著者
平野 哲史 柳井 翔吾 高田 匡 米田 直起 表原 拓也 久保田 直人 南 貴一 広川 千英 山本 杏 万谷 洋平 横山 俊史 北川 浩 星 信彦
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第43回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.P-252, 2016 (Released:2016-08-08)

【背景】ネオニコチノイドは1990年代に昆虫型ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChRs)を標的として開発された農薬成分である.しかし近年,ネオニコチノイドは哺乳類型nAChRsを介して神経細胞に興奮反応を引き起こすことが示され,昆虫以外の生物に対して不測の影響を与える可能性が懸念されている.我々はこれまでに成熟雄マウスをネオニコチノイドの1種,クロチアニジン(CTD)に4週間曝露すると,新規環境(オープンフィールド)における不安様行動が引き起こされ,その影響は環境ストレス下においてより顕在化することを報告してきた.本研究では,ネオニコチノイドによる行動影響発現に関与する脳領域を明らかにすることを目的とした.【材料と方法】C57BL/6成熟雄マウスに5または50 mg/kgの CTDを単回経口投与し,投与1時間後に高架式十字迷路試験による行動解析を行った.さらに2時間後に脳を摘出し,c-fos発現を指標とした組織学的解析により投与後誘導された神経活動を評価した.【結果と考察】行動解析の結果,CTD 5 mg/kg投与群においては溶媒投与対照群と比較してOpen arm滞在時間および侵入回数の減少がみられた.CTD 50 mg/kg投与群においては,さらに総移動距離の減少ならびに迷路探索時における異常啼鳴(Abnormal vocalization)およびすくみ行動(Freezing)が観察された.組織学的解析の結果,情動およびストレス反応に関与する視床下部,海馬においてc-fos陽性細胞数の増加がみられた.以上の結果から,CTD投与下においては,新規環境ストレスに曝露された際にコリン作動性神経投射を受ける視床下部や海馬における過剰な神経興奮が生じ,不安様行動やストレス応答を濃度依存的に誘発する可能性が示唆された.
著者
宮本 真二 安田 喜憲 北川 浩之
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.104, no.6, pp.865-873, 1995-12-10 (Released:2009-11-12)
参考文献数
13
被引用文献数
1 2

A continuous long core of peaty sediments bored from the Naka-Ikemi Moor Central Japan (lat. 35°39' N., long. 136°5' E.), contains records of paleoenvironmental changes during the Last Glacial and Holocene periods. The Naka-Ikemi Moor stretches about 1.3 km from the west to east. This peculiar shapes and crustal movements had been pointed out by purely from a topographical point of view. And this moor is regarded as a waste-filled valley created by sort of tectonic depression at the eastern part of the Tsuruga Plain. From the stratigraphical examination, some volcanic ashes were detected as follows : Kikai-Akahoya Tephra (K-Ah : 6.3 ka), Aira-Tn Tephra (AT : 24 ka), Daisen Kurayoshi Tephra (DKP : ca. 50 ka). Values of bulk density measurements and radiocarbon dates of core samples indicate that the Naka-Ikemi core samples contain continuous records for the past 50 ka. The average sedimentation rate of Naka-Ikemi Moor was increased after the fall of AT volcanic ash had occurred. The sedimen tation process of Naka-Ikemi Moor has also been clarified by sedimentary facies and value of loss on ignition of core samples. Value of loss on ignition began to increase since the end of Last Glacial, suggesting the increase of organic material caused by environmental changes.
著者
北川 浩之 中村 俊夫 福沢 仁之
出版者
名古屋大学
雑誌
名古屋大学加速器質量分析計業績報告書
巻号頁・発行日
vol.6, pp.27-42, 1995-03
被引用文献数
1

名古屋大学タンデトロン加速器質量分析計シンポジウム(1994年度)報告 [タンデトロン加速器質量分析計を用いた14C年代測定の利用による火山噴火史研究の新展開] Proceedings of Symposium on Tandetron Accelerator Mass Spectrometer, Nagoya University "New Developments in Studies on the History of Volcanic Eruptions by Using 14C dates Measured with the Tandetron Accelerator Mass Spectrometer"
著者
北川 浩
出版者
一般社団法人 日本ゴム協会
雑誌
日本ゴム協会誌 (ISSN:0029022X)
巻号頁・発行日
vol.72, no.11, pp.632-638, 1999 (Released:2007-07-09)
参考文献数
13
著者
鈴木 康弘 岡田 篤正 竹村 恵二 慶 在福 金 幸隆 廣内 大助 伊藤 愛 大石 超 中村 洋介 成瀬 敏郎 北川 浩之 渡辺 満久
出版者
日本活断層学会
雑誌
活断層研究 (ISSN:09181024)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.25, pp.147-152, 2005

The Ulsan fault extends for 50 km along the NNW-SSE direction in the southeastern part of the Korean Peninsula; this is one of the most important active faults in Korea. Its paleoseismicity has recently attracted considerable attention. With the support of KOSEF (Korean Science and Engineering Foundation), excavation studies of this fault were conducted in 1999 as a part of the Korea-Japan cooperative research at Kalgok-ri in Kyongju city. The results obtained are summarized as follows. (1) The Ulsan fault plane has an eastward dip of approximately 30 degrees and exhibits typical reverse faulting. (2) It was reactivated three times in the past 30,000 years, in particular, twice after the age of AT tephra (approximately 25,000 years BP). (3) A vertical displacement of approximately 0.8 m occurred during the fault event, and the amount of net slip along the fault plane is calculated to be 1.6 m.
著者
安田 喜徳 中川 毅 高橋 学 佐藤 洋一郎 北川 浩之 福澤 仁之 外山 秀一 徐 朝龍
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
COE形成基礎研究費
巻号頁・発行日
1997

平成13年度はプロジェクトの最終年度にあたり、主として研究成果のとりまとめと、補足調査ならびに研究成果の発表を実施した。平成13年度「長江文明の探求」の成果として特筆すべきことがらは、1)世界最古の焼成レンガの発見、2)中国最古の祭政殿の発見、3)中国最古の王宮の発見、4)大型の木柱をもった貯蔵庫の発見、5)城頭山遺跡の城壁が3重構造を持つことの発見、6)城頭山遺跡の住人が苗族であった可能性が高いこと、7)長江文明と日本文明の関係の解明、8)国際シンポジウムの実施し、9)研究成果報告書の刊行、10)記者発表による研究成果の公開などである。1)世界最古の焼成レンガの発見湖南省城頭山遺跡から出土した紅焼土とこれまでよばれてきたものの焼成過程を詳細に分析した結果、それが火事などで偶然できたものではなく、焼成レンガであることが判明した。焼成温度は摂氏600度以上の高温で、均質に焼かれており、かつそれらを大量に生産するシステムが存在したことが判明した。14C年代測定の結果その焼成レンガはすでに6400年前に作られていたことがあきらかとなり、世界最古の焼成レンガであることが判明した。2)中国最古の祭政殿の発見大渓文化の土廣墓の上にこの焼成レンガを敷き詰め、その上に屈家嶺文化早期の正殿・前殿・脇殿の構造をもった建築物が発見された。これは中国最古の祭政殿とみなされる。3)中国最古の王宮の発見祭政殿の西側に焼成レンガの上にさらに40cmほど版築をした上に、列柱回廊を持つ大型の建物が発見されんた。内部には御簾を支えたとみなされる列柱も発見され、これが王宮であった可能性がきわめて高いことが判明した。4)大型の木柱をもった貯蔵庫の発見東門の背後から直径1m以上の木柱をもつ大型の建物跡が発見され、その周辺から大量のイネの籾殻のプラントオパールが集中して発見された。このことから、この大型の木造家屋はイネ籾の貯蔵庫であった可能性が指摘できる。5)城頭山遺跡の城壁が3重構造を持つことの発見、城頭山遺跡の修景保存のための発掘調査の結果、城頭山遺跡の城壁は3回にわたって築造が内側から外側へと城壁が拡大築造されていることが判明した。6)城頭山遺跡の住人が苗族であった城頭山遺跡から出土した木材片の分析の結果、大半がフウの木であることが判明し、城頭山遺跡の住人はフウの木を愛用し崇拝していた可能性が高いことが判明した。現在フウの木を崇拝し愛用しているのは少数民族の苗族であり、城頭山遺跡の住人が苗族である可能性が高いことが指摘された。7)長江文明と日本文明の関係の解明城頭山遺跡周辺では水陸未分化の稲が栽培され、畑作雑穀も栽培されていた城頭山遺跡から出土した大型種子の分析の結果、水田雑草の種子とともに大量の畑作雑草の種子が検出され、遺跡周辺での稲作は水陸未分化の稲であったことが指摘できる。これは縄文時代晩期の唐津市菜畑遺跡の分析結果とよく似ており、稲作の日本への伝播経路が長江下流域から直接東シナ海を渡って日本に伝播した可能性が高いことが明らかとなった。8)国際シンポジウムの開催平成13年11月に長江文明の興亡と環境変動についてて世界の古代文明の研究者を招聘して、国際シンポジウムを実施した。その結果4200年前の気候悪化が長江文明の崩壊に決定的な意味を持ったことが明らかとなった。9)研究成果の報告書の刊行英文1冊、中文2冊の研究成果の報告書を刊行した。英文の報告書は「Origins of Pottery and Agriculture」(Lusre Press Roli Book)384pp.中文の報告書は「神話・祭祀和長江文明」文物出版社200頁と「長江流域乃青銅器」科学出版社200頁である。さらに現在中文の報告書「城頭山遺跡」を編集中であり、平成14年12月までには刊行できる見通しである、予定頁数は1000頁を越える膨大な報告書が出る予定である。10)記者発表平成13年11月2日に記者発表を行い、研究成果の公開を行った。
著者
北川 浩
出版者
公益社団法人 日本材料学会
雑誌
材料 (ISSN:05145163)
巻号頁・発行日
vol.28, no.307, pp.339-344, 1979-04-15 (Released:2009-06-03)
参考文献数
13
著者
北川 浩之 Kitagawa Hiroyuki
出版者
名古屋大学年代測定資料研究センター
雑誌
名古屋大学加速器質量分析計業績報告書
巻号頁・発行日
vol.24, pp.56-61, 2013-03

Radiocarbon (14C) provides a way to date material that contains carbon with an age up to 50,000 years and is also an important tracer of the global carbon cycle. To obtain the calendar year, radiocarbon age is calibrated using radiocarbon calibration dataset such as IntCal09. However there is still uncertainty in the available radiocarbon calibration dataset prior to 12.5 thousand years before the present. Recently,the radiocarbon calibration dataset from the annual laminated (varve) sediments of Lake Suigetsu, Japan (35°35'N, 135°53'E), have been updated by more than 800 14C analyses of terrestrial materials which provide a comprehensive record of atmospheric (or terrestrial) radiocarbon to the present limit of the 14C method (Bronk Ramsey et al., 2013).炭素14年代測定法は、過去5万年間の年代決l定には無くてはならない年代測定法である。しかし、炭素14年代は暦年代とは一致しなく、炭素14年代から暦年代を推定するには炭素14年代キャリブレーションデータセットを用いた較正が必要である。過去12500年間の炭素14年代キャリブレーションセットは、年輪年代学の手法で年代決定された木材の高精度炭素14年代測定によって求められている。それ以前は、海洋試料の高精度炭素14年代測定結果に海洋のリザーバ効果の補正が行われデータから推定され、不確かさが残されていた。水月湖年縞堆積物の研究で、海洋のリザーバ効果の補正が必要がなくなり、考古学試料などの陸域試料に適用できる炭素14年代キャリブレーションデータセットが、炭素14年代測定法が適用できる全期間について求められた。
著者
北川 浩 中谷 彰宏 仲町 英治 渋谷 陽二
出版者
大阪大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1992

金属多結晶材料の破壊は,ミクロスケールでの原子結合形態の破綻が,様々なメゾスケールの不均一内部構造とダイナミックに作用し合って伝播・拡大し,マクロ的な破面を形成する過程である。本研究では,このような破壊現象に力学的な視点に立った実体論的検討を加えた。具体的には,分子動力学(MD)シミュレーションによる原子スケールでの動的構造解析からき裂の発生・伝播の最も基本的な素過程についての知見を獲得し,転位論および結晶塑性モデルをベースにした連続体力学解析結果と対比させることにより,ミクロ/メゾ/マクロにわたる結晶構造材料の強度特性の基本的検討を行った。得られた主な成果をまとめると,(1)MDシミュレーションにより,(1)転位や双晶構造の相互干渉により生じるき裂発生過程,(2)fcc-Cu,bcc-FeをモデルとしたモードI,II,III型荷重下のき裂先端原子の動的構造解析,とくに延性破壊の結晶方位,温度依存性,(3)粒界構造と格子欠陥の相互干渉作用,(4)粒界近傍での拡散特性の温度依存性などを明らかにした。(2)連続結晶塑法モデルを,転位運動の現象論的カイネテックスを組み込めるように精緻化し,有限要素法によりき裂先端の変形場の解析を行って,原子モデルシミュレーション解析結果をその実体的なデータとみなして,ミクロ的な応力の意味,せん断帯の形成のミクロメカニズムの検討を行った。(3)MDシミュレーションに用いた原子間ポテンシャルの妥当性とその限界を検討するため,超格子法に基づくバンド構造解析および分子軌道法をベースとするクラスタ構造に対する,いずれも第一原理計算を実施した。(4)走査型トンネル顕微鏡によるHOPG材表面に見られる原子レベル段差構造,き裂,格子欠陥の構造の大気下での観察を行って,結晶材料の強度を律している微視的基本構造の計測を行った。
著者
北川 浩
出版者
公益社団法人 日本材料学会
雑誌
材料 (ISSN:05145163)
巻号頁・発行日
vol.21, no.230, pp.969-977, 1972-11-15 (Released:2009-06-03)
参考文献数
26
被引用文献数
1 1
著者
武山 健一 加藤 茂明 高田 伊知郎 北川 浩史
出版者
東京大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

申請者はポリグルタミン伸長異常タンパクによるSBMAモデルショウジョウバエを用いた神経変性誘導を指標とした(1)分子遺伝学的アプローチおよび(2)生化学的アプローチによる候補因子探索と、(3)その性状解析からクロマチン構造変換機能異常によるエピジェネティック制御破綻への情報基盤を構築した。(1)分子遺伝学的アプローチによる新規神経変性制御因子の探索SBMAモデルショウジョウバエのpolyQ-AR誘導性の個眼神経変性を指標として、神経変性の変動が観察された25系統を単離した。中でも神経変性を顕著に回復する遺伝子としてRbfの同定に成功し、RbfによるE2F-1転写活性化を破綻させている事を見出した(Suzuki et al.,投稿中)。(2)生化学的アプローチによる新規polyQ-AR相互作用因子の探索クロマチン画分からのpolyQ-ARタンパク複合体精製はトランスジェニックショウジョウバエ個眼より精製後、MALDI-TOF/MS法あるいはLC/MS法にて同定する。その結果、ヒストンシャペロンやelongation factor、RNA結合タンパク等を同定した。3 候補因子の性状解析とエピジェネティック制御情報基盤の構築(1,2)で同定した相互作用因子のクロマチン構造変換能をヒストン修飾や構造、クロマチン構造変換能に着目した生化学的解析を行った。具体的にはヒストンアセチル化、メチル化、ユビキチン化およびリン酸化assay、MNase assay、クロマチンsupercoiling assayやdisruption assayによりin vitro系を構築した。これに必須材料となるヒストン八量体およびDNAとのクロマチン再構築は、HeLa細胞核抽出液およびrecombinant系を両者で整えた。
著者
加藤 茂明 武山 健一 北川 浩史 高田 伊知郎 大竹 史明 武山 健一 北川 浩史 大竹 史明
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

乳癌、子宮内膜癌、卵巣癌などのホルモン依存性癌の治療薬として用いられている「選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)」は、組織特異的な転写制御能を発揮するがその分子機構は明らかではない。我々は、SERM依存的にエストロゲン受容体ERαに結合するタンパク質群の精製を試み、ブロモドメインを有するBRD4を同定した。BRD4はpositive transcription elongation factor b(P-TEFb)と共に転写伸長反応を促進する因子であることから、SERMによる転写制御は、転写伸長の促進/抑制による可能性が示唆された。
著者
加藤 茂明 武山 健一 北川 浩史
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

染色体構造調節因子複合体について、新規複合体の同定及び構成因子の検索や機能調節を調べる事を目的として、15年度は、前年度の1〜3の課題を継続するとともに、特に課題4に焦点を当て、研究を進めた。1.新規ゲノム発現制御複合体の同定:in vitro転写系及びクロマチンヌクレオソーム再構成系(当研究室で研究済み)を用いてHeLa細胞核抽出液から精製し、精製された複合体構成因子群をMALDI-TOFMASSにより同定した。更にcDNAスクリーニングにより各々の構成因子の機能を調べた。2.細胞種特異的複合体構成因子の同定:これら核内複合体の機能は細胞種特異的と考えられる。そこで既知複合体の既知構成因子を各種組織株に高発現させ、複合体を精製することで細胞種特異的構成因子を同定した。3.染色体構造調節複合体の機能調節の分子メカニズムの解明:最近ではアセチル化、ユビキチン化などの各種タンパク修飾によって機能調節される例が報告されているが、染色体構造調節複合体の構成因子のタンパク修飾による機能調節は全く不明である。そこで、既知核内レセプターコアクチベーター(p160、p68/ファミリー)を用い、各種培養細胞での他の複合体構成因子を同定し、構成因子の複合体構成能とタンパク修飾による機能調節の可能性を検討した。4.ショウジョウバエを用いた新規染色体構造調節のスクリーニング:申請者らは既に、ヒトアンドロゲン(男性ホルモン)レセプターを組織特異的に発現するショウジョウバエのラインを確立し、リガンド依存的な転写促進をGFPで検出することに成功した。本システムを用いることで哺乳類特異的染色体構造調節因子を発現する各種ラインを確立し、次に特定染色体部位を欠失した各種変異体を交配することで、染色体構造調節因子機能に必須な因子を分子遺伝学的にスクリーニングを行った。更に同定された因子をプローブに複合体を同定及び解析した。
著者
加藤 茂明 武山 健一 高田 伊知郎 北川 浩史
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2000

ステロイドホルモン核内受容体の転写制御機能を分子レベルで理解する目的に、性ステロイドホルモン受容体の転写促進能及び新たな核内受容体転写共役因子の検索・同定を試みた。多くの前立腺癌や乳癌の発症は、アンドロゲンやエストロゲンといった性ステロイドホルモンに依存する。性ステロイドホルモンが標的細胞内において機能を発揮する主要な経路は、核内受容体を介した転写制御である。このような転写制御には転写共役因子複合体群が必須であり、クロマチンリモデリングやヒストン修飾といった様々な異なる機能の複合体群が同定されてきている。性ホルモン依存性癌の発症メカニズムを解明するためには、未知の複合体群の同定とその複合体機能の解明が必要である。そこで我々はエストロゲン受容体α(ERα)と機能的に相互作用する複合体の同定を試み、スプライソソーム主要構成因子複合体を同定した。更に、この複合体とERαとの結合はMAPキナーゼによるERαのリン酸化に依存することを見出した。またこの複合体はERαの標的遺伝子群に対してスプライシング効率を調節する機能をもつ。このような機能は、乳癌に関わりの深いエストロゲンシグナルと成長因子シグナルとのクロストークがmRNAスプライシングの調節を介して乳癌発症に関わる可能性を示唆する。
著者
加藤 茂明 武山 健一 北川 浩史 高田 伊知郎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

染色体構造調節複合体について、新規核内複合体群の検索及び機能解析を目的として、本年度は下記の3点に焦点をあて、研究を進めた。1.細胞種特異的複合体構成因子の同定:核内複合体の機能は細胞種特異的と考えられる。そこで既知複合体の既知構成因子を各種組織株に高発現させ、複合体を再精製することで細胞種特異的構成因子の同定を試みた結果、組織特異的な発現因子を含む複合体の存在が明らかになった。2.染色体構造調節複合体を共役する因子の分子遺伝子学的検索:染色体構造調節複合体と転写共役因子複合体の協調作用により、ヒストンタンパクの修飾やヌクレオソーム配列の再整備が行われ、その結果としてより転写制御反応を潤滑化もしくは難化すると予想されている。機能未知因子を検索・同定することを目的とし、ショウジョウバエに男性ホルモン受容体を発現するハエラインを確立している。そこで、特定染色体領域欠失、あるいは遺伝子が機能的に欠損したハエラインと掛け合わせることで、受容体機能に必須な共役因子を分子遺伝子的に検索・同定し、いくつかの候補因子を同定した。今後このようなアプローチによって同定された修補因子については、前述した生化学的アプローチにより、その核内複合体の同定、機能解析を行う予定である。3.染色体構造調節複合体構成因子群の生体内機能の解明:染色体構造調節複合体は、同様の活性を有するものが複数見出されており、in vitro系での解析では、その機能的生理的な差異は見出されないでいる。一方、多くの転写共役因子複合体構成因子群のノックアウトについては、胎生致死となるか、もしくは全く異変が見出されない例が多い。従って、これら複合体種特異的な機能を評価する強力なアプローチの一つとして、構成因子遺伝子欠損マウス(ノックアウトマウス)の作出が挙げられる。本年度は、染色体構造調節複合体種特異的構成因子に焦点を合わせ、Cre-loxP系を用いた時期・組織特異的遺伝子破壊法により胎生致死を回避し、当該因子の生体内高次機能を評価した。特に、前年度で同定された有力候補因子を同様な手法により、骨を中心に解析した。
著者
北川 浩 比嘉 吉一 尾形 成信 中谷 彰宏
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

結晶粒をナノメートルオーダまで微細化したナノ多結晶材料は、結晶粒を構成する原子の数に対して粒界を構成する原子の割合が高く、その構造は不規則である上に十分に構造緩和しておらず準平衡な状態にある。本研究では、ナノ結晶材料の強度を律している一般的な動的組織要因を明らかにする目的で、原子モデルを用いた大規模コンピュータ・シミュレーションを実施して、つぎのような結果を得た。(1)材料強度が粒径の減少に伴って低下する、結晶粒微細化に伴う軟化現象(逆Hall-Petchの関係)が見出される.この関係は、強さと欠陥体積率の関係として整理することができ、ナノ多結晶材料の強度は粒界領域で生じる原子構造変化により律される。(2)結晶粒径が非常に小さいナノ多結晶材料では,粒内に転位が安定して存在することは出来ず,Frank-Read源のような転位源を粒内に持つことはできない。しかし,積層欠陥エネルギーが低い材料では、拡張転位の幅と結晶粒径が同じスケールとなり、結晶すべりは部分転位のみで生じて、粒内を貫く形で積層欠陥が形成される。(3)粒内の積層欠焔の形成による構造的異方性が、ひずみ硬化、繰り返し硬化、および力学異方性を引き起こす。また、積層欠陥は、粒界部での変形のアコモデーション機構と連動して結晶粒変形の可逆的な要素となることが見出される。(4)自由表面を有するナノ多結晶材料では、積層欠陥エネルギーが大きい場合,粒界すべりにより局所変形が進行し粒界部で破断するが,積層欠陥エネルギーの小さと部分、転位による結晶すべりが主となり、粒内に残存する積層欠陥により二次すべり系の活動が抑制されて,変形の局所化が抑制され材料全体の延性が向上する。(5)アモルファス金属に局在化した変形が生じると、局所的な温度上昇によりアシストされた変形誘起再結晶が生じ、ナノサイズの結晶粒が生成される。
著者
北川 浩 尾方 成信 中谷 彰宏
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

原子レベル構造の動的変化の詳細を追跡できる分子動力学法を用いて、コンピュータ上で創製した長距離規則構造を持たないアモルファスにき裂を導入し、モードI型のき裂伝播の大規模シミュレーションを実施した.つぎの2つの解析モデル:(I)板厚方向に周期構造を仮定したモデルA(約109万原子),(II)厚さ方向に自由面を持つ薄膜状のモデルB(厚さ〜50nm,約224万原子)を対象として,き裂進展量とき裂先端開口変位,応力とひずみの分布,原子数密度の分布,動径分布関数などを評価することによりき裂進展のメカニズムに検討を加えた.(1)き裂先端の強変形域は、せん断帯と前縁部の等方引張り応力の高い部分よりなる。a)せん断帯内では、10^4(〜20原子(〜5nm)立方)原子集合程度の領域で、短い時間内に引張り方向に対して約±45゜方向を主軸とする局在化した単純せん断変形が頻繁に発生/消滅を繰り返し、巨視的なせん断帯が形成されていく。b)き裂前縁部では、顕著な密度低下を生じ、それが局所的な強度低下を引き起こす。(2)モデルAでは、き裂は先端の軟化域の原子流動により鈍化するのみで、ほとんど進展しない。き裂先端は高温(800K以上)となるが、再結晶することはない。全プロセスゾーンを通じて初期のアモルファス構造はほぼ保たれる。(3)モデルBのき裂伝播シミュレーションでは、き裂前縁は一旦V字形に尖った後、先端部にボイドを発生,その成長と共にき裂と合体して急激なき裂成長を引き起こすという変形サイクルを繰り返す.変形域はき裂の先端のごく狭い領域に限られる.
著者
坂田 勝 阿部 博之 大塚 昭夫 北川 浩 宮本 博 青木 繁
出版者
東京工業大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1987

各研究分担者は当初の計画に従って研究を行い、開口および混合モード負荷を受けるき裂先端の弾塑性変形について解析および実験を行った。宮本・菊池・町田は、先端に巨視的ボイドを有するき裂について微視的ボイドの存在をモデル化したガーソンの構成式を用いて有限要素解析し、き裂とボイドの相互作用および合体について研究した。大塚・東郷は、混合モード負荷を受ける切欠きおよびき裂の挙動について有限要素法解析および実験をおこなった。切欠きについては、モードI負荷成分が大きいときの開口型き裂の発生は限界ボイド率によって予測できるが、モードII成分が大きいときのせん断型き裂の発生の予測は困難であった。き裂についても開口およびせん断型き裂が進展し、J積分による予測が可能なことを示した。坂田・青木・岸本は、混合モード負荷を受けるき裂について有限変形理論に基づく有限要素法によって、き裂先端に一個の巨視的ボイドが存在するモデルについて解析した。ボイドがき裂の鈍化側に存在するときには、き裂先端の塑性ひずみおよびボイド率の増加に寄与し破壊を促進するが、き裂の鋭化側に存在するときは相互作用しないことを示した。北川は、現象論的な構成式を用いないで、微視的なすべり機構を考慮した有限要素法シミュレーションを行って、き裂の開口形状を解析した。共役2すべり系による解析が実験結果とよく一致することを示した。阿部・坂は、有限要素解析およびすべり線場解析を行うとともに実験を行って、モードI負荷をうけるき裂の進展を規制する量として強変形域塑性仕事の概念を、混合モード負荷については一般化き裂開口変位の概念を導入し、これらがき裂の発生および進展を規制するパラメータであることを示した。
著者
青木 繁 BUI Huy Duon YANG Wie KNAUSS Wolfg 北川 浩 岸本 喜久雄 YANG Wei HUY Duong BU WEI YANG WOLFGANG KNA MAIGRE H. RAVICHANDRAN ジー ROSAKIS Ares NAKAMURA Tos 天谷 賢治
出版者
東京工業大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

本研究は,日米中仏の4ヶ国の研究者の共同研究により実施するのもので,材料の破壊プロセスにおける微視的な内部構造変化について総合的に検討するとともに,それらを踏まえたメゾスコピック材料モデルを構築することを目的とする.すなわち,本研究では,原子レベルならびにナノレベルにおける微視的アプローチ,不均質材料,材料界面,高分子材料,複合材料の損傷・破壊モデルの検討,および,衝撃荷重や環境など外因の影響を踏まえた材料モデルの考察など,種々の立場から,材料モデルの構築を進めるとともに,相互に協力,啓発を行い,それらを統合化した材料の寸法尺度,時間尺度に対する階層構造を的確に捉えたメゾスコピック材料モデルの構築を目指している.本研究において設定した調査テーマは下記の通りである.(1)分子動力学法を基礎とする材料モデルの構築,(2)材料の損傷・破壊現象のミクロとマクロメカニクス,(3)界面強度特性とミクロ・マクロ材料モデル,(4)不均質材料の特性発現機構と損傷機構のミクロ・マクロモデル,(5)複合材料の損傷過程とミクロ・マクロモデル,(6)ミクロ構造を考慮した高分子材料モデルの形成とマクロ特性,(7)破壊のプロセスゾーンの損傷モデル,(8)衝撃荷重下における材料の破壊モデル,(9)材料の環境強度に及ぼす電気化学因子のモデル化また,東京工業大学,カルフォルニア工科大学,エコールポリテクニークにおいて共同研究を実施するとともに,中国,カナダ,アイルランド,ポルトガルにおいて調査研究を実施した.それらの結果,材料の内部微細構造の変化のダイナミクスを多面的に捉えるための分子動力学法,境界要素法,有限要素法などの種々の方法に基づくモデリング手法についての知見が得られた.