- 著者
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中川 敏宏
- 出版者
- 専修大学法科大学院
- 雑誌
- 専修ロージャーナル (ISSN:18806708)
- 巻号頁・発行日
- no.8, pp.153-166, 2013-01
2012年5月24日,韓国大法院は,日本による植民地統治下において三菱重工(旧三菱)・不二越により強制徴用を受けたとして,その被用者らが同会社を相手に損害賠償と未払賃金の支払いを請求した事件において,原審である釜山高等法院が同じ請求を棄却した日本における判決(最高裁で本件原告らが敗訴確定)を受け入れ原告らの請求を棄却したのに対して,その原判決を破棄し,釜山高等法院に事件を差し戻した。この日本企業に対する戦後補償の可能性を認めた大法院判決は,韓国のマスコミでも大きく取り上げられ,さらなる追加訴訟を提起する動きも伝えられている。その意味で,本判決は,韓国において,対日本企業のみならず対日本国の戦後賠償問題に関し象徴的な意味を有するものになるであろう。本判決については,今後わが国でも様々な観点からの検証・分析が求められるが,そのような多角的な検証・分析は訳者の能力の域を出ており,ここでは,本判決の重要性に鑑み,公表されている三菱重工に対する訴訟の大法院判決を取り上げ,判決文の翻訳を試みたい。翻訳に際して,できるかぎり原文のニュアンスを尊重したが,日本人読者への便宜から,日本における一般的呼称等に従っている箇所がある(例えば,韓国と日本を指す際,韓国語では「韓日」と表現されるところは「日韓」と訳出している)。