著者
中山 一麿 落合 博志 伊藤 聡
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

昨年度後半から本格始動させた覚城院の調査であるが、調査が進むにつれて新たな発見があり、多義に亘る史料の宝庫として、その実態把握を加速させている。字数制限上、覚城院に関する主たる成果のみ以下に記す。6月には、中山一麿「寺院経蔵調査にみる増吽研究の可能性-安住院・覚城院」(大橋直義編『根来寺と延慶本『平家物語』』、勉誠出版)において、新出の増吽関係史料を中心に、増吽やその周辺の研究を進展させると共に、聖教調査研究が新たな発展段階にあることを示唆した。9月には本科研を含めた6つのプロジェクトの共催で、「第1回 日本宗教文献調査学 合同研究集会」が行われたが、中山はその開催に主導的役割を果たし、二日目の公開シンポジウム「聖教が繋ぐ-中世根来寺の宗教文化圏-」では基調報告として「覚城院所蔵の中世期写本と根来寺・真福寺」を発表し、覚城院から発見された根来寺教学を俯瞰する血脈の紹介を交えつつ、覚城院聖教が根来寺・真福寺などの聖教と密接に関係することを報告した。加えて、同時に開催された寺院調査に関するポスターセッションでは、全29ヵ寺中、本科研事業に参加する研究者5名で計10ヵ寺分(覚城院・安住院・随心院・西福寺〈以上中山〉・木山寺・捧択寺〈以上向村九音〉・善通寺〈落合博志〉・地蔵寺〈山崎淳〉・薬王寺〈須藤茂樹〉・宝泉寺〈中川真弓〉)のポスターを掲示した。3月には「第1回 覚城院聖教調査進捗報告会―今目覚める、地方経蔵の底力―」を開催し、覚城院調査メンバーから9名の研究者による最新の研究成果を公表した。同月末刊行の『中世禅籍叢刊 第12巻 稀覯禅籍集 続』(臨川書店)においては、覚城院蔵『密宗超過仏祖決』の影印・翻刻・解題を掲載し、翻刻(阿部泰郎)・特論(中山一麿)・解題(伊藤聡・阿部泰郎)がそれぞれ担当して、本書の持つ中世禅密思想上の意義やその伝来が象徴する覚城院聖教の重要性を論じた。
著者
伊藤 聡
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.385-409, 2007-09-30

神仏習合の現象は、平安時代に至り本地垂迹説の成立を見るが、それが中世においてどのように変容していったかを跡づけようとするものである。中世における本地垂迹説の浸透によって、神観念はさまざまに変化したが、そのなかでも神が人間の心に内在すると考えられるようになったのが、最も大きい変化だった。即ち、本地垂迹とは、仏が内なる神=心として顕現することであり、しかも煩悩にまみれたわれわれの本源的姿たる蛇身としてあらわれると見なされたのだった。そこには、中世神道が罪業と救済の信仰を指向するものだったことを示す。ところが、中世後期以降、人間の内なる「悪」へのまなざしは薄れ、吉田神道にみられるように、楽天的・肯定的な観念へと変貌してしまう。そしてそれが、近世神道の基盤を形作ることになるのである。
著者
伊藤 聡
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.7-14, 2019-03-30 (Released:2019-07-03)
参考文献数
27

近年,第一子を産む女性の年齢が遅れてきている.また治療の進歩により寛解達成が可能となり,関節リウマチ(RA)患者の妊娠・出産の機会が増えている.現在RA患者の治療の中心となる薬剤は,メトトレキサート(MTX)であり第一選択薬として用いられることが多い薬である.しかし,MTXには催奇形性があり,妊娠中に使用するべきではなく妊娠計画の少なくとも1月経周期前に使用を中止する必要がある.スルファサラゾピリジン,アザチオプリン(AZA),シクロスポリン(CyA),タクロリムス(TAC)などが使用される.AZA,CyA,TACは,添付文書では妊娠時の使用は禁忌となっていたが,2018年7月に禁忌が解除となり,使用しやすくなった.RAの活動性が高い場合は,生物学的製剤を使用するが,現在のところ推奨度が高いのは,エタネルセプト(ETN)とセルトリズマブペゴル(CZP)である.承認年度の違いから,過去の使用実績としてはETNが多いものと考えられる.一方で,CZPはFc領域を持たないなどの分子構造特性から,胎盤通過性,乳汁分泌性が非常に少ないことが判明しており,海外では妊娠・出産時の使用の実績も多い.我が国でのエビデンスの構築が必須である.
著者
ダニエラチェ セバスティアン 吉川 知里 梶野 瑞王 伊藤 聡士 掛谷 航 吉田 尚弘 五十嵐 康人
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2017年度日本地球化学会第64回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.62, 2017 (Released:2017-11-09)
被引用文献数
1

We present a numerical study carried out with a regional Eulerian-Lagrangian hybrid model to account for the transport, deposition and radioactive decay of 35S in Sulphur Dioxide and sulfate aerosols emitted into the atmosphere at the Fukushima Dai-ichi nuclear power plant incident.
著者
伊藤 聡 小西 真治 村上 哲哉 新田 裕樹 阿南 健一 中川 貴之 本田 中 赤木 寛一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F2(地下空間研究)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.14-31, 2020

<p> 地下鉄開削トンネルの縦断方向の一部に大きな沈下や沈下に伴うひび割れが多く見られ,その使用にあたって耐荷性能を精度よく評価することが課題となっていた.そこで,鉄筋ひずみの調査を行ったところ,トンネルの中立軸位置が設計計算の値と大きく異なることがわかった.この要因として,トンネルにひび割れが生じることでトンネル縦断方向に伸長する挙動が,両端の変状が起こっていない部分により拘束されることにより見かけの軸力が発生するといったメカニズムを想定し,軸力の算定方法を検討した.さらに,この軸力を用いて構造計算を行った結果,見かけの軸力を与え,トンネル形状を再現した疑似3次元モデルを用いることで,トンネルのひび割れ状況などの変状を精度よく再現できることがわかり,軸力の発生メカニズムの妥当性が確認できた.</p>
著者
伊藤 聡
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.385-409, 2007-09-30 (Released:2017-07-14)

神仏習合の現象は、平安時代に至り本地垂迹説の成立を見るが、それが中世においてどのように変容していったかを跡づけようとするものである。中世における本地垂迹説の浸透によって、神観念はさまざまに変化したが、そのなかでも神が人間の心に内在すると考えられるようになったのが、最も大きい変化だった。即ち、本地垂迹とは、仏が内なる神=心として顕現することであり、しかも煩悩にまみれたわれわれの本源的姿たる蛇身としてあらわれると見なされたのだった。そこには、中世神道が罪業と救済の信仰を指向するものだったことを示す。ところが、中世後期以降、人間の内なる「悪」へのまなざしは薄れ、吉田神道にみられるように、楽天的・肯定的な観念へと変貌してしまう。そしてそれが、近世神道の基盤を形作ることになるのである。
著者
岡本 丈夫 佐々木 実 伊藤 聡 竹田 幸市 Muhammad Ilhamdi Rusydi
出版者
The Japan Society of Applied Electromagnetics and Mechanics
雑誌
日本AEM学会誌 (ISSN:09194452)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.312-317, 2014 (Released:2014-10-06)
参考文献数
13
被引用文献数
3

Currently, there are many systems to support people with disability in their day to day activities. In this research, a robot arm system was designed, developed and controlled by use of an EOG (ElectroOculography) signal generated by the eye movement. The first part of the research was to establish the relationship between gaze position and EOG signal. Using Helmert transform method, the gaze position is estimated. The average error between real gaze position and estimated gaze position was ±4 cm. To recognize blink through EOG signal, Bell phenomenon was used. The blink recognition (voluntary and involuntary) experiment includes three occupants. The overall success rate of recognition of their blinks was more than 90%. Using this system long will make operators tired and results in erroneous experimental results. Thus, the switch from “control on” to “control off” was introduced in this system. The switch is activated when voluntary blink is detected. This will allow the system to improve the controllability.
著者
大内 翔平 伊藤 聡志
出版者
日本磁気共鳴医学会
雑誌
日本磁気共鳴医学会雑誌 (ISSN:09149457)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.29-32, 2019-02-15 (Released:2019-03-18)
参考文献数
5

Compressive sensing (CS) is an effective approach for fast magnetic resonance imaging (MRI). To improve the reconstruction accuracy and computational speed, we propose a novel deep architecture using deep learning. Experiments on MR image reconstruction demonstrate that proposed method significantly accelerates the reconstruction time, with image quality comparable to that of traditional iterative reconstruction.
著者
伊藤 聡
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.44, no.7, pp.67-77, 1995-07-10 (Released:2017-08-01)

第六天魔王と天照大神との契約説を語る最初期のテキストである『中臣祓訓解』は、同説が神宮の仏教忌避の由来を中心的主題とするのではなく、寧ろ魔王より大日=大神への国譲りが主題となっていることを浮き彫りにする。そしてその魔王たる伊舎那天は仏教の障碍神としてばかりではなく、伊弉諾尊と習合し、更には日本が大日の本国であることの根拠ともなる。この魔王の複雑な性格は神国思想と末代辺土観とに引き裂かれた中世の自国意識の反映であり、第六天魔王説とはこの両者を止揚する契機として構想された創世神話であると考えられる。
著者
小島 崇 綱島 均 伊藤 聡美 塩沢 友規
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.193-200, 2007-08-15 (Released:2010-03-15)
参考文献数
11
被引用文献数
2 1

鉄道の安全性確保のために, 列車運転士には判断に関するヒューマンエラーを犯さないことが強く求められる. 列車運行時のヒューマンエラーを防止するためには, 人間の特性を考えた運転支援システムの開発が必要である. このようなシステムを開発するにあたっては, 運転操作と認知, 判断にともなう脳機能に着目する必要がある. 本論文では, 列車運転中の運転士の高次脳機能を, 機能的近赤外分光 (fNIRS) 装置を用いて計測した. 運転中の脳機能活動を抽出するために, ウェーブレット変換による多重解像度解析を適用することを提案した. 運転シミュレータを用いた実験の結果, 提案の方法により運転中の高次脳機能を評価できることを示した.
著者
伊藤 聡
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.99, no.8, pp.1871-1877, 2010 (Released:2013-04-10)
参考文献数
10

関節リウマチの治療に生物学的製剤が導入され,劇的な効果をあげている.我が国では4製剤が認可され,それぞれの特徴を考慮して使用されている.生物学的製剤は,神経Behçet病,多発性/皮膚筋炎,血管炎症候群などの,膠原病,膠原病関連疾患における神経・筋障害においても使用が開始され,有効例も報告されている.しかし,保険適用外であり,報告された症例数も少ないため,使用にあたっては,十分なインフォームドコンセントが必要である.
著者
北山 真平 佐々木 実 伊藤 聡 安田 晴信 小嶋 俊史
出版者
The Japan Society of Applied Electromagnetics and Mechanics
雑誌
日本AEM学会誌 (ISSN:09194452)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.318-323, 2014 (Released:2014-10-06)
参考文献数
7
被引用文献数
1

Motions estimation utilizing EEG can develop devices supporting the elderly and disabilities. This paper investigated a possibility of limb motion estimation using Bereitschafts Potential (BP). BP means voltage variation of EEG just before motions. To estimate, neural network was introduced. Three types of processed signal were used as the input. The types of signal processing were FFT, increment and normalization. The best signal processing of them was normalization, and the accuracy rate was 89.0%.