- 著者
-
伊藤 聡
- 出版者
- 一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
- 雑誌
- 臨床リウマチ (ISSN:09148760)
- 巻号頁・発行日
- vol.31, no.1, pp.7-14, 2019-03-30 (Released:2019-07-03)
- 参考文献数
- 27
近年,第一子を産む女性の年齢が遅れてきている.また治療の進歩により寛解達成が可能となり,関節リウマチ(RA)患者の妊娠・出産の機会が増えている.現在RA患者の治療の中心となる薬剤は,メトトレキサート(MTX)であり第一選択薬として用いられることが多い薬である.しかし,MTXには催奇形性があり,妊娠中に使用するべきではなく妊娠計画の少なくとも1月経周期前に使用を中止する必要がある.スルファサラゾピリジン,アザチオプリン(AZA),シクロスポリン(CyA),タクロリムス(TAC)などが使用される.AZA,CyA,TACは,添付文書では妊娠時の使用は禁忌となっていたが,2018年7月に禁忌が解除となり,使用しやすくなった.RAの活動性が高い場合は,生物学的製剤を使用するが,現在のところ推奨度が高いのは,エタネルセプト(ETN)とセルトリズマブペゴル(CZP)である.承認年度の違いから,過去の使用実績としてはETNが多いものと考えられる.一方で,CZPはFc領域を持たないなどの分子構造特性から,胎盤通過性,乳汁分泌性が非常に少ないことが判明しており,海外では妊娠・出産時の使用の実績も多い.我が国でのエビデンスの構築が必須である.