著者
板倉 智敏 山極 三郎
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.11-PLATE II, 1971-02-25

著者らは, 鶏骨の Dysplasia とみなすべき症例に, 再び遭遇した. それは, 本研究の第I報におけると同様に, 一養鶏農家に集団的に発生したものであるが, 骨組織所見に注目すべき差異が存在したので報告する. 検索材料は3例よりなる. それらはすべて32日令, 肉用種(White Cornish×White Rock), 殺処分例である. 全症例について, 第I報におけると同様に, ほぼ全身骨の縦断および横断組織片が組織学的に検索された. 今回の例は, 2週令から4週令にわたって発生した. 臨床症状の特徴としては, O字脚 (Genu varum) が共通的であった. 飼料は市販のものが使用されたが, そのほかに, ストレス緩解の目的で抗生物質およびビタミン製剤が与えられた. 発生数は, 同日令群1,200羽中192羽(16%)に達した. 検索した3症例に共通した組織変化として, 骨体性骨組織の完熟遅延と局所性異常増殖が指摘された. このような変化を示す部位として, 管状骨の後面骨, 特にその骨幹中位および骨端よりの骨化点に相当すると思われる部位が, 多く選ばれていた. 他方,骨端性骨組織の異常増殖像には遭遇しなかった. このことは, 第I報において記載した所見とは異なったものとして注目された. 以上の組織変化を基礎として, 本例の症状の特徴であるO字脚の成因を考えてみた. また, 原因発生について, 集団的に発生したこと, 飼料のほかに抗生物質およぴビタミン製剤などが与えられたことは, 看過し得ない事実として, 若干の考察が行なわれた.
著者
佐藤 博
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.915-917, 1981-12-25

山羊と緬羊における尿中リン(P)濃度の日内変化を調べた. 毎日午前9時に給飼されている山羊の尿を6時間毎に72時間続けて採取してP濃度をみると, 採食後6時間に最も高濃度となる場合が多かった. 緬羊を午前6時あるいは午後6時の給飼条件にそれぞれ2週間以上慣らして同様に6時間毎に96時間採尿したところ, いずれの場合も給飼後にP濃度の高まる傾向がみられた. 同一個体で朝から夕刻へと給飼条件を変えると, 尿中P濃度の日内変動も逆転した例が多かった. 1日に1回給飼のような飼養条件下では尿中P排泄量は給飼時刻に最も強く影響されることが判明した.
著者
石原 勝也 菅沼 保治 渡辺 幸男
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.149-157, 1977-04-25

The present studies were undertaken to obtain data on serum lipoprotein analysis which would serve as normal references for studies on serum lipoproteins in diseased dogs, especially those with canine dirofilariasis. Serum samples were collected from 35 normal dogs of various ages proved to be free from Dirofilaria immitis (filaria) by the routine physical checkup and laboratory examination. They were analyzed for lipoproteins by cellulose acetate electrophoresis (electrophoresis). The serum lipoproteins were obtained basically as four distinct fractions, i.e., α-, pre-β-, β-lipoprotein and chylomicron fractions. The last-named fraction was only in trace quantities. It was presumed that the four fractions might have a density of 1.063<1.210, 1.006<1.019, 1.019<1.063 and <1.006, resptctively, as estimated from the electromigration velocities (mobilities) of other samples which had been separated ultracentrifugally. The mobility of the pre-β-lipoprotein fraction, however, varied with the serum sample, possibly due to the difference in the quantity of lipids bound to this fraction of serum lipoproteins. On the basis of analytical data on the 35 normal dogs, the normal percentage composition (relative proportion) of the serum lipoprotein fractions was investigated in dogs. Furthermore, the concentrations of these fractions in the serum were calculated from data on the total serum lipid content, the percentage composition of the serum lipoprotein fractions, and the amounts of lipids bound to the lipoprotein fractions obtained from 25 of the 35 dogs in order to clarify the normal ranges.
著者
沢田 拓士 村松 昌武 瀬戸 健次
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.565-570, 1982-08-25

豚丹毒生菌ワクチンを皮下接種した豚29頭の感染防御能と血清の受身マウス感染防御能の関係を調べた. ワクチン接種前(18例), ワクチン接種後攻撃直前まで(115例)および攻撃後(38例)の血清, 合計171例についての受身マウス感染防御試験の結果, マウス生残率(SRM)と生菌発育凝集抗体価(GA価)の間には正の相関関係(P<0.01)が認められた. ワクチン接種後10あるいは15日目の血清のSRMとワクチン接種2, 3, 4力月後の強毒菌による攻撃に対する豚の感染防御能とには関連性が認められた. このことから, ワクチン接種後早期の豚血清のマウス感染防御能は接種豚の免疫の持続性を示唆すると思われた. ワクチン接種後1力月以内に攻撃された豚は, 攻撃前血清でのSRMが低いか, 多くは陰性であったにもかかわらず, 何ら接種部位における限局性皮膚反応(発疹)を示さなかった. 一方, ワクチン接種後3あるいは4力月目で攻撃された豚の多くは, 攻撃前血清でのSRMが陽性であったにもかかわらず, 種々の強さの発疹を呈した. これらの結果から, ワクチン接種豚血清のマウス感染防御能のみからその免疫状態を推測することは困難であると思われた.
著者
中村 和市 橋木 善春 北川 浩 工藤 規雄
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.735-742, 1982-10-25

アヒルみずかき皮下にコロイダル・カーボン又は明ばん沈殿ウシ血清アルブミンを投与すると, 腰リンパ節リンパ洞内遊走性食細胞はこれらの物質を摂取後リンパ索よりリンパ小節に侵入し, コロイダル・カーボンを摂取した食細胞は食細胞小島を形成しつつ最終的には胚中心周囲域あるいは肝中心内に到達した. また西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼでは上記の食細胞を介する節内移動のほか, リンパ洞内皮および実質内細網細胞を介する移動もみられた. これらの事実は食細胞とリンパ球間の協調がリンパ節内における初期免疫応答時に重要であることを示すと思われる.
著者
岡本 敏一 山田 純三
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.863-870, 1981-12-25

アヒル腺胃における内分泌細胞を光学および電子顕微鏡で観察し次の所見を得た. 1) アヒル腺胃には銀親和細胞は認められなかった. 2) 深在腺には多数の好銀細胞が卵円形と2極あるいは多極性の突起をもった形でみられた. 浅在腺には卵円形のものが少数みられるにすぎなかった. 3) これらの内分泌細胞を電顕観察し, 分泌顆粒の形態から次の4形に型別した. I型:顆粒が径約100〜250 nmの球形で種々の電子密度と, 空胞状から充実したものまで多様な内容を示すもの. この型の細胞は深在腺のみにみられ, Grimelius法またはSevier-Munger法で検出される突起をもつ細胞と同じ細胞と考えられた. II型: 径約200〜450 nm大の多数の大型球形顆粒の間に, 長径約200〜500 nmの多形性顆粒が少数混在する. いずれの顆粒も電子密度が高く, わずかな明調帯を有していた. 少数の脂肪様滴がこれらの顆粒間に混在していた. III型: 顆粒は径約230〜400 nmの球型で種々の電子密度を示す. この顆粒がアヒル膵島のD細胞顆粒と同様の形態であることから, この型の細胞はD細胞と推察された. IV型: 顆粒は球形で径約80〜200 nmと非常に小型で, 限界膜に囲れ高い電子密度を示す. 4) これらの内分泌細胞はすべて閉鎖型と推定した.
著者
橋本 善春 北川 浩 工藤 規雄 杉村 誠
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.597-605, 1982-08-25

アヒル胸腺髄質内にみられる, 細胞内小胞および細胞間小胞を形成する上皮性細網細胞の微細構造とその分泌能を電子顕微鏡的免疫組織化学によって検討した. 細胞内小胞を含有する上皮性細網細胞は, その小胞内にPAS陽性物質を含み, 粘液物質の分泌および貯蔵を示す像がみとめられたが, 細胞間小胞を構成する細胞にはこれらの像はみとめられなかった. horseradish peroxidase (HRP) で免疫すると, 抗HRP抗体が小胞含有上皮性細網細胞内に検出されたが, ファブリキウス嚢除去アヒルではみとめられなかった. これらの所見は, アヒル胸腺上皮性小胞含有細胞は粘液物質の分泌および貯蔵能を有することを示唆するものと思われた.
著者
劉 栄標
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.23, no.6, pp.357-361, 1961-12-25

動物血液の ast. multocida に対する発育阻止作用と動物感受性の関係を調べる為, 12種動物と12菌株を用いて実験を行い次の如き成績を得た. 1. 山羊, 緬羊, 黄牛及び馬血液の Past. multocida 発育阻止作用は最も強い. 2. 水牛, 豚, 鶏, 鵝鳥及び生蕃鴨(Muscovy duck)血液の阻止作用は弱いか或はない. 3. 犬, 在来鴨, 兎, 天竺鼠血液の阻止作用は上記両群動物の中間にある. 4. 近縁動物を比較すれば在来鴨は生蕃鴨及び鵝鳥より, 天竺鼠は兎より, 黄牛は水牛よりも阻止作用が強い. 5. 各種動物の阻止作用は菌株差は見られたが, 菌系差はなかった. 6. 中間阻止帯現象が兎及び氷牛では1%血液に, 天竺鼠では0.5%血液に観察された. その発生の強さは動物の種類差の外個体差も見られた. 7. 動物血液の阻止作用と台湾に於ける各種動物の Past. multocida に対する感受性が検討された.
著者
大島 寛一 岡田 幸助 沼宮内 茂 米山 陽太郎 佐藤 繁 高橋 喜和夫
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.79-81, 1981-02-25
被引用文献数
2

実験には4-5ヵ月齢の子ヒツジ3頭と対照の1頭を用いた. BLV感染雌ウシから吸血途中のアブ(90%以上がTabanus nipponicus)を有孔透明プラスチックカップを用いて, 子ヒツジの皮膚に置き, 吸血を継続させた. この操作を4日間に131-140回/頭行なった. 1頭は寄生虫感染で斃死したが, 吸血後40日目の血清BLV_<gp>抗体は1:8と陽性を示した. 他の2頭は吸血後38日目以来抗体が検出され, はじめ1:16の力価が4-5ヵ月後には1:128あるいは1:256と上昇した. 対照では抗体は認められていない. 以上のことから, 感染したウシから吸血途中で追われたアブが, 別の宿主から吸血を継続する場合, BLVを伝播する可能性のあることが確かめられた.