著者
日野 稔彦
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.178-186, 1960-11-25

福岡市周辺のモザイク病ササゲからはササゲモザイクウィルスとキウリモザイクウィルスとが分離されるが, 主病原ウィルスはササゲモザイクウィルスである。ササゲモザイクウィルスはレンゲ, アズキ, タチナタマメ, ライマメ, ジュウロクササゲ, ハタササゲにモザイク病を起し, またエビスグサに黒色の壊死斑点, ソラマメに赤褐色斑点を作り, インゲンは品種によって黄色斑点を生ずる。クサネム, ナタマメ, パープルベッチは無病徴寄主である。ダイズ, エンドウ, ルーピン, クローバなどその他のマメ科植物26種,ダチュラ, タバコ, 百日草などは感染しない。このウィルスは汁液, モモアカアブラムシ, マメアブラムシで伝染する。モモアカアブラムシの獲得最短時間および接種最短時間はおのおの10〜15秒である。種子では極めて伝染し難く, 系統VQ-Oではツルナシ十八ササゲで0.26% の伝染率を示した。 系統 112 および系統 117 は種子伝染したモザイク病ササゲから分離した系統であるが, 系統 VQ-0 に比し種子伝染が容易であるとは認められない。このウィルスは 55〜60℃10分加熱, 1,000〜2,500 倍稀釈, 20℃. 12〜24時間処理で不活性化する。
著者
田中 孝 加藤 智弘
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.487-489, 1999-08-25
被引用文献数
3

We investigated the distribution of Kouyawarabi plants (Onoclea sensibilis L.) infested with Pseudomonas plantarii in Yamagata prefecture and confirmed survival activity of the overwintered bacterium in the plants. Of 239 samples collected from 19 locations in the prefecture, 77 leaf samples were infested with the bacterium. The leaf samples collected from Mogami-machi were highly infested with P. plantarii. High infestation rate of bacterial seedling blight of rice was also observed in Mogami-machi area. The plants were artificially inoculated with the organism and exposed outdoors in summer. In the following spring, the bacteria were re-isolated from the leaves, stems and rhizomes of the plants. The pathogenic bacteria were successfully re-isolated from the overwintered whole plants at the level of 1.2×10^4-3.4×10^6cfu/g. Because the organism appears to survive in Kouyawarabi plants under natural conditions in Yamagata prefecture, the plants are considered to be an important infection source of the disease.
著者
大木 理 井上 忠男
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.557-561, 1987-10-25
被引用文献数
1

微生物等の培地用として市販されている Gelrite の二重拡散法担体としての利用を検討した。CMV の純化ウイルスと抗血清を用い, 0.1Mトリス塩酸緩衝液 PH 8.0, 0.85% NaCl, 0.2% NaN_3 に 0.15% Gelrite, 0.2% MgCl_2・6H_2O, 0.3% SDS を添加したゲル (スライドグラスあたり 1.5 ml) を使って同条件の 0.5%精製寒天ゲルと比較したところ, Gelrite ゲルでは室温で 3〜5時間で結果を判定でき, 約50 ng/mlの純化 CMV, 感染タバコ葉の256倍希釈汁液中の CMV を検出でき, 所要時間は寒天ゲルの約半分で検出精度は100倍程度すぐれていることが分かった。沈降帯は TMV 等の長形ウイルスでも明瞭に観察されたのでウイルス抗原の検出診断に広く利用できるものと考えられる。また透明度が高いため, エピトープ分析などにも有用と思われる。
著者
Upadhyay Rajendra PAVGI M.S.
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.176-180, 1967-06-30
被引用文献数
1

Taphrina maculans Butlerによるウコン(Curcuma longa L.)斑点病の発生程度は, 環境條件と土壌中の感染源の量とに影響されることが示された。葉令により感受性に多少の差異は認められたが, 葉は長い間罹病性であって湿度條件に恵まれている間は感染がおこるので, 葉令は重要な意味をもたなくなる。病気の発生時期の早さや激しさは, 土壌中の有効感染源の密度によって左右される。当地方で8〜9月に多い25〜30℃の気温と多湿で曇りの天候は本病の激発を助長する。
著者
鈴木 信弘 白子 幸男 江原 淑夫
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.337-341, 1990-07-25
被引用文献数
5

Non-precoated indirect ELISAあるいはelectroblot ELISAを用いてウイルスを罹病葉粗汁液より検出する場合, 宿主成分との非特異反応が生じることがある。本研究では, ズッキーニ黄斑モザイクウィルス(ZYMV)感染カボチャ葉を用い, 非特異反応を抑えるための簡便な方法について検討した。健全カボチャ葉1gを10mlの抗血清希釈用緩衝液(20mM Tris-HCl, 150mM NaCl, 0.05% NaN_3, 0.05% Tween20, pH7.5)中で磨砕し, 搾汁液を5,000×gで5分間遠心した。得られた上清で未分画ZYMV抗血清を500倍希釈し, ただちに処理することによって, ZYMV検出感度を損なうことなく非特異反応をほぼ完全に除くことが可能であった。本法は他の未分画抗血清を用いる場合にも有効と考えられる。
著者
池田 成志 豊田 秀吉 吉田 健二 是枝 一春 茶谷 和行 大内 成志
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.780-783, 1992-12-25
被引用文献数
1

Sphaerotheca 属うどんこ病菌の防除に関する基礎的研究として, 本研究ではキチナーゼ処理によって本菌の吸器が分解されるかどうかについて検討を加えた。メロンの第一本葉, イチゴおよびバラの新葉を材料に, それぞれS. fuliginea, S. humuli および S.pannosa の分生胞子を接種し, 4日後に接種葉を0.1%キチナーゼ液に浸漬した。その結果, 宿主細胞には顕著な変化が観察されなかったのに対して, いずれのうどんこ病菌の吸器においても, 処理1.5時間後には部分的な分解が観察され, 3時間後には約80%の吸器が完全に分解された。以上の結果から, Sphaerotheca 属うどんこ病菌の吸器細胞壁はキチンを主要骨格にもつものと考えた。
著者
松本 純一 岡村 奈央子 大木 理
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.13-15, 1997-02-25

大阪府堺市で採集したスターチスとルドベキアのモザイク症状株からそれぞれ2種類の小球状ウイルスが分離された。宿主範囲と病徴, アブラムシ伝搬, 血清反応などを調査した。径約30nmの2分離株はキュウリなどの病徴, 2本鎖RNAの分析, 血清反応よりキュウリモザイクウイルス(CMV)と同定した。径約27nmの2分離株はChenopodium quinoaなどに全身感染したこと, 感染細胞内でウイルス粒子の集塊と膜状封入体が観察されたこと, 血清反応よりソラマメウイルトウイルス(BBWV)と同定した。なお, これらの分離株はいずれも原寄主にモザイク症状を再現した。スターチスにおけるBBWV, ルドベキアにおけるCMVとBBWVの発生の確認はわが国最初と考えるので, 病名をそれぞれスターチスウイルス病, ルドベキアウイルス病としたい。
著者
高野 喜八郎
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, 2003-02-25

2001年6月,富山県花総合センターの温室栽培のシンゴニウムSyngonium podophyllum Schottの葉に,濃褐色の縁取りのある褐色斑の病害が発生した.類円形の病斑内部は灰褐色で,表面に微小黒粒点(分生子層)を散生して,破けやすい.濃褐色の輪紋を生じ,病斑が拡大して葉身が歪み,巻曲することもあり,葉先きが褐色V字状に枯れ込むことも多い.健病の境界は明瞭で,周りが黄化することもある.病斑からColletotrichum菌が単離され,この培養菌を接種して原病徴を再現し,接種薗を再分離して,カラー等にも病原性を示した.分生子層は最初は表皮下にあってレンズ状であるが,後には丘状に盛り上がり,径100〜260μm.褐色の剛毛を有するが少なく,20〜70×3.5〜4.5μm.分生子は無色,単胞,両端が丸い円筒形で11.5〜22.5×4.8〜6.3μm(17.6×5.3μm).付着器は燻った褐色で卵形,棍棒状かやや不正形,6.9〜10.3×4.9〜7.9μm(8.8×6.3μm).以上から本病原菌をColletotrichum gloeosporioides(Penzig)Penzig et Saccardoと同定した.本病をシンゴニウム炭疽病と呼称したい.
著者
加藤 寿郎 山口 昭
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.117-123, 1971-03-30

オオムギ斑葉モザイクウイルス(BSMV)に感染したオオムギ(品種・横綱)の粗汁液(15,000×g, 30分上清)をポリアクリルアミドゲルを支持体とする電気泳動にかけると, 健全対照には見られない2群のバンド(SA 1, SA 2)が得られた。これらのバンドに含まれる物質は, 105,000×gの遠心によっても沈でんしない。また, これらの物質は, 葉緑体中のfraction Iたんぱくよりも易動度が小さく, SA 1, SA 2ともBSMV抗血清と反応する。BSMVたんぱくの電気泳動によって, SA 1およびSA 2に相当するバンドが得られる。SA 1をとり出して再び電気泳動するとSA 2が分離してくる。したがって, ウイルス感染によって生じたこれらの可溶性抗原は, ウイルスたんぱくが種々の程度に凝集したものと考えられる。感染が進むとfraction Iたんぱくは減少する。接種した第1葉では, えそ斑点が現われる接種後3日めに可溶性抗原が検出されるが, 感染が進むにつれて減少し, 接種後8日には認められなくなる。これに反して, 第2葉では, 葉基部にmosaicが見えはじめる接種後4 ,5日めにはじめて可溶性抗原およびウイルスが検出され, その後感染の進行にともなって両者とも増加する。ウイルス合成における可溶性抗原の意義については結論が得られなかったが, 第1葉と第2葉での可溶性抗原の消長の違いは, 両者での病徴の型およびウイルス含量の差と関係があるものと思われる。