著者
根本 加代子
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF CERTIFIED ORTHOPTISTS
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.67-80, 1998-07-10 (Released:2009-10-29)
参考文献数
76

弱視と弱視治療に関する先人の業績を回顧することは、私たちが臨床の場で出会う多くの問題や疑問に答える糸口が得られることである一方では、私たちが同じ知識基盤を共有し、同じ学術用語を用いて、討論をすることで、お互いがより深く理解し合えるのであるこのような同じ知的背景の中から、私たちがより良い治療法や新しい訓練法の創造、そして、従来からの訓練治療にたいする学術的批判をも可能とし、その改善に繋がるのである。今回まとめた内容について以下に記す。弱視の病態に関する基礎的研究(弱視のニューロンの基礎)。弱視治療に用いられる遮蔽法についての神経生理学的考察。日本における弱視の頻度は約2.3%と推定される。器質弱視の訓練は視力回復の可能性があることを前提とし、訓練終了の時期を明確にする。遮蔽治療が困難な時、ペナリゼーションは有効である。間歇遮蔽か終日かの選択は症例の症状に基づき決定される。アトロピン遮蔽は重篤な健眼視力低下をもたらすことがある。点眼中は瀕回の視力チェックを要する。健常視力かそれに近い回復が得られる年齢的限界は15歳前後である。なんらかの回復が期待できる年齢の限界は不明である。弱視治療訓練終了判定基準としては視力の向上した者は交代固視でき、さらに不同視弱視では中心窩抑制が取れ、両眼開放視力が等しくなった時をもってする。また、治癒効果が得られない判定は終日遮蔽にて連続3回の検診でも視力が不変の時をもってする。健眼失明者の弱視眼の30%に0.3~1.0(3ライン以上)の改善が見られた症例とそのメカニズムの考察。L-dopaあるいはciticolineで抑制暗点の縮小や視力の向上が見られるが、副作用の除去、効果の持続、作用機序の解明が不十分であり、これらの解析が進すめば、新しい治療法が生まれる可能性があること。
著者
伊藤 幸江 石川 均 西本 浩之 向野 和雄 石川 哲 佐藤 喜一郎
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF CERTIFIED ORTHOPTISTS
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.211-216, 1990-12-31 (Released:2009-10-29)
参考文献数
12

今回,輻湊痙攣による内斜視,調節痙攣,縮瞳の3症状が同時にみられる近見反応痙攣の2症例を経験した.症例1は18歳女子高校生,3歳半頃,頭部打撲後より内斜視に気づいた.両外転神経麻痺がみられたが徐々に改善した.ところが,15歳頃,全身運動した後に頭痛と複視を自覚し,近見反応痙攣が出現した.症例2は28歳女性,26歳頃より症状が出現し,現在も恒常的に近見反応痙攣が続いている.この痙攣に対して上原らが用いたアモバルビタールの静注を我々も行ってみた.症例1は静注前と著明な変化はみられなかった.症例2は3時間程持続効果がみられ以前の状態に戻ってしまった.近見反応痙攣の発作は,皮質中枢の異常興奮・輻湊の中間中枢,動眼神経核,EW核への抑制の障害などが考えられ,アモバルビタールの有効性からも推定できる.
著者
五十嵐 多恵
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.7-12, 2018 (Released:2021-02-06)
参考文献数
15

近視は、遺伝要因と環境要因の相互作用が原因となり発症し進行する。近代化に伴う環境変化によって小児の近視患者が急増加する一方で、近視が強度で病的であるほどMendel遺伝疾患や稀な影響力の大きい遺伝子変異が関与する傾向が知られており、幼少期からの強度近視患者には、遺伝要因が近視の発症と進行の主因と考えられる患者の割合が高い。近年は学童近視に対しては近視進行予防治療が行われ、単一遺伝性の網膜疾患に対しては遺伝子治療が行われるようになった。今後、近視診療従事者は、個々の近視患者の発症と進行の原因を正しく理解し、適切な医療情報の提示を行うことが重要になると予測される。また病的近視患者の視機能を生涯に渡り良好に維持するためには、小児期の早期に病的患者を同定し、適切な合併症管理に結びつけることが重要である。眼底写真で視神経乳頭周囲のびまん性萎縮の形成を確認するとともに、脈絡膜厚をモニタリングすることや、広角OCTを用いて後部ぶどう腫の初期病変を同定することは、早期診断のための有用な指標と考えらえる。
著者
清水 みはる 稲泉 令巳子 寺本 恵美子 澤 ふみ子 中村 桂子 内海 隆 上野 正人
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
no.25, pp.75-82, 1997

検眼用フレームとして現在普及しているものはフィット感や重さ,耐久性が十分とは言い難く,満足できるのがないのが現状である。そこで使いやすさや耐久性を重視し,またカラフルな色彩を採用した検眼用フレームの開発・改良に参加し,試用する機会を得たので報告する。対象は平成8年2月1日から同9月30日までの8ヶ月の間に大阪医科大学附属病院眼科外来を受診した患者のうち,無作為に抽出した2980名と高槻市3歳児検診を受診した350名である。方法は従来からの固定三重枠<sup>&reg;</sup>((株)はんだや)およびシンプルBC<sup>&reg;</sup>((株)高田巳之助商店)を対照に,今回新しく開発した検眼用フレーム(増永眼鏡(株))と比較検討した。新しいフレームは材質としてホルダー部分には抗菌作用や耐磨耗性,強靱性のあるエンジニアリングプラスチックを用い,金属部分にはチタンを使用しているのでかなり軽量である。フィッティングを良くするための独自の工夫と子供が受け入れ易いように配慮したカラフルな色彩が特徴である。結果として,新しいフレームはレンズの装着感が良く,検者側からの評価も高く,患者の満足度も十分で,眼鏡処方時の長時間の装用テストにおいても好評であった。明るい色合いは小児に特に好まれた。今後の実用化が期待される。
著者
奥村 詠里香 追分 俊彦 掛上 謙 林 顕代 中川 拓也 林 由美子 林 篤志
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.97-102, 2015

<b>【目的】</b>白内障混濁別の散乱光と白内障手術前後における散乱光の変化を検討する。<br><b>【対象及び方法】</b>平成26年4月から同年9月までに富山大学附属病院で白内障手術を施行した38例50眼に対し、白内障手術前後に眼内散乱光測定装置C-Quantを用いて散乱光を測定した。核白内障、皮質白内障、後嚢下白内障、retrodotsに分類して混濁の程度分類を行い、各白内障の混濁程度、術前視力、眼球高次収差と散乱光の関係、白内障手術前後の散乱光の変化について検討した。<br><b>【結果】</b>核白内障、皮質白内障の混濁程度と散乱光値には相関が認められた(p<0.01)が、retrodotsの混濁程度と散乱光値には相関はなかった。核白内障、皮質白内障の術前視力と散乱光値、眼球高次収差のRMS値と散乱光値には相関はなかった。核白内障、皮質白内障の散乱光値は術前と比較し、術後で散乱光値が有意に低下していた(p<0.01)。後嚢下白内障は症例数が少なく統計処理は行っていないが、核、皮質、後嚢下白内障の中で後嚢下白内障の術前散乱光値が最も高値であった。<br><b>【結論】</b>今回、白内障の混濁別の散乱光値について検討できた。核白内障、皮質白内障の混濁増加に伴って散乱光値は上昇し、白内障手術によって散乱光値は低下した。 混濁別では後嚢下白内障の散乱光値が最も高値であった。散乱光測定検査は、白内障の診療に役立ち、また、視力以外の見えにくさの評価法として用いることができると考える。
著者
野原 雅彦 高橋 まゆみ
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF CERTIFIED ORTHOPTISTS
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.115-120, 2001-07-15 (Released:2009-10-29)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

小中学校での眼科学校健診において、オートレフラクトメーター使用による屈折検査を導入し、屈折分布や変化を検討した。対象は長野県小県郡丸子町の小中学生1719名で、キヤノン社製RK-3Rを用いて各眼3回以上測定し、その平均値を使用した。等価球面度数は、小学校1年生+0.09D±0.61D(平均±標準偏差)、2年生-0.17D±0.69D、3年生-0.33D±0.82D、4年生-0.50D±0.92D、5年生-0.62D±1.12D、6年生-0.99D±1.55D、中学校2年生男子-1.09D±1.61D、2年生女子-1.34D±1.39D、3年生男子-1.33D±1.75D、3年生女子-2.07D±2.17Dであった。乱視度数は、学年や男女差はなく0.4~0.6Dであった。学年が進むにつれて近視化していき、標準偏差も大きくなった。中学生では女子の方が近視化傾向が強かった。また教諭の測定した裸眼視力が良好でも、屈折異常が大きくある者がみられた。学校健診において屈折検査を導入することで、屈折状態を把握し適切な指導を行うことができ、有用と思われた。
著者
矢野 隆 魚里 博 鈴木 博子 嶺井 利沙子 根本 徹 清水 公也
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF CERTIFIED ORTHOPTISTS
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.95-102, 2002-08-25 (Released:2009-10-29)
参考文献数
28
被引用文献数
1 1

眼軸長測定には散瞳下・無散瞳下(自然瞳孔)のどちらの条件が適しているか。また新しい光学式の眼軸長測定装置ZEISS社製IOLMaster™(以下IOLMaster)を従来の超音波Aモード装置NIDEK社製US-800™(以下Aモード)と比較し、その有用性について検討したので報告する。対象は正常有志10名20眼(年齢22歳~28歳)。散瞳前後の眼軸長及び前房深度をAモードとIOLMasterで測定比較した。眼軸長及び前房深度の各測定において無散瞳下のAモードに対する3群(散瞳下のIOLMaster・無散瞳下のIOLMaster・散瞳下のAモード)の間で有意差を認めた。また前房深度測定においてIOLMasterは散瞳前後でも有意差を認めた。眼軸長及び前房深度の各測定の標準偏差値はIOLMasterは散瞳前後では小さく、無散瞳下のAモードでは一番大きかった。瞳孔径別の眼軸長及び前房深度測定の標準偏差値はIOLMasterでは、ほぼ一定であった。Aモードでは瞳孔径が小さいと標準偏差値は大きく、瞳孔径が大きくなるほど標準偏差値は小さくなった。Aモードでは散瞳下での測定、IOLMasterでは散瞳下・無散瞳下のどちらの条件でも測定に適していると考えられた。新しい光学式の眼軸長測定装置IOLMasterは、臨床においても極めて有用な装置であると考えられる。
著者
小島 ともゑ 貫名 香枝 船曳 昌子
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF CERTIFIED ORTHOPTISTS
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.190-193, 1990-12-31 (Released:2009-10-29)
参考文献数
7

A retrospective study was performed on intermittent exotropia patients who received surgery at our clinic between Oct. 1979 and Nov. 1987.A total of 544 patients were divided into 4 groups according to their age at the time of surgery: 0-5yrs., 6-12yrs., 13-18yrs., and 19yrs. and older.It was found that prior to surgery the 19yrs. and older group had the highest percentage of large exodeviation, poor convergence, and absence of simultaneous perception as tested with the major amblyoscope.However, the corrective effect of uniocular resection-reccession was greatest in this groupe, and the rate of recurrence was lowest.
著者
金永 圭祐 岡 真由美 星原 徳子 橋本 真代 森 壽子 河原 正明
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.249-255, 2014 (Released:2015-03-19)
参考文献数
18
被引用文献数
1

【目的】注意欠陥多動性障害(以下、ADHD)児は眼球運動異常を伴うことが報告されている。今回我々はADHD児において文字間隔と行数が読みの眼球運動に与える影響について検討した。【対象および方法】対象はADHD児5例(平均年齢6.4 ± 0.5歳)(以下、ADHD群)とした。このうち間欠性外斜視が2例であった。対照は正位または斜位5例を対照群(6.4 ± 0.5歳)、間欠性外斜視5例(7.0 ± 0.6歳)を斜視群とした。読みの眼球運動発達検査はDevelopmental Eye Movement test(DEM)を用いた。DEMはテストA、テストBおよびテストC で構成されている。テストA、Bでは数字が縦(2行)に等間隔に、テストCでは横(16行)に不等間隔に配列されている。DEM測定中の眼球運動の記録にはEye Mark Recorder-9®を用いた。分析はテストCの1行あたりの読み時間、文字間の視角別(<2º、 2º≤ <4º、 4º≤ <6º、 6º≤ <10º、≥10º)の衝動性眼球運動(saccade)回数、saccade速度、停留時間とした。【結果】DEM比率の平均はADHD群が1.90±0.3、対照群が1.47±0.1、斜視群が1.40±0.2であった。ADHD群は対照群に比べ1行あたりの読み時間が3、4、5、6、7、13行目で延長した。saccade回数は文字間の視角が4º未満の場合、両群に差はなかった。しかし文字間の視角が4º以上ではADHD群のsaccade回数が有意に増加した。両群のsaccade速度および停留時間に差はなかった。【結論】ADHD児は文字間隔と行数が読みの眼球運動に影響していた。ADHD児には眼球運動の側面から視覚教材の文字配列を工夫し、学習障害の早期発見と予防を行う必要がある。
著者
栗山 典子 石川 知美 長村 紀子 和田 博子 松井 淑江 石郷岡 均
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF CERTIFIED ORTHOPTISTS
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.127-130, 2002-08-25 (Released:2009-10-29)
参考文献数
9

黄斑剥離を伴う片眼性の網膜剥離に対し、観血的な網膜剥離手術を施行した症例を対象に術後の近見立体視機能について検討した。黄斑剥離を認める片眼性の網膜剥離眼中、術後の遠見矯正視力が0.8以上、左右の不同視差が3D以内のもの42例42眼を対象としTitmus stereo tests (TST)およびTNO stereo test (TNO)を用い近見立体視機能の検査をした。TSTでは良好群、中等度良好群、不良群に分類した結果23眼(54.8%)が良好群、17眼(40.5%)が中等度良好群、2眼(4.8%)が不良群となった。TNOでは良好群と不良群に分類した結果27眼(64.3%)が良好群、15眼(35.7%)が不良群となった。黄斑剥離を伴う網膜剥離眼では術前に中心視力が低下するものの、網膜復位後矯正視力が0.8以上の症例では良好な立体視が得られた。
著者
吉田 仁美 深井 小久子
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF CERTIFIED ORTHOPTISTS
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.255-262, 1999-07-25 (Released:2009-10-29)
参考文献数
22

正常者の固視点を画像診断的に分析するために、内田式視標付無散瞳眼底カメラを用いて固視点を撮影した。また、固視点と視機能特性を検討した。対象は正常者120名240眼である。正常者の選択基準は、視力1.0以上、両眼視機能60arc sec.以上を有し斜視のないものとした。固視点の観察は、内田式視標付無散瞳眼底カメラ(ウチダ&トプコン)で撮影した。視標は、固視部分視角1°、全体の内径10.62°の同心円視標と無交叉視標を使用した。固視のずれは、固視視標と中心窩反射の位置で判定した。ずれの計測法は、ずれが認められた画像をCRT画面上に入力して固視視標の中心から中心窩反射の中心までの距離を測定し、視角で算出した。その結果、固視点は中心固視が209眼(87%)、固視のずれが31眼(13%)であった。固視のずれの方向と平均距離(視角)は、鼻側方向が29眼0.6°、耳側方向が2眼0.7°、上側方向が24眼0.5°、下側方向が3眼0.5°であり、上鼻側方向の合併が31眼中23眼に認められた。また、視角1°以内のずれは31眼中29眼であった。固視のずれが認められた眼の視機能には特性は認められなかった。正常視力にもかかわらず固視のずれが認められた原因として、解剖学的に網膜中心窩の斜台の傾斜が不均等なために、中心窩反射と解剖学的中心窩が一致しないこと、また網膜の発達過程において錐体細胞密度に偏りが生じたことが推察された。
著者
廣瀬 真由 大沼 学 佐藤 恵美 斎藤 渉 河西 雅之 薄井 紀夫 内海 通
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.77-82, 2017 (Released:2018-03-17)
参考文献数
11

【目的】片頭痛発症中に自覚した暗点を動的量的視野検査で検出できた症例を報告する。【症例】60歳男性、眼科医。突然、両眼左上部に暗点を自覚した後、後頭部から右側頭部にかけて鈍痛を認めたため、直ちに頭頸部MRIおよび眼科検査を施行した。暗点ならびに頭痛の原因となる器質的疾患は見い出せず、視力低下や眼圧上昇などもなかった。Goldmann視野計による動的検査では、両眼に自覚症状と一致した左上部の同名性暗点を検出した。暗点は自覚4時間後に、頭痛は翌日に消失した。後日再度施行したGoldmann視野計による動的検査では暗点は認めなかった。【結論】片頭痛発症中の閃輝暗点を動的量的視野検査で検出できた一例を経験した。
著者
岡 真由美 新井 紀子 深井 小久子 木村 久
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF CERTIFIED ORTHOPTISTS
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.113-117, 1995-08-31 (Released:2009-10-29)
参考文献数
14

基礎型間歇性外斜視に対してボツリヌス毒素療法を施行し,過矯正眼位が出現した後,良好な治療経過を認めた症例と過矯正眼位が出現せず斜視の再発を認めた症例を比較し,経過良好例よりボツリヌス毒素療法の視能矯正について検討した。良好例の治療前眼位は,30ΔX(T)',25ΔXTであった。ボツリヌスを右眼外直筋へ2回注入し,斜視角は減少したが残余角を認めた。第3回目は両眼外直筋に注入し,70ΔET',68ΔETとなったが5か月後4ΔE',4ΔEに改善し,約2年間良好な眼位を保持した。不良例の治療前眼位は,30ΔX(T)',35ΔXTであった。ボツリヌスの注入は,注入量を漸増しながら右眼外直筋に計4回行った。眼位は,6ΔX',6ΔXに改善したが外斜視の再発を認めた。ボツリヌスの両眼外直筋への注入により,両眼内直筋のトーヌスが一時的に増強し輻湊が賦活されたため良好な眼位保持が,可能であったと考えられた。
著者
丸尾 敏夫
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.9-19, 2010 (Released:2011-03-28)
参考文献数
5

50数年前に始まった我が国の現代斜視学では、両眼視機能の回復が重視され、斜視の早期治療が唱えられた。時代は変わっても、大人の斜視は手遅れで治らないとか、片眼視力障害のある斜視はすぐ戻るという理由で手術をしたがらない眼科医が多い。一方、小児では、無意味な斜視視能矯正が漫然と行われている傾向にある。 テレビで活躍している著名な演出家のテリー伊藤氏は3年前外斜視の手術を受け、手術前の診察、手術、手術後の経過がドキュメンタリーで放映された。テリー氏に、斜視患者の悩みと手術の感想を語ってもらった。斜視患者は両眼視機能は問題でなく、外見に最も苦しんだ。手術は痛みより治るという期待の方が大きかった。手術により見掛けばかりでなく、心の斜視も治った。手術後は活躍の場がさらに広がり、斜視眼がどうしてもっと早く治してくれなかったかと語りかけた。 斜視の治療目標は、眼位の矯正が第一であり、両眼視機能は飽くまで整容的治癒の後に付いてくる二次的のものである。
著者
稲垣 理佐子
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.29-37, 2018 (Released:2019-03-08)
参考文献数
20

両眼複視への対応には主にプリズム療法と手術治療がある。プリズム処方は外来診療の中で処方が可能で、観血的な治療を好まない患者、症状の変化が見込まれる場合には大変有用である。一方で処方しても適応できず苦労する症例もある。本稿ではプリズム眼鏡処方の理論と実際について述べる。 プリズムには組み込み式プリズムと膜プリズムがある。それぞれに長所、短所があり斜視角や患者の希望等で選択する。処方にあたっては、水平、上下偏位が合併する場合のプリズム合成方法や、膜プリズムの装着位置などの基礎知識が必要である。実際の検査では、患者の訴えをよく尋ね、予想される疾患から必要な検査を組み立てる。 プリズムでは回旋偏位の矯正はできないが、上下斜視は回旋偏位を伴うことが多い。そこで上下複視とともに回旋複視が存在する後天性滑車神経麻痺について、プリズムへの適応の可否を、当院のデータから検討した。疾患の原因別の調査では、外傷性に比べ原因不明群がプリズムによく適応していた。プリズム適応群は不適応群に比べて、上下偏位と回旋偏位が有意に小さく、プリズムへの適応には上下偏位と回旋偏位が関与していることが明らかになった。 プリズムは全ての複視を解消することはできず、処方にはトライアンドエラーを繰り返すこともある。プリズムの特徴を把握し、適応となる患者の候補を絞ることで、処方に費やす時間を短縮でき患者のQOLの改善につなげることができる。
著者
東 郁郎
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF CERTIFIED ORTHOPTISTS
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.20-24, 1985-12-20 (Released:2009-10-29)
参考文献数
3

The clinical data on 136 patients with infantile glaucoma were reviewed. The incidence of primary glaucoma and secondary glaucoma was at a ratio of 7:3. Buphthalmos occurred in males and females at a ratio of 2:1. Bilateral and unilateral glaucoma was also seen at a ratio of 2:1. 75% of the patients visited the clinic within one year of birth. Secondary glaucoma occurred similarly in males and females. The incidence of bilateral and unilateral glaucoma was also similar.Of 14 patients with Sturge-Weber's syndrome, 5 also suffered from Klippel-Trenaunay's syndrome. This emphasizes the importance of observations of the general condition. A patient with specific Peters's anomaly showed evidence of chromosomal abnormality.
著者
小林 昭子
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.221-227, 2012 (Released:2013-03-15)
参考文献数
11

【目的】Goldmann視野検査の実技指導用にGPテクニカルチェックシート(以下シートとする)を作成した。問題解決型学習(以下学習とする)前後に施行した視野検査をシートで評価する実技教育指導法を検討した。【対象と方法】学生視能訓練士(以下学生とする)10名、臨床経験3年の視能訓練士3名を対象とした。指導者は3名であった。対象者間で視野測定し、到達度を指導者がシートに評価した。未到達の項目については問題の想起と解決をグループ討議で行い、視野を再測定後再度シートで到達度を確認した。シートでの到達度の変化から指導法を検討した。【結果】38項目の内、学生の到達可能な項目数は学習前が平均19.9±標準偏差3.5(平均52%)、後が22.6±4.0(59%)、視能訓練士は前が36.3±1.2(96%)、後が38(100%)であった。到達度の向上が10%以上向上は3/10名、10%未満は5/10名、低下は2/10名であった。「鼻側は正常範囲の外側から動かす」は学生10名全員が到達できていたが、「下方は最大稼働域から動かす」は7/10名、「視標速度を一定にする」は6/10名が学習前後とも到達できなかった。【結論】GP実習指導に不可欠な項目を列挙したシートを使用することで、指導者は指導内容が網羅できた。学習により検査手技の確認はできたが実測で技術がすべて身についていたとはいえず、指導を繰り返しての検討が必要と思われた。