2 0 0 0 OA 10.チック

著者
森松 光紀
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.89, no.4, pp.678-684, 2000-04-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
5

チックは,単一筋または複数の筋群に起こる,短時間の,すばやい,反復的・常同的運動である.一般に小児期から成人初期に発病し,やがて消失するか,半永久的に続く.心因性のこともあるが脳内伝達物質の異常とみなされる場合もある.後者の代表はトゥレット症候群である.治療はまず経過を観察し,社会生活上の困難を示すときは,ドパミン阻害薬を中心にした薬物治療を行う.ただし,完全抑制はしばしば困難である.
著者
福井 次矢
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.87, no.10, pp.2122-2134, 1998-10-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
34
被引用文献数
4 5

1990年代に入って提唱された「信頼できる最新データに基づいた,理に適った医療」であるevidencebased medicine (EBM)は, (1)臨床上の疑問点抽出, (2)信頼性の高い結果(エビデンス)を示す文献の効率の検索, (3)臨床疫学と生物統計学の原理に則った,文献の批判的吟味, (4)得られたエビデンスの患者への適用性の判断,という4段階の手順から成る. EBMの主な活用場面は, (1)個々の患者での疑問点への対応,それに(2)頻度の高い臨床上の疑問点についての診療ガイドライン作成,である. EBMに則った診療を行うことで,入院患者については確固としたエビデンスに基づいた臨床判断を下す頻度が高くなった,診療ガイドラインを用いることで医師の診療行為だけでなく患者アウトカムも改善した,などのデータが報告され,医学教育にも大きく取り入れられつつある.世界的な規模でEBMが普及することにより,客観的な臨床データを重視した患者指向の医療が,今後ますます求められることになろう.
著者
関原 久彦
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.81, no.4, pp.490-493, 1992-04-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
13

リファンピシン,フェノバルビタール,フェニトイン,エフェドリンなどの薬物は,コルチゾールや合成糖質コルチコイドの肝臓ミクロゾームに存在する代謝酵素の活性を上昇させるため,これらの薬物を併用した場合,コルチゾールや糖質コルチコイド薬の血中半減期は短縮し,クリアランスは増加する.その結果,急性副腎不全や糖質コルチコイド薬の治療効果の減弱が起こる.従って,これらの薬物を併用する場合には,充分注意する必要がある.
著者
榊原 博樹
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.85, no.2, pp.227-233, 1996-02-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
5
被引用文献数
2 5

アスピリン喘息はアラキドン酸シクロオキシゲナーゼ阻害をトリガーにして発症する.アスピリンだけではなく,すべての非ステロイド性抗炎症薬が喘息発作を惹起する.アスピリン喘息の頻度は成人の通年性喘息の9.8%と推定できる.ただし,病歴から診断できるのは60%の症例である.診断を確定するためには負荷試験が必要である.コハク酸エステル型ステロイド薬が喘息を誘発したり増悪させたりすることがある.

2 0 0 0 OA 2.成人多毛症

著者
名和田 新
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.81, no.4, pp.501-505, 1992-04-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
4

多毛症(hirsutism)はアンドロゲン〔DHEA-(S), androstenedione, testosterone〕の過剰又は末梢でのアンドロゲン感受性の増大により,女性が男性性毛を生じる事を言い,その背景には重篤な疾患を含め,多くの疾患が存在する事が明らかにされつつある.その病因を解明し診断法を確立する事は,その治療法の選択の上からも極めて重要である.各種ステロイドホルモンのRIAの確立に伴う成人多毛症の病因,診断治療の最近の進歩について概説する.
著者
岩崎 泰正 橋本 浩三
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.97, no.4, pp.747-751, 2008 (Released:2012-08-02)
参考文献数
16
被引用文献数
3 1

ACTH単独欠損症は下垂体前葉ホルモン6種類のうちACTHのみの分泌障害により副腎不全を来す疾患である.近年報告例が増加しており,決して稀な疾患ではない.また不全型(潜在型)の例も存在することから,全身倦怠感などの症状に加え低血糖,低ナトリウム血症,好酸球増多傾向など副腎不全を疑わせる所見を認めた場合には負荷試験で下垂体・副腎系の予備能を評価することが望ましい.

2 0 0 0 OA I.流行の現状

著者
市川 誠一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.98, no.11, pp.2747-2753, 2009 (Released:2012-08-02)
参考文献数
8
被引用文献数
1

世界では,いまだHIV感染の予防とHIV治療へのアクセスが十分でないことから,毎日,6,800人がHIVに新たに感染し,5,700人がAIDSにより死亡している.わが国においても,男性同性愛者や滞日外国人などHIV感染対策が脆弱な層においてHIV感染症が広がっており,これらの層に対するHIVや性感染症の情報の入手が容易となる環境,HIV感染リスクやそれに伴う相談,検査,医療などの支援環境を構築する対策が必要である.HIV感染症は,未だ公衆衛生上重大な課題である.
著者
多田 智洋 中田 潤 菅原 浩仁 西沢 慶太郎 須永 大介 佐藤 健司 福眞 隆行 北 宏之 中田 智明 老松 寛
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.3, pp.738-740, 2014-03-10 (Released:2015-03-10)
参考文献数
4
被引用文献数
1 2

心室細動の原因となるQT延長症候群は,器質的疾患や薬剤による影響で起こることが知られている.急性心筋梗塞に対する経皮的ステント留置術後,選択的再取り込み阻害薬(SSRI),プロトンポンプ阻害薬(PPI)の内服にてQT延長を起こし,心室細動となった症例(40代,男性)を経験した.抗血小板療法に加えたPPIによる薬物相互作用により,SSRIによるQT延長効果が増強され,心室細動を誘発したと思われた.
著者
宮地 秀樹 小谷 英太郎 岡崎 怜子 吉川 雅智 松本 真 遠藤 康実 中込 明裕 草間 芳樹 磯部 光章 新 博次
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.5, pp.1388-1390, 2011 (Released:2013-04-10)
参考文献数
7
被引用文献数
2 2

症例は21歳,女性.不明熱のため各種精査を行うも原因を同定できず.骨病変精査目的で施行したFDG-PET/CTにて大動脈弓部に異常集積を認め,早期の高安動脈炎と診断した.狭窄閉塞,拡張病変が明らかでない早期高安動脈炎の早期診断は現在のガイドラインでは困難である.しかし高安動脈炎は若年女性に好発し,重篤な心血管合併症が生じることからFDG-PET/CTによる早期診断が重要と考え報告する.
著者
伊藤 聡
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.99, no.8, pp.1871-1877, 2010 (Released:2013-04-10)
参考文献数
10

関節リウマチの治療に生物学的製剤が導入され,劇的な効果をあげている.我が国では4製剤が認可され,それぞれの特徴を考慮して使用されている.生物学的製剤は,神経Behçet病,多発性/皮膚筋炎,血管炎症候群などの,膠原病,膠原病関連疾患における神経・筋障害においても使用が開始され,有効例も報告されている.しかし,保険適用外であり,報告された症例数も少ないため,使用にあたっては,十分なインフォームドコンセントが必要である.

2 0 0 0 OA 自己炎症疾患

著者
井田 弘明
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.97, no.2, pp.438-447, 2008 (Released:2012-08-02)
参考文献数
17
被引用文献数
2 2

自己炎症疾患(autoinflammatory disease)は,自己炎症症候群(autoinflammatory syndrome)とも呼ばれる新しい疾患概念である.繰り返す全身性の炎症を来す疾患で,多くは発熱がみられ,関節·皮膚·腸·眼などの部位の炎症を伴う.症状としては,感染症や膠原病に類似しているが,病原微生物は同定されず,また,自己抗体や抗原特異的T細胞も検出されない.近年,Toll-like受容体や細胞内のNLRファミリー蛋白の分子機構の解明が進み,また,これらの分子が,一部の遺伝性周期熱症候群の疾患遺伝子でもあったことから,自己炎症疾患の概念が提唱され,現在注目されている.欧米の疾患と思われていた遺伝性周期熱症候群は,本邦でも存在が確認され,不明熱の鑑別疾患に挙げる必要性がでてきている.本稿では,自己炎症疾患の概念,分類を紹介するとともに,各疾患の臨床像と病因を簡単に解説した.
著者
田港 朝彦
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.89, no.8, pp.1570-1577, 2000-08-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
19

厳格な血糖コントロールは,細小血管合併症の発症,進展を抑制する.しかし,前増殖網膜症,増殖網膜症を有する例に血糖降下療法を開始する場合には, HbAlcが極めて高い場合, HbAlc 8.0%までは速やかに下げても良いが,それ以後は緩徐に血糖を下げて,低血糖を起こさないなどの配慮が要る.長期間放置例や,糖尿病罹病治療歴が不明の初診患者の場合も同様である.また,治療開始前から治療中の眼科医との緊密な連係が必須である.その他,高血圧,高脂血症,喫煙,肥満などのリスクファクターを取り除くこと,などが重要である.
著者
藤木 直人 田代 邦雄
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.90, no.4, pp.58-62, 2001-04-10
参考文献数
5

群発頭痛は他の慢性頭痛と比べると比較的稀な頭痛である.このため医療側の認知度が低く,正しい診断を受けるまでに時間がかかることがしばしばある.症状は非常に特徴的であり,この疾患の診療の経験があれば,典型例では診断は比較的容易であるともいえる.治療面での進歩が今後期待されており,この頭痛の存在を患者側にも医療側にも広く認知してもらうことが,診断のために最も重要と考えられる.
著者
川崎 晃一 上野 道雄 尾前 照雄 松岡 緑
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.69, no.10, pp.1293-1298, 1980
被引用文献数
4

収縮期(SBP)ならびに拡張期(DBP)血圧,口内温(Temp)および脈拍(PR)の日周(cir-cadian),月周(circatrigintan)および年周リズム(circannual rhythm)を検出するために, 1健康女性(34才)の1日4回(起床時,昼食前,夕食前,就寝前), 1年間にわたる自己測定値をコサイナー法を用いて分析した. DBP, Temp, PRの推計学的に有意な日周,月周および年周リズムならびにSBPの有意な日周リズムが検出された. 1年間を通じてSBP, DBPのメサー(余弦曲線の基線)は115.2±0.2(SE)/85.4±0.2mmHgであり, TempとPRのそれは36.04±0.01°C, 79.8±0.2/分であつた.日周リズムの頂点位相はそれぞれ7:08(SBP), 10:40(DBP), 17:00(Temp)および18:48(PR)に検出された.また月周リズムの頂点位相は月経開始後7日目(SBP), 8日目(DBP), 22日目(Temp), 19日目(PR)に,年周リズムのそれは1月10日(SBP), 12月1日(DBP), 12月4日(Temp)および11月23日(PR)に検出された.日周リズムを1カ月毎に検出すると, SBPとDBPの頂点位相は冬季では3:00すぎに,夏季では午後遅く認められ,季節的変動が大きかつた.しかしTempとPRの頂点位相は1年を通じて著しい変動はなかつた.今回分析し得た諸変数の自己測定はたとえ1日4回の測定頻度であつても日周リズムから年周リズムまでのリズム分析に有用であつた.またこの成績はリズム分析を行なうことによつてより適切で,より効果的な治療を行なうために,個人個人の高血圧治療に"chronotherapy"が適用されうることを示唆する.
著者
伊藤 貞嘉
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.96, no.1, pp.23-28, 2007 (Released:2009-12-01)
参考文献数
3

二次性高血圧の頻度は高くないが,根治できるものがあるので見落とすことの無いようにすることが必要だ.早期に診断し,治療することが重要で,臓器障害が出現してからでは血圧を正常化させることが難しくなる.どんなに優れた降圧薬でも「no medicine」に優るものはない.ただ漫然と降圧薬を投与するのではなく,二次性高血圧の兆候を敏感に捉えてスクリーニングすることが重要である.