2 0 0 0 OA 7.Sjögren症候群

著者
坪井 洋人 浅島 弘充 高橋 広行 廣田 智哉 住田 孝之
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.10, pp.2507-2519, 2014-10-10 (Released:2015-10-10)
参考文献数
22
被引用文献数
1

Sjögren症候群(Sjögren's syndrome:SS)は唾液腺炎・涙腺炎を主体とし,様々な自己抗体の出現がみられる自己免疫疾患である.厚労省研究班で行われた全国疫学調査では,2010年1年間に全国の医療機関を受診したSS患者数は68,483人と算出された.さらに2,195例のSS患者の詳細調査では,平均年齢は60.8歳,男性と女性の比率は1:17.4,病型は一次性/二次性SSが58.5%/39.2%,一次性SSのうち腺型/腺外型は69.1%/24.7%(不明6.2%)であった.SSの診断基準として,国内で汎用されている厚生省改訂診断基準(JPN)(1999年),アメリカ・ヨーロッパ改訂分類基準(American-European Consensus Group:AECG)(2002年)と,最近提唱された米国リウマチ学会分類基準(American College of Rheumatology:ACR)(2012年)を,日本人SS患者の診断に関して,厚労省研究班で検証した結果,JPN基準はAECG基準,ACR基準よりも優れている可能性が示された.SSの治療に関しては,前述の全国疫学調査では,ステロイドは34.3%,免疫抑制薬は16.3%,生物学的製剤は3.1%,唾液分泌刺激薬は31.7%で投与されていた.近年,SSの新規治療戦略として,リツキシマブ(rituximab),アバタセプト(abatacept)といった生物学的製剤の使用が試みられている.産業医科大学,長崎大学,筑波大学で施行中の関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)合併二次性SSに対するアバタセプトのパイロット研究では,中間解析において,RAに加えてSS所見に対する有効性も示唆されており,今後の発展が期待される.
著者
神田 隆
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.Suppl, pp.110b-111a, 2015-02-20 (Released:2018-02-20)
著者
甲斐 久史
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.101, no.2, pp.322-328, 2012 (Released:2013-04-11)
参考文献数
10

心不全は心筋障害により心筋のポンプ機能が低下し,末梢主要臓器の酸素需要に見合うだけの血液量を心臓が絶対的にまたは相対的に拍出できない状態にあり,肺または体静脈系にうっ血を来たし,生活機能に障害を生じた病態である.その病態は単に心臓のポンプ不全ではなく,心臓の異常により引き起こされた血行動態,神経体液性因子,腎臓などの全身の異常をともなう症候群としてとらえることができる.
著者
御簾 博文
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.1, pp.25-30, 2016-01-10 (Released:2017-01-10)
参考文献数
7

非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease:NAFLD)と2型糖尿病はしばしば合併する.脂肪肝では肝臓由来分泌タンパク“ヘパトカイン”の分泌異常がインスリン抵抗性を惹起して糖代謝を悪化させている可能性がある.特にselenoprotein P(SeP),LECT2(leukocyte cell-derived chemotaxin 2)など,従来では別の機能を有するとされていた肝由来液性因子が糖代謝に関与するとする報告が相次いでいる.ヘパトカインを標的とした耐糖能異常に対する新たな診断・治療法の開発が期待される.
著者
藤村 欣吾
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.98, no.7, pp.1619-1626, 2009 (Released:2012-08-02)
参考文献数
13
被引用文献数
6 3

特発性血小板減少性紫斑病(ITP:idiopathic thrombocytopenic purpura)には急性型と慢性型があり,前者は5歳以下の小児に,後者は中高年齢者に,発症が多い.慢性型の診断には免疫学的特徴と血小板産生動態を反映する検査を取り入れた感度,特異度が高い診断基準が提案されている.治療目標は薬物治療による副作用との兼ね合いから,血小板数を3~5万以上に維持することにおく. 緊急時を除いて,ピロリ陽性症例では除菌療法を行い,除菌効果のない症例やピロリ菌陰性症例に対して副腎皮質ステロイド療法,これに続く摘脾療法を行う.これらに反応しない症例は難治性ITPとして種々の治療法を選択するが,保険適応,効果のエビデンス,副作用などから最終的には副腎皮質ステロイド維持量で経過を観察する症例も多い.
著者
住田 孝之
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.10, pp.3055-3063, 2011 (Released:2013-04-10)
参考文献数
5
被引用文献数
2 1

Sjögren症候群(シェーグレン症候群:SS)はドライアイ,ドライマウスを主症状とする全身疾患である.抗SS-A抗体,抗SS-B抗体,リウマトイド因子,抗核抗体などの自己抗体が血清中に検出されること,唾液腺・涙腺などの諸臓器に自己反応性T細胞浸潤が認められることから,病因として自己免疫応答が考えられている.最近,唾液分泌に重要な受容体であるムスカリン作働性アセチルコリン受容体(M3R)に対する自己抗体やT細胞の存在がSSにおいて明らかにされてきた.さらに,M3Rに対する免疫応答によりSS類似の自己免疫性唾液腺炎が発症することがマウスモデルで証明され,SS発症の分子機構の一部が解明されてきた.治療では,QOLを高めるM3Rアゴニスト薬などの進歩,生命予後を改善する生物学的製剤の登場,治験報告などがなされてきた.
著者
下田 照文
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.98, no.12, pp.3067-3075, 2009 (Released:2012-08-02)
参考文献数
11

喘息発作の重症度を的確に判断して治療を開始する.最初に短時間作用性β2-刺激薬を反復吸入させる.発作の初期に全身性ステロイド薬の投与は症状の速やかな回復を促進するのに役立つ.アミノフィリンの点滴静注の併用は追加効果を期待できず副作用の危険性が増加するので推奨できない.患者が低酸素であれば酸素を投与する.治療効果のモニターとして,主観的な症状だけではなく,客観的な指標である呼吸機能(ピークフローや一秒量),酸素飽和度,動脈血ガスの測定を考慮する.
著者
高柳 涼一 河手 久弥 柳瀬 敏彦
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.101, no.4, pp.941-948, 2012 (Released:2013-05-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

副腎偶発腫の多くは非機能性副腎腺腫であるが,20~30%にホルモン産生腫瘍や悪性腫瘍が含まれるので,画像検査と内分泌検査が必要である.わが国の疫学データでは腫瘍径が3cm以上のものは副腎癌のスクリーニングをすべきとしている.サブクリニカルクッシング症候群(SCS)は2型糖尿病や高血圧,骨粗鬆症の病因ないし増悪因子となる例があるので,手術対象症例の適切な判定が今後必要になると考えられる.
著者
熱田 了
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.6, pp.1397-1403, 2013-06-10 (Released:2014-06-10)

気管支喘息患者は気道過敏性を有するために,健常人が問題とならないような,微細な環境変化に反応して発作性の気道収縮(喘息発作;急性増悪)を生じる事がある.重篤な喘息発作は喘息死をもたらす事があるが,喘息死に至る1年前の喘息重症度は重症患者が大半と言う訳ではなく,中等症・軽症を合わせると重症患者を上回る数の喘息死が生じている.そのため,どの重症度の喘息患者にも喘息死が生じる可能性があり,喘息死を減らすためには長期管理薬による慢性期のコントロールが重要であるとともに,急性増悪時の確実な対応も必須である.本稿では急性増悪時の自宅での対応と救急外来での基本的対応に関して述べる.
著者
伊藤 健太 下川 宏明
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.99, no.11, pp.2846-2852, 2010 (Released:2013-04-10)
参考文献数
7

我が国では,人口の高齢化や生活習慣の欧米化に伴い,虚血性心疾患や閉塞性動脈硬化症といった動脈硬化性疾患患者が増加してきている.我々は,基礎研究の結果を基に,低出力の衝撃波を用いた血管新生療法(「低出力体外衝撃波治療」)を開発し,(1)重症狭心症,(2)急性心筋梗塞,(3)下肢閉塞性動脈硬化症を対象に臨床試験を行っている.重症狭心症に対しては,第1次臨床試験(オープン試験)と第2次臨床試験(二重盲検プラセボ対照試験)を行い,本治療法の有効性と安全性を確認し,論文報告している.本治療法は,麻酔や侵襲的な処置を伴わずに,体外から治療を行うことができる非侵襲的な治療法であり,繰り返し行うことも可能である.今後幅広い疾患への応用が期待される.
著者
尾上 剛士 薄井 宙男 八幡 真弓 吉江 祐 山本 康人 市川 健一郎 野田 誠 斉藤 壽一 磯部 光章
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.95, no.12, pp.2547-2549, 2006-12-10 (Released:2009-03-27)
参考文献数
2
被引用文献数
1

症例は42歳, 女性. 進行する浮腫, 全身倦怠感にて来院. 心エコー上右心負荷所見が強く当初原発性肺高血圧症を疑った. 入院後急性増悪しショック, 急性腎不全となったが右心カテーテル所見より脚気心が疑われビタミンB1投与により速やかに循環動態が改善した. 健康に関心が強く健康食品を中心とした食生活を送っていた事がビタミンB1欠乏の原因と考えられ, 偏った健康知識が致命的となりかねなかった教訓深い症例と考えられた.
著者
玉置 淳
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.98, no.12, pp.3076-3082, 2009 (Released:2012-08-02)
参考文献数
10

喘息の長期管理は,吸入ステロイドを中心とする抗炎症療法の普及により飛躍的に改善しつつある.今後は,従来の治療薬が効きにくい重症難治性喘息をコントロールすることが大きな課題である.そのための治療法として,IgEやIL-5,あるいはTNFαを標的とした生物学的製剤,吸入ステロイドと長時間作用性β2刺激薬の新しい吸入用合剤,気管支熱形成術といった気管支鏡インターベンションなどが開発されつつある.
著者
島田 忠人
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.99, no.6, pp.1207-1212, 2010 (Released:2013-04-10)
参考文献数
10

Helicobacter pylori(H. pylori)除菌後に治療抵抗性の鉄欠乏性貧血(IDA)が改善したというケースレポートが相次いで報告されており,疫学的研究でもH. pylori感染とIDAとの相関が示唆されている.また,これまでに行われた臨床介入試験でも,H. pylori除菌がIDA改善に有効に作用することを示したものが多い.H. pylori感染はホストの鉄バランスに微妙な負の影響を与えており,H. pylori感染がIDA発症のリスクとなっている可能性が考えられる.
著者
福田 真作 吉田 豊
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.85, no.7, pp.1098-1103, 1996-07-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
4
被引用文献数
3 3

蛋白漏出性胃腸症は,低蛋白血症を主徴とする一種の症候群である.検査法(とくにα1-antitrypsin clearance試験)の普及によりその原疾患は極めて多彩となってきた.最近では膠原病(とくに全身性エリテマトーデス),アレルギー性胃腸症による蛋白漏出性胃腸症の報告の増加が目立つ.治療は原疾患の治療に加えて,それぞれの病態に即した食事(栄養)療法,薬物療法,外科治療が行われる.
著者
関 雅文 朝野 和典
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.11, pp.2882-2887, 2013
被引用文献数
1

医療・介護関連肺炎(NHCAP)は日本独自の肺炎の概念である.2011年に発刊されたガイドラインでは,耐性菌に配慮しつつも,誤嚥性肺炎を中心とした高齢者肺炎に特に焦点を当て,治療における倫理的配慮も盛り込まれている.高用量ペニシリン系薬を中心とした抗菌薬治療の一方,今後の肺炎診療において,ワクチンに代表される予防や感染制御の考え方が,特に重要であることが示唆されている.
著者
平井 潤 山岸 由佳 三鴨 廣繁
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.11, pp.2657-2665, 2014-11-10 (Released:2015-11-10)
参考文献数
20

カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(carbapenem-resistant Enterobacteriaceae:CRE)はカルバペネム系抗菌薬に耐性を獲得した腸内細菌科細菌の総称で,ヒトの腸管に生息する腸内細菌が耐性を持つという点が重要である.ほとんどの耐性遺伝子がプラスミド伝播性であるため,他の細菌や種を超えて薬剤耐性が伝播する可能性があり,治療には多剤耐性菌用の薬剤であるチゲサイクリンやコリスチンの使用が必要な症例もある.現時点では本邦での検出頻度は低いが,アウトブレイク事例も認めるため,今後の動向には注意する.
著者
堤 久 大田 雅嗣
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.95, no.10, pp.2021-2025, 2006-10-10 (Released:2009-03-27)
参考文献数
5
被引用文献数
1 1

加齢に伴い赤血球諸値の低下をみるが, 高齢者では貧血の定義を男女一律にヘモグロビン濃度11g/dl以下とするのが実際的である. 高齢者では, 自覚症状に乏しかったり貧血らしからぬ症状を呈することも多い. 貧血の原因としては, 消化管出血による鉄欠乏性貧血, 慢性炎症に伴う二次性貧血, 腎性貧血などが多く骨髄異形成症候群も重要である. 貧血の治療は原因療法が基本だが, 輸血療法を行う場合は心不全の予防などの配慮を要する.
著者
髙田 和生
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.12, pp.2498-2508, 2015-12-10 (Released:2016-12-10)
参考文献数
8

アクティブラーニングとは,大人数講義と対照をなす教育アプローチであり,後者が教育者側の情報伝授効率を高めるのに対して,前者は学習者が新たに受領した情報について何らかの活動に従事することにより,それら情報の高次レベルでの修得を可能にする.大人数講義とは排他的ではなく相補的関係にあり,大人数講義を数分間中断して個人やペアで何らかの認知タスクに取り組ませるという小規模なものから始められる.その有効性は実証研究でも証明されつつあり,膨大な医学情報量と過密化するカリキュラムの中で学ぶ医学生の学習支援のために,今後導入拡大が求められている.