著者
松本 健 高橋 典明 植松 昭仁 大木 隆史 権 寧博 岩井 和郎 中山 智祥 橋本 修
出版者
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
雑誌
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌 (ISSN:18831273)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.171-178, 2012-09-27 (Released:2013-01-23)
参考文献数
20

症例は38 歳の男性.胸部異常陰影,ぶどう膜炎を指摘され紹介受診した.胸部X線検査にて両側肺門リンパ節腫脹,両中下肺野の小結節陰影を認め,TBLBにて非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を証明した.緩やかな血清ACE値上昇と小結節陰影の増加を認めていたが,症状や呼吸機能障害を認めず,経過観察としていた.初診時より5年後に偶発的と思われる肺結核症を発症した.入院にて抗結核薬(INH,RFP,EB,PZA)治療を開始した.結核治療中,一時的に血清ACE値低下を認めたが,抗結核薬治療終了後より肺野病変の増悪と血清ACE値上昇を認めた.結核性病変の進展あるいはサルコイドーシスの活動性上昇を疑い,再度TBLBを行ったが結核菌を認めず,サルコイドーシスに矛盾しない所見であった.現在まで経過観察中であるが,無治療にてサルコイドーシスは寛解状態に至った.これまでに結核治療を契機に寛解状態に至ったサルコイドーシスの報告はなく,非常に稀な例であり,文献的考察を加え報告する.
著者
杉野 圭史 仲村 泰彦 鏑木 教平 佐野 剛 磯部 和順 坂本 晋 高井 雄二郎 奈良 和彦 渋谷 和俊 本間 栄
出版者
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
雑誌
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌 (ISSN:18831273)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1_2, pp.51-55, 2017-10-25 (Released:2018-03-09)
参考文献数
12
被引用文献数
1

症例は36歳女性.主訴は乾性咳嗽,労作時息切れ.X-8年頃より左下腿腓骨部に皮下腫瘤を自覚したが放置.X-4年8月に顔面神経麻痺,右眼瞳孔散大が出現し,PSL 40 mg内服により約1 ヶ月で治癒.その後,原因不明の頭痛,難聴,嗅覚異常が出現.X-2年11月頃より乾性咳嗽および軽度の労作時息切れが出現.X-1年4月の健康診断にて胸部異常陰影を指摘され全身精査の結果,全身性サルコイドーシス(肺,副鼻腔,神経,皮膚,肝臓)と診断された.挙児希望およびステロイド恐怖症のため,吸入ステロイドを約1年間使用したが,自覚症状の改善は得られず中止.当科紹介後にご本人の希望で漢方薬(人参養栄湯7.5 g/日,桂枝茯苓丸加薏苡仁9 g/日)を開始したところ,開始4 ヶ月後より咳嗽および労作時の息切れはほぼ消失,開始6 ヶ月後には,胸部画像所見,呼吸機能検査所見の改善を認めた.その後も本治療を継続し,現在まで3年間にわたり病状は安定しており,再燃は認めていない.
著者
宮崎 泰成
出版者
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
雑誌
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌 (ISSN:18831273)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.11-17, 2014-10-10 (Released:2015-02-02)
参考文献数
22

【要旨】過敏性肺炎は,特異抗原を吸入した際にアレルギー反応を起こす間質性肺炎である.本疾患の40–80%が慢性で,5年生存率は45%と特発性肺線維症と類似し予後不良であるため,慢性・線維化機序の研究を行った.急性過敏性肺炎では,Th1ケモカイン・サイトカインにより肉芽腫と胞隔炎を形成する.一方で,慢性におけるTh1/Th2細胞の役割は明らかではなかったので,臨床検体および動物モデルで検討した.血清およびBALFでは,Th1ケモカインCXCL10は急性で増加し,再燃症状軽減型,潜在性発症型の順に有意に減少を示し,逆にTh2ケモカインCCL17は急性で減少し,再燃症状軽減型,潜在性発症型の順に有意に増加していた.潜在性発症型に多いUIPパターンでCCL17/CXCL10陽性細胞比が高く,同様にレセプターであるCCR4/CXCR3陽性細胞比も有意に高かった.慢性化・UIPパターンになるに従ってTh1/Th2バランスがTh2ヘシフトしていることが分かった.慢性過敏性肺炎マウスモデルで,A/Jマウス(Th2優位)とC57BL/6マウス(Th1優位)において比較したところ,A/JマウスではTh2サイトカインの上昇とともに線維化病変が強く起こった.以上より,過敏性肺炎ではTh1/Th2の免疫バランスがTh1からTh2にシフトし,慢性・線維化していた.Th2へのシフトを調整するような薬剤が慢性・線維化を抑制する可能性が示され,今後の治療戦略に役立つと考えられる.
著者
岡本 祐之
出版者
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
雑誌
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌 (ISSN:18831273)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.47-51, 2013-10-01 (Released:2014-11-10)
参考文献数
24

サルコイドーシスの皮膚病変の基本的治療は副腎皮質ステロイドホルモン薬(ステロイド)の外用であるが,強力な薬剤でも効果がないことがある.そのため,ステロイド以外の局所あるいは全身療法が試みられている.タクロリムス軟膏はステロイド外用薬の副作用が出やすい顔面の皮疹に対し推奨されたアトピー性皮膚炎治療薬であり,顔面に好発するサルコイドーシスの皮膚病変に対しても有用な症例が経験される.光線療法ではnarrow band UVB療法やターゲット型エキシマライト,光線力学療法が多くの肉芽腫症に有効であることが報告されている.一方,全身療法ではミノサイクリンの有効例が蓄積されているが,皮膚病変に対する有効性が他の臓器病変に対する有効性よりも高いと認識されている.TNF-α阻害薬は諸外国でサルコイドーシスに対する有効性が報告されているものの,paradoxical reactionによって関節リウマチ,Crohn病などの治療中にサルコイドーシスが誘発されることがあり,その誘発機序の解明が待たれるところである.皮膚病変の主な治療に関する最近のトピックスについて概説した.
著者
永井 利幸 永野 伸卓 菅野 康夫 相庭 武司 神崎 秀明 草野 研吾 野口 輝夫 安田 聡 小川 久雄 安⻫ 俊久
出版者
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
雑誌
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌 (ISSN:18831273)
巻号頁・発行日
vol.35, no.Suppl1, pp.50-1-50-1, 2015-11-07 (Released:2016-04-07)

心臓サルコイドーシスにおいて、ステロイド治療は標準的治療として確立しているが、ステロイド治療の途中中止あるいは適切な中止時期に関して検討した報告は皆無である。今回我々は過去 30 年間に当院で心臓サルコイドーシスと確定診断(日本サルコイド ーシス/肉芽腫性疾患学会 2006 年診断基準)され、ステロイド 治療を導入された連続 70 例を後ろ向きに解析した。 観察期間内(9.8 ± 5.7 年)の検討で、12 例が臨床的あるいは画像 的活動性の改善を理由にステロイド治療が途中中止され、途中中 止群のステロイド治療期間は 3.4 ± 3.6 年であった。途中中止群、 継続群の 2 群間で年齢、性別、左室駆出率、ガリウムシンチ所見、 FDG-PET 所見、心不全既往、心室性不整脈既往、そしてステロ イド用量に関しても有意差を認めなかった。途中中止群のうち、5 例が心臓死の転帰をとり、継続群と比較して死亡率は有意に高値 であった(42% vs. 16%, P=0.047)。さらに、途中中止群は継続 群 と 比 較 し て 観 察 期 間 内 に 著 し く 左 室 駆 出 率 が 低 下 し た (-23.1 ± 31.5 % vs. 8.4 ± 31.8 % , P=0.019)。 結論として、心臓サルコイドーシスの⻑期管理において、臨床的 あるいは画像的に一時的な改善が認められたとしても、ステロイ ド治療の途中中止には慎重を期すべきである。