著者
中島 純子 杉山 由紀子 神垣 久美子 大野 晃司 鈴木 雅信 清水 公也 魚里 博
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF CERTIFIED ORTHOPTISTS
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.177-183, 2001-07-15 (Released:2009-10-29)
参考文献数
17
被引用文献数
1

LASIK術後の低コントラスト視力を術前近視強度別に比較検討した。対象は近視矯正を目的としてLASIKを施行された40歳未満で、3か月以上経過観察可能であった症例27名53眼(男性7名、女性20名)である。術前の等価球面度数が-6D未満の症例を軽・中等度近視群(n=28)、-6D以上を強度近視群(n=25)とした。方法はLog MAR近距離視力表®(検査距離50cm・日本点眼薬研究所製)を用いて照度500lxの明室において完全屈折矯正下で25%、6%の低コントラスト視力を術前、術後一か月、術後3か月で測定した。結果は両群とも高コントラスト視力に有意差は認められなかったが、低コントラスト視力は術後有意に低下した。術前近視強度別においては強度近視群では術後コントラスト視力の優位な低下が認められたが臨床上問題となる1段階以上の低下は認められなかった。軽・中等度近視群では術前後で低コントラスト視力に有意差を認めなかった。LASIK術後、明所において収差、角膜の不正性はほとんど影響しないと示唆された。またLog MAR近距離視力表®はコントラスト感度の簡易評価が可能であるとともに、等間隔配列であるために微妙な視機能の変化を検出するうえにおいても非常に有用である。
著者
鈴木 智哉 金井 敬 蝋山 敏之 若林 憲章 江口 秀一郎 多田 桂一 江口 甲一郎
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF CERTIFIED ORTHOPTISTS
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.99-103, 1999-07-25 (Released:2009-10-29)
参考文献数
9

小児の調節麻痺下での屈折検査には、サイプレジン®の有用性が重要視されているが、何歳までサイプレジン®を用いた屈折検査が必要かについて検討した報告はまだみられない。そこで今回我々は、無作為に抽出した器質的疾患がない1032例を対象に、ハーティンガー合致式レフラクトメーターを用いてサイプレジン®点眼後と点眼前の他覚的屈折度の差(以下、戻り値とする)を各年齢ごとに検討した。戻り値の平均は成長とともに減少し、10歳以上では0.4D程度で推移した。重回帰分析により戻り値は屈折度よりも年齢に強く関連した。今回調査した戻り値の平均が10歳以上では0.4D程度で安定する事から、回帰式により戻り値0.4Dの年齢を求めると全症例14.3歳、近視群14.4歳、遠視群14.8歳となった。このことから、現代の繁忙な中高校生がサイプレジン®点眼下での精密検査を難しいと訴えるときは、これらの事を念頭において、眼鏡やコンタクトレンズの度数決定に際し、慎重に対処する必要があると考える。
著者
野上 豪志 佐藤 司 伊藤 美沙絵 新井田 孝裕
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.217-223, 2017 (Released:2018-03-17)
参考文献数
13

【目的】コンタクトレンズによる角膜形状変化(Corneal warpage)は可逆的変化として知られており、屈折矯正手術前にはコンタクトレンズの装用を中止して角膜形状の安定に努めることが重要である。今回、ソフトコンタクトレンズ(SCL)装用中止後のCorneal warpageの持続期間について検討したので報告する。【対象及び方法】角膜表面に影響を与えるような眼疾患(外傷, 浮腫, 他)や眼科手術歴がなく、屈折異常をSCLで矯正している24眼(平均年齢21±2歳)を対象とした。角膜形状の測定は前眼部形状解析装置(TMS-5®、TOMEY)を使用して、SCL装用中止直後、10分後、30分後、1時間後、3時間後、24時間後、2日後、3日後、7日後、10日後、14日後、21日後におこなった。【結果】平均角膜屈折力はSCL装用中止直後から3時間後まで増加傾向を認め(p < 0.01)、21日後には平均0.15D(0.01~0.50D)の急峻化が認められた。角膜乱視量、角膜全高次収差量、角膜厚は調査期間中に有意な変化が認められなかった。【結論】SCL装用眼ではSCL装用中止後3時間までCorneal warpageの持続が認められた。
著者
杉下 陽子 高木 満里子 西田 ふみ 堀田 明弘 根木 昭
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF CERTIFIED ORTHOPTISTS
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.173-179, 2000-08-25 (Released:2009-10-29)
参考文献数
6

間歇性外斜視における内田ブルーカラーレンズの装用効果をみるために、装用前後の斜視角、病態の変化、立体視、片眼つぶりや羞明について比較検討を行なった。対象は手術既往のない間歇性外斜視19例、間歇性外斜視術後残余斜視23例。斜視角は間歇性外斜視では近見58.0%、遠見73.7%、術後残余斜視では近見47.8%、遠見21.8%に減少傾向を示した。病態は斜位斜視が正位または斜位に移行しやすかった。立体視は間歇性外斜視の近見にて改善効果が高かった。片眼つぶりや羞明は間歇性外斜視は全症例で、術後残余斜視は50%に改善がみられた。内田ブルーカラーレンズは間歇性外斜視の治療に有用であると考える。
著者
岡 真由美 深井 小久子 木村 久 向野 和雄
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF CERTIFIED ORTHOPTISTS
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.139-144, 1999-07-25 (Released:2009-10-29)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

Intensive orthopticsにより良好な結果を得た陳旧性の後天性眼球運動障害例の治療経過と視能矯正管理の方法について報告した。症例は33歳の男性で、主訴は複視と動揺視である。第4脳室周囲上衣腫の摘出後に眼球運動障害、複視、眼振が出現した。約2年後、当科に入院し40日間視能訓練を施行した。退院後、北里大学病院眼科で眼振に対する治療を開始した。視能訓練の効果は、斜視角の改善率、融像能率、日常生活上の不自由度で判定した。治療前は融像衰弱(融像能率0%)であった。眼位は9Δ内斜位と右眼2Δ上斜位斜視で輻湊不全と眼振を伴っており、核上、核間、核下性眼球運動障害を示した。視能訓練は、Visual orientation trainingとConvergence trainingを行った。訓練8日目には輻湊近点の改善が認められ、融像能率は66%、改善率は82%になった(第I期)。訓練9日目よりFusion lock trainingを行い、訓練40日目に融像能率は78%になった(第II期)。退院後はSG fusion trainingと眼振治療を行った。訓練1年目に動揺視は軽減し、融像能率が100%、改善率が92%になった(第III期)。不自由度は訓練前100点から訓練後22点に回復した。本例において視能訓練が奏効したポイントは、斜視角が小さいこと、融像衰弱であったこと、患者の訓練意欲にあると考えた。
著者
星原 徳子 岡 真由美 河原 正明
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.229-235, 2016 (Released:2017-02-28)
参考文献数
24

【目的】麻痺性斜視における融像の異常な状態(融像状態)別の視能訓練成績を分析し、家庭訓練を中心とした視能訓練方法を検討した。【対象および方法】対象は、視能訓練を施行した麻痺性斜視58例で、年齢は30~87歳であった。融像状態は、潜伏融像、部分融像、狭い融像野に分類した。視能訓練は、衝動性眼球運動訓練、輻湊訓練、fusion lock training、プリズム療法を行った。治癒度は4段階とし、治癒度Ⅰは融像野が30°以上とした。【結果】融像状態は、潜伏融像27例、部分融像27例、狭い融像野14例であった。治癒度Ⅰの獲得が高率であったのは部分融像21例(78%)と狭い融像野11例(79%)であった。潜伏融像は治癒度Ⅰの獲得が低率であった。治癒度Ⅰを獲得できた狭い融像野では、プリズム療法が高率であった。全ての融像野で衝動性眼球運動訓練の実施率が高く、狭い融像野と部分融像においては衝動性眼球運動訓練とfusion lock trainingの組み合わせが多かった。【結論】家庭訓練は、融像野が存在する場合にはプリズム装用下で衝動性眼球運動訓練とfusion lock trainingを組み合わせ、潜伏融像では衝動性眼球運動訓練が有用であった。
著者
大牟禮 和代 若山 曉美 角田 智美 渡守武 里佳 下村 嘉一 松本 富美子 中尾 雄三
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF CERTIFIED ORTHOPTISTS
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.131-137, 2003-07-31 (Released:2009-10-29)
参考文献数
11
被引用文献数
1 2

目的:後天性眼球運動障害による複視が患者の日常生活にどのような影響を与えているかについてアンケート調査を行い、両眼単一視野の障害程度と日常生活の不自由との関係について検討した。対象及び方法:対象は、発症から6ヵ月以内の複視のある後天性眼球運動障害47例とした。内訳は、動眼神経麻痺4例、滑車神経麻痺11例、外転神経麻痺18例、眼窩底骨折14例である。年齢は13歳から77歳であった。複視によって生じる日常生活の不自由な項目について評価表(18項目)を用いて調査を行った。両眼単一視野の測定は、Bagolini線条ガラスを用いて行った。結果:日常生活に不自由があった症例は47例中40例(85%)、不自由がなかった症例は7例(15%)であった。不自由のある項目については、動眼神経麻痺、滑車神経麻痺、外転神経麻痺では共通して、「歩行」、「階段」、「テレビ」、「車の運転」という動きを伴う項目があげられ、障害神経別による大きな違いはなかった。不自由度は動眼神経麻痺では高く、眼窩底骨折では低かった。日常生活での不自由度と両眼単一視野の関係では、第一眼位で両眼単一視野が存在しない症例は存在する症例に比べてばらつきが大きく不自由度は高かった。日常生活の不自由度の改善には、第一眼位での両眼単一視野の獲得が重要であり、周辺に関しては下方の両眼単一視野の獲得が他の方向に比べ重要であった。結論:日常生活の不自由度の評価を行なうことは、治療または眼球運動訓練後の自覚的な改善を定量的にとらえることができるため後天性眼球運動障害の評価法として有用である。
著者
臼井 千恵
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF CERTIFIED ORTHOPTISTS
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.81-92, 2000-08-25 (Released:2009-10-29)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

Hess赤緑試験は、中心窩投影および眼筋におけるHeringの法則・Sherringtonの法則を基盤に、両眼を赤フィルターと緑フィルターによる「色」で完全に分離し、融像を除去した状態で各向き眼位における眼位および眼筋の働きを測定するものである。Hessスクリーン上の●印は15°偏位、◆印は30°偏位を表し、碁盤目の各1辺は5°に相当するため、水平および上下偏位の大まかな定量が可能である。結果は、左右各眼1個ずつのまとまった眼位図として、Hess chartに図示し記録する。臨床では、主として麻痺性斜視の眼位検査として用いられる。本検査法の利点は、9方向眼位が短時間に測定できること、眼筋麻痺の状態をビジュアル的に把握できるため治療における経過観察が容易であること、検査用紙が全世界共通であるためデータ提供や比較に便利なことである。問題点(限界点)には、回旋偏位が定量できないこと、自覚的検査であり患者の応答を過信する傾向があることなどがあり、微細な偏位も検出するため直接眼球運動を観察して麻痺筋を判定し難い時には有用である一方、斜位が含まれた眼位図であるため、得られた偏位に対する評価を慎重に行う必要がある。検査に際しては、事前の遮閉試験および視診による眼球運動検査が不可欠であり、得られた眼位図が患者の眼所見を正しく記録しているか否かを常にチェックすることが大切である。
著者
藤田 一郎
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.20-21, 2011 (Released:2012-02-22)
参考文献数
12
被引用文献数
1

我々が住む世界は空間的に3次元の世界である。そして、多くの人は、この世界を3次元の世界として知覚する。奥行きの知覚は片目でも得ることができる。それは、網膜に映った像の中に含まれる線遠近法、遮蔽、テクスチャー勾配、輝度勾配などの視覚手がかりが奥行きの手がかりとなるからである。しかし、閉じていた目を開き、実世界を見たときには、片目では得ることのできないビビッドな立体感を感じる。 2つの目は異なる位置から世界を見るため、両眼視野内のすべての視覚対象(視覚特徴)は、左右の網膜像の間で、わずかな位置ずれを持っている。その位置ずれは両眼視差と呼ばれ、視覚系は、この位置ずれを利用して奥行きを定量的に検出し、両眼立体視を実現する。 両眼視差の検出は一次視覚野(V1)で行われる。V1細胞は、ごく小さな受容野を持つが、左目受容野と右目受容野に投影されている画像の空間的相互相関を計算することで両眼視差を算出する。両眼視差の検出はV1で行われるものの、V1細胞の視覚反応の性質は、さまざまな点で、両眼奥行き知覚の心理学的な性質と異なっている。すなわち、V1細胞は両眼視差の検出を担うものの、その活動がそのまま奥行き知覚に結びついているのではない。 両眼奥行き知覚の成立には、背側視覚経路(V1野から頭頂葉へいたる経路)および腹側経路(V1野から側頭葉へいたる経路)の両方が関与している。前者は、粗い奥行き知覚(coarse stereopsis)、両眼視差に基づいた反射性輻輳眼球運動、高速で変化する視覚刺激の奥行き検出に関わっており、後者は、細かい奥行き知覚(fine stereopsis)と粗い奥行き知覚の両方、相対視差の検出に関わっている。
著者
田中 佳子 小林 幸子 関 保
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.137-144, 2011 (Released:2012-02-22)
参考文献数
17
被引用文献数
1

【緒言】書字・読字障害をもつ発達障害児に対し、視覚的補助具の処方と学校への働きかけにより、QOLが向上した症例を報告する。【症例】13歳男児。眼鏡作製目的で来院したにも関わらず、母親の書字障害等の訴えから、本人も自覚しない羞明感が明らかとなった。本児は学校生活においてトラブルを抱えていたため、小児科を受診したところ広汎性発達障害と診断された。書字・読字に対しては、遮光眼鏡の使用により改善が見られ、遮光用の虹彩付きコンタクトレンズの有効性もコントラスト感度測定により認められた。【考察】発達障害は脳の機能障害であり、知的に問題がなく視覚障害がないにも関わらず、読字、書字、計算障害といった学習障害を来たすことがある。また、知覚の過敏性も特徴の一つであり、本児は視覚過敏が羞明というかたちで現れたものと思われる。光の過敏性に関してはScotopic sensitivity syndromeとの関連が示唆された。この場合、遮光眼鏡や虹彩付きコンタクトレンズがフィルターの役割を果たし、光に対する過敏性を和らげ感覚の調整を図れたことが、書字等の改善に繋がったものと考えた。発達障害は公立の小中学校の児童の6.3%に疑いがあるという報告もあり教育上問題になっている。眼科的所見がなく、本人に見えにくさの自覚がないことが多いため見過ごされる可能性があり、注意を払う必要がある。そして、その対応には小児科・精神科・学校との連携が重要である。
著者
杉谷 邦子
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.39-48, 2018 (Released:2019-03-08)
参考文献数
10

複視に対する手術や光学的治療は、正面位と下方視の複視消失を目標に行われるが、非共同性偏位のため、治療後も周辺に複視が残ることが多い。患者はそれを頭位で代償するか、しばしば片目を閉じることになり、首や肩の疲労により苦痛を訴えることがある。当科では従来のプリズム治療に遮閉膜による部分遮閉を追加することで、周辺に残る複視の治療を行ってきた。 「両眼開放」、「日常9方向での複視消失」および「周辺視野の確保」という三つの目標を設定し、院内手順(S-S method)に従い三段階で治療を進めている。step 1として正面位をプリズムで矯正し、周辺に複視が残った場合step 2、step 3へと進み、0.1遮閉膜(Bangerter occlusion foils, Ryser Optik社製)を用いた部分遮閉を行っている。step 2は眼鏡レンズ周辺を部分遮閉し、step 3はレンズ中心にspot patchを貼っている。それにより目標であった両眼開放はもとより、9方向での複視消失と周辺視野が確保され、患者は快適な開放感に加え、歩行の安定を得ている。 S-S methodの方法と治療原理を解説し、stepごとの処方例を紹介する。またS-S methodにより周辺に複視を残さず治療ができた213名中194名(91.1%)の原因疾患と、患者が選択したstepの内訳および斜視角について治療結果をまとめた。
著者
渋谷 政子 中島 理子 田島 久美子 朝倉 章子 森 敏郎
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF CERTIFIED ORTHOPTISTS
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.51-57, 1996 (Released:2009-10-29)
参考文献数
7

輻輳不全および融像幅の低下が原因で眼精疲労を訴えた28名(年齢8歳~51歳)に当科で考案した訓練方法に基づき治療を行った。対象患者は輻輳近点と融像幅の検査結果から,1.生理的複視を認知できない群,2.輻輳力低下群,3.融像力低下群の3群に分類した。訓練の結果,輻輳近点が10cm以下およびプリズム融像幅が20Δ以上の正常範囲に回復し,眼精疲労が消失あるいは軽減したものは28例中27例であった。訓練期間の平均は1.2ヵ月と短期間であった。眼精疲労の原因を的確に分析することは輻輳および融像幅増強訓練を奏効させると考えられた。
著者
望月 浩志 大谷 優 大森 沙江子 吉田 美沙紀 渡辺 楓香 藤山 由紀子 新井田 孝裕
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.73-79, 2018 (Released:2019-03-08)
参考文献数
15
被引用文献数
1

【目的】斜視や弱視で通院中の患児における三歳児健康診査(以下、三歳児健診)の判定状況を調査した。【対象および方法】斜視や弱視によりA病院に通院中の患児30名(男16名・女14名、年齢9.1±3.2歳)の保護者に、三歳児健診で眼科医療機関への受診(3次健診)を勧められたか、勧められなかった場合の眼科受診のきっかけについて聞き取り調査を行った。調査結果と患児の視機能の関係を検討した。【結果】30名中24名(80.0%)は三歳児健診で3次健診を勧められていなかった。勧められなかった24名のうち斜視は15名で、内訳は内斜視5名、外斜視2名、間欠性外斜視7名、上斜視1名であった。24名のうち弱視は13名(斜視と重複含む)で、内訳は屈折異常弱視4名、不同視弱視5名、斜視弱視4名であった。斜視15名の眼科受診のきっかけは、保護者の気づきや保育園や幼稚園教員の指摘11名、保育園や幼稚園、小学校での健診を含む3歳以降の健診4名であった。斜視弱視を除く弱視9名の受診のきっかけは、保育園や幼稚園教員の指摘2名、3歳以降の健診7名であった。【考按】所管する市町村によって携わる医療職や健診内容に差があるが、本調査では斜視や弱視を有する患児の80.0%は三歳児健診で3次健診を勧められていなかった。1次および2次健診の精度向上をめざし、屈折検査の導入などの視機能異常の検出方法の改善や視能訓練士などの眼科専門職の参加が必要であると考える。
著者
川村 緑
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF CERTIFIED ORTHOPTISTS
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.1-11, 1986-07-23 (Released:2009-10-29)
参考文献数
10
被引用文献数
2 2
著者
宗像 恒次
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
no.29, pp.57-63, 2001

患者さん自らの価値観や人生の目的に照らし、本人自身で適切な治療法を選択するよう支援するには健康相談法とは異なるヘルスカウンセリング法が必要となる。患者さんが本当は何をしたいのかに気づき自己決定するには、ミラーリング効果と共感効果をもてる面接法によって、本人の隠れた本当の気持ちや要求に気づけるよう支援することである。また本人が必要とするセルフケア行動を促すには、その行動を妨げる無力感や見放される怖さや罰意識さなど過去のトラウマ感情をもつイメージの存在を気づかせ、そして変容させ、本人の自信の回復するイメージに変換することである。構造化連想法を用いた本ヘルスカウンセリング法はそれらを構造化された方法で簡便にクイックに実現しうるだろう。
著者
馬嶋 昭生
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
no.25, pp.7-13, 1997

ごく一部の眼科医と,彼らを支持する少数のいわゆる知名人は「学校保健法に基づく一斉色覚検査を全廃せよ」という運動を執拗に続けてきたが,色覚とその異常の本質を理解している研究者と,多くの眼科医の強い反対によって阻止された。しかし,文部省は,「小学校4年生で1度だけ行う」というこれらの意見の折衷案か妥協案のような改訂を行った。本論文では,全廃論に対する反論,小学校1年生での検査の重要性,今後の対策として学校現場での正しい検査法や事後の措置などを解説した。眼科医や視能訓練士は色覚異常者の視機能を十分に考慮した指導や助言ができる学識を身に付けることの重要性,色覚検査廃止論者の好んで使う「異常者の差別」という言葉の誤りを指摘した。筆者は,個人の好まない学校現場での一斉検査が他にもあるのに,全廃論者が何故に色覚検査のみに執拗に拘泥するのかその真意を知りたい。