著者
北川 泰久 大熊 壮尚 徳岡 健太郎
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.8, pp.1907-1915, 2013-08-10 (Released:2014-08-10)
参考文献数
10

頭痛は日常診療の中で,最も多い神経症状である.近年,病態生理の解明と共に,片頭痛に対するトリプタンをはじめ,新しい治療法もいくつか出てきている.日本の頭痛医療は欧米に比べて,慢性頭痛に対する疾患としての重要性,専門的な治療の必要性がまだ十分に理解されていない.ここでは頭痛治療トピックスについて概説した.最近,日本神経学会・日本頭痛学会から発刊された慢性頭痛の診療ガイドライン2013を参照されたい.

2 0 0 0 OA 2.Q熱

著者
渡辺 彰 高橋 洋
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.96, no.11, pp.2406-2412, 2007 (Released:2012-08-02)
参考文献数
6

Q熱は,リケッチア類似のCoxiella burnetiiによる肺炎や気管支炎等の総称であり,一過性熱性疾患である.欧米では市中肺炎の第4~5位を占めており,血清抗体価の有意上昇で診断する.無治療でも死亡率は1~2%と予後良好であるが,一部に遷延例や慢性型もあるので確定診断例や強い疑いの例では積極的に治療する.偏性細胞内寄生性の本菌にβ-ラクタム薬は無効であり,テトラサイクリン薬やマクロライド薬,キノロン薬が奏効する.
著者
堀之内 秀仁 関根 郁夫
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.10, pp.3064-3071, 2011 (Released:2013-04-10)
参考文献数
42

肺がんの罹患率,死亡率には人種,性別による違いがあることが古くから指摘され,能動喫煙や受動喫煙を中心とした環境要因がその差異の大きな要因となっていることが明らかにされてきた.一方,近年,宿主である患者側の要因や,がんの生物学的特徴についての研究が成果を挙げ,注目を集めている.分子標的薬であるゲフィチニブやエルロチニブの有効性には人種差や性差があり,その背景にはEGFRの遺伝子変異頻度の違いが存在することが明らかにされた.イリノテカンの代謝に関わるUGT1A1の遺伝子多型,フッ化ピリミジン系抗がん剤の代謝に関わるDPDの遺伝子多型が明らかにされ,それぞれ人種により頻度が異なることも示されている.これらの知見により,人種差や性差による治療効果,副作用の違いについて理解が深まるだけでなく,適切な対象者を選んだ治療や,副作用の頻度を抑えた治療が可能となり,肺がんの新たな治療戦略が生み出されている.
著者
重住 道彦
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.48, no.10, pp.1564-1574, 1960

北大医学部吉本の考案せる超低周波テーブル,すなわち,テーブルの固有振動数0.32c/s,二方向,全重量2.9kg,非制動テーブルで,これに, Elliottの水銀加速度計(0~3000c/sまで測定可能)を取り付けたものを使用し,健康成人男女11名について,生理的状態のもとに與えうる種々女の負荷に対するバリストカージオグラムの形態ならびに発生時間の変化から,各波の素因を明らかにする実驗を試み次のごとき結果をえた.すなわち, H波は心尖の收縮初期の移動により, I波は心室内におこる血流の反作用により, J波は大動脈弓への血流衝撃によると考えられ, I-Jストロークは心拍出量ならびに拍出速度に関係し, K波は血流の下行末端衝撃により, L波は一種の休止期と解され, M波は動脈内血流に関係があり, NおよびO波は拍出血流とは関係が薄く,左右方向バリストは心筋自体の反力の影響が強いことを認めた.
著者
坂本 春生 唐木田 一成 関谷 亮 大野 啓介 増子 弘美
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.11, pp.2735-2740, 2014-11-10 (Released:2015-11-10)
参考文献数
4

口腔ケアが誤嚥性肺炎の発症を予防する効果があることが報告されている.口腔ケアは多くの施設で取り入れられているが,その実際は施設により異なり,効果判定も困難なことが多い.口腔内にはおよそ600種の微生物が存在し,常在菌叢を形成している.これらは容易に歯垢によるバイオフィルム形成をもたらし,その除去には物理的なブラッシングに頼る部分が大きい.本稿では,口腔ケアと関連する細菌学的事項,病棟における口腔ケアの実際,各種職種の役割分担,ケアにおける考え方などにつき,当院での経験を述べた.
著者
五野 貴久 寺井 千尋
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.11, pp.2251-2258, 2016-11-10 (Released:2017-11-10)
参考文献数
10

多発性筋炎(polymyositis:PM)/皮膚筋炎(dermatomyositis:DM)は,自己組織に対して過剰な免疫応答が生じる結果,筋肉,皮膚,関節,肺などに炎症を来たす膠原病である.皮疹を認めない場合はPM,特徴的な皮疹を伴う場合はDMと診断する.PM/DMでは間質性肺炎や悪性腫瘍の併発が比較的多い.モデルマウスを用いた病態機序の解明,自己抗体の発見とその測定法の開発,間質性肺炎を併発したPM/DMの診断・治療のマネジメントなど,ここ10年で日本より世界へ多くの研究成果が発信された.2015年には厚生労働省自己免疫疾患に関する調査研究班内PM/DM分科会により治療ガイドラインが作成された.これらの成果により,日常診療を行う上で非常に有用なノウハウが,医療従事者や患者を含め世の中へ示された.今後,PM/DM患者の機能予後・生命予後のさらなる改善をめざし,具体的な個別化医療の確立が求められる.
著者
渡辺 毅
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.6, pp.1152-1159, 2015-06-10 (Released:2016-06-10)
被引用文献数
4 2

新しい日本の専門医制度が単独の学会の枠を越えて始まろうとする今,そもそも内科の専門医制度とはどのような経緯を踏まえて今日の姿になり,これからどのような新しい内科専門医制度となっていくのか,その歴史をひもときながら,今一度,その意義を見つめ直していきたい.

2 0 0 0 OA 脾臓と鉄代謝

著者
佐藤 中
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.138-144, 1969-02-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
20

脾臓が造血機能と密接に関連していることは古くより知られている.しかし脾臓が鉄代謝にいかなる意義を有するかは,従来余り追求されていない.著者は,単なる鉄の貯蔵臓器としてのみならず,脾臓が鉄代謝に複雑密接に関与することを想定し,その事実を究明しようと企てた.方法としては,いわゆる脾性血球減少症患者に摘脾を行ない,その前後に鉄吸収試験および静注鉄(59Fe)の動態検索を行ない,比較検討した.その結果,摘脾により鉄吸収阻害の回復および体内鉄の骨髄への取り込み-造赤血球機序への利用障害の改善される場合のあることを確認した.以上より,脾臓は鉄の吸収および体内鉄の造赤血球機序への利用に重要な意義を有することが明らかと思われる.
著者
竹内 恵
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.87, no.4, pp.629-636, 1998-04-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
8

血管炎性ニューロパチーは血管炎症候群の中で中・小型血管を傷害する結節性多発動脈炎(PN)や慢性関節リウマチ(RA)などに伴うことが多い.臨床像は多発性単ニューロパチーで四肢の非対称的な運動感覚障害であり,末梢神経伝導検査では活動電位の振幅の低下や消失を認める.病理所見は軸索変性を主体とし,虚血性変化と考えられている.近年抗好中球細胞質抗体(ANCA)の発見や免疫学的研究の進歩などにより血管炎についての新知見が得られ,それに伴って血管炎性ニューロパチーについても見直しの時期に来ている.
著者
中里 雅光
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.4, pp.928-933, 2011 (Released:2013-04-10)
参考文献数
12
被引用文献数
1

近年,肥満者の増加と,肥満を基礎にして発症する糖尿病,脂質代謝異常,高血圧症などの肥満症やメタボリックシンドロームを呈する患者数が増加している.生活習慣病の根底にある肥満の治療は食事療法や運動療法といった生活習慣の変容が基本であるが,現実的には困難であり,減量に成功する症例は少ない.最近,さまざまな摂食調節ペプチドの同定や各因子間のネットワークを含めた摂食調節機構の解析が進んでおり,摂食調節物質そのものや受容体をターゲットにした創薬により,新しい抗肥満薬が開発され実用化されつつある.
著者
矢部 正浩 野本 優二 山添 優 吉川 博子
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.94, no.6, pp.1146-1148, 2005-06-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
8
被引用文献数
1 2

53歳,男性.フィリピンからの帰国時より左小指の腫脹,発疹,両上肢遠位部の関節痛と強ばり,右肩痛,発熱がみられた.身体所見では右肩関節の可動制限と両小指に直径3mm程度の中心紫色で周辺やや発赤した丘疹を各一個認めた.核左方移動を伴った白血球増加とCRPの軽度上昇を認めたが他に異常なし.入院後右手関節屈側の腱鞘炎も出現.血液培養から淋菌を検出し播種性淋菌感染症による敗血症と診断.セフェム系抗菌薬投与にて治癒.性感染症予防対応を患者に伝えた.
著者
川端 浩 高折 晃史
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.7, pp.1367-1374, 2015-07-10 (Released:2016-07-10)
参考文献数
25

赤血球は,ヘモグロビンに結合した酸素を肺から末梢組織まで運搬する.赤血球が少なすぎると貧血を来たし,多すぎると血栓症のリスクが増大する.このため,体内にはこれを適切な数に調節する仕組みが存在する.例えば,貧血状態では,腎臓における低酸素誘導因子(hypoxia inducible factor:HIF)の発現,エリスロポエチン(erythropoietin:EPO)産生,赤芽球前駆細胞におけるエリスロポエチン受容体からのシグナルを介して,赤血球造血が刺激される.この調節には多くの分子が関わっており,これらの異常は貧血や多血症を引き起こす.