著者
今井 博久 濱砂 良一 山口 昌俊 篠原 久枝 藤井 良宜 廣岡 憲造
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

わが国において初めて高校生の無症候性クラミジア感染率を明らかにした。女子高校生は13.1%、男子高校生は6.7%であった。ティーンエイジャーにおける蔓延は間違いないことが示された。国際的に比較すると、わが国の感染率は欧米の国々より高く、おそらく先進諸国の中で最も感染が拡大していることが示唆された。今回の対象者の多くが高校2年生と3年生であった。東京都で実施された2002年の性経験率は男子高校生の3年生で37.3%、女子高校生の3年生で45.6%を報告されており、主に2年生と3年生を対象にした本調査の性経験率と東京都のそれとの間に大きな差はなかった。年齢別では、女子は16歳が高い感染率で17.3%であった。高校生における性感染症の予防介入教育を高校2年生3年生で実施しても時間的に遅く予防の効果が期待できず、おそらく、高校1年生あるいは中学3年生で実施することがより一層効果的であることを示唆している。男女ともに性的パートナー数が増えれば増えるほど感染率が高くなり、重要な危険因子と考えられた。女子では約300人弱の対象者が「5人以上のパートナー数」と回答し100人程度が感染していた。対象者数が小さくないので、感染率は概ね正確と判断してよいだろう。初性交年齢と感染率の関係を見ると、女子では年齢が低いほど感染率が高くなる傾向であった。14歳以下すなわち中学生のときに初性交を経験した女子高校生は、6人にひとりは感染していたことになる。性感染症の蔓延防止対策の実施に向けて(1)初めて具体的なデータが伴って若年者、特にティーンエイジャーの無症状の感染者が多いことが明らかになった、(2)対策の焦点を当てるべき対象者をティーンエイジャーとすべきである、(3)性別、年齢、危険因子が明らかになったので、こうしたデータに基づいた蔓延予防対策の施策を実施することが期待される、(4)今後は地元医師会、関係学会、学校教育関係者等が協力し合って緊急に対策を講じる、といったことが必要となろう。
著者
加藤 貴彦 今井 博久 今井 博久 濱砂 良一 中尾 裕之 篠原 久枝 加藤 貴彦
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

研究目的は、ある1つの県内の男女学生における無症候の性器クラミジア感染症の有病率と危険因子を明らかにすること、効果的な予防方法とスクリーニング法を検討することである。早朝初尿を検体として用い、近年開発され感度と特異度に優れたPCR方法により陽性率を検討した。第1段階として3176名(女性:1869名、男性:1307名)の対象者を得た調査を実施。大学および専修職業学校に在籍する無症候の性行為経験を有する18歳以上の男女学生における性器クラミジアの有病率は8.7%(女性:9.9%、男性:6.9%)であった。その後、対象者を増やして最終的に、無症候の男女学生10111名から尿サンプルと無記名自記式の性行動に関する質問票の回答を得た。有病率は、女子学生が9.6%、男子学生が6.7%であった。危険因子は、女子学生と男子学生で共通してあったのは、「これまでの性的パートナー数が4名以上」、「必ずしもコンドームを使用しない」、「過去6ヵ月間に2名以上の性的パートナーがいた」であった。女子学生だけの危険因子は「年齢」、男子学生だけのそれは「喫煙」になった。危険因子を用いたスクリーニングが効果的であることが示唆された。本研究班は、18歳以上の学生を対象にクラミジア感染の実態に関する研究を実施してきた。無症候の感染が概ね1割程度あることが明らかになったが、調査研究を進めて行く過程で18歳未満の若年者にも感染が拡大していることが示唆された。そこで、対象の拡大(年齢の引き下げ)を行い、ある県の男女高校生を対象に無症候のクラミジア感染の感染率を明らかにするための試験的な研究(パイロット研究)を実施した。男子高校生が7.3%、女子高校生が13.9%であった。これまでの全部の結果から考えると、わが国のクラミジア感染はかなり蔓延した状態であることが明らかになり、早急に蔓延防止の対策を立てる必要性が示唆された。
著者
江藤 望 篠原 久枝 河原 聡 菅沼 ひろ子
出版者
宮崎大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

有用な母乳哺育を阻害する要因の一つとして乳腺炎が挙げられる。このうち、乳のうっ滞に起因する乳腺炎は、スクロースを摂食することで炎症が重篤化する事を見いだした。これは、我々の知りうる限り食品成分が乳腺炎発症あるいは重篤化と関連ある事を実験的に確認した最初の例である。
著者
篠原 久仁子 笠原 真奈美 飯嶋 秀郎 小沼 真由美 木内 祐二 亀井 美和子
出版者
一般社団法人 日本くすりと糖尿病学会
雑誌
くすりと糖尿病 (ISSN:21876967)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.66-75, 2013-06-15 (Released:2014-08-06)
参考文献数
31

糖尿病治療の地域連携に薬局も参画し療養支援に取り組むために,医療機関と薬局の連携をはかり,積極的に糖尿病療養支援を実践することで得られる効果を評価した.研究デザインは,対照群を置いた前向き介入研究とし,対照群には通常どおりの服薬指導,介入群には通常の服薬指導に加え,患者の自己管理能力を高める療養指導を行った.連携と情報共有には,糖尿病連携手帳とお薬手帳を活用し,医療機関での診察・指導後に,薬局で療養に関する理解度を確認し,理解不十分な点について薬局で療養支援を行なった.研究期間は8 ヶ月間とし,評価項目は,薬および治療に対する理解度,QOL(SF-8),HbA1cとした.その結果,健康食品と薬との相互作用,糖尿病型,フットケアの理解度が介入群において有意に向上した.QOLの評価では「全体的健康感」が介入群において有意に改善した.介入群のHbA1cは,6 ヶ月後に0.6 %の低下となり,対照群に比べて有意な低下が認められ,8 ヶ月後も再上昇することなく維持された(p =0.016).医療機関と薬局とが,糖尿病連携手帳やお薬手帳を活用して情報共有・連携して行なう療養支援は,薬および治療に対する理解度の向上及びHbA1cの改善に有効であると考えられた.
著者
篠原 久枝 藤井 良宜 武方 壮一
出版者
宮崎大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

(1)アンケート調査の実施小学校、中学校における身体性の統一した名称を探るために、2004年度は幼稚園から中学校の保護者(関東、中国、九州地区)、小学生(関東、中国,九州地区)、中学生(九州地区)、高校生(関東、九州地区)、大学生(関東、近畿、中国、四国、九州地区)を対象にアンケート調査を実施した。調査に先立ち、2003年度の小学校教科書検定により今までの小学校保健の教科書で多く採用されていた「ペニス」「ワギナ」が文部科学省の学術用語集に準拠していないとの理由で、「陰茎」「膣」になったとの情報を得た。発達段階に相応しい名称として、男性名称は保護者回答では就学前〜小学校中学年で「おちんちん」、小学校高学年以上で「ペニス」が多くなっていたが、中学生回答では、小学生では「おちんちん」、中学生では「ペニス」が多くなっていた。女性名称については、保護者回答では就学前、小学校低学年で「おまんまん」「おまた」が多く、小学校中学年以上では「ワギナ」「膣」が多くなっていた。中学生回答では小学生、中学生ともに「大切なところ」「性器」が多くなっていた。自由記述として「名称1つで恥ずかしさを持つか、大切に思うか変わるので、自分の身体に責任をもてきちんと向き合える外性器やプライベートゾーンが良い」などの意見が見られた。(2)第2回アジア性教育学術交流会参加(2004年8月20日〜25日、台湾高雄市)日本、台湾、中国、香港、マレーシア、アメリカ、オーストラリアから約300名の参加があり、性教育の実践プログラムのみならず、「性と医療」「日本におけるDV加害者プログラム」などの幅広い知見を得ることが出来た。特に台湾の発表では、「政府による2つの性教育実践モデル」(エネルギー分布モデルと濾過器モデル)、「SAR(Sexual Attitude Restructuring)の応用」、「全年齢における全方位科学的性教育の概念」などの新しい試みが紹介された。
著者
佐藤 衆介 西脇 亜也 大竹 秀男 篠原 久
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌 (ISSN:13421131)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.95-104, 1999-03-03 (Released:2017-10-03)
参考文献数
35
被引用文献数
1

岩手県の低投入型放牧酪農家2戸(N牧場、K牧場)の家畜福祉性を、主として乳牛の行動の調査結果に基づき、乳生産や疾病記録を加味して評価した。両牧場とも急傾斜地にあり、面積はN、K牧場とそれぞれ46ha、40haで、改良草地放牧地、野草林間放牧地および採草地からなっていた。N牧場には、加えて採草放牧兼用地があった。両牧場ともまき牛繁殖で、放牧地での自然分娩であった。N牧場では2ヵ月齢までの自然哺乳、K牧場では3ヵ月齢まで人工哺乳であった。両牧場ともに、無施肥による放牧地管理をし、フスマやビートパルプといった農産副産物の他には、濃厚飼料は無給与という低投入型で、牛乳を4,000kg/頭/年程度生産していた。N牧場の乳牛では、全行動レパートリーが出現したが、6月の食草・樹葉摂食行動は1日当たり平均11.0時間となり、それは過去の報告例の上限に近い水準であった。強制離乳子牛1頭に模擬舌遊び行動が観察された他には、異常行動は観察されなかった。K牧場では、人工哺乳のため母子行動は発現できなかった。K牧場での全摂食行動(食草、樹葉摂食、給与飼料摂食)は6月および7月には昼夜を問わず間断的にみられ、それぞれ1日当たり平均52時間および82時間であった。しかし、9月の食草・樹葉摂食時間は2.8時間と極端に短くなり、特にシバヘの依存が急激に低下した。N牧場では1994年の治療回数は2回で、捻挫と子牛の奇形による難産が理由であった。K牧場では1995年には下痢子牛3頭、後産停滞2頭、起立不能症1頭で治療を要した。両牧場とも、ウシの疾病率が低く、さらに異常行動は1頭を除き発現せず、行動レパートリーのほとんどが出現し、各行動時間配分も通常範囲内にあり、行動的にもほぼ正常であり、家畜福祉レベルは平均的な酪農家に比べて高いと判断された。しかし、N牧場では、強制離乳された子牛のストレス性の軽減が、K牧場では晩夏以降の草生の改善が、さらなる家畜福祉性改善に必要であると示唆された。日本家畜管理学会誌、34(3) : 95-104、1999 1998年4月16日受付1999年1月7日受理