著者
窪田 昌春 我孫子 和雄 石井 正義
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.437-440, 1996-08-25
被引用文献数
2

In October 1994, sprouting inhibition of anemone (Anemone coronaria L.) tuber was found at Tsu city. One species of Rhizopus was isolated from the affected tuber. The morphological characteristics and optimum temperature of mycelial growth of the fungus closely fit the C.M.I. descriptions of Rhizopus oryzae Went et Prinsen Geerligs. The pathogenicity of this isolate to anemone tubers was confirmed and the disease was named tuber rot. This is the first report of tuber rot of anemone caused by R. oryzae in Japan.
著者
芹沢 拙夫 市川 健 瀧川 雄一 露無 慎二 後藤 正夫
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.427-436, 1989-10-25
被引用文献数
3

1984年ころより, 静岡県においてキウイフルーツ(Actinidia Chinensis)に新しい細菌病の発生が認められた。本病の病徴は大きく二つの相に分けられた。一つは冬季から春先にかけて発生するもので, 樹幹や枝に亀裂を生じ, 赤褐色の隘出物が認められる。同時に, 外観は健全な腋芽や葉痕, 剪定痕, 枝の分岐点などに白色ないし赤褐色の細菌菌泥の隘出も認められる。第二は晩春から初夏にかけてで, 新たに展開した葉にまず水浸状斑を形成し, やがて拡大して大きさ2〜3mmの褐色の角斑となり黄色のハローを伴う。同時に, 新梢には亀裂を生じて潰瘍状を呈し, やがて先端は萎凋枯死する。花芽にも感染が認められ, 枯死あるいは花腐れ症状を呈する。葉や新梢, 花等の病斑上にも白色の菌泥が認められる。これらの病組織および菌泥より分離を行ったところ, つねに一定の白色細菌が得られた。分離細菌は有傷接種, 無傷接種ともにキウイフルーツおよびサルナシ(A.arguta)に対して強い病原性を有しており, 自然感染の病徴を再現した。葉位別にキウイフルーツ葉の感受性を調べたところ, 成熟直前のものが最も感受性が高く, より若いものや完全に成熟したものでは感受性が低下した。気象条件と本病の発生について考察した結果, 低温, 強風, 降雨が発病を助長しているものと思われた。薬剤による防除効果を検討した結果, ストマイ剤, カスガマイシン剤, 銅剤のいずれも有効であった。本病の病名をキウイフルーツかいよう病(bacterial canker of kiwifruit)としたい。
著者
GNANAMANICKAM S.S. MEW T.W.
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.380-385, 1992-07-25
被引用文献数
4

いもち病は熱帯地方の畑栽培稲作の大きな障害である。本報告は, 薬剤に代わる病害防除法として蛍光性Pseudomonas細菌の利用を示唆した。本細菌はいもち病菌分生胞子の発芽を抑制する。FeCl_3 を培地に加えても効力が減退しないので, 抑制の機作はシデロフォア形成によるものではなく, 抗いもち病菌性抗生物質の生産によるものと思われる。本細菌液へのイネ種子の浸漬および立毛苗への細菌の散布によって葉いもち病, 穂首いもち病を軽減することができる。
著者
Kyeremeh Ampaabeng Gyedu 菊本 敏雄 荘 敦尭 郡司 祐一 高原 吉幸
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.171-176, 1999-04-25
被引用文献数
1

銅剤の減農薬に資するため, 銅剤との併用可能な銅耐性微生物農薬の開発を目的として開発中の3菌株を親菌株として用いた。軟腐病菌の鑑別と選択性を加味した変法PDA培地を考案した。供試菌の懸濁液(1O^10 cfu/ml) l mlをペトリ皿にとり, 硫酸銅加用変法PDA培地(1.3〜3.l mM)を流し込み, 硫酸銅耐性の自然突然変異菌を分離した。この操作を硫酸銅の濃度を上げながら3回繰り返し, 3.8〜6.3 mMの硫酸銅加用PDA培地に生育する菌株を分離することができた。銅耐性は分離操作を繰り返すごとに漸増した。これらの硫酸銅耐性菌株のバクテリオシン活性を確認したのち, 銅水和剤, ジチアノン・銅水和剤, および有機銅水和剤に対する耐性を調べた。そして前記の操作を繰り返し銅剤耐性菌の分離を試みた。ジチアノン・銅水和剤, および銅水和剤(水酸化第二銅)耐性菌を分離することはできなかったが銅水和剤(塩基性硫酸銅)では500倍, 有機銅水和剤では250倍の希釈になるよう調整したPDA培地に生育する耐性菌が分離できた。この有機銅水和剤耐性菌とその親菌株を用い, 有機銅水和剤の600, 1200および1800倍の水溶液中における生存率を比較した結果, 生存率は明らかに耐性菌の方で高くなった。
著者
久能 均 黒田 克利 豊田 和弘 山岡 直人 小林 一成
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.57-60, 1991-01-25
被引用文献数
2

Erysiphe graminis の分生胞子をオオムギ子葉鞘細胞に接種した(一次菌)。さらに同一細胞上に, 別の子葉鞘上で発芽させた同菌の発芽胞子を細針で移植接種した(二次菌)。ー次菌が二次菌よりも0〜5時間早く侵入を開始すると二次菌の吸器形成率は約80%, またこの時間差が6時間以上になると約93%に上昇した。針移植した対照区の吸器形成率は約63%であったので,ー次菌の侵入によって誘導される受容性は同じ菌の二次菌にも有効であると結論された。この受容性は一次菌が吸器形成に成功した細胞でのみ誘導された。一細胞で誘導された受容性は, 一次菌が侵入を開始してから少なくとも9.5時間までには隣接細胞に移行しなかった。
著者
福田 健二 鈴木 和夫
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.625-628, 1988-12-25
被引用文献数
2

材線虫病による年越し枯れのアカマツについて, 病徴の進展に伴う材部の電気抵抗値および葉の水分生理特性の変化について検討を加えた。材部の電気抵抗値は, 秋から冬にかけてはほとんどが正常な値を示したが, 感染翌年の春〜初夏にかけて180kΩ未満の値をとるものが多く, 春季の村内におけるミクロフロラの変化が示唆された。P-V曲線から得られた葉の水分生理特性は, 桔死直前の春〜初夏まで正常な季節変化を示して, 細胞壁弾性率(ε)には変化が認められなかった。
著者
CHANG C.J. YONCE C.E. GARDNER D.
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.354-359, 1987-07-25

オキシテトラサイクリンの注入によるスモモ葉焼病 (仮称) のスモモの葉焼病はオキシテトラサイクリン (OTC) の樹幹注入により抑制された。作業にはコード無ドリル, 28/163cmドリル刃, 金ヅチおよび OTC カプセルを必要とした。4月下旬又は5月上旬に1回目, 10月中旬に2回目の注入が最も効果的であった。それぞれ 0.16g の OTC を含む 4ml の溶液の入ったカプセル2個分を各時期に各樹に注入し, 対照樹にはキャリア液のみをそれぞれ注入した。1984年4月, 1985年5月および1986年5月にそれぞれ1回目, 3回目および5回目の注入を行ない, 1984, 1985および1986年の各8月に調査した結果, OTC による発病抑制はそれぞれ61.5-100%, 73.3-100%および76.9-100%であった。1984年10月に2回目の注入を行なった樹では翌年5月には対照樹に比べて小枝の枯死が格段に少なかった。
著者
堀 正太郎 卜藏 梅之丞
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.27-31, 1918-02

歐洲大戦亂の突發以來菌類並に細菌の培養に殆んど缺くべからざるペプトーンの輸入途絶したる爲其市價は戦前に比すれば八倍乃至十倍に騰貴し内國製品と雖も尚ほ一封十五圓の時價を保てり。之が爲菌類並に細菌研究所の培壤に要する經費は著しく増加し、就中我邦にて汎く野鼠驅除に應用せらるる野鼠窒扶斯菌の培養は甚だ失費多きことゝなれり。是れ著者の一人が培壤製造上ペプトーンに代用すべき經濟的物料の研究に著手せる動機とす。硫酸アムモニア、炒大豆粉、大豆粕等に就て試驗を行ひたるに大豆粕は最も良結果を奏し、其細〓せるもの三十瓦(水一立に對して)は二十瓦のペプトーン(細菌學上普通に使用する分量)に代用し得べきことを發見せり。此大豆粕煎汁にて寒天、膠、ブイヨン培壤を製して野鼠窒扶斯菌、諸種の植物病原菌並に非病原菌の培養を試みしにペプトーン添加の培壤と毫も異なることなく、野鼠窒扶斯菌の如きは一層良好の發育を爲せり。是を以て大正五年以來西ケ原農事試驗場に於ては特別なる研究の場合以外には菌類並に細菌の培養には皆此大豆粕煎汁培壤を使用することとなり、又府縣農事試驗場にて野鼠驅除用の野鼠窒扶斯菌は一般に本培壤を使用するに至れり。之が爲我邦の各農事試驗場の菌類及細菌研究室の培壤に要する經費は著しく節約し得られたり。今時價に依り培壤一立に要する費用を比較すれば次表の如し。 [table] 大豆粕の分析表に據れば微生物の營養となる主要成分は粗蛋白質(カゼイン)及可溶性無窒物(水酸化炭素物)にして、可溶性窒素の量の多少にあらざることは次に記す大豆粕煎汁及ペプトーン溶液中に存在する全窒素量の比較に依りて明かなり。[table] 斯くの如く大豆粕煎汁に溶解せる全窒素の量はペプトーン溶液の其れの約二十分一の少量に過ぎず而も尚は微生物の蕃殖の良好なるは窒素以外に他の螢養分の存在するを以てなり。 製法 能く乾燥せる淡色の光澤ある大豆粕を撰ぶベし、黴菌の蕃殖せるもの、濕りたるもの、褐色のもの等は煎汁褐色を帯ぶるを以て用ゆべからず。先づ大豆粕を鐵槌又は刃物にて適當の大さに碎き次に鐵製乳鉢にて細〓し、其三十瓦を蒸溜水一立の割にてコルベンに盛り蒸氣釜にて一時間半煮沸す。煎汁は中性にして寛るく綿栓を施したる漏斗に注下して濾過し粗渣を去るべし。濾液は帯青黄白色、二%のペプトーン溶液よりも其色遙かに淡し。煮沸中に蒸發せる水の減量は之を補ふも補はざるも可なり。斯く製造したる大豆粕煎汁の濾液を以て普通の方法手續きに依り、ブイヨン、寒天、膠の各培壤を製す。唯注意すべきはカゼインは酸に依りて沈澱するを以て此煎汁にて酸性培壤を製すること能はず。又肉越幾斯は少しく酸性なるが故に先づ重炭酸曹達の飽和液を煎汁に加へて鹽基性ならしめ然る後に肉越幾斯を加ふべし、然らざれば培壤は溷濁す。