Rails の機能拡張の提案などは公開直後から研究が進められているが,Rails の学習 過程を調査した研究はない.我々はこれまで,筆者が所属する学科の Web アプリケーション開発科目の演習課題とし て提出されたログファイルを分析し,受講者が躓いたことを示す例外は 9 つあり,そのうち 2 つの例外の発生原因は ログファイルだけでは特定が困難であるという結果を得た.本稿では,バージョン管理ソフトウェアの1つであるGit を用いて例外発生時のソースコードを自動的に保存するスクリプトにより,2 つの例外の発生原因の特定を試みる. 本稿では,この 2 つの例外を HIEs(Hard to Identify Exceptions)と呼ぶ.本スクリプトを 2020 年度の授業に適用した ところ,33 名から提出されたログファイルから,HIEs が 325 回発生し,Git リポジトリの提出がある場合は,その情 報を活用することですべての発生原因を特定できた.
著者
長谷川 達人 森 朝春
雑誌
情報教育シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, pp.176-183, 2019-08-10

本研究では,講義中に教示者の示すスクリーンにオーバーレイする形で,コメントがスクロールするリアルタイムコメントスクロールシステム(RCSS)を開発し,大学講義内で約半年間の実践評価を行った.RCSSにより学生が発話することに対するハードルを下げ,講義の双方向性を高めることを目的としている.大学の講義で試験運用を行い,アンケートと発話ログを用いて本システムの有用性検証を行った.その結果,アンケートではポジティブな回答が圧倒的多数となり,発言がしやすくなった,モチベーションが上がった,理解度が上がったという意見が半数以上となった.一方,コメントが邪魔だと回答した受講者も1割程度いた事,コメントを必要に応じて投稿している受講者が30~40%だったことなど,課題も見つかった.発話ログを,カテゴリに分けて分析している点は本稿の特色の一つである.RCSS導入前後では(講義に関係する)発話数は約2倍に増えていた事だけでなく,教示者to受講者や受講者to受講者のレスポンスが毎回10件程度行われた科目もあり,RCSSは双方向授業の実現に寄与することを明らかにした.
著者
高橋 圭一
雑誌
情報教育シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, pp.10-16, 2019-08-10

2016年度に本学科の1年次向けのプログラミング言語をJavaからRubyに切り替えた.そのため,3年次のWebアプリケーション開発の講義および演習で使用する開発フレームワークをJava EEからRuby on Railsに変更した.本稿では,2018年度の後期に実施したRuby on Railsによるチーム開発の授業内容について報告する.受講生は前期にRuby on Railsの基礎を学習済みである.そのため後期には,Sessionやモデル間の関連付けなどRuby on Railsの発展的な機能を学び,チーム開発で必要となるGit,Bitbucket,Herokuなどのツールを学習したあと,2名ずつの8チームで8週間かけて開発を進めた.結果としては,各チームが開発したソースコードは平均で約1400行であり,J2EEを使用したときと同規模になった.一方,画面数および画面遷移数は2018年度の方が前年より上回っており,Ruby on Railsの様々な支援機構により,より実用的なアプリケーションが開発できたことがわかった.
著者
高木 正則 瀬戸山 光宏
雑誌
情報教育シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, no.32, pp.215-220, 2018-08-12

近年,スマートフォンの急速な普及により,若者の PC 離れが進み,PC の利用スキルの低下が懸念されている.しかし,PC の利用スキルがどの程度変化しているのかは明らかになっていない.そこで,本研究では,Word,Excel,PowerPoint の MS-Office の操作スキルの実態を明らかにすることを目的とし,著者らが開発したコンピュータ適応型テストを利用して大学入学時の MS-Office 操作スキルを調査した.調査は 2018 年 4 月~5 月にかけて 4 つの大学で実施し,大学 1 年生約 2000 人の MS-Office 操作スキルを測定した.また,日常の ICT 機器の活用等に関するアンケート調査も同時に実施した.調査の結果, Excel は Word,PowerPoint に比べ,能力差が大きいことが確認され,PC を所有していない学生の MS-Office 操作スキルが低い傾向にあった.一方,スマートフォンの使用開始時期と能力値との関連は確認されなかった.さらに,PC の操作が「苦手」と答えた学生の能力値が最も低く,「得意」,「少し得意」と答えた学生の能力値が高いことが示された.
著者
六沢 一昭
雑誌
情報教育シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, no.14, pp.96-103, 2018-08-12

本稿は, コンピュータを使わない プログラミング及びプログラム実行環境を提案するものである. この環境は, トランプ大の矩形 (エリア) が 8 個程度書かれたシートとカード (例えばトランプ) からなる. エリアには 1 枚以上のカードを重ねて置くことができ, 「カードの移動」や「エリアが空であるかの検査」といった基礎的な操作のみを行なうことができる. エリア上のカード群はスタックを形成し, 「カードの移動」は, 移動元エリアに対する pop 処理と, 移動先に対する push 処理から構成されると考えることができる. プログラムはこれらの操作を使ってフローチャートにより記述し, 実行は手作業で行なう. 本環境は,千葉工業大学情報工学科 AO 入学試験において 2008 年秋から 7 年間使用した.
著者
西田 知博 植原 啓介 角谷 良彦 鈴木 貢 中山 泰一 香西 省治 高橋 尚子 中西 通雄 松浦 敏雄 増澤 利光 萩谷 昌己 萩原 兼一
雑誌
情報教育シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, no.28, pp.182-187, 2017-08-10

我々は,文部科学省委託事業 「情報学的アプローチによる 「情報科」 大学入学者選抜における評価手法の研究開発」 の中で,これまで情報入試研究会として実施してきた大学情報入試全国模擬試験を出発点とし,「思考力 ・ 判断力 ・ 表現力」 を評価するという視点も加えて 「情報科」 大学入学者選抜を CBT システム化するためにはどのような機能が必要かを検討している.ここではその検討経過と,今年度実施する試行試験用システムおよび,新しい出題フレームワークなど現在検討している出題方式を紹介する.
著者
兼宗 進 小林 祐紀 白井 詩沙香 清水 匠 片岡 仁
雑誌
情報教育シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, no.29, pp.188-189, 2017-08-10

2020 年度から小学校でのプログラミングが必修化される.目的はプログラミングの考え方 (プログラミング的思考) を通して論理的な思考力を養うことにあり,「プログラムの体験」 が目的ではない.また,プログラミングのための教科は作られず,総合的な学習の時間や教科の中で扱うことになる.そこで筆者らは理科や算数などの教科の中で,教科の学習目標を達成するためにプログラミングの考え方を用いる試みを 3 つの小学校で実践した.その概要を報告する.