著者
村田 剛
出版者
社団法人 日本写真学会
雑誌
日本写真学会誌 (ISSN:03695662)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.243-248, 2010 (Released:2012-02-19)
参考文献数
6

写真のデジタル化は,カメラボディーだけでなくレンズにも大きな変化をもたらした.ゴーストとフレアーは,我々が写真を撮影する際に,レンズ表面の反射によって発生する良く知られた問題であるが,ローパスフィルター表面からの強い反射光や撮像素子からの回折光のため,デジタルカメラにおけるこれら迷光の防止は,フィルムカメラよりも困難である.このような迷光を防止するため,我々は反射防止膜に超低屈折率層を導入することにより反射防止膜の性能を向上することを試みた.我々は超低屈折率を有するフッ化物多孔質層を形成するためにゾル-ゲル法を用い,高性能な反射防止膜を形成するための独自のプロセスを開発することに成功した.
著者
三浦 和己
出版者
社団法人 日本写真学会
雑誌
日本写真学会誌 (ISSN:03695662)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.23-28, 2016 (Released:2017-03-22)
参考文献数
15

近年,映画の製作・流通がアナログ(フィルム)からデジタルへと急速に移行している.この移行は映画の可能性を大きく広げる一方で,生成されたデジタルデータを長期間保存するという面においては,保存媒体やフォーマットがすぐに陳腐化するなど課題も多い.この課題についての調査を進めるため,東京国立近代美術館フィルムセンターでは,文化庁による 「美術館・歴史博物館重点分野推進支援事業」 の補助を受け,『映画におけるデジタル保存・活用に関する調査研究事業』 を実施している. 本稿ではこの調査事業の一環として実施した,4K 映像の長期保存に向けた取り組みについて紹介し,その中から顕在化 した課題について考察する.さらに今後の保存システム構築における重要な要素として,特定技術への依存を回避するための技術動向について触れる.
著者
小島 伸俊
出版者
社団法人 日本写真学会
雑誌
日本写真学会誌 (ISSN:03695662)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.264-269, 2002-08-25 (Released:2011-08-11)
参考文献数
28
被引用文献数
1 4

色再現評価用標準物体色分光データベース (SOCS) を用いて, アジア人の素肌色の分光反射率の特徴解析を行った. 素肌の分光反射率は3つの主成分で表現できること, 化粧用ファンデーションの主成分とは異なることを確認した. また, 分光反射率の違いが, 顔色の見えと印象に大きな影響を及ぼすことを実験的に示した. 分光情報は, 色素沈着部位の強調画像化, 色素沈着の深さ分布の推定, 肌の構成色素の分離に対しても非常に有効であった.
著者
小野 定康
出版者
社団法人 日本写真学会
雑誌
日本写真学会誌 (ISSN:03695662)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.8-13, 2012 (Released:2013-02-20)
参考文献数
8

本解説は最近急速に注目されてきているディジタルブラックホール問題に直結するディジタルデータの半世紀以上の保存に関して述べている.なぜディジタルデータの長期保存が必要になっているか,既存ディジタル記録システムの寿命について,現実的な長寿命化の方法,ディジタル記録システムと密接に関係するセキュリティ問題の解決法,次世代の恒久保存が可能なディジタル記録システムの研究動向を示している.
著者
中川 邦昭
出版者
社団法人 日本写真学会
雑誌
日本写真学会誌 (ISSN:03695662)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.198-206, 2004-04-25 (Released:2011-08-11)
参考文献数
10

京都での写真撮影の始まりを検討し, 定説であった堀与兵衛ではなく, 堀内信重が先駆であること, また, 彼が撮影条件の一定しない屋外で, すぐれた技術を駆使して観光写真を撮影していたことを示す.知恩院の寺徒の家に生まれた堀内信重は, 江戸時代末期に京都で亀谷徳次郎と出会い, 写真術を修得した.堀内は被写体が特定でき, 写真業を生業とした, 京都で最も古い写真師であると判定される.知恩院を訪れた参拝客や観光客を対象に写真撮影の営業を行なっていた彼は, 京都で初めての観光写真家であったと考えられる.堀内の写真について, 当時の風俗との関係, 同時代の写真や絵画からの影響などについても考察する.
著者
高須 隆雄
出版者
社団法人 日本写真学会
雑誌
日本写真学会誌 (ISSN:03695662)
巻号頁・発行日
vol.80, no.3, pp.243-246, 2017 (Released:2018-08-31)

OM-D E-M1 MarkⅡは,OLYMPUS OM-Dシリーズの新フラグシップ機として開発されたカメラである.フォーサーズ/ マイクロフォーサーズの統合を果たしたOM-D E-M1のDUAL FAST AFや小型軽量,防塵防滴などの特長を継承しながら,全ての機能や性能は飛躍的に進化している.本稿では,OM-D E-M1 MarkⅡの開発における技術的なポイントについて紹介する.
著者
森島 邦博
出版者
社団法人 日本写真学会
雑誌
日本写真学会誌 (ISSN:03695662)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.42-47, 2016 (Released:2017-03-22)
参考文献数
7

我々は,2011年3月11日に起きた東日本大震災による福島第一原子力発電所事故により炉心溶融が疑われた1号機から3号機の原子炉内部の状況を遠隔非破壊に調査するための手法として,原子核乾板を用いた宇宙線ミューオンラジオグラフィの提案を行って来た.2011年には,日本原子力研究開発機構(JAEA)の高速炉 「常陽」 の観測を実施し,炉心の非破壊イメージングの実証を行った.また,2014年3月から7月,及び2015年1月から3月の期間において,福島第一原子力発電所2号機,及び5号機の観測を実施した.本解説では,原子核乾板を用いた福島第一原子力発電所の原子炉内部の非破壊イメージングへ向けた宇宙線ミューオンラジオグラフィの技術開発とその最新の成果について解説する.
著者
大石 恭史
出版者
社団法人 日本写真学会
雑誌
日本写真学会誌 (ISSN:03695662)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.259-275, 2008-08-25 (Released:2011-01-04)
参考文献数
48
被引用文献数
1

1936年に, 革新的な技術に基づくAgfacolor Neu反転フィルムの突然の市場導入によって近代カラー写真が開幕した. Agfa社のWSchneiderらは, 分子内に脂肪族基と酸基を併せ持つ耐拡散性カップラーを乳剤層に組み入れることによって, 1度のカラー現像によってネガ像, 反転像のいずれをも形成できるこの革新技術を実現したのであった. これに対抗してEastman Kodak社の研究者は, 分子内に疎水性基のみを持つ「オイル分散型」の耐拡散性カップラーを案出して, 1941年に類型のKodacolor反転フィルムを開発した. これら新型のカラー感材の出現によって, 在来の多様な加色法プロセスは急速に衰退していった.
著者
高田 俊二
出版者
社団法人 日本写真学会
雑誌
日本写真学会誌 (ISSN:03695662)
巻号頁・発行日
vol.76, no.5, pp.378-384, 2013 (Released:2014-10-22)
参考文献数
11

日本写真学会の名誉賞を授与されたのを機に,富士フイルムにて進めたカラーフィルムおよびデジタル撮像素子での写真感度の向上に関する研究開発40年間の歩みをまとめた.
著者
小水 秀男 久永 輝明 藤井 悦男 川崎 正美 岩崎 卓也
出版者
社団法人 日本写真学会
雑誌
日本写真学会誌 (ISSN:03695662)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.309-313, 1979-10-30 (Released:2011-08-11)
参考文献数
10

Reaction of aq. NH4SCN with 22 N H2SO4 was studied in order to estimate the yield of HCN from thiocyanate-fixers under strong acid conditions.Main gaseous products were identified to be HCN, CS, and COS by GC-MS. The amounts of HCN were measured by Pyridine-Pyrazolone method (JIS K 0102) and the maximum concentrations were ca. 1.2×10-2 mol/l and 1.4×10-2 mol/l for 2 mol/l and 4 mol/l NH4SCN respectively.Yellow solid was precipitated in the reaction and the molecular formula was determined to be C2H2N2S3 by elementary analysis.
著者
西田 迪雄
出版者
社団法人 日本写真学会
雑誌
日本写真学会誌 (ISSN:03695662)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.485-486, 2005-12-25 (Released:2011-08-11)

鉄道写真撮影にディジタルカメラを用いる利点が述べられている. 鉄道写真における被写体は高速運動している. 列車の最高速度は時速130kmにも達するのでシャッター速度を1/1000に設定すると, 列車はそのシャッターが開いている間に3.6cm移動する. このような高速被写体の撮影から生じる問題がディジタルカメラでは容易に解決できることが述べられている. さらに露出を標準露出, マイナス露出補正, プラス露出補正とした3画像撮影が可能であることは鉄道写真撮影には非常に有利であることが事例を示して説明されている.
著者
オスターマン マーク
出版者
社団法人 日本写真学会
雑誌
日本写真学会誌 (ISSN:03695662)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.30-33, 2009

写真の保存においては,写真画像の技法同定と保護や修復の処置,さらに展示を正しく行うために,画像を形成する技法についての理解が肝要である.写真保存の始まりや技法の変遷,古典的写真技法の復活について言及するとともに,ジョージ・イーストマン・ハウス国際写真博物館における写真保存研究の経緯と現在の写真保存上級プログラムを紹介し,写真の保存における歴史的写真技法の研究と実践の意義を解説する.<br>
著者
川合 澄夫
出版者
社団法人 日本写真学会
雑誌
日本写真学会誌 (ISSN:03695662)
巻号頁・発行日
vol.67, no.Suppliment1, pp.8-9, 2004-05-27 (Released:2011-08-11)

OLYMPUS has developed a new digital SLR camera E-1 with high image quality and mobility. New imaging system is applied to E-1. This new imaging format has half the diagonal length of 35-mm film format (36mm×24mm). The focal length is half that of a 35-mm film camera lens to achieve the same angle of view.
著者
島 和也
出版者
社団法人 日本写真学会
雑誌
日本写真学会誌 (ISSN:03695662)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.245-252, 2009 (Released:2011-09-28)
参考文献数
6

ステレオ写真の撮影法と観賞法について紹介する.