著者
安部 直重 高崎 宏寿 久保田 義正
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌 (ISSN:13421131)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.143-150, 2001-02-07
被引用文献数
5

哺乳期における馴致処理がその後のウシの扱い易さに及ぼす影響を明らかにする目的で試験一調査を行った。約1ヵ月齢のホルスタイン種×黒毛和種雄牛10頭を、5頭ずつ馴致群および対照群とし7ヵ月齢まで供試した。馴致群には1日2回、朝夕5分間ずつ32日間合計320分ブラッシングおよび声かけを実施した。対照群の5頭は馴致処理以外は馴致群とほぼ同様に管理した。管理者に対する逃避反応性を、ヒトがウシの体に触れた時の忌避反応評点および試験用通路内で試験者が静かにウシに近づきウシが逃避を開始した地点と試験者との距離である逃避反応距離により測定した。馴致群の忌避反応評点は9.2点に対し対照群では5.6点で馴致群が有意に(P<0.01)高く、逃避反応距離においても馴致群の0.61mに対し対照群では1.46mと馴致群が有意に(P<0.05)短い結果であった。出生直後でなくとも哺乳期における長期の馴致処理はウシのヒトに対する逃避反応性を弱める効果がある事が明らかとなった。同時に馴致群では処理開始直後から管理者に対する模擬闘争行動が発生し始め、処理終了時には全個体で頭突きを伴う強い模擬闘争が発生するに及んだ。しかも模擬闘争行動は、逃避反応性の低い個体で多発する傾向が見られた。馴致処理はヒトに対する逃避反応性を弱め、扱い易さの改善効果をもたらす一方、ヒトに対する模擬闘争行動を誘発し管理上問題になる可能性も示唆された。日本家畜管理学会誌、36(4) : 143-150、2001 2000年3月6日受付2000年12月6日受理
著者
八谷 満 古山 隆司 福森 功 市戸 万丈 平田 晃 桑名 隆
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌 (ISSN:13421131)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.115-127, 2000-12-15
被引用文献数
4

繋ぎ飼い用搾乳ロボットシステムの開発に向けて、特にマニピュレータ機構の設計指針を得ることを目的として、ホルスタイン種泌乳牛111頭を供試して体尺測定調査を実施した。ロボットはストール後方より牛に接近して、牛体位置検出機構は牛体において変形量の少ない部位として坐骨端と左右の腰角を捕捉する。本機構に自動搾乳ユニットを搭載することによって、機械系の原点と牛体との水平面上での相対的位置関係をほぼ確定し、牛体の動きに追従して両者の位置関係を維持する。これを基本的な機械設計概念とする。その上で、牛体とロボット機械系双方の安全性を確保するために、ロボット作業環境内の四肢や乳房等の配置から干渉あるいは衝突の可能性の低い部分を抽出し、動作可能な空間領域をモデル的に示した。これを考慮した機械系, 特にロボットマニピュレータの関節構成と軌道生成を提案した。マニピュレータ機構は、平面的な位置決めと姿勢決めの回転自由度を各々2と1、これにティートカップ装着動作のための並進自由度1を加え、計4自由度の基本仕様で対応可能と判断された。マニピュレータの標準作業域は、牛体軸上の坐骨端からの距離380mmの点を中心とする、350×350mm区画が4乳頭の散在する領域である。この領域においては、エンドエフェクタを有する第3アームを常に牛体軸に平行な姿勢に制御することによって、後肢を回避しながら、狭降な後肢内側空間においてテイートカップのマニピュレーションが可能であると推察された。マニピュレータ機構をモデル的に単純化して、位置制御するための関節変数ベクトルを求める逆運動学問題の解を示した。X-Y平面内での運動特性を考慮して、第1、第2および第3アームリンク長をそれぞれ400mm、350mmおよび200mmと設定した。また、マニピュレータ台座の適正な位置をX、Y座標それぞれ580mm、520mmと設定した。日本家畜管理学会誌、36(3)115-127、2000 1999年4月12日受付2000年9月1日受理
著者
干場 秀雄 米田 浩泰 池滝 孝 新出 陽三 奥島 正 平山 森一 天池 伸三
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌 (ISSN:13421131)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.53-60, 1996-10-11
参考文献数
8
被引用文献数
4

1993年12月に日本で初めて帯広畜産大学附属農場(以下大学農場と呼ぶ)にオランダのP社製自動搾乳システムが導入された。それ以来、これを使用して日本の酪農家向け自動搾乳システムの適用試験が開始され、その成果を踏まえて、その後さらに二個所にこのシステムが設置され稼働している、本研究はそのうちの二個所の自動搾乳システムの搾乳作業を調査し、搾乳能率、搾乳ロボットのティートカップの取り付け性能を明らかにした。調査は大学農場の二頭単列タンデム式とロボファームの三頭単列タンデム式自動搾乳システムで、一日3回搾乳時に行った。その結果は以下の通りである。1)朝搾乳作業は昼・夜搾乳作業と比較して、その作業時間が1時間〜1時間15分程長かった。昼・夜搾乳作業において、乳牛がスムーズに入室した場合の搾乳能率は二頭単列タンデム式で13〜14頭/時、三頭単列タンデム式で20〜22頭/時と室数に比例していた。2)搾乳ロボットによるティートカップ取り付け所要時間は乳頭の形状の揃った牛で30秒であったが、乳頭の形状が不揃いの牛では2分以上を要していて、その形状を揃える必要性が明らかになった。搾乳ロボットによるティートカップ装着率は大学農場では95%で、ロボファームでは98%であった。3)朝・昼・夜の搾乳開始時刻による搾乳時間間隔の違いは搾乳量に影響を及ぼし、朝(9時間)は昼・夜(75時間)よりも搾乳量で45%多かった。4)ロボファームでパーラヘの牛の進入の順位を調査すると、早い牛群(1位〜20位)と遅い牛群(41位〜60位)において、8頭が常にその群の中にいて、そのグループ分けがなされていた。日本家畜管理学会誌、32(2) : 53-60.1996.1996年5月21日受付1996年8月2日受理
著者
佐藤 衆介 岡本 直木
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌 (ISSN:13421131)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.43-52, 1996-10-11
参考文献数
9
被引用文献数
4

日本人の動物福祉に関する基本的な考え方を把握するため、アンケート調査を595名に対して行った。回答者は様々な地域の男女半数ずつで、すべての年齢層をカバーし、学生、主婦を始め多岐にわたる職種からなっていた。家畜実験動物、およびペットについてそれぞれ、殺すこと、急性的に虐待すること、慢性的に虐待すること、および肉体を切断することに対する許容性を尋ねた。各質問に対する拒否・許容反応を評価すると共に、許容性の高い順に5〜1点の評点化を行い、主成分分析および最小2乗分散分析に供した。食肉および医療のための屠殺・急性ストレスには特に寛容的であった。そして遊びとしての虐待や身勝手な理由による虐待には特に非寛容的であった。行為の許容性に対する第1、第2、第3主成分はそれぞれ、「動物一般に対する哀れみの情」、「遊びとしての虐待への許容性」、「弱い経済的理由や人間のある程度のエゴによる虐待への反発性」と解釈された。評点には回答者の性と年齢、質問の対象動物種、行為の種類、理由の有無の効果が有意であった。女性に較べ男性の方が、動物に対する侵害である屠殺、ストレス付加、虐待等に寛容的であり、60歳以上が他に較べ寛容的で、20歳未満が他に較べて非寛容的であった。対象動物では家畜に対し寛容的となり、次いで実験動物、ペットの順に寛容性は落ちた。処理では、殺すことが他に較べ寛容的で、慢性的な虐待、急性的な虐待、肉体の切断の順で寛容性は落ちた。人間優先的で経済的理由がある場合には圧倒的に寛容的となった。さらに家畜福祉と経済性に関する質問では、72.1%の人が家畜に対しストレスを与えない飼い方を望み、ある程度の価格上昇をやむを得ないと回答した。これらの結果より、家畜福祉に関する我が国の意識は欧米と基本的に異ならないこと、そしてさらに食文化、特定動物への感情(伴侶動物文化)、動物福祉運動に影響されることも示唆された。日本家畜管理学会誌、32(2)43-52.1996.1996年5月7日受付1996年7月5日受理
著者
高山 耕二 劉 翔 角井 洋子 山下 研人 萬田 正治 中西 良孝 松元 里志 中釜 明紀 柳田 宏一
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌 (ISSN:13421131)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.1-11, 1998-07-15
参考文献数
13
被引用文献数
4

合鴨農法における家鴨類の適性品種を選定する上での基礎的知見を得るために、インディアンランナー、中国系在来種およびマガモ系合鴨の3品種を用い、水田放飼(1996年および1997年の6〜9月)における除草・駆虫能力について、品種間で比較検討した。水田放飼期間中、定期的に雑草および害虫の発生状況を調査するとともに、胃内容物調査も行った。1.1997年7月には家鴨類放飼により雑草発生が有意に抑制され、8月にはタイヌビエ、イヌビエなどイネ科雑草の発生が多くみられたものの、中国系在来種がマガモ系合鴨に比べ高い除草能力を示した。2.セジロウンカの発生ピーク時(1996年7月)における胃内容物調査では、マガモ系合鴨の336頭、インディアンランナーの732頭および中国系在来種の506頭と多数のセジロウンカの摂食が確認され、家鴨3品種間に有意な差は認められず、いずれも高い駆虫能力を示した。また、トビイロウンカについても家鴨3品種は高い駆虫能力を示したか、品種間に差はみられなかった。なお、ツマグロヨコバイに対しては、3品種とも駆虫能力は認められなかった。3.スクミリンゴガイに対し、家鴨3品種は高い駆虫能力を示したが、品種間に差は認められなかった。一方、スクミリンゴガイの卵塊については、マガモ系合鴨と中国系在来種がインディアンランナーに比べ高い駆除能力を示した。以上から、家鴨3品種のうち、中国系在来種が水田における除草・駆虫能力の面で最も優れた品種であることが示唆された。日本家畜管理学会誌、34(1) : 1-11,19981998年1月16日受付1998年5月6日受理
著者
周 維統 井上 喜正 伊藤 敏男 山本 禎紀
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌 (ISSN:13421131)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.39-46, 1997-12-08
被引用文献数
2

本研究では、高温下におけるブロイラーの体温調節性生理反応に及ぼす飼料摂取量の影響について検討した。供試鶏には、22℃下で高温暴露前の飼料摂取条件を0、25、50および75gとし、9時に給与し, 摂取後少なくとも2時間以上経過した14 : 00から17 : 00にかけて38℃の高温に暴露した。直腸温、脚部皮膚温、呼吸数および心拍数は、22℃に比べ38℃で有意に高く、高温暴露時間とともに上昇または増加した。22℃下(13 : 30)では、飼料摂取量の増加に伴う直腸温脚部皮膚温呼吸数および心拍数の上昇または増加が認められた。しかしながら、38℃感作によって、飼料摂取量に伴う熱産生量の増加も、また、直腸温、脚部皮膚温、呼吸数および心拍数の上昇または増加も認められなかった。生理反応の関係を見ると、熱産生量は直腸温の上昇に伴い増加し、呼吸数は直腸温約42.5℃で最高値に達した。これらの結果から、ブロイラーの体温調節性生理反応に及ぼす暴露前の飼料摂取量の影響は比較的短時間のうちに消失してしまうものと思われた。日本家畜管理学会誌、33(2) : 39-46.1997.1997年3月3日受付1997年7月22日受理
著者
佐藤 衆介 西脇 亜也 大竹 秀男 篠原 久
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌 (ISSN:13421131)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.95-104, 1999-03-03
被引用文献数
1

岩手県の低投入型放牧酪農家2戸(N牧場、K牧場)の家畜福祉性を、主として乳牛の行動の調査結果に基づき、乳生産や疾病記録を加味して評価した。両牧場とも急傾斜地にあり、面積はN、K牧場とそれぞれ46ha、40haで、改良草地放牧地、野草林間放牧地および採草地からなっていた。N牧場には、加えて採草放牧兼用地があった。両牧場ともまき牛繁殖で、放牧地での自然分娩であった。N牧場では2ヵ月齢までの自然哺乳、K牧場では3ヵ月齢まで人工哺乳であった。両牧場ともに、無施肥による放牧地管理をし、フスマやビートパルプといった農産副産物の他には、濃厚飼料は無給与という低投入型で、牛乳を4,000kg/頭/年程度生産していた。N牧場の乳牛では、全行動レパートリーが出現したが、6月の食草・樹葉摂食行動は1日当たり平均11.0時間となり、それは過去の報告例の上限に近い水準であった。強制離乳子牛1頭に模擬舌遊び行動が観察された他には、異常行動は観察されなかった。K牧場では、人工哺乳のため母子行動は発現できなかった。K牧場での全摂食行動(食草、樹葉摂食、給与飼料摂食)は6月および7月には昼夜を問わず間断的にみられ、それぞれ1日当たり平均52時間および82時間であった。しかし、9月の食草・樹葉摂食時間は2.8時間と極端に短くなり、特にシバヘの依存が急激に低下した。N牧場では1994年の治療回数は2回で、捻挫と子牛の奇形による難産が理由であった。K牧場では1995年には下痢子牛3頭、後産停滞2頭、起立不能症1頭で治療を要した。両牧場とも、ウシの疾病率が低く、さらに異常行動は1頭を除き発現せず、行動レパートリーのほとんどが出現し、各行動時間配分も通常範囲内にあり、行動的にもほぼ正常であり、家畜福祉レベルは平均的な酪農家に比べて高いと判断された。しかし、N牧場では、強制離乳された子牛のストレス性の軽減が、K牧場では晩夏以降の草生の改善が、さらなる家畜福祉性改善に必要であると示唆された。日本家畜管理学会誌、34(3) : 95-104、1999 1998年4月16日受付1999年1月7日受理
著者
山本 禎紀 藤田 正範 坂本 竜一 古本 史 安保 佳洋 SULONG Adnan 安保 佳洋
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌 (ISSN:13421131)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.1-9, 1996-07-23

乳量の高い泌乳牛に対して、一時的に飼料摂取量を変化させた場合の熱産生量と体温調節性生理反応の応答性について、秋の常温期と夏の高温期に調べた。熱産生量はTDN摂取に応じて直ちに反応し、常温期での平均熱産生量は明らかに摂取量に応じて変化した。しかし、高温期の熱産生量は常温期に比べて明らかに高く、摂取レベル間の差も常温期ほど明らかではなかった。飼料摂取と気温上昇に伴う体温調節性生理反応の発現順序は、直腸温と体幹部体表温の上昇につづく呼吸数の増加であり、放熱機能の稼動には、体熱量の増加や体温の上昇が必要不可欠であると考えられた。飼料摂取量と各反応レベルとは密接に関係しており、給与飼料量の制限によって体温の上昇をある程度抑制できるものと思われた。なお、心拍数と熱産生量との関係から、平均心拍数を用いた精度の高い熱産生量推定式を提示した(Y=-0.27+0.552X、r=0.95、PE(Sy・x/y^^-)=4.4%、Y=熱産生量(kJ/kg^<0.75>h、X=心拍数(/min))。日本家畜管理学会誌、32(1) : 1-9.1996.1995年10月9日受付1996年2月22日受理
著者
干場 秀雄 梅津 一孝
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌 (ISSN:13421131)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.47-52, 1999-11-10
被引用文献数
4

馬場牧場に設置された搾乳ロボットはオランダL社製の一搾乳ストール式であった。乳牛が連続して搾乳ストールに入室した時の平均搾乳能率は毎時9.5頭であった。しかし、一日24時間では総搾乳頭数は156頭で、それによる平均搾乳能率は毎時6.5頭で、その稼働率は72%であった。搾乳牛43頭の一日の搾乳回数は1回から6回迄あり、その平均搾乳回数は3.63回であった。その内、一日3回以上の多頻度搾乳牛は全体の93%を占めていた。乳牛の搾乳間隔は牛毎の期待乳量により規定されていたが、6回搾乳牛では平均4.0時間、5回搾乳牛では平均5.0時間、4回搾乳牛では平均6.3時間、3回搾乳牛では平均8.3時間であった。当場では今後さらに60頭に増し一日180頭の搾乳を目指している。日本家畜管理学会誌、35(2) : 47-52、1999 1999年9月受付1999年9月受理
著者
竹村 勇司 塗師 憲太郎 小笹 直子 原田 史 鎌田 壽彦 菅野 茂
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌 (ISSN:13421131)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.99-108, 2004-09-24
被引用文献数
2

発情周期にともなうヒツジの試情時の性行動の推移を明らかにする目的で、発情が正常に回帰している成雌3頭に対して成雄3頭による試情を行い、雄が雌に関心を示さなくなるかまたは乗駕に至るまでの時間(試情所要時間)ならびに試情中の雌の排尿行動,雄による性的探査行動および求愛行動の発現回数を測定した。試情所要時間は、おおむね発情同期から発情前期に向けて延長し、乗驚が生ずる発情日は短く、発情後期1日目に再び延長し以後元のレベルに短縮してゆく推移パターンが認められた。しかし、雌個体によって変化が明瞭なものと不明瞭なものがあった。変化が明瞭に現れた個体では、排尿行動の発現回数が試情所要時間の推移と同様の推移を示したほか、雄による陰部嗅ぎやフレーメン行動の発現回数の推移パターンにも同様の変化が認められた。一方、こうした変化が不明瞭であった雌個体に対して、雄は発声,舌出し,頚ひねり,前脚による蹴り上げ(前蹴り)などの求愛行動を多く発現し、前蹴り以外の3つの行動の発現回数は、発情同期から発情前期に向けて増加し、発情後期1日目に再び増加し以後元のレベルに滅少していく推移パターンが認められた。また、前蹴り行動は発情日に比較的多く発生が見られた。以上の結果から、試情時における性行動の発現とその発情周期にともなう推移には雄側よりも雌側の要因がより強い影響を及ぼすものと推測され、雄が雌の発情周期を判断する際には主に雌からの嗅覚情報によって判断する方法と、嗅覚情報が乏しい場合には雄は代償性に視覚、聴覚、触覚刺激を雌に与え、それらに対する雌の反応によって判断する方法があるものと推測された。