著者
吉岡 克人 鳥畠 康充
出版者
日本腰痛学会
雑誌
日本腰痛学会雑誌 (ISSN:13459074)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.163-168, 2004 (Released:2008-02-06)
参考文献数
14

急性大動脈解離・瘤破裂における腰痛・背部痛や対麻痺の頻度,および脊椎疾患との鑑別方法を明らかにするため,救急部を受診した50例に対し診療録による調査を行った.腰痛や背部痛のみを症状としたのは19例(38.0%)で,腰痛・背部痛に胸痛・腹痛を合併した例をあわせると64.0%の頻度であった.また,対麻痺の発症を1例(2.0%)に認めた.高血圧の既往を認めた例が59.6%,来院時に血圧異常を認めた例が83.3%と高率であった.画像診断では,CTスキャンで全例に確定診断が得られた.運動器プライマリケアにおいて,大動脈解離・瘤破裂は遭遇頻度は少ないが,患者の救命や医療過誤の回避という観点から極めて重大な疾患群である.高血圧の既往,来院時血圧異常,体位に関係のない激烈な腰背部痛を訴える症例に対しては本症候群を疑い,CTスキャンを施行すべきである.
著者
瀬尾 理利子 久野木 順一 真光 雄一郎
出版者
日本腰痛学会
雑誌
日本腰痛学会雑誌 (ISSN:13459074)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.144-148, 2004 (Released:2008-02-06)
参考文献数
6

【緒言】近年,整形外科領域において超音波診断法が徐々に普及してきた.骨盤輪不安定性に対する超音波診断法の可能性について調査した.【対象および方法】14名の成人女性を対象とし,超音波検査を用いて恥骨結合を描出し,安静時と運動による画像の変化を調査比較した.【結果】画像で恥骨は高輝度,恥骨結合は無エコー部を呈した.股関節伸展位,左右股関節屈曲位の画像で,恥骨間距離や恥骨の高さに変化が確認された.【考察】妊婦の腰痛として骨盤輪不安定症は重要な疾患である.評価法としてX線検査が一般的であるが,妊婦では被爆の問題からX線検査には限界がある.今回の調査で,肢位による画像の変化を認め,超音波検査により骨盤輪の不安定性を診断できる可能性があることが示唆された.超音波検査にて,骨盤不安定性を評価する有効性ついては検討の余地があるが,今後手技の確立を要する.
著者
酒井 義人 松山 幸弘 岡本 晃 石黒 直樹
出版者
日本腰痛学会
雑誌
日本腰痛学会雑誌 (ISSN:13459074)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.96-103, 2007 (Released:2008-01-22)
参考文献数
20

筋弛緩薬として知られるeperisone hydrochloride(EMPP,ミオナール®)の効果につき検討した.6カ月以上持続する男性慢性腰痛症患者74名をランダムに3群すなわち,A群:物理療法のみ行った25例,B群:EMPPを4週間投与した24例,C群:McKenzie法を行った25例に分け,2,4週後にJOA score,Faces Pain Scale-Revised (FPS-R),VAS,SF-36を評価した.また腰椎伸展・屈曲における腰背筋酸素化を,近赤外分光器(NIRS)を用い酸素化ヘモグロビン(Oxy-Hb),脱酸素化ヘモグロビン(Deoxy-Hb)を評価した.2週後ではすべての評価で差を認めず,4週後の評価では,VASでA群とC群間で有意な差を認めた.NIRSでは,2週後で差を認めず,4週後で腰椎伸展時のOxy-HbがB群で有意に増加した.疼痛に関してはMcKenzie法が効果的でVASでは4週という短期間で有意に改善した.EMPP投与では改善はされるものの有意な疼痛改善には至らなかったが,NIRSでの評価では腰椎伸展におけるOxy-Hbの増加が有意にみられた.慢性腰痛患者の保存治療として運動療法とEMPP投与の併用が望ましいと考える.
著者
兵藤 弘訓 佐藤 哲朗 佐々木 祐肇
出版者
日本腰痛学会
雑誌
日本腰痛学会雑誌 (ISSN:13459074)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.106-114, 2002 (Released:2008-07-10)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1 5

いわゆる「ぎっくり腰」の中で,MR像から推定した椎間板内への局所麻酔剤の注入によって除痛が得られたものを椎間板性と定義し,その特徴と発症機序を検討した.いわゆる「ぎっくり腰」で来院した23例中,椎間板性と診断されたのは16例(70%)であった.平均年齢は36歳と比較的若かった.日常の何気ない動作で発症した症例が10例(63%)と多かった.腰部中央を含む両側性腰痛が8例(50%)であり,傍脊柱筋に圧痛がない例が11例(69%)と多かった.単純X線像で椎間板の高度狭小化像を呈する例はなかった.椎間板造影像では後方線維輪までの放射状断裂が全例にみられたが,硬膜外腔への流出像は2例(13%)にしかみられなかった.T2強調MR像では椎間板の変性が全例にみられ,うちgradeⅢ(Gibson分類)が15例(94%)であった.造影MR像では椎間板後縁に明らかな造影領域が10例(63%)にみられた.椎間板性「ぎっくり腰」の多くは,放射状断裂を呈する中等度の変性椎間板において,椎間板後方線維輪の肉芽あるいは瘢痕組織に置換された無症候性断裂部位に,体動による再断裂が生じることで発症していると思われる.
著者
大鳥 精司 中村 伸一郎 高橋 弦 鮫田 寛明 村田 泰章 花岡 英二 守屋 秀繁 高橋 和久
出版者
The Japanese Society of Lumbar Spine Disorders
雑誌
日本腰痛学会雑誌 (ISSN:13459074)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.55-60, 2006
被引用文献数
1

われわれはラットL5/6椎間板を支配する神経がL2後根神経節に入ることを示してきた. 今回, ヒト腰椎椎間板性腰痛に対し, L2ルートブロックの効果について検討した. 1995年 : 症例はL4/5, L5/S1の椎間板性腰痛を呈する33例であった. 全例, L2ルートブロック (1%リドカイン1.5m<i>l</i> ) を行った. 2000年 : 症例はL4/5, L5/S1の椎間板性腰痛を呈する68例であった. ランダムにL2ルートブロックとL4またはL5ルートブロックを行った. 結果, 1995年 : 注射前のVASは5.0に対し15分後のVASは0.8と有意差を認めた. 効果時間は平均20.7日であった. 2000年 : L2ルートブロック前VASは8.0に対し15分後VASは4.3, L4またはL5ルートブロック前VASは7.8に対し15分後VASは3.4と両ブロックともに同様に有意差を認めた. L4またはL5ルートブロックの効果期間は平均8日であるのに対しL2ルートブロックの効果時間は平均13日であり有意にL2ルートブロックの効果時間が長かった. 椎間板性疼痛に対するL2ルートブロックは有効であることが示された. L4またはL5ルートブロックも短期的には有効であるが, (1) 麻酔薬が直接椎間板に効いてしまっている, (2) 椎間板支配の神経が同高位の後根神経根に支配されている可能性が示唆された.
著者
荒 毅 飯塚 伯 高岸 憲二
出版者
日本腰痛学会
雑誌
日本腰痛学会雑誌 (ISSN:13459074)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.150-154, 2007 (Released:2008-01-22)
参考文献数
11

脊椎再建・固定術に際し自家腸骨を採取し術後6カ月以上経過した77例を対象として採骨部痛を調査検討した.採取部位や方法にて後方腸骨(後方群),前方腸骨全層骨(全層骨群),前方腸骨半層骨(半層骨群)の3群に分類し,全層骨群と半層骨群で疼痛発生率について統計学的検討を行った.全症例中16例(20.8%)に術後の疼痛を認め,後方群の20例中5例(25%),全層骨群の33例中9例(27%),半層骨群の24例中2例(8%)に術後疼痛を認めた.統計学的有意差は認められなかったが,半層骨群では全層骨群に比し疼痛を訴える症例は少ない傾向であった.
著者
宮本 雅史 伊藤 博元
出版者
日本腰痛学会
雑誌
日本腰痛学会雑誌 (ISSN:13459074)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.92-96, 2005 (Released:2007-12-14)
参考文献数
9

慢性腰痛に対する運動療法は重要な保存的治療法である.しかし現在の医療制度の中では,その治療効果についての科学的根拠が確立されていないという理由から,診療報酬を削減される危機に陥っている.従来のシステマテックレビューには個々の論文の間で慢性腰痛の定義や治療効果を判定するためのアウトカム指標が統一されていないことや,運動療法の種類や対照群の治療法がさまざまであるなどの問題点が指摘されている.近年,Liddle SDらはこれらの点に改善を加えた新しいシステマテックレビューを行い,運動療法は慢性腰痛患者に対し特に腰痛の特異的機能評価の観点から効果的に作用すると報告した.国内でも現在,慢性腰痛に対する運動療法に関する質の高いRCTが進行中であり,運動療法の有効性に対する評価を見直すべき時期にきているといえるであろう.
著者
竹谷内 宏明 竹谷内 克彰
出版者
日本腰痛学会
雑誌
日本腰痛学会雑誌 (ISSN:13459074)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.107-114, 2006-10-31 (Released:2007-08-31)
参考文献数
10

本研究の目的は, 慢性腰痛に対するカイロプラクティック治療の有効性について, アウトカム指標を用いて明らかにすることである. 2005年度に竹谷内クリニックを受診した患者のうち, 一定の条件を満たした慢性腰痛患者の50例 (男性13例, 女性37例, 平均年齢48.6歳) を対象とした. 初診時治療前と最終経過観察時において, 腰痛の程度をVAS値, 腰痛関連機能障害をRoland-Morris Disability Questionnaire (RDQ) で評価した. さらに, 腰痛関連機能障害の重症度を評価した. その結果, 腰痛VASとRDQスコアは治療前に比べて優位な改善を示した. また, 腰痛関連機能障害の重症度も改善傾向が認められた. この事実は, カイロプラクティック治療が慢性腰痛に有効である可能性を示唆している. 今後は, より質の高い臨床研究を行い, カイロプラクティックの慢性腰痛に対する有効性を明らかにする必要がある.
著者
高橋 弦 大鳥 精司 青木 保親 高橋 和久
出版者
日本腰痛学会
雑誌
日本腰痛学会雑誌 (ISSN:13459074)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.10-16, 2007 (Released:2008-01-22)
参考文献数
10

腰椎椎間板の感覚神経に関する基礎研究の成果について解説し,椎間板性腰痛の臨床を考察した.肉眼解剖学的には椎間板に枝を出す末梢神経は洞椎骨神経,灰白交通枝,交感神経幹である.組織学的・免疫組織化学的・電気生理学的に線維輪最外層に侵害受容線維が存在し,椎間板病変が急性痛の原因となることが証明された.感覚線維が由来する後根神経節は,椎間板背側部では当該分節,腹側部ではL2,をそれぞれ中心とし,支配レベルは腹側部で7分節,背側部で9分節に及ぶ.本構造は神経ブロックや手術に際しては考慮すべきである.交感神経性の感覚線維が主に椎間板背側部に分布し,炎症時の痛みに関与する.椎間板を支配する小型神経細胞では,皮膚に比較してNGF感受性細胞の比率が高い.炎症モデルでは,椎間板炎症部位でNGF感受性線維の発芽,後根神経節でNGF感受性細胞内の神経ペプチドの増加が惹起され,椎間板性疼痛の慢性化に関与すると考えられる.
著者
帖佐 悦男 田島 直也 松元 征徳 黒木 浩史 後藤 啓輔
出版者
日本腰痛学会
雑誌
日本腰痛学会雑誌 (ISSN:13459074)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.100-104, 2001 (Released:2008-07-10)
参考文献数
9
被引用文献数
5 3

職業性腰痛の疫学を各職種に従事している2,778名を対象にアンケート調査を行い,特に職種と腰痛の関係について検討した.アンケートの結果から腰痛歴の既往を約半数に認め,職場での発症が最も多かった.現在の腰痛に関しては,運輸職,看護職で腰痛との因果関係があると回答した者が多かった.発症状況では,徐々に発症したものは看護職や事務職に多く,急に発症したものは保安職や運輸職に多かった.腰痛発症の要因として,特に中腰作業,運転作業や重量物の取り扱いや介護作業が考えられた.腰痛発症と従事年数との関係では,看護職は初年度から腰痛の発生が高く,また業務との因果関係がありとの回答が多かった.この結果から,特に作業姿勢や作業関係などに関する指導や腰痛の予防に対する啓発を行う必要がある.
著者
紺野 慎一
出版者
日本腰痛学会
雑誌
日本腰痛学会雑誌 (ISSN:13459074)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.32-38, 2009 (Released:2009-12-19)
参考文献数
9
被引用文献数
1

腰部脊柱管狭窄の診断のゴールドスタンダードは存在しない.腰部脊柱管狭窄は画像のみでは診断できない.そこで,腰部脊柱管狭窄の診断サポートツールが開発された.医師用と自記式の患者用質問票の2種類ある.両者とも高い感度と特異度を有している.これらの診断サポートツールを使用することにより,患者の自己診断が可能であり,プライマリケアにおいて腰部脊柱管狭窄の診断に役立つと考えられる.
著者
青田 洋一 飯塚 晴彦 石毛 勇介 持田 尚 吉久 武志 斉藤 知行
出版者
日本腰痛学会
雑誌
日本腰痛学会雑誌 (ISSN:13459074)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.179-185, 2005
被引用文献数
2 1

長時間の着座に伴う腰痛を緩和する試みとして,椅子の背もたれ部の突出(Lumbar support)の収縮による腰椎用CPMを作成した.日常生活で腰痛のない10人の健常者(平均21歳)を対象とし,2時間の持続的着座姿勢を維持させ腰痛,腰の張り,疲労感,臀部の痺れをLumbar supportのない椅子,Lumbar supportのある椅子,CPMの3つの状態でのvisual analogue scalesを用いて比較検討した.Lumbar supportのない椅子と比べLumbar support付きでは腰痛と全身の疲労感は有意に改善したが,CPMではさらに臀部のしびれも有意に改善した.また追加実験によりCPMによる全身の動きは骨盤の動きに比べ,頭部や下腿で動きが軽微なこと,さらにCPMにより座面の臀部表面の接触圧分布が有意に変化することを明らかにした.CPMは長時間の着座に伴う腰痛,疲労感,臀部の痺れを包括的に改善する機器として発展する可能性がある
著者
横尾 直樹 山本 和良 中村 潤一郎 本田 淳 上杉 昌章 斎藤 知行
出版者
日本腰痛学会
雑誌
日本腰痛学会雑誌 (ISSN:13459074)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.111-116, 2003
被引用文献数
3

18歳以上の女性ダンサー282名(プロ109名,アマチュア173名)を対象に,腰痛に関するアンケート調査を行った.バレエ歴はプロ23年,アマ15年と有意にプロが長く,週平均レッスン時間はプロ11時間,アマ6時間,年間舞台回数はそれぞれ12回,2回と有意にプロが多かった.腰痛はプロの92%,アマの84%に認めた.プロではそのうち43%がレッスンに支障のある痛みで,10%に休職の経験があった.腰痛の部位はプロ,アマともに有意に下位腰部,左側優位が多く,腰痛を誘発する動作は腰椎伸展時が最も多かった.病院,医院への受診は10%と低率であった.プロダンサーはバレエ歴が長く,十分トレーニングを積んでいるにもかかわらず,アマチュアに比べ休職率が高いなど腰痛が重度であり,腰背部のoveruseが原因の1つと考えられた.慢性的な腰痛や強い腰痛のあるダンサーは,分離症や疲労骨折などが存在する可能性があり,整形外科医による検診や,定期的なメディカルチェックなどが必要であると考えた.
著者
若森 真樹 土井 龍雄 大久保 衞 大槻 伸吾
出版者
日本腰痛学会
雑誌
日本腰痛学会雑誌 (ISSN:13459074)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.89-93, 2001
被引用文献数
1

食品および生活雑貨の受注販売会社の配送配達作業従事者,平成9年度365名,平均年齢31.4歳,平成10年度360名,平均年齢31.9歳,平成11年度362名,平均年齢32.1歳(すべて男性)に対し,作業状況を調査し,腰痛その他の障害の危険因子を分析し対策の立案,実施の資料とした.その結果から職場体操を作成し指導した.また,作業方法,姿勢の改善指導し,体力測定を行った.さらに職場リーダの養成や腰痛検診および腰痛体操教室を実施した.その結果,腰痛を訴える者は62.7%から47.2%,医師による腰痛検診の結果,所見なし30.5%から90.2%と改善した.体力測定結果は筋,筋持久力テストでは有意に向上した.この企業においては作業環境改善や省力化を中心とした対策を講じてきたが顕著な改善は得られなかった.今回,成果が得られた要因は作業状況を調査し予防と治療,また個体的要素と作業環境要素から作業や職場に適した対策を立案,実施し,教育やサポート体制の整備などを包括的に行ったことによるものと考えられた.
著者
伊藤 俊一 久保田 健太 隈元 庸夫 森山 秀樹
出版者
日本腰痛学会
雑誌
日本腰痛学会雑誌 (ISSN:13459074)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.45-51, 2009
被引用文献数
2

慢性腰痛に対する筋ストレッチングとセルフエクササイズの効果に関して検討した.<br> 研究デザインは無作為化対照試験とし,外来受診からの治療期間を最大3カ月間として,コントロール群と,SLRと体幹筋強化を行ったエクササイズ1(E1)群,SLRと体幹筋強化とさらに腰背部ストレッチング加えたエクササイズ2(E2)群として,3カ月後,6カ月各群の痛みと身体機能変化と健康関連QOLをご検討した.<br> 結果,E2群では痛みおよび身体機能は3カ月以内の改善を認め,E1群も6カ月では同様の結果を示した.痛みの軽減と最も関連が高かった項目は,体幹の柔軟性と伸展筋力であった.<br> 以上の結果,慢性腰痛にけるセルフエクササイズによる体幹伸展筋力強化と柔軟性の改善を優先しての外来でのフォローアップは,疼痛および身体機能改善と患者満足度の改善により効果的と考えられた.
著者
伊藤 俊一 久保田 健太 隈元 庸夫 森山 秀樹
出版者
日本腰痛学会
雑誌
日本腰痛学会雑誌 (ISSN:13459074)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.45-51, 2009 (Released:2009-12-19)
参考文献数
11
被引用文献数
1

慢性腰痛に対する筋ストレッチングとセルフエクササイズの効果に関して検討した. 研究デザインは無作為化対照試験とし,外来受診からの治療期間を最大3カ月間として,コントロール群と,SLRと体幹筋強化を行ったエクササイズ1(E1)群,SLRと体幹筋強化とさらに腰背部ストレッチング加えたエクササイズ2(E2)群として,3カ月後,6カ月各群の痛みと身体機能変化と健康関連QOLをご検討した. 結果,E2群では痛みおよび身体機能は3カ月以内の改善を認め,E1群も6カ月では同様の結果を示した.痛みの軽減と最も関連が高かった項目は,体幹の柔軟性と伸展筋力であった. 以上の結果,慢性腰痛にけるセルフエクササイズによる体幹伸展筋力強化と柔軟性の改善を優先しての外来でのフォローアップは,疼痛および身体機能改善と患者満足度の改善により効果的と考えられた.
著者
三浦 雄一郎 福島 秀晃 森原 徹 鈴木 俊明
出版者
日本腰痛学会
雑誌
日本腰痛学会雑誌 (ISSN:13459074)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.122-128, 2008 (Released:2008-12-22)
参考文献数
6
被引用文献数
2 1

腰椎椎間板ヘルニアと診断された慢性腰痛症患者2名に対し,歩行時における体幹筋の筋活動について表面筋電図を測定し,健常群と比較,検討した.症例Aでは内腹斜筋の筋活動は歩行周期を通して平坦化していた.また,腰背筋筋活動パターンは立脚期中期,遊脚期にも筋活動が増加し,多相性を呈した.常時腰背筋の筋緊張を高めることが脊柱可動性低下の一要因であると考えられた.症例Bにおける歩行時の腰背筋筋活動パターンは左側多裂筋,最長筋,腸肋筋ともに多相性パタ-ンを呈した.運動療法後は最長筋,腸肋筋,多裂筋ともに健常群のパターンに類似したが,多裂筋は立脚期中期および遊脚期中期の筋活動増大が残存した.ラセーグ徴候陽性,SLR角に変化を認めなかったことからブレーキング作用が生じたと考えられる.慢性腰痛症患者に対して表面筋電図を用いて問題点を明確にすることが運動療法の内容,治療効果判定を判断するために重要であると考える.