著者
清水 晃 岡田 幸助 河野 潤一 寺西 永 木村 重 矢挽 輝武 南條 巌
出版者
神戸大学農学部
雑誌
神戸大学農学部研究報告 (ISSN:04522370)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.p259-267, 1987
被引用文献数
1

兵庫県下の1養豚場で発生した豚の皮膚病について, その発生状況ならびに細菌学的および病理学的検索を行い, 次のような結果を得た。1. 1979年8月, ランドレース種で, 生後2∿3日齢の1腹10頭中7頭に皮膚病の発生が認められ, うち3頭が死亡した。2. 皮膚病の症状は, 滲出性表皮炎のそれと極めて類似していた。皮膚の異常は鼻, 眼瞼周囲, 耳の発疹に始まり, 重症例では全身の表皮および被毛に粘稠に富む滲出物が膠着し, 黒褐色を呈した。3. 皮膚炎の病理組織学的変化は, 表皮の細菌塊を伴う滲出物, 錯角化症, 上皮細胞の空胞化と壊死, 棘細胞症などの病像を認め, 滲出性表皮炎と診断された。4. 発症豚の皮膚病変部および死亡豚の心臓, 肝臓, 腎臓, 脾臓からS. hyicus subsp. hyicusを分離した。また, 母豚の乳頭周辺部からも該菌が検出された。5. 分離株のS. hyicus subsp. hyicus型別用セットによるファージ型別では, 供試菌18株中17株が型別され, 型別可能株はS9/S39/S188とS9/S188の2つのファージ型に分けられた。発症豚7頭中5頭はS9/S39/S188のファージ型で, 残り1頭と死亡豚では両ファージ型菌が同時に検出された。また, 健康な母豚の乳頭から分離された菌株も, この2つのファージ型を示した。このことより, 今回の滲出性表皮炎にはこの2菌型が関与していたことが示唆された。6. 分離株18株の3濃度ディスク法による薬剤感受性は, 全株がPC, PcA, PcM, SPM, LCM, CM, TC, KM, GMおよびCERに高度の感受性を示した。7. 発症豚に対し, アルコール, グリセリン, クレゾール混合液を全身に塗布して治療を試みたところ, 軽症例では, 症状は漸次軽減した。本論文の要旨は, 1984年4月, 第97回日本獣医学会において発表した。 / In August, 1979,a type of dermatitis occurred suddenly in 7 newborn pigs of a litter, 2 or 3 days old, on a farm in Hyogo prefecture. Three of the affected pigs died 3-9 days after the onset of the disease. It presented symptoms qutie similar to those of exudative epidermitis. Eczeme and eruption extended from the auricular and abdominal region to all over the body. The surface of the body was covered by the exudate and its color turned dark brown. Histopathologic examination of skin from a dead pig revealed lesions characterized by exudation and accumulation of parakeratotic cellular debris on the epidermal surface, vacuolar degeneration and acanthosis of the epidermis. Coccoid bacterial organisms were abundant in the epidermal exudate. Necrosis and ulceration of epidermis were seen in severe lesions. From the above findings, the pig was diagnosed as exudative epidermitis. Staphylococcus hyicus subsp. hyicus was isolated in pure culture from the skin lesions of the affected pigs, and from parenchymatous organs (heart, liver, kidney and spleen) of the dead pig. The organism was also isolated from the teat of the mother sow of the previously described pigs. A total of 18 isolates of S. hyicus subsp. hyicus from the pigs with exudative epidermitis and the mother sow were subjected to phage typing using the 4 S. hyicus phages, S9,S13,S39,and S188. Seventeen isolates (94.4%) were typable at routine test dilution and were differentiated into 2 phage patterns of S9/S39/S188 (n=11) and S9/S188 (n=6). All of the 18 isolates were highly sensitive to penicillin, oxacillin, ampicillin, erythromycin, spiramycin, lincomycin, chloramphenicol, tetracycline, kanamycin, gentamicin and cephaloridine.
著者
桑野 睦敏 片山 芳也 笠嶋 快周 岡田 幸助 Reilly J.D.
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.893-900, 2002-10-25
参考文献数
25
被引用文献数
2 22

慢性蹄葉炎では,蹄壁と葉状層の間に黄色調の贅生角質が産生される.贅生角質は大量に産生されると蹄形異常の一要因となるばかりか,蹄真菌症の頻発部位でもあることから,取り除かなければ病態悪化を招く病巣の温床となる.しかしながら,その病態についての研究は全く行われておらず,括削適期すら不明な現状がある.そこで,本研究では,様々な病期の蹄葉炎罹患蹄を用いて,産生される贅生角質の肉眼的な形態変化および組織構築を観察し,贅生角質の形成パターンを調査した.その結果,贅生角質は蹄縦断面では病期約3週間で確認できるようになり,組織学的には異所性の白帯であることがわかった.異所性白帯は,蹄葉炎が治癒しない限り,病期の経過とともに過剰に産生されつづける傾向があった.その括削適期については,まだ十分な量が形成されない発症1ヶ月以内は括削せず,病期1ヵ月を経過した後に括削することが推奨された.
著者
兼光 弘章 御領 政信 岡田 幸助
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.48, no.8, pp.547-550, 1995
被引用文献数
2

馬2頭 (4歳雌および6歳雄) が1カ月以内の間隔で再度大量の鼻出血を起こし, 死亡あるいは安楽死処分された. 第1症例には鼻腔に壊死性肉芽腫が多発し, 鼻背動脈の破綻による鼻出血と推測された. 第2症例は喉嚢真菌症で, 喉嚢に隣接する内頸動脈の破綻があり, 病巣の大部分は肉芽組織により置換されていた. 両例とも光顕および走査電顕的検索によってAspergillus sp. が病巣から検出・同定された.
著者
金谷 俊平 御領 政信 佐々木 淳 宍戸 智 岡田 幸助
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.62, no.10, pp.810-814, 2009-10-20

16歳齢の日本猫、雑種の去勢雄が、歩行困難、起立困難、ふらつき歩行等があるとの主訴で来院し、初診日の9日後には顔面から前肢に至る痙攣発作が認められた。その時の血糖値は著しく低値で(32mg/dl)、臨床的にインスリノーマが疑われた。試験的開腹術により、膵臓右葉における直径6mmの単発性腫瘤を摘出、病理組織学的に島細胞腫と診断された。コンゴー赤染色では、間質にアミロイドの沈着が証明され、腫瘍細胞は免疫組織化学的にクロモグラニンAに対して陽性、インスリンに対して陰性を示した。電顕検索では、腫瘍細胞は径100〜250nmの分泌顆粒を有していた。短桿状のコアを有し限界膜との間にハローが存在する典型的β顆粒はまれで、電子密度の高い球形の異型顆粒が多く認められた。
著者
矢部 光一 村上 要一 西田 里織 関口 正保 古濱 和久 御領 政信 岡田 幸助
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.63, no.8, pp.867-872, 2001-08-25
被引用文献数
1 14 11

ニューキノロン系抗菌剤ofloxacinの5, 10および20mg/kg/dayを雄の3ヵ月齢の幼若犬に8日間反復経口投与し, 関節症誘発に対する無影響量と血清および関節軟骨内濃度を調べた. 肉眼的に, 上腕骨および大腿骨関節軟骨に水疱形成を特徴とした関節症が10および20mg/kg/day投与群でみられた. しかし, 5mg/kg/day投与群ではこれらの変化は全く認められなかった. 病理組織学的には, 水疱は関節軟骨中間層の空洞として認められ, 空洞周囲では軟骨細胞の壊死, それに引き続き軟骨細胞のクラスター形成が観察された. 薬物動態解析では, 最高血清中濃度(C_<max>)および血清中濃度下面積(AUC_<0-24>)が用量依存的に増加したが, これらは単回および反復投与時には明らかな差異は認められず, 薬剤の蓄積性がないことが示唆された. なお, 最終投与2時間後におけるofloxacinの関節軟骨内濃度は血清中濃度の1.8 (day 2)から2.0 (day 8)倍の値を示した. 以上の結果より, 本実験条件下では, 幼若犬におけるofloxacinの8日間反復経口投了時の関節症誘発に対する無影響量は5mg/kg/dayであり, そのC_<max>, AUC_<0-24>および関節軟骨内濃度はそれぞれ3.4μg/ml, 35.1μg・hr/mlおよび7.0μg/gであった. したがって, 血清中ofloxacin濃度より関節症の発現が予測できると考えられた.
著者
關 茉莉絵 御領 政信 佐々木 淳 岡田 幸助
出版者
社団法人岩手県獣医師会
雑誌
岩手県獣医師会会報
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.88-91, 2009-01-01

野外採卵鶏の眼鏡下洞が腫脹し,化膿性肉芽腫が認められた成鶏より緑膿菌が分離され,幼雛に対する病原性を病理学的に検索した.10^9接種群では接種日齢にかかわらず接種後3日以内にほぼ全例が死亡したが,10^8接種群では接種日齢が高いほど死亡数が減少した.10^9接種群では接種12時間後で沈うつ,頭部下垂を示し,接種4日後の一部のひなでは遊泳運動,ふらつきなどの神経症状,片側眼瞼の閉鎖が認められた.肉眼的に死亡例では接種部位を中心とする胸腹部,大腿部などにおける重度の皮下水腫,組織学的にはほほすべての死亡例で化膿性筋炎,細菌塊を伴う血管周囲炎がみられたが,生残例では病変がほとんど認められなかった.
著者
千葉 修一 兼松 重任 村上 賢二 佐藤 亨 朝比奈 政利 沼宮内 茂 御領 政信 大島 寛一 岡田 幸助
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.361-365, 2000-04-25
被引用文献数
3

競走中あるいは調教中に骨折した競走馬の血清中上皮小体ホルモン(PTH)およびカルシトニン(CT)レベルをラジオイムノアッセイにより測定し, 正常馬と比較した.橈骨, 第三中手骨, 第三手根骨, 指骨, 脛骨などの大型骨を骨折した競走馬では, 血清中のPTHレベルは正常であったが, CTレベルは上昇していた.種子骨骨折馬では正常馬と比較して, 血清中PTHは統計学的に有意ではなかったが, わずかに高値を示し, CTは統計学的に有意に高値であった.今回検索した競走馬における種子骨および大型骨骨折の病態は, それぞれ異なったカルシウム代謝の状況下で発現した可能性が示唆された.
著者
大島 寛一 岡田 幸助 沼宮内 茂 米山 陽太郎 佐藤 繁 高橋 喜和夫
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.79-81, 1981-02-25
被引用文献数
2

実験には4-5ヵ月齢の子ヒツジ3頭と対照の1頭を用いた. BLV感染雌ウシから吸血途中のアブ(90%以上がTabanus nipponicus)を有孔透明プラスチックカップを用いて, 子ヒツジの皮膚に置き, 吸血を継続させた. この操作を4日間に131-140回/頭行なった. 1頭は寄生虫感染で斃死したが, 吸血後40日目の血清BLV_<gp>抗体は1:8と陽性を示した. 他の2頭は吸血後38日目以来抗体が検出され, はじめ1:16の力価が4-5ヵ月後には1:128あるいは1:256と上昇した. 対照では抗体は認められていない. 以上のことから, 感染したウシから吸血途中で追われたアブが, 別の宿主から吸血を継続する場合, BLVを伝播する可能性のあることが確かめられた.