著者
土居 寿之 近藤 しおり 八島 千恵 鈴木 将史 吉田 沙希子 山本 晋 福岡 富和 岡田 貴典
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.111, no.2, pp.283-289, 2022-02-10 (Released:2023-02-10)
参考文献数
6

50歳代の女性,抗GAD(glutamic acid decarboxylase)抗体陽性インスリン依存状態の1型糖尿病に対し,持続皮下インスリン注入療法を行っていた.糖尿病発症前からの肥満が問題であり,1年前よりSGLT2(sodium/glucose cotransporter 2)阻害薬の内服を開始した.数日前より感冒症状があり,食事は摂取できなかったが,少しずつ経口摂取していたためSGLT2阻害薬内服は継続していた.嘔気と倦怠感が増悪し受診,血糖269 mg/dlであったが,ケトアシドーシスを認め入院,ブドウ糖とインスリンを同時に持続静注開始.速やかに症状が改善し翌日退院した.SGLT2阻害薬内服中,インスリン依存状態では,経口摂取量減少時に正常血糖ケトアシドーシス(euglycemic diabetic ketoacidosis:euDKA)を起こす可能性があることを念頭に置く必要がある.
著者
鈴木 慎太郎 松浦 崇行 福田 充 武井 雅俊 久保 定徳 吉本 多一郎
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.12, pp.3629-3633, 2011 (Released:2013-04-11)
参考文献数
5

Erdheim-Chester病(ECD)は異常に増殖した組織球系細胞が多臓器に浸潤する稀な疾患である.症例は67歳,男性.初診時から既に多臓器の障害があった.副腎皮質ステロイドの漸減中に痰の喀出困難や不整脈を生じ死亡した.剖検所見では,CD68陽性の組織球やリンパ球の浸潤および線維性結合織の増生を心臓,肺,腎臓等に認めた.特に右房における心筋の破壊は著しく,ECD病変による刺激伝導系の傷害が生命予後に影響を及ぼしたものと考えた.
著者
岡崎 啓明
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.4, pp.735-741, 2017-04-10 (Released:2018-04-10)
参考文献数
25

残余リスクの正体は何か―標準治療であるスタチンによるLDL-C(low density lipoprotein-cholesterol)低下の限界を超える新たな治療薬の登場により,LDL-C低下療法は新時代に入り,また,ゲノム研究から,高TG(triglyceride)血症も重要な動脈硬化リスクであることがわかってきた.より若年からの介入の重要性,新治療薬開発など,脂質の治療は新たなパラダイムに入ろうとしている.Commonな脂質異常から遺伝子異常の明らかな難病まで,脂質異常症の治療の今後の可能性を探る.
著者
野原 淳
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.12, pp.2625-2637, 2017-12-10 (Released:2018-12-10)
参考文献数
31

家族性高コレステロール血症(familial hypercholesterolemia:FH)ヘテロ接合体は一般人200~300人に1人と,以前の想定よりも頻度の高い常染色体優性遺伝疾患であることがわかってきた.FHは早発性冠動脈硬化症による若年死リスクが高い疾患だが,早期診断・早期治療が極めて有効であり,積極的な診断を家族の治療にもつなぎ,診断率を向上することが非常に大切である.これまでの既存薬ではFHの治療は不十分であった.2003年に3番目のFH遺伝子としてPCSK9(proprotein convertase subtilisin/kexin type 9)が発見され,2016年に承認されたPCSK9阻害薬(前駆蛋白転換酵素サブチリシン/ケキシン9型阻害薬)はFHヘテロ接合体でもLDLコレステロール(low density lipoprotein-cholesterol:LDL-C)を十分に低下させることができる.また,有効な薬物が少ない重症型のFHホモ接合体にはMTP(microsomal triglyceride transfer protein)阻害薬が2016年に承認された.これらの薬剤の登場がFHの心血管疾患治療を大きく前進させている.
著者
峯岸 敬 篠崎 博光
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.101, no.4, pp.985-992, 2012 (Released:2013-05-10)
参考文献数
8

視床下部-下垂体-性腺系の異常による性腺機能異常には,性腺自体の障害による原発性と中枢性の続発性に分類される.治療に関しては,ゴナドトロピン製剤又は性ステロイドを使用して治療するので,Kallmann症候群(KS)を例に新しい治療法に言及する.多嚢胞卵巣症候群(polycystic ovary syndrome:PCOS)については,病態が解明されていないため,様々な側面から新しい治療法が試みられているので,本稿では副作用の少ない排卵誘発法を中心に述べる.
著者
長澤 浩平
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.99, no.10, pp.2460-2466, 2010 (Released:2013-04-10)
参考文献数
10

成人発症Still病(adult onset Still’s disease:AOSD)は,高熱,多関節痛,皮疹,高度の炎症反応,及び血清フェリチンの著増などを特徴とする全身の炎症性疾患で,病態形成にはIL-18を初めとする炎症性サイトカインが深く関わっている.治療はステロイドを中心とするが,重症例にはシクロスポリンやメトトレキサートなどの免疫抑制薬,さらには生物学的製剤の使用が必要となることがある.
著者
岡部 信彦
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.91, no.10, pp.2845-2849, 2002-10-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
8
著者
柴田 義久 花木 芳洋
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.95, no.12, pp.2447-2453, 2006-12-10 (Released:2009-03-27)
参考文献数
4

徐脈や頻脈の治療の目標は, 血行動態の不安定な患者をすばやく同定し治療することである. 不安定な患者には薬物治療に頼ることなく, 躊躇せずに経皮ペーシングや同期カルジオバージョンを行う必要がある. 安定した患者には12誘導心電図を記録し不整脈診断を行い, 専門医へのコンサルテーションを行う. 心電図診断ではなく臨床的評価の重要性を強調したアルゴリズムを紹介する.
著者
中島 淳 冬木 晶子 大久保 秀則
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.11, pp.2453-2460, 2017-11-10 (Released:2018-11-10)
参考文献数
4

慢性便秘は未曾有の高齢化を反映し,患者数の増加が著しい疾患である.慢性便秘は薬剤性や症候性等による続発性便秘と原発性である慢性機能性便秘に分類され,さらに,後者は結腸通過時間正常型,結腸通過時間遅延型,便排出障害型の3つに分類され,その診断は最近改定されたROME IVにより規定されている.近年,臨床治験を経たエビデンスレベルの高い新規慢性便秘治療薬として,ルビプロストンやリナクロチド,さらには緩和領域では末梢型オピオイド受容体拮抗薬としてのナルデメジンの登場によって,治療現場が大きく変わりつつある.
著者
石川 治
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.98, no.10, pp.2432-2439, 2009 (Released:2012-08-02)
参考文献数
2

膠原病・自己免疫性リウマチ疾患はしばしば多臓器を侵し,皮膚にも多彩な皮膚病変をもたらす.皮膚病変には疾患と1:1に対応をする特異性の高いものと,疾患特異性は低いが膠原病を疑うべきものとがある.本稿では,非特異的皮膚病変とエリテマトーデス,皮膚筋炎(DM),強皮症(SSc)を中心に頻度の高い特異的皮膚病変を概説した.皮膚病変を知ることが早期診断の一助となるはずである.
著者
高橋 裕樹
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.109, no.9, pp.1871-1877, 2020-09-10 (Released:2021-09-10)
参考文献数
13
著者
石田 直
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.99, no.11, pp.2729-2734, 2010 (Released:2013-04-10)
参考文献数
10

抗菌薬の投与期間は感染症の種類や原因菌別に大体定まっているが,必ずしもエビデンスに基づいたものではない.尿路感染症,敗血症,肺炎について投与期間に関する文献上のエビデンスや内外でのガイドラインでの推奨を挙げてみた.各種の炎症性パラメーターについては,その特徴を理解したうえで使用すれば効果判定に有用であり,治療終了の補助的な目安となるかもしれない.
著者
須階 二朗 三川 武彦 門間 正幸 渡辺 勇四郎
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.263-268, 1976-03-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
15

慢性金属水銀中毒症は,労働衛生の進歩により,職場環境の水銀許容濃度基準が, 0.1mg/m3から0.05mg/m3に引き下げられ,大企業での発生は,激減している.しかし零細な中小企業,家内工業での発生は,いまなお散見される.症例は, 54才,男性, 47才頃より振戦に気付いていた.日を追つて症状は増強し, 54才の現在,高度な運動失調,振戦,口内炎を主訴として入院.主な理学的所見は,顔面やゝ蒼白,眼結膜軽度貧血を認めた.頚部から肩甲部にかけ,静止時振戦,および企図振戦を認め,起立歩行は緩慢であつた.口腔内所見は,歯肉萎縮,色素沈着,口内炎,歯芽脱落,流涎過多を認めた.その他胸腹部に異常認めず.神経学的症候は,不随運動と失調であり,手指,頭部の著しい振戦が認められ,四肢の近位筋および躯幹筋に,ミオクロニーを生じ,坐位を保てず,立位,歩行等の動作が緩慢であつた.言語は,断綴的で,爆発的であつた.深部反射は,一部亢進を示し, Babinski反射は両側陽性であつた.しかし知覚障害は認められなかつた.主な検査成績は,血中,尿中水銀濃度は, 51.0μg/dl, 540μg/24hと高値を示し,コリンエステラーゼ0.6ΔpHと低値を示した.その他視野狭窄,両側水晶体前面の色素沈着(アトキンソン徴侯),感音性難聴等を認めた.以上の所見より慢性金属水銀中毒症と診断した. D-Penicillamin投与,一時症状の増悪期を有したが,約3カ月後症状の改善,血中,尿中水銀の正常化を認めた.以上慢性金属水銀中毒症の臨床,治療について報告する.