著者
川久保 尚徳 林田 真 松浦 俊治 田口 智章
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.931-936, 2012
参考文献数
21

症例は3歳男児,墓石の下敷きになっている所を発見された.腹部造影CT検査で高度肝損傷と膵損傷を認めたため,加療目的に当院に搬送された.出血コントロールのため緊急transcatheter arterial embolization (TAE)を行い保存的に経過をみたが,その後肝内胆汁性嚢胞と膵仮性嚢胞を合併したため,経皮的肝嚢胞ドレナージ術および経皮経胃膵嚢胞ドレナージ術を施行した.肝嚢胞および膵仮性嚢胞はともに縮小した.ドレナージチューブ抜去後も肝嚢胞および膵仮性嚢胞の再形成を認めず,受傷後39日目に退院となった.小児における肝外傷および膵外傷の治療方針に関しては一定の見解は出ておらず,若干の文献的考察を加え報告する.
著者
橋詰 直樹 八木 実 石井 信二 浅桐 公男 深堀 優 七種 伸行 吉田 索 升井 大介 坂本 早季 恵紙 英昭
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.1093-1099, 2015-10-20 (Released:2015-10-20)
参考文献数
22

機能性ディスペスシアに対し漢方療法を施行し,胃運動機能の観点からその有効性が認められた1 例を経験した.症例は5 歳男児.急性胃腸炎症状軽快後より腹部膨満,心窩部痛,嘔吐を認め近医を受診した.約50 日間摂取後の嘔吐が続き,発症前より3.6 kg の体重減少を認めた.上部消化管内視鏡検査では軽度の胃炎が認められ,画像検査では器質的疾患は認められず,感染性胃腸炎を契機とした機能性ディスペスシアと診断した.胃運動機能検査では13C 酢酸および13C オクタン酸呼気胃排出機能検査,胃電図検査を用いて評価した.入院後アコチアミドとH2 ブロッカーにて治療を開始したが,薬剤性肝機能障害を認め,六君子湯に変更した.内服開始後も水分摂取にて上腹部膨満が認められたため茯苓飲合半夏厚朴湯を追加した.症状改善し固形食摂取可能となった.4 か月間の内服治療により正常な胃排出機能が確認され廃薬とし,廃薬後も経過良好である.
著者
梅田 隆司 高橋 英夫 杉藤 徹志 勝野 伸介 石川 薫 下郷 和雄 大岩 伊知郎 鈴木 千鶴子 鬼頭 修 戸崎 洋子
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.311-314, 1996
参考文献数
23
被引用文献数
6

出生前に診断され各科立ち会いのもとで出生直後から管理,救命できた上顎体の1例を経験したので報告する.症例は在胎29週0日当院産婦人科に紹介され入院した.胎児超音波検査で胎児顎部に塊状に突出した径約6cmの腫瘤をみとめ各科への紹介と妊娠継続の方針が立てられた.在胎32週4日,娩出直後の呼吸管理を準備して予定帝王切開が行われた.胎児娩出後も臍帯は結紮せず,6分後に気管内挿管された後に臍帯結紮・胎盤娩出が行われた.気管内挿管状態では腫瘤に対する処置が困難なため即時気管切開を施行した.その後,腫瘍茎部にゴムによる結紮術が施行された.術後患児は6日間呼吸管理された.腫瘍は結紮後徐々に縮小,壊死に陥り生後6日ほぼ脱落状態で切除した.生後25日には残存腫瘍を追加切除し,生後44日気管カニューレを抜去し,生後66日退院した,
著者
河野 美幸 梶本 照穂 小沼 邦男 野崎外 茂次 伊川 廣道 北谷 秀樹 和田 知久 川中 武司 中村 紘一郎
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.7, pp.1132-1137, 1991-12-20 (Released:2017-01-01)

The normal position of the anus is not defined objectively. Using a simple technique, the anal position index was designed to define the position of anus in neonates and infants as follows: the ratio of the distance between the scrotum and the anus to the distance between the scrotum and the coccyx for males and the distance between the vagina and the anus to the distance between the vagina and the coccyx for females. The anal position index in neonates was not affected by body weight. In male infants, the anal position index was not affected by age. But in female infants, the anal position index decreased from neonatal period to three months of age but no significant difference was demonstrated from three months of age to twelve months of age. We think that the anal position index is useful as an objective parameter to assess the localization of the anus.
著者
出口 幸一 吉田 洋 梅田 聡 野口 侑記 田中 康博
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.81-85, 2014-02-20 (Released:2014-02-20)
参考文献数
11

会陰部杭創は転落・転倒などにより生じる稀な鈍的外傷である.我々は2 例の小児会陰部杭創を経験したので報告する.〈症例1〉9 歳男児.入浴中風呂の湯かき棒(樹脂製)が肛門に刺入した.自ら抜去したが,出血,腹痛が持続するため翌朝当科受診した.CT 検査で腹水,遊離ガス像を認め,会陰部杭創による穿孔性腹膜炎の診断で緊急手術を施行した.開腹すると直腸前壁が穿孔していた.穿孔部は縫合閉鎖し,S 状結腸に人工肛門を造設した.〈症例2〉3 歳女児.箸(木製)を持って転倒した際,箸が右会陰部に刺入した.CT 検査で異物を骨盤腔内に認めたが,明らかな臓器損傷は認めなかったため,X 線透視下に異物を抜去した.折れた箸先端が7 cm 刺入していた.創部を縫合閉鎖し第5 病日に退院した.会陰部杭創では症例により損傷臓器とその程度がさまざまであり,受診後速やかにそれらを把握したうえで,治療方針を決定することが重要である.
著者
鈴村 和大 飯干 泰彦 澤井 利夫 田附 裕子 関 保二 藤元 治朗
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.678-681, 2006
参考文献数
9
被引用文献数
2

小児の刺杭創は稀である.今回われわれは肛門より小腸脱出をきたした小児の直腸刺杭創の1例を経験したので報告する.症例は8歳男児.入浴中,シュノーケルで遊んでいたところ転倒し,肛門に突き刺さり,腸管が脱出しているとのことで当科受診となった.来院時,肛門より長さ約30cmの小腸が脱出しており,うっ血をきたしていたため用手的に直腸内に還納した.大腸以外の臓器損傷を精査すべく尿検査,CT検査を施行するも,明らかな損傷を思わす所見はなかった.大腸損傷の診断で緊急開腹術施行したところ,損傷部は直腸で挫滅の程度は軽度であり,また腹腔内の汚染も軽度であったため,人工肛門を造設せず1期的に縫合閉鎖した.経過は良好で術後17日目に退院した.文献的に検索しえた本邦小児報告例49例について検討を加えた.刺杭創は受傷状況を十分に把握し,刺入路を明確にしたうえで,損傷臓器を的確に診断することが重要である.
著者
韮澤 融司 伊藤 泰雄 薩摩林 恭子 田中 裕之 坪井 美香子 河野 修一
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.285-289, 1996-04-20 (Released:2017-01-01)
参考文献数
12

肥満児では正常な大きさの陰茎が脂肪組織のため短小に見えることがあるが,この場合には外科治療の必要はない.一方,埋没陰茎は陰茎海綿体が埋没し,真性包茎を合併しているため正常な陰茎皮膚が形成されておらず外科治療の対象となる.過去6年間で45例の包茎手術を行い,そのうち10例か埋没陰茎を合併していた.これらの症例に対し包茎の手術後,陰茎の背側に Z字型切開,腹側に U字型切開を加え,陰茎と腹壁の間の線維性索状物を完全に切離した後,陰茎を体外に牽引しつつ背側は Z形成を行い,腹側の U字型切開部を Y字型に縫合することにより良好な結果を得た.埋没陰茎に対して包茎の手術のみを行ったのでは陰茎幹は形成されず将来に大きな障害を残すことになる.本法は手技も簡単であり,手術後は健常児とかわりのない外観を示し,勃起も正常となる.埋没陰茎を治療する際,包茎の手術のみにとどめず陰茎の形成も併せて行う必要がある.
著者
井上 隆 谷口 聡 桂 春作 榎 忠彦 野島 真治 濱野 公一
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.667-670, 2003
参考文献数
5
被引用文献数
1

症例は5歳8ヵ月の女児.4歳4ヵ月時に強アルカリ(オルトケイ酸ナトリウム溶液)を誤飲した.その後,合併した食道狭窄に対して4歳6ヵ月時よりバルーン拡張術を合計20回施行したが拡張の継続は得られず,根治術として開腹で食道亜全摘術を施行した.食道再建は非開胸下に大彎側胃管を後縦隔経路で吊り上げ,頚部で食道胃管吻合を施行した.術後はまだ1年3ヵ月と短期間ではあるが,大きな合併症もなく一般生活も支障なく送れており,経過は良好である.
著者
金沢 幸夫 吉野 泰啓 佐藤 志以樹 佐藤 直 井上 仁 元木 良一
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.191-197, 1995-04-20 (Released:2017-01-01)
参考文献数
18
被引用文献数
1

抗凝固剤としてメシル酸ナファモスタット (FUT) を用い,Extracorporeal membrane oxygenation (ECMO) を行った左側先天性横隔膜ヘルニア症例を経験した. 胎児診断例で生後4時間にヘルニア修復術を行った. 生後26時間に肺胞気動脈血酸案分圧格差を指標に ECMO を開始した. ECMO 開始後30,33時間に腹腔内出血のため開腹止血術を行った. 更に72時間後に胸腔内出血がみられ,開胸止血術を行った. この手術に先立ち,出血制御のため抗凝固剤をヘパリンにより FUT に変更した. その後,FUT を2.0〜3.4mg/kg/h. で投与し,活性凝固時間を200秒前後に維持した. FUT 投与によると思われる高カリウム血症がみられたが,カリウム投与量を減じることで対処可能であった. FUT を用いた ECMO を出血なく4日間継続でき,呼吸状態は改善し,生後8日に ECMO より離脱した. 以上の経験より,FUT は出血傾向をきたしにくく,ECMO 施行中の抗凝固剤として有用と考えられた.