著者
小森 広嗣 広部 誠一 新井 真理 東間 未来 大場 豪 大野 幸恵 鎌形 正一郎 林 奐
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.361-364, 2011
被引用文献数
1

症例は4歳女児,生後10か月時に脂肪組織を内容とする白線ヘルニアと診断され,経過観察にて軽快しないため手術を行う方針とした.ヘルニア門は剣状突起と臍のほぼ中間点で,1×1cm大の腫瘤として触知した.手術は腹腔鏡下でヘルニア門の直接閉鎖を行った.臍下に5mmカメラ・ポート,左側腹部に5mmワーキング・ポートを挿入.肝円索に覆われた1×1cmのヘルニア門を同定,ヘルニア内容は腹膜前脂肪織であった.ヘルニア門の閉鎖にラパヘルクロージャーを用い同じ穿刺部から左右に向きを変えて挿入したラパヘルクロージャー針で糸をループ状に左右の腹直筋に運針し,皮下で結紮固定した.ヘルニア門を含む上下2cmの距離を左右の腹直筋を非吸収糸にて計7針で縫合閉鎖した.術後経過は良好で,手技的に安全,簡便で,整容性においても満足な結果であった.
著者
野中 杏栄 山口 宗之 北原 信三 小林 格 倉岡 由美子 中村 博志 渡邊 聖 工藤 玄恵
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.894-899, 1993

腸回転異常症における中腸軸捻転により広範囲腸管壊死性変化をきたした日齢13日男児に,初回手術から18時間後に Second look operation を施行した.罹患腸管の著しい血行改善がみられ,腸切除することなく閉腹した.術後,腸管通過障害が長く続き第23病日目に腸閉塞症の診断の下に再々開腹術を施行し,回腸の一部が細く,狭窄および閉塞が認められたので約40cmの回腸を切除した.切除腸管の組織検査では腸管壁の微小循環障害による腸管の狭窄および閉塞が数ヶ所に認められた.病理組織所見による血流の立場からみて,血流の最も遠い部分に相当すると考えられる腸間膜付着部の対側の粘膜部分が炎症性肉芽組織や線維瘢痕組織に置換されていた.初回手術により血流遮断が解除されても回復の機会を失ったり,遅れてしまった結果と考えられた.
著者
三松 謙司 大井田 尚継 西尾 知 堀井 有尚 野中 倫明 越永 従道 宗像 敬明 富田 涼一 天野 定雄 福澤 正洋
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.1023-1028, 1998
被引用文献数
13 14

目的 : 1971年1月から1996年12月までの25年間に経験した小児腸重積症713例について年齢, 性差, 症状, 診断, 治療方法, そして重積型式, 重積原因疾患, 再発に関して臨床的に検討した.結果 : 年齢は平均15.2カ月で男児に多く, 症状では, 腹痛, 嘔吐, 血便の三主徴が半数に認められた.非観血的整復率は平均61.0%であったが, 発症から12時間以内では平均83.7%と高く, 早期診断, 早期治療が重要であると思われた.観血的整復術施行例において, Hutchinson法のみ施行した症例が71.2%, 腸管切除例は11.5%であった.重積型式は, 回腸結腸型, 回腸回腸結腸型が多く, また重積原因として器質性疾患によるものは2.4%と少なく, 器質性疾患のうちではMeckel憩室が10例と最も多かった.結論 : 再発率は観血的整復後の4.0%に比べ, 非観血的整復後は10.0%であった.このことは, 高圧浣腸による不完全整復と器質性疾患が関与している可能性が考えられた.
著者
伊藤 伸一 小野 充一 多村 幸之進 長江 逸郎 野牛 道晃 只友 秀樹 青木 達哉 小柳 〓久
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.35-40, 1999

jugular phlebectasia(本症)はまれな疾患であり和文名称も頸静脈拡張症, 静脈脈瘤, 頸静脈奇形, 真性血液嚢胞と統一されていない.また, 本症はその概念を理解されていなければ, 頸部リンパ管腫, 側頸嚢腫, 正中頸嚢腫および他の頸部腫瘤との鑑別に難渋する可能性がある.今回, われわれが経験したのは8カ月の女児で, 患者は頸部の巨大軟性腫瘤でリンパ管腫疑いで当院に入院となった.入院時所見として頸部腫瘤は患児の怒責, 号泣で増大する特徴を有し, 局在診断には超音波, CTおよびMRI, 確定診断には直接穿刺法が有用であった.しかし, 穿刺による血栓形成には十分留意する必要があった.本症の病因については明らかでないが, 先天的または後天的な血管の脆弱化や構造異常および頸部の解剖学的要因が関与していると思われる.
著者
甲谷 孝史 高橋 広 堀内 淳 藤原 和博 河内 寛治
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.335-340, 1998
被引用文献数
3

症例は生後2日の男児で, 主訴は嘔吐, 血便.現病歴は1997年1月7日在胎36週3190 g, 帝王切開で出生した.生直後に胎便排泄はみられた.生後8時間の哺乳後より胆汁性嘔吐を認め, 嘔吐, 血便が続くため1月9日当院小児科より当科に紹介入院する.腹部単純X線の立位像で, 鏡面形成像があり, 虚血性変化を伴う下部消化管の通過障害で絞扼性イレウスの疑いの術前診断のもと, 1997年1月9日緊急手術を行った.回腸末端より約40 cm口側の腸間膜に2×3 cmの裂孔が存在し, 裂孔内に回腸末端より約20 cm口側の回腸が約30 cm入り, 嵌入・捻転した回腸腸間膜裂孔ヘルニアによる絞扼性イレウスであった.壊死部を含め25 cmの回腸を切除, 端々吻合術を行った.術後経過は良好であった.本疾患は術前に確定診断が困難で, 新生児例でもイレウス症状を呈する症例は本疾患も念頭におく必要性があると考えられた.
著者
大畠 雅之 徳永 隆幸 吉田 拓哉 望月 響子 永安 武
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.7, pp.1151-1155, 2010
参考文献数
8

瘻孔再発を繰り返した直腸尿道瘻術後の高度排便障害に多孔性ポリウレタン肛門用装具(アナルプラグ)使用でQOLの改善が得られた症例を経験したので報告する.症例は10歳男児.直腸尿道瘻の診断で生後9か月に根治術を受けたが術後直腸尿道瘻が再発した.3回の瘻孔閉鎖術不成功の後,7歳5か月時に腹仙骨会陰式Endorectal pul-through法による直腸尿道瘻閉鎖が行われた.その後難治性の便失禁に陥り,人工肛門,MACE法による排便管理を予定したが家族の希望で多孔性ポリウレタン肛門用装具の使用を試みた.使用開始当初の肛門違和感克服後便失禁症状の著明な改善がみられた.成長期の小児にとってアナルプラグの長期効果は不明であるが,肉体・精神発達時期の小児にとって一時的とはいえ失禁の不安から解放される時期を提供できる有効な治療法の一つと思われる.